この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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グアラクーナ城砦防衛線その壱です。




第十五話

 

アヴァロ達が到着し、アヴァロとキスニルさんが再会を喜び合い、二人を含めて再度キスニルさんから説明が入る。

 

「今までの経緯は此方のサイトウ殿から一通り聞いている。」

 

「そうか、それじゃあ改めて自己紹介とかは必要なさそうだな。」

 

「ああ、二人に直接確認しておかねばならない事があってな。それを聞くためにここで待たせてもらっていた。」

 

「それじゃあお二人さん、後は宜しく頼む。()()()()()()()()呼んでくれ。」

 

「……ああ、対応ありがとな。」

 

フィアは相変わらずニコニコしているが、アヴァロの方はこの先がどうなるか考えているらしい。

 

家にいる騎士に頭を下げ、外に出る。

 

「エネ。」

 

手袋の中に納まっているエネを呼び出す。

 

「城砦の水精を全員集めてくれ。戦闘になる可能性が高い。」

 

この後、キスニルさんはアヴァロ達の……正確にはフィアの目的を聞き出すだろう。この国に浸透している宗教、フィユシア教の人達からすれば到底聞き入れられない目的である。更に自分たちが信仰している神を差し置いて神の名を名乗り、その聖地である神響の霞廊へ行きたいなどと聞き入れる訳がない。キスニルさんはともかく、他の人からは絶対反感を買う。それに騎士の人達に下されている使命はこの城砦の鹵獲辺りだろう。行方不明のアヴァロの救助にこんな人は要らない。明らかに戦闘前提の人数で来ている。

 

「つまり戦うのは避けられないかぁ……はぁ。」

 

二人が歩むのをあきらめるとは思えない。特にフィアは必ず行かないといけないと言う強い意志が見える。アヴァロもそれに賛同するだろう。結局交渉は決裂以外ありえないわけだ。

 

少しの希望を抱いて、袋から紙を出して確認する。あれから人助け以外に特に示しが無かった。もしかすると何か書かれているのかもしれない。

 

 

No8.人助けをしよう!

 

new.城砦を守ろう!

 

 

「なんか増えてるんですけどぉ……。」

 

しかも最悪な言葉である。いや、詳細を確認してみたら違うのかもしれない……!

 

『インフルース王国の騎士から城砦を死守しよう!女騎士キスニルを撃破するか、暫くの間耐えよう!』

 

……これはもう100%戦うじゃん。見なければよかったわ。

 

「……はぁーー。あの人良い人なのに戦わないといけないのか……。」

 

向こうも国からの使命で動いているのだ。こっちが抵抗するなら捕える他ないよな。うん、覚悟を決めよう。あの二人に協力した時にこうなる事は容易に想像出来ていた。それくらいグアラクーナ城砦というのは危険な代物って事だ。分かっていたさ。ただ最初に対峙するのがあんなに良い人だと気が滅入るってだけで。

 

「治癒の水は充分にある、騎士たちもどれくらいの強さか分からないが流石にエネ達を即座に倒せる程の強さは無いと信じたい。」

 

役割としてはアヴァロ達の邪魔が入らない様に露払いが出来れば上々。可能なら回復とか敵の邪魔をしておく位か?

 

脳内でまとめていると、家の中からアヴァロ達が出て来た。様子を見るにお互いは歩み寄れなかったみたいだな。縁結びの神様が泣くぜ。

 

「どうやら決裂したみたいだな。」

 

「ああ、フィアの為にもどうしても譲れなかった。すまん。」

 

「気にすんな。どうせいつかはこうなる事は分かっていただろ。」

 

「……そうだったな。」

 

「巻き込んじゃってごめんね?」

 

「縁の神の庇護下に居るんだ。恩恵だけ預かっていたらバチが当たる、この位は手伝うよ。」

 

二人にそう宣言し、キスニルさんの方を向く。

 

「わざわざ話し合いの場を作って貰ったのにも関わらずこのような結果になってしまい、すまない。」

 

「みんな謝ってばかりだなぁ……。いえ、そちらにもしなければならない使命があって、けれどそれは二人には譲れない部分だった。それだけの事です。」

 

「……理解していただき感謝する。」

 

「あ、でも戦うなら下でしてもらっても?城砦で戦うのはそちらとしても良くはないでしょう?こちらとしても折角作った家や畑などに被害が出るのは遠慮したい。」

 

「そうだな、そうしよう。」

 

