この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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逃走中。逃げ切れば賞金ゼロ。捕まればライフゼロです。


第二話

 

「はっ!はぁはぁ!」

 

来た道を引き返す様に全力で走る。後ろをチラ見すると、こちらに追いつこうと岩場を軽々と飛び越えてくる魔物が見える。小学生程の背丈だが悪路を慣れた様子で距離を詰めてくる。

 

「くそっ……!!」

 

このままでは追いつかれる。こっちは慣れない道を転ばない様に気を遣いながら走っている為どうしても速度に差が出てしまう。

 

一か八かで反撃に出るか……それとも相手が諦めるまで……は無さそうだな。やるしかないのか?

 

息も切れて来ており長くは持ちそうにもない。音も後ろまで近づいてきている。

 

覚悟を決め、タイミングを合わせて後ろを振り返る。こちらが立ち止まったのを見たからか、勢いを付けて飛び掛かってくる。

 

「ッ!??」

 

飛び掛かりに驚き、反射的に片手で顔を守る体制をとる。そのままぶつかるように体を当て、その勢いに負けて後ろに倒れ込む。

 

「くっ!」

 

踏ん張りが効かず地面に尻もちをする形で倒れ込んでしまいぶつけた部分から背中までに振動が行き渡る。、目の前の魔物は馬乗りの様に体に乗っており逃げ出すことも出来ない。

 

「どけっ……よ!!」

 

顔を守っていたのとは逆で魔物の顔面を全力で殴りつける。肉を殴る感触と、殴り方が悪いせいか拳と手首に痛みが走り、硬直してしまう。

 

この瞬間を見逃さなかったようで、口を開き噛みつこうとしてくる。咄嗟に腕でガードをした為、腕に嚙みつかれた。

 

「ぅぁがぁあ!」

 

腕が握りつぶされるような痛みと腕に裂けるような痛みが襲ってくる。痛みから逃げるように地面に背を付けるが放す気配はなく腕を食い千切ろうとする勢いで噛みついてくる。

 

「っがぁがが!!」

 

痛みを和らげようと本能的に声を荒げる。逃げようともがくが変わらず腕を噛んでいる。

 

どうにか出来ないかと空いている手でばたつかせていると手の平サイズの石に触れる。反射的に石を手で掴み、加減せず目の前の魔物の側頭部目掛けて振り切る。

 

「ギャッ!!?」

 

いきなり側面からの衝撃に驚く様に腕から口を放し横に転がる。またマウントがとられないようにと急いで立ち上がり、持っている石を魔物目掛けて投げつける。

 

飛んできた石を咄嗟に横に避けたのを見て魔物の顔面目掛けてボールを蹴る勢いで蹴り上げる。

 

「ギェッ!??」

 

顔面に全力の蹴りを食らい後ろに吹き飛ぶ。飛んだ先にある岩場に後頭部をぶつけ、脳にダメージが入ったからか痙攣をし始める。

 

反撃が出来ないと踏み、目に付く石を片っ端らから投げつける。

 

「しねっ!!くたばれこのくそ野郎!!」

 

大量に石を投げつけられ体中に傷や痣が見え血が出ている……が、まだ生きている。

 

魔物を目掛けて飛び、全体重をかけ腹にスタンプを決める。流れを止めない様に右足で顔面を踏みつけ続ける。

 

体に力が入って無い事を確認してから離れ、視界から魔物を外さない様に下がってから近くにある一番大きな岩を持ち上げる。

 

「……っつ!!これで……!トドメだっ!!!」

 

腕に鈍い痛みが来るのを我慢し、頭上まで持ち上げた岩を全力で魔物の顔面に叩きつける。

 

ぐちゃっ!っと音が鳴り、周囲に液体が飛び散る。

 

「はぁ、はぁ……。流石に……これで、死んだろ?」

 

顔面を潰した事で殺したと判断し、その場に座り込む。

 

「はは……ははは……っ。ざまぁ見やがれ。」

 

何とか生き延びた。そのことを実感すると自然と笑いが込み上げる。

 

「はははっ!……っ!そうだ、怪我した腕をどうにかしないと……。」

 

興奮状態が切れたからか身体中に痛みと疲れが押し寄せてくる。

 

「確か……。袋の中に回復できそうな液体が……。」

 

緑色の小瓶があったはず。

 

腰に掛けてある袋を開けようとすると、限界だったのか視界が急に暗くなる。

 

「かい……ふく……。」

 

回復しないとこのままでは腕の怪我が治せない。そう頭でわかっているが体に力が入らず地面に倒れ込む。

 

体に痛みが走ったと感じた時には、意識を手放していた。

 

 

 

 

 

 

「……っ、んん。」

 

パチパチとなる音と煙の臭いを鼻で感じ取り、目を開ける。空は暗くなり夜になってしまっていた。

 

「おや?目を覚まされた様ですね。」

 

声が聞こえる方へ顔を向ける。近くにある焚火の光が眩しいためその姿が良く見えない。

 

「一応傷は癒しておきましたが、まだどこか痛む箇所などはありますか?」

 

