この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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そろそろ二章も終盤……?



第二十二話

 

この日、珍しく雨が続く中いつもなら来てもおかしくないミケユを三人で待っていた。

 

「ミケユちゃん遅いね、今まで遅刻も欠勤も一度も無かったのに……雨だからかな?」

 

「そうかもしれないな。真面目なミケユにしては珍しい。」

 

二人は雨で遅れているかもと話していたが、個人的には嫌なフラグにしか聞こえない。あれからミケユが来る時間帯やここまでかかる時間を聞いたりしたが、流石に着いていないのはおかしい。ほんとに雨だからなのか……?それにあれからイオルも顔を出さなくなっている。ミケユは前の仕事の後片づけで忙しいと聞いているが。

 

「アヴァロ、フィアさん。念のため外に出る用意をしてくれないか?」

 

「ミケユちゃんを迎えに行くのっ?」

 

「サイトウ、もしかして……?」

 

「外れたら、良かったで済む。俺も支度してくる。」

 

二人から離れ、エネを呼ぶ。

 

「これから戦う事になるかもしれない。その時は頼む。」

 

雨の中楽しそうに遊んでいたが、俺が呼ぶや否やグローブへ入ってくる。

 

家まで戻り、造り貯めしておいた薬を袋に入れる。最近少し造れるようになった闘技の水も数個入れておく。準備を終え、アヴァロ達に合流しようと家を出るとフィアの切羽詰まった声が聞こえる。

 

「……?何かあったのか?」

 

急いで声のした方へ向かう。

 

急いで駆け行った先には、血を流しているイオルと、それに駆け寄る二人の姿があった。

 

「お、おい!どうしたんだ!?」

 

「………。」

 

アヴァロの言葉に眉を下げて泣きそうに困った顔を浮かべている。

 

「取りあえずっ、治療が先だ。フィアさん!」

 

「そうだね、なんにせよ怪我を治さないとね。イオルちゃん、じっとしててね。」

 

フィアに怪我を治療してもらっているイオルの傍に行く。

 

「イオル……怪我をしてる中、すまんが質問する。はいかいいえもしくは頷くや首を振るだけでも良いから返事して欲しい。」

 

「ん。」

 

コクリと首を縦に振る。

 

「その怪我は足を洗うための落とし前ってことで良いのか?」

 

「うん。」

 

「追手は来ているか?」

 

首を横に振る。

 

「ミケユがそいつらに攫われたんだな?」

 

「……うん。」

 

「攫われたんだな?生きている可能性は?」

 

「まだ……絶対生きてる。」

 

概ね予想通りの返事だった。

 

「それならまだ間に合うかもしれないな。」

 

アヴァロから安心した声が出る。

 

「タイミングよく既に支度は済んでいる。」

 

保険でしといてよかった。流石は俺。

 

「よしっ、治療も終わったよ!それじゃあいこう!」

 

「でも……、お仕事が……。」

 

「馬鹿言え、ウチの従業員が危険な目の遭ってんだ。どんな仕事より最優先で助けに行くに決まっているだろう?早速道案内頼むぜイオル。」

 

気持ち良い位の台詞がアヴァロから出る。

 

「ミケユちゃんを取り返しに行こうー!」

 

「エネ、今回は遠慮無しで良いぞ。目に入った敵は片っ端らから排除を許す。」

 

「……ありがと。」

 

「お礼はミケユが無事にここに戻って来てから改めて聞くとしよう。」

 

「ん、わかった。」

 

涙を拭いて前を向いたイオルの目は戦う目をしていた。心強いことだ。

 

「さあ、皆でウチの可愛い従業員を助けに行こうぜ!」

 

アヴァロの掛け声と共にミケユが救出が始まった。

 

 

 

イオルの案内の元、辿り着いた場所は、天枯断層の『雲駆る吊り橋』という場所に来た。そこは薄暗い洞窟に近い谷だった。

 

「アヴァロ、着いたよ!」

 

フィアの声で立ち止まると、進行方向には明らかに関わっていると思われる柄に悪い人間が大勢居た。

 

「うちの従業員を連れて行ったのはお前らか、一体どういう目的だ!」

 

「ふはっ、本当にきやがったよ。親分の言った通りだ。バカな奴らだぜ。」

 

目つきの悪そうなやつが馬鹿にするような声でこちらを笑う。……親分か、まだ上が居てこいつらはその指示で動いてるってことか。

 

「ごちゃごちゃうるさーいっ。御託はいいからミケユちゃんを早く返しなさい!返さないと神罰を与えるんだからっ。」

 

