夢のお話……逢引ですね。
「その疑問にお答えしましょう!!!」
「どわぁっ!!?」
寝ていると、急な大声に驚き飛び起きる。
「おはよう、よく眠れたかしら?」
「なんだ……驚かせないでくれよ。」
起きると、横には例の女神がおり、周囲の景色は真っ白であった。
「……それで、どうして呼び出したんだ?」
「さっき言ったじゃない。貴方が不思議に思っている事を私が答えてあげるのよ?」
「俺が……?」
「そうね。例えば、『どうして俺は急に魔法が使えたんだろうか?』とかかしら?」
「えっと、質問コーナーみたいな感じか?」
「そうね。残念ながらお手紙もお便りも届いてないけど。」
「理由が……あるのか?成長しただけでは無くて。」
「ある意味成長とも取れるわ。」
「聞かせて欲しい。」
「ちゃんと聞かせてあげるから安心しなさい。」
そう言って指を鳴らすと、目の前にホワイトボードらしき板が現れる。
「まずはそうね……。知っているかと思うけれど、貴方はこの世界の人間では無いの。」
そりゃ、そうだろうな。俺が一番実感している。
「でもそれは貴方の記憶のみがそうであって、体はそうじゃないわ。」
「……は?体は?」
「そう。貴方の体……構成してる中身は少し違うのよ。」
少し考えながら話しつつボードに絵を書いてく。
「まずはこれが貴方の体として、人間としての貴方が占めている割合は元々100%だったの。けれど、この世界に来た事でそれが少し変わったわ。というか私が変えたんだけどね。貴方がこの世界で生き残れるために構成を少しだけ人間では無い部分を組み込んだの。」
「つまり、今の俺は人では無いと……?」
「大部分は人間……が正しいかしら?じゃあ、人間以外の部分は何が占めているのか?これが今度は気になるわよね。」
それは……確かにそうだ。
「貴方に組み込んだ部分はこの世界で言うと……精霊、が一番適切かしら?」
「精霊……?あの水精みたいのか?」
「ちょっと違うわね。あくまで精霊としての性質的なのをほんの少しだけ馴染ませたの。」
「………?それがさっきのと、どう繋がるんだ?」
「実は貴方が悪魔に魔法を放った際に限界まで魔力を使ったでしょ?指輪のも一緒に。」
「ああ……。」
全部使うつもりで開放したからな。
「本来ならあれ、魔力が暴走し自爆して死んでたわ。」
「……マジか?」
「マジね。」
「でも、結果的に成功したんだが……?」
「そう、そこよ。本来成功するはずの無いのが成功した。貴方が魔法を撃つ直前、自分の体やその周囲まで魔法が影響していたのはみえてたかしら?」
指を鳴らしモニターを出す。そこにはおれが魔法を放つ直前の映像が流れていた。
「このシーン。普通なら漏れ出た魔法が自分の体に返ってきて来るはず……けれどあなたにはそれが見られない。まるで貴方の体が電撃を受け入れられる身体みたいに……。」
「そういった存在を、この世界で見た事ないかしら?」
「……それが精霊……ということか?」
「正解。はなまるあげちゃうわ。」
ボードの俺に赤ではなまるが書かれる。
「ここまで来たら何となく理解出来てるかと思うけど、この電撃が貴方の体を駆け巡ったせいで、貴方の中にある精霊としての部分が変化を起こしたのよ。より良い性質になるために……ね?」
何故だかそれを嬉しそうにしてこちらを見る。
「えっと、つまりは……今俺の中にあるその、精霊としての部分が電気属性になったってことか?」
「ええそうね。理解が早いじゃない。」
「そのおかげで魔法が使える様に……?」
確かにそれなら納得だ。体に馴染んだ……言えば分かりやすい。
「でも残念ながら、問題はそこじゃないのよ。」
「まだあるのか……。」
「貴方の中の精霊としての部分が変化した。ここまではいいわ。でも実は、人間としての割合と精霊としての割合が変わり始めているのよ。」
「……詳しく。」
