この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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第一章完結です。




第十六話

 

「もう終わりってことなら……エネッ!!終わりにしよう!みんなこっちに戻って来てくれっ。」

 

これ以上は不毛だと決め水精達を呼び戻す。それと……。

 

「キスニルさん。はい、これ。」

 

向こうに袋から出した瓶を投げ渡す。

 

「っと、これは……?」

 

「周りの騎士たちと同じ奴。怪我とかしていたら是非使ってくれ。あ、隣の人も如何?」

 

瓶を振りながら見せつける。

 

「なるほど、先ほどの事はこれを……。感謝する。」

 

「感謝されるほどでも無い、勝手に俺が好き放題しただけだから。苦労しているキスニルさんに少しでも恩返しをしただけだよ。」

 

「恩返し……?すまないが私は何かした覚えは無いのだが?」

 

「またまた、アヴァロ達に極力被害が出ない様に譲歩していたでしょ?優しすぎると思うんだけどなぁ……。それに被害を出したくないのはこっちも同じだったってこと。」

 

「だからと言って敵にここまでするものなのか……?」

 

「死人より怪我人を残した方が敵の戦力は削れるし、敵から治療なんてされたら剣先鈍るでしょ?敵対心も薄れるし。」

 

どや顔で言ってやると、アヴァロとフィアがこちらをニヤニヤしながら見ている。

 

「……何だよ?」

 

「いや、別に何でもないよ。」

 

「怪我人を放って置けなかったんだよねっ!クミル村の時と同じだね!アヴァロから聞いたよ?」

 

「余計な話をフィアさんにしたみたいだな……?」

 

「美談だから良いじゃないか。」

 

ふざけんな。あれは他者から見ればそうかもしれないが、俺からすれば価値も分からなかった間抜け話なんだよ。

 

「フッ、そう言う事にしておこう。」

 

キスニルさんも『なに、分かっている』みたいな顔で微笑まないでくれますか?

 

「………エネ達の方に行ってくる。後は宜しく。」

 

このまま居ても不利だと感じ、その場から抜け出す。エネ達を迎えると、騎士から武器を奪ったのか剣やら鎧の一部を戦利品として俺に持ってくる。

 

「今回は素材回収は無しで。ごめんだけど元の場所に戻してきてくれ。」

 

戻す様に伝えると、それぞれが騎士たちの所に返して行く。このまま持って帰ったら間違いなく別の罪に問われるからな。

 

戻って来た皆に水を与えていると、騎士たちに動きが見える。整列を始めている様に見えるので撤退準備をしているのだろう。

 

「話し合いは無事終わった?」

 

エネ達を連れてアヴァロ達の方へ着く。

 

「ああ、向こうは今回は撤退を選んでくれたみたいだ。」

 

「二人の意志は聞けたからな。悪意も一切感じられない。城砦を動かすことで他者を傷つけないと誓って貰ったのだ。現時点では十分だ。」

 

「そうか。なら良かった。」

 

「それとサイトウ殿、少し良いか?」

 

俺に何か用があるみたいなので近寄る。

 

「アヴァロはフィアを神と信じているみたいだが、それはサイトウ殿も同じか?」

 

「……そうだな。二人の言動抜きにしても俺もフィアさんが女神と言われても信じれるかな?」

 

「それは、どういった理由があるのだ?」

 

「だって、あの美しい美貌だぞ?女神と呼ぶにふさわしいじゃないか?」

 

面白がるように笑って見せる。

 

「………はは、君と言う奴は。随分な観察力を持っている様だな。」

 

こちらの回答に呆れるような表情をしている。

 

「男らしい根拠、とだけ言っておこう。それとこちらは返しておくよ。」

 

先程渡した瓶を返される。中身は入ったままである。

 

「良いのか?別にお金とか請求しないけど……?」

 

「私は特に怪我を負って無いからな。必要なかっただけさ。」

 

「マジかよ、流石三等客将様で……。」

 

「君の方もすごかったではないか、水精をあそこまで従えているとは……。」

 

「別に従えている………訳では無いんだけどなぁ……。」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、言ってしまえば餌をやったら懐かれてそのまま付いて来てしまった、って感じだ。」