フィアの言葉に更に大声で笑う。

 

「良いのかぁ?あのガキの命はこっちが握ってんだぜぇ?」

 

「そうだった。ぅう、どうしよう……。」

 

「ま、それも今頃は魔物に食われて死んでいるかもしれないぜ?お前たちが来た時点で用済みって事だ。」

 

もう、こいつらの話を聞く必要は無さそうだな。

 

「エネ、撃って良いぞ。」

 

袋から瓶を出して渡す。状況は分かったし時間が勿体ない。

 

瓶を取り込むと、正面目掛けて大量の水弾が解き放たれる。

 

「あいつはただの餌って……ぎゃあっ!?」

 

正面に居た男が水弾を喰らって後ろに吹き飛んでいく。

 

「偉そうにぺらぺらと喋っていて楽しそうだな。」

 

「え……、サイトウさん?まだ相手お話してたけど良いの?」

 

「聞きたい事聞けた。少なくともミケユはまだ生きているし、その場所はここでは無く離れていて状況を把握出来ない。どこかに監禁されているはずだ。普通に考えて一番奥とかだろ。時間が惜しい。」

 

「そうだな、こいつらの話を聞いてる暇はないな。イオル、ここは俺たちに任せて助けに行け!」

 

「承知した。絶対に助ける。」

 

「イオル、これを渡しておく。怪我とかしたら使ってくれ。」

 

「ありがとう。」

 

そう言って俺たちの視界から消える。

 

「さて、今回は手加減をしないで暴れまわって良いからな。一人残らず殲滅してくれ。」

 

隣のエネに伝える。

 

「今日は張り切っちゃうよ!悪い子にはお仕置きだーっ!」

 

「まずは正面の敵を倒していこう!」

 

二人も戦闘態勢に入り、敵陣へ向かう。

 

 

 

 

 

「はぁ……。やっぱり出られない。何とかしてここから出ないと……え?」

 

脱出できる場所が無いかとミケユが探していると、魔物と遭遇する。

 

「きゃあっ!?な、なんでここに魔物が!?」

 

逃げようにも、退路が無い。

 

「……このまま何もせずにやられる訳にはいかない……よね?うん。今こそ学んできた魔法の力を見せるとき!」

 

魔法書を構え、魔物と対峙する。

 

「さぁ覚悟して!わたしは簡単には死んであげないよ!!」

 

小さな部屋で、小さな少女の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

「次行くぞ!」

 

エネを前面に出して進行先に居る敵を薙ぎ払って行く。そのカバーにフィアが入り、アヴァロは取りこぼしをしたときの保険で警戒をしている。

 

「何だか、ほとんどエネちゃんが倒してて、私達走っているだけだよね……?」

 

「敵が接近してきたと思ったら壁に叩きつけられているか、取り込まれているかだもんな……。」

 

「頼もしすぎて嬉しくなるね。」

 

隣で二人が苦笑い気味に話している。俺もその気持ちわかるよ。

 

大抵の敵は辿り着いた頃には瀕死の状態まで追い込まれている。ガーゴイルみたいなの居たけど水弾の質量に押し潰されてたしな。

 

その後も敵を薙ぎ払い、吊り橋と思われる場所に辿り着く。下を見たが、底が見えない。……落ちない様に気を付けよう。

 

吊り橋の先ではこちらに元気よく手を振っているエネが見える。

 

「取り敢えず、ここまでは大丈夫そうだな。」

 

吊り橋を渡った先で一度立ち止まる。更に前方と、右に同じように橋があり、分かれ道となっている。

 

「どうしよっか?イオルちゃん達どっちだと思う?」

 

「ここで待つか?どちらかに向かうか……?」

 

「二手に分かれる方が無難だと思う。」

 

「だよねっ、それじゃあ私とアヴァロはこっちいこう!」

 

「それじゃあ、俺とエネはこっちだな。」

 

俺たちが正面、アヴァロ達が右方向と決まる。

 

「無事合流次第お互いの方向に向かうってことで。」

 

「了解。それじゃあ、また後で。」

 

方針が決まり吊り橋を渡ろうとすると正面から人影が二つ出てくる。

 

「あ、やっぱりアヴァロさん達だ!」

 

「ミケユちゃんっ!無事だったんだね!」

 

イオルとミケユと無事合流する。ナイスタイミング。

 

「大丈夫?怪我とかしてない?」

 

「大丈夫です、イオルが守ってくれましたから。」

 

「ん、当然。」

 

「よしっ、これで二人の安全も分かったな。」

 