「貴方が放った魔法は強力だったわ。それはそれは人として普通は耐えることが不可能な位にはね?そこで貴方の体は考えたの、『それなら耐えられるようになるまで人間の部分を精霊の部分に変えてしまえばいい』と……。凄いでしょ?」
「それは凄いのか……?」
「なでなでしたいくらいには凄いわよ、ふふ。考えてみて?貴方達人間は、人間と呼べるようになるまで一体どれだけの時間と進化の工程を挟んできたと思う?何万年?最初の生き物からしたら何億?途方もない時間と年月をかけて進化をしているわ。それがたった一日足らずで……!どう?凄いとは思わない?」
「いや、実感が無いから何とも……。」
そんなハイテンションで語られてもなぁ……。
「と、話を戻すわね。つまり、今貴方を構成する割合が精霊の方が増えてきているってこと。逆に人間の部分が減ったわ。多分精霊が二割程度占めてるんじゃないかしら?」
そう言って、隣にもう一人の俺を書き、『二割に増加!?』と書き足す。
「精霊の割合が増えることで、一体何が起こるのか?そこを説明するわ。」
「ああ、よろしく頼む。」
「そうね……人間の死って心臓が止まれば死ぬじゃない?出血が酷かったり、息が出来なかったりとか。」
「そうだな。普通はそれで死ぬと思うのだが?」
「人間の貴方だったら死ぬ要因は人としての死、でしか死ななかった。けど、精霊が強まると違う要因で死ぬことが可能になるの。」
……え!?死因が増えるの!?
「精霊とは基本的に人の様な死に方はしないわ。最悪体消えても自然に……世界に還り、またどこかで生まれる。」
「実質不死身では……?」
「次に生まれた時は前の記憶なんてないわよ?新しく生まれ直すのだから。それは死と呼べると思うのだけれども?」
「……おしゃる通りです。」
「精霊が死ぬときはね、精霊としての体を保てなくなった時……分かりやすく言うと魔力がゼロになって崩壊するわ。」
「……え?はぁああ!!?」
ちょっと待て待て。今なんて!?
「あら?予想通りの反応ね。」
「そりゃな!!既に二回体験してるんで!!」
「まだ消えないわよ?人間としても部分が残っているもの。」
「えっと、なんだ?つまり俺の体が人間じゃなくて精霊としての部分が多くなると魔力切れで死ぬのか?」
「そうね、貴方の体が人間としての割合が消え、精霊が100%の時点で魔力切れを起こすと消えるわ。」
「ええー……なにそれぇ……。」
それが現在二割を占めていると……。
「一度目に魔力切れで気絶した時と今回、起きるのまでに時間がかかったでしょ?それに体にも異常があったはずよ?」
「……確かに、思い当たる節はあるな。」
一度目は夕方に気絶して夜には起きた。しかし今回はどんなに遅くても昼は回っていない時間に気絶し、夜に起きた。しかも起きた直後は身体がだるかったな……。
「傾向はあったのか……。」
「そうね。」
「……どうすればいい?」
「簡単よ。今回みたいなことをしなければこれ以上悪くならないわ。」
「今回みたいなのって……限界以上に魔法を使うなってことか?」
「その通りよ。そうすれば貴方は人間として生きていける。どう?簡単でしょ?」
「魔法を使わずに……。」
折角使える様になった魔法が……。簡単に使えなくなる。
「それだと俺は魔法を三発しか打てないんだが……。」
「そうでもないわ。言ったでしょ?貴方自身で戦う。もしくは……そうね。魔力は何回も使い続ければ体がそれに慣れてより多くの魔力を使えるようになるわ。これは全員に言える事だけど。」
「反復練習をしろってことか?」
「元々が少ない貴方じゃこっちは大した効果は得られないと思うから現実的ではないのよ、あまりおススメはしないわ。」
「つまりは戦えってことか。」
「そうわね。ふふ、因みにだけど、貴方に分かり易く言うと、強くなるための経験値。だけれどね、一番簡単なのがあるのよ。」
「お、あるのか?」
「それはね、ーーー人間よ。」
「……なんか、想像できたわ。」
「よくある話でしょ?強い魔物を倒すのはそれは多く手に入るわ。けれど、一番効率が良いのは人間。」