「それじゃあ二人も行こう。」

 

既に臨戦態勢の人達を連れて城砦から降りる。待っていた人達は結果がどうなったかと騒ぐが、キスニルさん達の態度を見て察する。

 

「アヴァロ、最後にもう一度だけ言うが……城砦を受け渡す意志は無いだろうか?」

 

「残念だが、気持ちは変わらない。それはフィアも同じだ。」

 

「……そうか。」

 

本当に残念そうにするキスニルさんを見て、こちらを傷つけたくなかったという優しさが見える。

 

「全体、戦闘態勢!各々の武器を掲げよ!!」

 

この場の全員に聞こえる声を張り上げ、それに答えるように騎士たちが声を上げて武器を構える。向こうからかなりの覚悟が見える。それもそのはず、もしかしたら自分たちが相手にするのは後ろにそびえ立つ巨大な城砦の可能性だってあるのだ。

 

「可能な限り怪我をさせない様に留意する。サイトウ殿は下がっていてくれ。ここだと戦闘に巻き込まれる危険があるからな。」

 

「ん?俺か?……ああ、なるほどね、あははは。ほんとキスニルさんは優しいな。」

 

ここで一番戦闘出来ない俺を捕えればアヴァロ達には痛手なのに、それをわざわざ口に出して下がってくれと。

 

「気を遣って貰ってありがたいが、その必要は無いぞ?ここに居るって事は俺も二人と一緒に抵抗するって認識してもらって構わない。」

 

「しかし……見た所君は戦えないだろ?危険すぎるのではないのか?」

 

「まぁ、確かに俺自身は戦えないが……、ーーーエネ、出番だ。」

 

呼び声に反応して俺の背後から水精霊達が出てくる。

 

「精霊……!?それも水精を……?」

 

「こいつらが俺の代わりって感じだな。結局俺自身が弱いのは変わりないけど。」

 

隣のエネを撫でると、お返しとばかりにこちらに抱き着いてくる。

 

「精霊を使役しているとは……。そうか、ならば遠慮は要らなさそうだな。」

 

一呼吸を置いて、キスニルさんが叫ぶ。

 

「インフルース王国竜鰐騎士団所属キスニル・カグリ、城砦確保の任の為ーーー推して参る!!」

 

こうして女神フィアとインフルース王国の城砦防衛線が始まった。

 

「アヴァロ、あちらの目的は城砦の鹵獲だ、城砦を守る事を主軸にして行こう。」

 

「ああ、耐えていれば向こうが諦める可能性がある。」

 

「それか、向こうに居る軍の隊長を撃破するかどうかだな。」

 

「はは、それもありだな。」

 

「その際は周囲の露払いは此方に任せてくれ。邪魔はさせないくらいには働くさ。」

 

「その分サイトウに危険が迫ることになるが……?」

 

「寧ろ好都合だな、この中で一番弱いのは俺って共通の認識だからな。こぞって寄って来るぞ?」

 

挑発するように周囲を見る。俺を捕えるのが手っ取り早いと分かっているのか武器をこちらに向ける。

 

「……良いのか?」

 

「任せろ。二人で大金星取ってこいっ!」

 

送る様にアヴァロの背中を叩く。フィアと一緒に敵中央に向かって行く。

 

「さぁ!騎士の皆さんは理解出来ていると思うが、俺が一番この中でゴミレベルだ。自分で言うのはどうかと思うがそこら辺の村人と大差は無いと言えるだろう。」

 

「ーーーただ。俺を捕まえるなら、こいつらを突破してもらおうか?」

 

横に手を伸ばすと、エネが俺の体を纏う様に広がっていく。

 

周囲の騎士のヘイトをこっちへ向ける。アヴァロを倒すより俺を捕まえる方が楽だと。

 

まずは小手調べと騎士が二人こちらにじりじりと近づいてくる。俺の前後を位置取りした瞬間同時に襲い掛かって来た。

 

「エネっ!」

 

俺に纏わりついて来たエネから水の触手が伸び剣を弾く、反撃に水弾を騎士に打ち出す。

 

「っぐ!!?」

 

直撃を喰らった騎士たちは後ろに吹き飛ぶ。……生きているよな?