体を起こし、声の主へ向けて返事をする。

 

「あ……はい。今の所は感じないです。貴方が治して下さったのですか?」

 

声からして女性と思われる。徐々に視界がクリアになり全貌が見えてくる。

 

「そうですね、倒れている貴方を上から見つけたので。」

 

その女性は騎士なのか、赤い鎧を体の所々に纏っており白と金色のローブが先に付いている。それだけで神聖な装備に見えるが、問題はそこでは無かった。一番そう感じた部分がある。

 

「………てん……し?」

 

そう。人とは違い、背中の部分から羽が生えていた。それも真っ白な。見た人間100人が全員天使と連想してもおかしくない。更に頭の上には輪っかが浮かんでいる。

 

「………?ああ、もしかして、見るのは初めてですか?」

 

こちらに背中の羽を少しバタつかせながら向けてくる。

 

「そう……ですね。初めて見ました。」

 

やっぱりここは異世界で当たっているのだろう。天使なんて向こうじゃ見た事無いし。

 

「あ、お礼が……!助けていただきありがとうございますっ。」

 

「いえ、当然のことをしただけですので。それより、どうしてあのような道をお一人で歩いていたのですか?」

 

「あー……えっと、街を目指していまして……。」

 

「街を……?ここからだとサウシャかリックベルのどちらかでしょうか。」

 

「あ、リックベルの街です。そこに向かう途中だったんです。」

 

待て、知らない地名が出て来たぞ。なんだって?サウシャ?多分街の名前だと思われるが……。

 

「南の方でしたか。北なら都合が良かったのですが……。」

 

どうやら先ほどの街は北にあるらしい。そして適当に向かっていた方向は目的地へ向かう道で合っていたと分かった。

 

「あの……、自分、気絶した後ってどうなったんですか?」

 

「私が見つけた後ですか?取り敢えず安全な地点まで運んでから魔物の方はこちらで処理しておきました。ついでに、汚れてしまっていた服なども綺麗にしておきましたのでご安心を。」

 

………え?綺麗にしたって……ってほんとだ。血とか変な液体とか無くなってるな。しかも腕の傷まで……すげー。

 

「すみません、なんか後処理をさせてしまって……。」

 

偶々通りかかった人に迷惑を……!申し訳ない。

 

「先ほども言いましたがお気になさらないで下さい。魔物に襲われてたのですから、仕方ないです。ところで、私の質問に答えて頂いても?」

 

「……?あ、すみません。なんで一人で歩いていたか?でしたね。ええっと、どういえば良いのか分からないのですが……、突然放逐された……みたいな感じですかね?」

 

流石に神を名乗る謎の人物がーとか言ったら頭にまだ怪我の後遺症が残ってるとか言われかねないし……いやでも、本物の天使なら神様とかと繋がりあってもおかしくないのでは?

 

「ほうちく……ですか。その身一つで。」

 

そのせいで魔物に襲われても碌に対抗できんかったしな。袋の中身、チョイス間違って無いか?

 

「せめて自衛出来る何かがあればよかったんですけどね……ははは。」

 

「そうですか……。」

 

同情のトーンで返事が返ってくる。

 

「因みになんですが、ここからリックベルまではどの程度歩けば着くんでしょうか?」

 

「リックベルですか……徒歩となると、そうですね……二時間ほど歩けば見えてくると思います。」

 

「八キロほど歩くのかぁ……でも慎重に行くって考えると三時間くらいはかかるって考えておこう。すみませんっ、ありがとうございます。」

 

「またこの岩場の道を抜けるのですか?」

 

「ですね、他に向かう先が無いので。」

 

東西南北も分からないし、地形も地理も知らないので!

 

「では、今日の所はもうお休みになられた方がよろしいでしょう。」

 

さっさと寝ろと催促される。確かに痛みは引いてるが、体のだるさと、精神的な疲れは全然ある。

 

「火の番や見張りは私がしていますので、ご心配なく。」

 

きっぱりと言われてしまい、取り敢えず体を横にする。まぁ、確かに経験も知識もない俺では何の役にも立てないし……。

 

ちらっと、女性の方を見ると、近くの岩に背を預けて目を瞑っている。凛々しいと言うか……一つの芸術品に見えてくる。

 

「どうかされましたか?もしかして眠れないとか……?」

 

顔を上げ、こちらを見てくる。火の明かりでしか見えないが超絶綺麗な人である。

 

「あ、いえ、大丈夫です。」

 

見ていたい気持ちもあったが、これ以上心配をかけるのは申し訳ないと思い、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようございます。どうやらぐっすりと寝てしまっていたみたいです。寝始めは地面で身体痛めそうとか考えていたが、気が付けば朝になっていた。疲れていたんだろうな……多分。

 

体を起こすと、席を外していたのか、この場に居たのは俺一人であった。

 

「どこか行っているのか……?」

 

考えても仕方ないので、取りあえず袋から水を出して飲む。

 

「よくよく考えれば、この瓶もおかしいよな?」

 

昨日から飲んでいるが、一向に無くなる気配がない。明らかに容量以上に飲んでいる筈……。

 