「それじゃあ、心置きなく……くそ野郎どもにお礼参りが出来そうだな。」

 

一先ずの安全は確保出来た。だがここにいる奴らを放置は出来ない、また同じことが起きるかもしれないからな。やる事は変わらない。

 

「あ、あの……なんだかサイトウさん怒っていますか?いつもより口が悪い気がするんですが。」

 

「それはもう皆怒ってるよ!ミケユちゃんをこんな目に合わせてるんだからっ。サイトウさんなんて殲滅だーー!って言ってるんだから。」

 

「今後も考えたら当然の処置だと思うんだが……?」

 

「ん、ミケユに危ない目にあわせた奴らには当然。」

 

「さてと、後はアヴァロ達が行こうとしている場所か。」

 

右側の吊り橋を見る。そこまで奥がある様には見えないんだが……。

 

「そうだな、このまま油断せずにいこう!」

 

皆で警戒しながら進むと、行き止まりと思われる場所に着いた。

 

「まさかここまで来ちまうとはなぁ……。それにそこのガキも生きてやがる。」

 

奥に居たのは、最初にエネの水弾で吹き飛んだ目つきの悪いチンピラだった。

 

「まぁいい。ここでてめぇらを全員殺せばいいんだしな!!」

 

リーダーと思われるそのチンピラの他にも手下と思われるやつらがぞろぞろと出てくる。……10人は居るな。

 

「おまえら、やっちまえっ!!」

 

チンピラの宣言と共に、周囲の奴らが一斉に襲い掛かって来る。

 

「イオル!ミケユを頼む。」

 

「言われなくても……!」

 

「俺たちも行くぞ!」

 

アヴァロの指示が飛び、最後の戦いが始まった。

 

 

 

「これで最後の1人か?」

 

今しがた手下の1人をイオルが切り捨てる。

 

「ん、後はあの男だけ。」

 

一番奥に逃げる様にリーダー格のチンピラた居た。

 

「観念しな。もうアンタはこれ以上戦えないだろ?」

 

アヴァロが武器を構えながら降伏を促す。

 

「クソ、まさかここまでやりやがるとは……!狩猟屋とともかく、精霊を使役してやがる奴までいるとは。」

 

悔しがる様に後ずさる。

 

「おいおい、まさかだと思うが俺を殺すつもりなのかよ?」

 

「どうかな。特に後味悪いわけでもなし、放置して面倒ごとが起こる前に片付けるってもの悪くない、かもな……?」

 

脅しをかけようとするアヴァロを見ていると、奥に居るチンピラの後ろから何かが這い出てくる。……なんだあれ?

 

「ギャハハ、そうなる前にズラかるに決まってんだろ!バカがっ。」

 

こちらを馬鹿にするような言葉が聞こえるが、俺たちはその後ろに居る存在に釘付けだった。

 

「……あん?なんだよてめぇら。どこ見てやがるん……だ……?」

 

俺たちの視線に気づいたのか自分の後ろを振り返る。

 

「……あ?なんだこりゃ!?なんなんだこいつはっ!!?」

 

その瞬間空間中に雄たけびが鳴り響く。どう見ても奥の化け物が叫んでいる様にしか見えない。

 

「ひ、ひいいぃぃっ。ままさかあの野郎、俺らを生贄にして……!?ふざけんじゃねぞ!!」

 

チンピラが何か騒いでるが、それどころじゃなかった。

 

「上級悪魔。こんな奴まで……。」

 

「初めて見たぜ、これが悪魔って奴なのか。」

 

アヴァロとイオルの会話からどうやら正面に居る化け物は悪魔との事だ。しかも上位種の。……天使が居るんだもんな、そりゃ悪魔も出て来るか。獣人に続き次は悪魔か……ほんと飽きさせない様にしてくるな。……お家帰りたい。

 

周囲を見ると、悪魔と対峙しているのにイオルとミケユは堂々と対峙している。アヴァロとフィアも倒す気満々である。……あれを倒せるのか?