 

「次は無力化の為に剣を没収しておこうか。」

 

エネの頭を撫でながら袋から瓶を出して水をばらまく。

 

「さて、皆も存分に暴れてくれ。敵味方関わらずに命大事にでな?」

 

水精達が沈めた騎士からエネが武器を奪っていく。

 

「……ぅぐっ……!」

 

肩を抑えながら苦しんでいる一人に袋から治癒の水を取り出し渡す。

 

「これを飲むと良い、多少の怪我なら治せる。」

 

敵から回復を渡され困惑している騎士を置いて、次へ行く。

 

「一体……何の真似だ……?」

 

「アヴァロたちの目的は貴方たちを殺すことではない。貴方たちはあくまで国からの命令で動いている。仕方なく戦っているが俺も人を極力殺したくはない、それだけ。」

 

拒む騎士に無理やり押し付ける。次。

 

「よくも仲間たちを……!」

 

怒りに任せて襲い掛かって来る騎士にエネが水弾を打ち込み武器を奪う。ついでに治癒の水を渡していく。

 

「来るなぁ!化け物がっ!」

 

騎士たちを次々と沈めていくエネに恐怖しているからか後ろに下がって行く。

 

「武器を捨ててくれるなら追撃はしない。後ろで倒れている仲間の介抱をしてくれないか?」

 

戦意が失っている騎士に治癒の水を幾つか渡す。これ位あれば問題無いだろう。

 

周囲を見ると、水精達があらかた騎士たちを無力化してくれていた。……これは水精達が強すぎている感じだな。

 

「ここは他に任せてアヴァロたちの援護に行こうか?」

 

エネに伝えるとアヴァロ達の方を指さして向かう。キスニルさんと数人がまだ残っているが、周囲に倒された騎士たちが転がっている。どうやら全員意識があり重症には見えない。

 

「アヴァロっ!怪我人は任せてくれ!」

 

ちらっとこちらを見たアヴァロにそう返す。死なせない様に手加減してくれていたみたいだ。

 

戦闘の邪魔にならない様に倒れている騎士に治癒の水を飲ませていく。ついでに武器も奪うのを忘れない。戦場をぐるぐるしていると、また一人と脱落者が出てくる。

 

「治癒の水は無限じゃないんだけどなぁ……。」

 

それにこのために作ったわけではない。俺の為なのに……!

 

「こうやって敵の戦意を削いで撤退させる作戦ならありか……?」

 

敵だと思っている相手に治療されるのだ。俺なら困惑して剣先が鈍る。それに死なせるより負傷者を出した方が相手側の負担がデカいのは昔からよく言われている。よし、これで行こう。

 

「キスニルさーん。諦めるなら今の内ですよー?こっちの治癒の水も無限じゃないですからー、無くなってしまったら怪我人の治療が出来なくなりますよ!」

 

足元の騎士へ渡しながら手を大きく振る。一度こちらを見た後にアヴァロたちを見つめ再度こちらを見る。ふっ、っと少し笑顔を見せてから隣の騎士と話し始めた。

 

「アヴァロ、フィアさん、怪我は無いか?」

 

話している内に2人へ駆け寄る。

 

「ああ、大きな怪我は無い。大抵はフィアが治してくるからな。」

 

「えっへん、私に任せてくだせぇ、アヴァロを沢山癒してあげるよ。サイトウさんの方も大丈夫そうだね。」

 

「そっちは現在進行形で水精が暴れているけどな……。」

 

後ろを見ると、水精達が騎士を追い回していた。いじめかよ。

 

「エネ、他の奴らに必要以上に追い回さない様に注意してきてくれ。」

 

俺に大きく手を上げ後ろに向かって行く。

 

「一応騎士たちは無力化して回復させていたけど問題無かったで良いんだよな?」

 

「ああ、寧ろよく出来たな。結構な数いたと思うんだが……?」

 

「そこは皆が頑張ってくれたおかげだな。俺は薬を渡して回っていただけだし。」

 

「エネちゃん達すごかったねー!チラッと見えたけど取っては投げ、取っては投げって。」

 

騎士たち側からしたら堪ったもんじゃないだろうな。

 

話し合っているキスニルさんを見ると、既に戦闘態勢を解き、纏う空気も穏やかになっていた。

 

「三人とも、これ以上の戦闘は無意味と判断した。両方とも武器を下げないか?」

 

「作戦会議は終わったかな?」

 

少し揶揄う様にアヴァロが言う。

 

「ああ、手間を取らせてすまなかった。」

 

周囲の騎士たちも剣を下ろしこれ以上の戦闘はしない意思を見せて来た。

 





無事乗り切る事が出来ました。

次辺りで一章は終わりになるかも……?

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