「ああ、確かにな、よくある展開だよ全く。」
「人は短い生の中で多くの経験を得るわ。他の生き物と比べたら破格よ。」
「……そうだな、選択肢として持っておいた方が良いかもな。」
「ええ、どうせこれから戦うのは人間が多くなってくるはず。」
「……そうだな。」
それは当然分かってるさ。
「さて、貴方の事はこの位にしておいて、これからの話をしましょ?」
「これからを……か?」
「そうね、次の街が一つの山場になるわ。知っているでしょ?」
「それは、勿論。」
このまま順調に北に向かうのなら、必ず通る道がある。その先には以前訪れたリックベルの街が存在している。王国は必ずリックベルの前で襲撃を仕掛けてくるはずだ。
「次に向かう予定の街、名前は……そう、リックベルね。前に貴方が訪れた街よ。そこにはこの国の第三王子……名前はなんて言ったのかしら?」
「……ギルシュ・ルース第三王子。」
「そうそう、その金髪王子が領主としている街なの。そこに居る……虎……鰐……何とか騎士団と、貴方も出会った三等客将の子も居るわ。」
大丈夫か?全然言えてないが……。
「貴方達がリックベルを抜けるためにはその前の峡谷……谷を抜けることは必須。そこで必ず仕掛けてくるはずよ。」
「だろうな、城砦と同じ程度の崖があったはずだし、優位に立てる戦場と言ったらあそこくらいしかない。」
ディートヘルムさんに乗せてもらった時に通りかかったが、あそこなら城砦にも簡単に侵入可能だ。
「戦いは必定、だから充分に備えてから行きなさい。対策は仲間と話し合うといいわ。」
「そうだな、そろそろその辺りも話しておかないといけないな。」
「それをお勧めするわ。それから……。」
「貴方、最近私からの依頼を確認してないでしょ?」
あ、そういえば最近忙しくて確認するのを忘れてた。
「すまん、頭から抜けてた……。」
「起きたら確認するように、あと幾つか追加で更新しておくわ。」
追加があるのか、後で見ておかないと。
「それと、一つ重大な事があるのよ、紙にも書いておくけど口でも説明しておくわ。」
珍しいな、改まってそんな事言うのは。
「この先、貴方が住んでいる城砦に技師のおじいちゃん、あの子……女神の使徒の子と交友関係を持っている年寄りが居るの。」
えっと、アヴァロと交流がある技師のじじいがいますと……。
「その人に資金を渡しておきなさい。」
「お金を……?」
「簡単に言うと、そのおじいちゃんが迷子を拾うの、竜人族の女の子をね。その子が無事に城砦まで辿り着くまでの援助金……みたいな物かしら?」
「竜人族の女の子が……ね。取り敢えずその人に適当にお金を渡せば良いんだな?」
「そうね、出会うのは暫く先になるのだけれども……。」
「何か重要な役割を持っている感じか。」
「あら?どうしてそう思ったの?」
「竜人族で女の子だぞ?しかも迷子。大体パターンは予想付くだろ。よくある話だ。」
「……ふふ、そうね。ありふれたお話だわ。ほんとにね。」
「用件は分かった。その子を保護するのが目的だな?」
「今の所はそんなところよ。忘れないようにお願いね。」
「……今回は褒美とか無いのか?なんか終わりそうな雰囲気だが……?」
「褒美……?ああ、そうね。折角呼び出したものね。……申し訳ないけど用意してなかったわ。貴方の事を説明する為に呼び出したのだから。」
そういえばそうだったな。今回は俺の為だったな。
「けれど、そうね。その内またこっちから呼ぶわ。その時に何かしら与えるとしましょ?」
「貰えるなら何でもありがたいさ。感謝する。」
「それじゃあ今回はここまでとして、また次回会いましょう。」
「ああ、楽しみにしてる。」
「……ええ、私も楽しみだわ。とても……ふふふっ。」
ーーー次も私を楽しませてね……?斎藤。
白く染まり、消えゆく寸前に、そう言われた気がした。
思ったより話が膨らんだので、これを一話として出すことにしました。
次回は少し日常を挟んだら第三章へ行くとします。