 

「ペットじゃあるまい、君に付いて来たのにも何かあったはずだ。」

 

「何か……?」

 

「ああ、例えばだが……フィアが女神と言うならその加護が……とか。」

 

「ああ、なるほど。」

 

フィアではないが、もしかしたらあの女神の加護とかなんか付着しててもおかしくない。与えた水に何かあったのかも。

 

「いや、フィアが女神と決まったわけでは無いから確実では無いが……。」

 

「ああいや、そっちの女神では……あ。」

 

「サイトウ殿?」

 

「いや、何でもない。それより俺と長話している時間は無いんじゃないかな?」

 

「……そうだったな。」

 

会話を切り上げ、周囲に向けて声を張り上げた。

 

「撤退準備!まずは報告を兼ねてリックベルへ向かう!」

 

「はっ!!」

 

「また会おう三人とも。息災であることを願う。」

 

そう俺たちに告げてキスニルさんは騎士団を率いて去って行った。

 

「……何とか終わったな。」

 

「うん、いきなりでびっくりしたね~。」

 

「あーー、終わったぁ。生き延びたっ!」

 

無事終わり、やけくそ気味にその場に大の字に寝転ぶ。

 

「二人ともお疲れ、これからもこういうことが起きて行く苦労の連続だと思う。」

 

「大丈夫っ、やる事は変わらないよ。難しいけど、とっても簡単!」

 

その簡単な方法が一番難しいという茨道。まぁ、やるしかないけどな。

 

寝転ぶ俺にエネが上から被さってくる。

 

「……まてまて若干俺の服濡れていないかこれ?やっぱりっ!離れてくれ、土と水とか最悪の組み合わせだ!」

 

「あはは、エネちゃんも無事終わって嬉しいんだよー。」

 

「分かった、後で沢山構うからっ!今は離れてくれっ。」

 

こうして何とも締まらない終わり方だが、無事に城砦を守り切る事が出来た。

 

 

 

ーーーーーー

 

No9.城砦を守ろう! ★COMPLETE★

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?んん?」

 

目を覚ますと、例の白い部屋に居た。

 

「いらっしゃい、起きた?」

 

「……ああ、あんたは。」

 

以前夢で会った女神が居た。

 

「以前ここに呼び出し女神よ。宣言通り気が向いたから呼んであげたわよ?」

 

「そういえばそう言ってたな。」

 

前回の最後に確かそう言っていた。つまり俺がこの人にとって面白いと思える何かがあったんだろう。

 

「どうやらお眼鏡にかなったみたいだな。」

 

「ええ、そうね。沢山楽しませてもらったわ。復習も兼ねてダイジェストで見て行きましょ。」

 

楽しそうに手を振ると、モニターみたいのが宙に出てくる。

 

「まずは、イケおじとのシーンね。ここで私が渡した薬を売るなんて思わなかったわ。」

 

俺がディートヘルムさんに売り渡したやつの事だろ。

 

「しかも残した一つは自分の為じゃなくて顔も知らない女の子に使っちゃうんだもの。何の為にあげたか分からなくなるわ。」

 

俺に文句を口では言っているが、表情はご満悦にしか見えない。

 

「次はこれね。あの二人と水源地調査に行ったとき。」

 

画面の映像が切り替わる。

 

「彼らが戦っている最中一人で採取に勤しんでいるかと思えば水精を助けて懐かれちゃうなんてすごく面白かったわ。その後にお仲間に襲い掛かるシーンは特に。」

 

本当に楽しそうに語るなぁ……。

 

「あれは俺も驚いたよ、まさか同胞に背後から襲い掛かる奴だとは思わなかったよ。」

 

「そうね、二度目なんて容赦なかったわね。」

 

ああ、進化した時か。他にも城砦内のプテテットも食ってたな。

 

「それからお仲間も従えて、今回の防衛にもかなり活躍してくれたし……悪くない出会いじゃないかしら?」

 

「それはそうだな。俺は何も出来ないから凄く助かってるよ」

 

「そうねぇ、貴方は力も無ければ魔力量も全然だもの。」

 

