お仕事お休みの回です。
「今日は、サイトウさんにはお休みしていただきます。これは女神からの命令です。」
今日の予定を考えていると、唐突にそう告げられた。
「……さてと、まずは探索からで。」
「ちょいちょいちょい、なんで今無視したの?一度目が合ったよね!?」
軽くスルーしようとしたが阻止される。
「もう一度言います。これは女神からのご命令です。」
ビシッと俺を指差して宣言する。
「えっと、一体どういう事なんだ……?」
「えっとね、アヴァロと話したの。最近サイトウさんが頑張り過ぎているから一日だけでも休ませないかって。」
「休みを……?」
「うん。だから今日はお仕事しないでのんびりしてていいよ?」
「いや、流石にそれは……。人手が足りてない時に?」
「それは分かってる、けどサイトウさんが無理して身体を壊したらもっと大変になるの。」
「別に無理はしてないんだが。」
「ううん。無理をしてるよ。だからその前に一度休も?今日は好きなことして自由にして良いんだよ?」
まるで人を堕落させる囁きに聞こえる。
「うーん……。二人がそこまで言うなら……。」
「因みにだけどっ、休みなら何するの?」
「そうだな……、まずは治癒の水を貯蓄しておきたいから適当に素材を集めて……。あとは家周辺の整備もしておきたいな。」
「ミケユちゃんっ!!」
「はい!??」
急に自分の名前を叫ばれ、耳と尻尾がピン!っとなる。
「貴方に今日の仕事を与えます。」
「な、何でしょうか……?」
「今日一日、そこのお仕事のことばかりを考えている人が働かないか監視する使命を与えます。」
「ええ……?」
「俺の監視……?」
「そうだよ?だって、目を離すとお仕事するでしょ?それじゃいつもと変わらないよ!だからミケユちゃんにはサイトウさんが働かない様に精一杯ぐーだらをさせる様に!」
「え、えっと、はいっ。分かりました!頑張ります!」
「いやいや頑張っちゃだめだよ?ミケユちゃんから率先してぐーだらして行かないと。」
「わ、わたしから……!?」
「うんうん。あ、あともう一つあるの。」
「何でしょう。」
「そのモフモフを……!わたしに触らせることだぁーー。」
「きゃぁああ!!?」
「それで、サイトウさんは今からどうされるのですか?」
あの後、取りあえず家に戻った。監視としてミケユが同行することになったが、多分一緒に休めということなんだろう。ここまで来たら休みをありがたく謳歌させてもらおう。
「まぁ、日課を済ますか。」
家から出て、エネや水精の世話をする。と言っても軽く戯れたり水を与える程度だが。続けて畑の様子を見に行く。芋類はもうすぐ収穫が可能と村の人から聞いた。予想よりかなり早い気がするのだが……これも女神パワーなんだろうか?他は今の所成長待ちである。
余計な枝や葉を間引き、問題が無い事を確認し一度家へ戻る。
「……何だか、田舎のおじいちゃんみたいな過ごし方ですね。」
「仕方ない、急に休めと言われたからな。何をしようか考えている最中だ。」
……うむ、ミケユも一緒に居る事だし魔法の練習をするのもありだな。それと……。
「そうだ、折角だしミケユの勉強をしようか?」
「え……?良いんですか?」
「実際あまり時間取れなかったしな。」
「でも、お仕事はするなって……。」
「あくまで勉強。お仕事では無い。おっけー?」
「お、おっけい……。」
「ま、なんか言われたら俺が無理やりさせたって言っておくさ。」
「うーん、わかりました。それじゃあ、すみませんがよろしくお願いします。」
「了解。あ、疲れたり飽きたら練習場で魔法ぶっ放そうぜ。気分転換に。」
「良いですねっ、後で行きましょう。」
座学と実技で一石二鳥だな。んじゃ、出来る範囲で教えて行きますか。
「ええーいっ!」
「ええーいっ!!」
「やった、成功しました!」
「おお、おめでとう。」
「何だかコツが掴めたような気がします。こう……思いっきりした方が制御しやすかったんですね!」
俺の隣で嬉しそうに跳ねる少女は、どうやら魔法のコツを掴めたらしい。
「なるほど、思い切ってか……。」
正面の障壁へ向けて手を翳す。
「穿てっ!」
すると、手の平から視認出来る程度の電気が走る……が、直ぐに消える。
「何がいけないんだろうか?」
やはり魔法書か?だがミケユやアヴァロからは聞いたことはないと言われているしあるかどうか不明である。試しにミケユから借りて試してみたが何も起きなかった。
「制御は出来ているんだと思うんだけどな……。」
手の平だけではなく指向性を持たせるところまでは何とかなっている。後は威力である。
再度障壁へと手を向ける。
「……ライトニングッ!!」
しかし変わらず小さな光が走るだけで終わる。
「上手くいかないですね……。」
「だなぁ……。技名でも叫べば出てくれると思ったんだが。」
「さ、さすがにそこまで簡単とは思いませんが……。」
そうか?イメージは固まると思うんだが。
「ま、俺は置いておこう。それよりミケユの方を鍛えよう。」
「何だかコツが掴めて上手く出来る様になったんです。見ててください。」
そう言って障壁へと体を向ける。
「いきますっ。それぇっ!もう一回!ええーいっ!」
「やりましたっ、連続で成功です。」
「このスピードで出来る様になっているのは凄いな。真面目に才能あったのでは……?」
「えへへ、ありがとうございます。」
「因みに気になったんだが。」
「はい?なんでしょう。」
「その雪だるまは戦ったりするのか?」
「一応可能ですよ?見ててください。」
魔法書を開き、一呼吸を入れる。
「行きますっ!」
すると、近くの雪だるまが、障壁目掛けて突進をする。衝突時に激しい音を立てるが障壁は問題は無さそうである。
「こんな感じです。」
なるほど、魔法では無く物理的な攻撃と言うわけか……。魔法じゃないのかよ。
「今日イオルって子を連れてくる日だよな?」
「そうだよー。早くあいたいなぁ、あって二人まとめてモフモフしたい!」
「その前に採用試験しないとな。」
「尻尾と耳をモフれるなら採用ですっ。」
「その内訴えられそうだな……。」
新しい子が来るのを待っていると、外で話し声が聞こえてくる。
「お、来たかな?」
「みたいだね!」
「イオル、どうしたの?もしかして緊張しちゃった?平気だよ。ここの人皆優しい人だから。」
ミケユの声が聞こえたので迎えに席を立つ。
「あ、サイトウさん。おはようございます。イオルを連れて来たので今日はお願いします。」
「ああ、と言ってもミケユの紹介なら問題無いとおも……。」
思うけどな。そう口から出そうしたが驚きの余り口からでなかった。
「……あ。」
向こうも俺と目が合い、驚いた顔をする。
「どうしたんだ?固まって?」
俺が固まっているのを不思議に思ったアヴァロがこちらに来る。
「この子がミケユが言ってた子か?今日はよろし……。」
アヴァロも気が付いたのか俺と同じで驚いた表情で固まる。
なんでこいつがここに………!?イオル……?……イオ?なるほどな、そう言う事か。
自分の中でピースがハマった気がした。あの夜、あの森で聞いた名前と一緒だった。小さな背丈に似合わない大きな肉切り包丁。顔が見えない様に被った外套。
あの日、俺を消そうとしたーーー
運命的な出会いを果たした二人を結ぶ赤い糸(血)