「これも旅の便利グッズの一つなんだろうか。」

 

どういう原理でそうなっているか分からない為、全部魔法でそうなっていると思考を放棄した。一々水源から調達しなくて済むので大変助かる。それでいいや。

 

袋に入っている干し肉もどきを嚙みながら、戻ってくるのを待つ。

 

暫く待っていると、川沿いの方向から戻って来た。

 

「おはようございます、起きられたのですね。」

 

「お、おはようございます……。」

 

改めて見ても綺麗な人だと思う。なんか変に緊張する。

 

「すみません、少し汗を流したかったので水浴びに行ってました。」

 

「え、ああ、いえいえいえ、全然大丈夫ですよ。」

 

なるほど、だから川沿いから……ん?水浴び?つまり……そう言う事か?まじか?これ、さっき水を飲むときに川に調達しに行ってたら……?

 

ありえたかもしれない未来を想像し、後悔する。水の瓶めぇ……っ!

 

その後、支度を済ませ出発する事となる。

 

「すみません、本当なら街まで同行して送り届けたいのですが……急ぎの任務があり、そちらを優先します。」

 

「いえっ!全然大丈夫です!むしろ介抱の為に半日以上もロスを出させてしまったので……こちらこそすみません。」

 

「その代わりと言っては何ですが……こちらを。」

 

俺に向けて何かを差し出してくる。手を出してそれを受け取る。

 

「これは……?」

 

見た感じ指輪に見えるが……プロポーズか何かなんだろうか?

 

「こちらは魔法の攻撃から多少なりと守ってくれるものです。今はこの位しか出来ることがありませんが……。」

 

「良いのですか?こんなのまで頂いて……?」

 

「はい、問題ありません。同行できなかった代わりとしてですので。」

 

「ありがとうございます……!ありがたく使わせていただきます。」

 

「街まで無事に辿り着けることを祈っています。それでは。」

 

「そちらもお気をつけてーー。」

 

手を振りながら飛んでいく彼女を見送る。翼を上下に動かし上昇していく。すげぇ……ほんとに飛んでるわ……。

 

未知の体験を終え、手元の指輪を見る。恐らくどこかに填めないと意味が無いと考え、取りあえず人差し指に装着する。流石に薬指はないからなぁ……。

 

「魔法からの攻撃を……だったか。」

 

可能なら攻撃など当たりたくも無いので、効力が発揮されないことを祈りながら再度目的地へ足を進める。

 

「そういえば、名前を聞いてなかったな。」

 

恩人の名前を聞かずに別れるとは……、何たる失態。

 

でも、あのような目立つ外見なのだから、どこかで会えた時にお礼をしよう。

 

「俺が無事に辿り着ければの話だけどな。」

 

その心配もなく、今度は何にもエンカウントせずに目的の街へ辿り着くことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、もうこの辺りに魔物の気配は無さそうですね……。」

 

先程、介抱した男性と別れた後一応周囲を索敵したが、気配は引っ掛からずで終わったので帰還する為に帰路に着く。

 

「無事に辿り着けると良いのですが。」

 

助けた時を思い出す。

 

任務の帰りに、血の匂いがしたと思い下を見ていると、岩場の間に倒れている人を見つけ、介抱した。

 

腕を負傷している彼の横には、頭部を潰された小鬼の死体があった。状況から見て倒れている彼が倒したのだろう。

 

「取りあえず、怪我を直しましょうか。」

 

安否を確認し、気絶しているだけと分かり一安心する。魔法を掛けながら観察をするが、こんな場所を何も装備せずに丸腰で歩いていた様に思える。しかも一人でだ。

 

見た所、戦いに慣れている様にも見えない。どこかの村人かと考えたが、それにしては手や体が綺麗すぎる。村の作業をしているのなら手を見ればわかる。しかし彼にはその特徴が見当たらない。傷一つない。体も普通だ。

 

「どこかの街の役職に就いている……とか?」

 

それを考慮してもおかしく思える。まるで、今まで外に出た事がなく、大事に育てられてきたかのような……。

 

「そうだとすると、一人でこんな場所に居るのがおかしいですね。」

 

答えが出ないまま、治療と掃除が終わってしまった。

 

「この人が起きてから、事情は聞きましょうか。」

 

どの様な人物か分からないけど、このまま放置は出来ないと決めて抱きあげる。

 

「本当に軽いのですね……。」

 

このような、戦いも知らなさそうな人がよく魔物に勝てたと思う。運が良かった……では無いのだろう。死体には至る所に傷や痣、腹部には強い衝撃があったのかへこんでいた。それに頭部のトドメとなったであろう一撃は優位に立ったと確信してからの攻撃と思われる。

 

「もしかすると、只々必死なだけだったのかも。」

 

今日は恐らくこの場で夜を明かすことになりそうだと考えながら、移動を開始した。





名も明かされなかった人は一体……!?

どこぞの神殿から派遣された第六位の何アナさんだろうか。

他人とのコミュニケーションがうまく取れずどうすれば……!?とか心の中で割と考えていそうですね。


次回はリックベルの街での出会いが……多分あるよ。
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