わかっていたがやっぱりそうだったのか。

 

「あ、魔力量と言えば……これは傑作だったわっ。」

 

画面が切り替わると、井戸を造っている映像が流れる。……ああ、これか。

 

「貴方がドリルで穴を開けようと魔力を流したシーンよ。リアルタイムで見た時は暫く笑いが止まらなかったのよ。」

 

口を押えながら笑うのを我慢している。

 

「調子に乗ってガンガン送った挙句に気絶……ふふ。」

 

「仕方ないだろ?初めてで自分の量とか分かってなかったし。」

 

「ええ、そうね。だからこそ面白いのを見せて貰ったわ。」

 

その後も一通り見て終わり、満足した女神がこちらを向く。

 

「さてと、今回も楽しませて貰った褒美をあげなきゃいけないわね。何か希望とかあったりする?」

 

「希望か……、今作っている治癒の水なんだが、もう少し上のランクは作れないか?」

 

「いつも作っている奴ね。残念だけど、もう暫くはこのままね。先に進めばより良い素材が手に入るからそれに期待してて頂戴。」

 

どうやら、現時点では無理らしい。それなら仕方がない。

 

「あー、それなら俺の魔力とかどうにかならないか?底上げとか。」

 

「貴方の力が上がるかはあなたの努力次第ね。精霊に戦わせている内は成長はしないわ。」

 

マジかよ。あれか経験値は全部エネに吸われているからか?

 

「……でも、確かにそうね。貴方の魔力はどうにもならないけど、誤魔化すくらいなら出来るわ。」

 

「……と言うと?」

 

「これをあげるわ。」

 

指を鳴らすと前回の様に光る何かが降ってくる。

 

「……これは、指輪か?」

 

今回はシンプルな見た目の指輪が出てくる。

 

「説明すると、その指輪は中に余った魔力を貯めることが出来るのよ。」

 

「魔力を……?」

 

「そうね、それならあなたでもいざという時多少の魔法は打てるようになるはずよ?普段から貯めておく必要があるけれどね。」

 

なるほど、塵も積もればなんとやらって奴か。

 

「ついでにサービスで使いたい属性も与えちゃうけど、なにが良いかしら。」

 

「確か六属性だったか……?」

 

「あ、でも光と闇の方は省くから実質四つね。」

 

四つとなれば……地面、水、火、電気だったな。これらから選ぶとするなら……。

 

「……電気で。」

 

「その心は……?」

 

「カッコいい……?」

 

電気だぞ?男の子の憧れじゃん?

 

「あ、いや、他にも理由はある!一緒に居るエネ達とも相性がいいからな。濡れた相手に電撃とか犯罪コンボじゃん?」

 

「別に言い訳みたいに言わなくても大丈夫わよ?何選んでも私からは文句は無いし。」

 

それなら良いんだが。

 

「それじゃあ、早速インストールするわね。」

 

そう言って以前みたいに俺の頭に手を広げる。あ、これは……!?

 

逃げる暇もなく脳内に直接何かが送られてくる。

 

「あがあがががっ!!」

 

焼き切れるような痛みから解放されその場に崩れ落ちる。

 

「っぁかは!……やるなら、一言言って欲しかったんだが……?」

 

「嫌よ、言ったら抵抗するでしょう?」

 

そりゃなっ!

 

「今ので貴方に電撃の属性を扱う才能を入れたわ。精々頑張ってね。」

 

使えるかどうかは俺の頑張り次第ってことか……?

 

「それじゃあ、今回はここまでにしましょう。また興が乗ったら呼んであげるわ。」

 

手をひらひらさせながらこちらに微笑む。

 

「まだ頭痛から立ち直れていないんだが……。」

 

「起きたら平気になってるわよ。……次は天枯断層ね。獣人よ?沢山モフモフしてくるといいわ。そこで良い出会いが待っている筈よ。」

 

そう言ってこちらに背を向けて消えていった。

 

この部屋も終わりかと考えていると、白い世界が崩れ始めて行った。

 

 

 






無事女神の余興をクリアして褒美を頂きましたとさ。

次回から猫獣人編ですね。


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