 

「よし、気合入れて行こうぜ!!」

 

アヴァロからの活で皆が合わせる様に動き出す。覚悟を決めよう……。

 

「エネ、俺たちも行こう。」

 

隣に居るエネに声をかける。誤射に気を付ける様に皆の合間を縫って水弾を飛ばす。……俺?相変わらず出来ることが無いから周囲……と言うか後ろの警戒をしてるよ。

 

正面では激しい攻防が繰り広げられる。イオルが相手のタゲを取り、その隙にミケユが魔法で攻撃、ミケユに向くと逆にイオルが一撃を与えタゲを戻す。それが難しい場合はアヴァロの一撃で無理やり意識を逸らしている。何とか戦線を保ててはいる。

 

と、思っていたのもつかの間。俺の後ろの方からこちらに向かってくる足音が聞こえる。

 

「後ろから……!?さっきの叫び声にでも釣られたか?」

 

すると、こちらに向かって来る魔物の姿が見える。それも複数体。

 

「くそっ。エネっ!後ろの相手をしてくれ!」

 

アヴァロ達を外す訳にも行かず、エネを戻す。

 

「アヴァロ!後方から敵が来た!エネが相手をするから正面の悪魔を頼む!」

 

「っ!了解っ!そっちは任せたぜ!」

 

ミケユを助けるために向かってきた敵だけを排除して最速で進んだツケがどうやらここで帰ってきたらしい。

 

小鬼からガーゴイルと思われる個体、ゴブリンを強くしたような見た目の人型魔物。数はいるがエネだけで何とか出来そうだ。

 

後ろを任せて正面を見る。未だにこっちの戦線は保てているが、向こうに決定打が決めれていない。

 

「フィアさん、戦況は?」

 

「う~ん。まだこっちが有利かもしれないけど、長引けは危ないとおもう。大きな隙を作れれば一気に決めちゃうと思うんだけどね。」

 

隙か……。

 

続けてアヴァロと攻撃を交代したイオルに聞く。

 

「あの悪魔、やれそうなのか?」

 

「多分、いけるとおもう。ただ隙があまり無いから長引く。」

 

やっぱりそんな感じか。

 

俺から離れ再び悪魔に攻撃を仕掛ける。傷を付けれるがそれが致命的な一撃にはなっていない。

 

「アヴァロ。」

 

「……どうした?」

 

「あの悪魔だが、デカい隙が作れれば行けるのか?」

 

「どうだろうな。でも、そうだな……その隙にイオルが決めてくれるはずだ。」

 

ーーー仲間が決めてくれる。と言う謎の確信に近い目をしている。

 

「そうか……。」

 

「何か策でもあるのか?」

 

「いや、策ってほどじゃない。もしかしたらあの悪魔に隙を作れるかもしれないと思ってさ。」

 

もはや策では無くて賭けだ。……でも、賭けるだけの価値はあるのかもしれない。

 

「何とか一撃……一撃だけでも俺が与える。その隙が出来たら決めて欲しい。」

 

「何をするんだ?」

 

「初めての魔法をぶちかますんだよ。」

 

不思議そうにこちらをみるアヴァロに挑発的な笑みで返す。

 

戦線から一歩離れ、フィアに声をかける。

 

「フィアさん。」

 

「え?なになに、アヴァロと話してたみたいだけど。」

 

「今から俺があの悪魔にデカい一撃を与えれるようになんとかする。」

 

「おお!?ほんと?」

 

「だから、もし魔力切れになったら……その後は頼む。」

 

「あはは、うん、いいよ。やっちゃって!」

 

女神の許可も出た事だし……よっし。

 

皆から少し距離を置き、悪魔に向けて手を翳し集中する。

 

「ふぅ……。」

 

小さく息を吐き、自分の中の全魔力を開放する。

 

頼むぜ……っ!一撃だけでも出てくれよ……?

 

手の平に電撃を纏う……が、無論これだけでは全然足りない。

 

「本気で頼むぞ……女神さまよぉ……!」

 

続けて指輪に貯めた魔力を全て開放する。指輪が輝いたと思うと、手の平だけだった光が全身を駆け巡る。

 

「えええ!!?サイトウさん!?」

 

近くでフィアが何かを言ってるが、バチッと鳴り続ける音でよく聞こえない。

 

「全部もってけ……どろぼうがぁああ!!」

 

全身を駆け巡る電撃が周囲に広がり、足元の石が浮かび上がる。最早自分の周りが閃光でよく見えない状況である。

 

「あああっ!?アヴァロ、それにイオルちゃんにミケユちゃんも、にげてにげてっ!!」

 

限界まで振り絞ったのを感じ、正面の悪魔に目掛けて解き放つ。

 

「ーーーぶちかませぇぇえええ!!」

 

全身の魔力を正面に向けて撃つ。鼓膜を破壊するような爆音と、視界を覆う程の光が飛び出す。

 

すると、体から力が抜け、視界が暗くなる。……ああ、魔力切れ……か。

 

状況を確認しようにも、閃光でやられた目では上手く見えずにそのまま意識を失った。

 

 





電撃はロマン。
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