この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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第三章突入です。



第三章:グアラクーナ城砦防衛戦
第二十六話


 

 

「特別感が欲しいの!と言うわけで、アヴァロの新しい呼び方を考えたいと思います!」

 

よく晴れた昼下がり、今日は皆で城砦の瓦礫の撤去を行っていた。

 

「……ん?なんかあったのか?」

 

水分を補給する為に一時場を離れていると、向こうからフィアの声が聞こえる。……また何か始めたのか?

 

時たま唐突に変な事を言い出したり実行したりするときがある。その場合はアヴァロに投げたり、満足するまで一緒に付き合ったりしていた。

 

「何かあったのかー?」

 

声が聞こえた場所に行くと、俺以外のみんなが揃っていた。

 

「ねっ!サイトウさんもみんなのアヴァロの呼び方が違うの気になるよね?」

 

「呼び方……?」

 

特に気にしてないが、好きに呼べばいいのでは……?

 

「この場合、さん付けしているミケユを呼び捨てにすれば解決するのだが……そう言う事じゃないってことか?」

 

「そうなの!新しい呼び方を皆で考えよう。」

 

「新しいねぇ……。」

 

ちらっとアヴァロを見ると困った表情で苦笑いをしていた。まぁ、いつもの事か。

 

「移動工房……工房主とか……はちょっと固い言い方か。」

 

仲間内で呼ぶだろうし軽めなのが良いんだろう。

 

「……おやかた。」

 

イオルから案が出る。

 

「それなら俺はアニキを推すぞ。どっちが良いですかい?アヴァロのアニキ……へへっ。」

 

ごまをすりながらへたくそな笑い方をしてみる。

 

「何だか急に小悪党みたいになりましたね……。」

 

「どっちもごめんだな。」

 

「駄目かー。」

 

「ざんねん。」

 

「うーん……隊長、なんてどうかな?」

 

「たいちょう?」

 

フィアからも案が出てくる。

 

「移動工房だから、商隊でしょ?だから隊長さんかなって。」

 

「隊長か……、てか商会の主はフィアじゃなくて良いのか?」

 

「うん、城砦は私の身体だし、アヴァロは私の使徒だけど、商会はアヴァロの物だよ。」

 

確かにそう聞くとその通りなんだよなぁ……。

 

「まぁ、フィアが良いなら俺もそれでいいぞ。」

 

「わたしも隊長でいいと思います。響きもなんだか可愛いし。」

 

「……ん。ミケユがいいなら、イオもいい。」

 

「主体性がないぞイオルちゃん!でもそんなところも可愛いけどっ!」

 

そう言ってイオルの頭を撫でまくる。

 

「それじゃあ、これからはアヴァロの事をアヴァロ隊長ってことで!アヴァロ隊長、就任おめでとうございまーすっ。」

 

「わー、ぱちぱち。」

 

「やんや、やんや~。」

 

「よ、アヴァロ隊長。男前っ。」

 

「実際呼ばれるとむず痒いな……。」

 

少し照れて頬を搔きながらもどこか嬉しそうな表情をしている。

 

「手が止まっちまったことだし、休憩にするか。」

 

「あ、隊長さん。休憩に入るなら勉強を教えて欲しいです。」

 

「分かった。てかその呼び方、もう使い始めたのか。」

 

「たいちょ。お仕事もう終わり?」

 

「イ、イオルちゃん……!もう一回言ってみて?」

 

急に発作を起こしたかの様な息遣いでイオルに問いかけてくる女神さま……目が怖いんですが。

 

「?……たいちょ?」

 

「し、しし……舌っ足らずかわいーー!!」

 

「うぐっ!?かみさま……くるし……。」

 

どうやらイオルの隊長呼びがハマったみたいだ。……確かにグッとくるかもしれない?

 

「このっ、このこの!私を誘惑して……!イケない子だよ。」

 

しばらくの間、フィアがイオルを堪能して解放する。

 

「と言うわけで、これからはアヴァロの事を隊長と呼ぶようにねっ!アヴァロもそれでいいよね?」

 

「いいけど、発案者のフィアが呼んでいないわけだが?」

 

「あはは、何言っているの?私はいいんだよ。アヴァロにとって特別な存在だからねっ。呼び捨てても許されるの。」

 

「欲しかったのはお前個人の特別感かよっ!」

 

アヴァロのツッコミが響き渡った所で、休憩に入る事にした。

 

 

 

 

 

 

この日、資材の数が心許が無いとアヴァロから相談があり俺が調達へ行くことになった。

 

「やっぱり建築資材辺りは幾らあっても足りなくなるよな……。」

 

依頼で使い、制作や修繕でも使うのだ。木材、石材系は常に必要となる。

 

「どこかでしっかりと備蓄出来る様にしておかないと……ん?あれはアヴァロか。」

 

城砦から出ようとすると、入口近くで誰かと話し込むアヴァロが視界に入る。

 

「……あの男は。」

 

見覚えがある。というかミケユを攫った組織の一員の男だ。あの目つきの悪い。

 

心配の為気づかれない様に二人を見る……が、何かを取引したのち別れる。

 

「アヴァロ、何かあったのか?今のって前にミケユを攫った奴らだろ?」

 

話を終えたアヴァロに近づき声をかける。

 

「サイトウか、実はな……。」

 

先程の経緯を簡単に聞く。

 

「なるほど、逃亡資金の為に取引をしに来たのか。」

 

「本人曰くそうらしい。すまんが勝手に応じた。」

 

「いや、そこはアヴァロの判断に任せてるから俺は気にしてない。でも……そうか。」

 

「サイトウ?」

 

「いや、何でもない。それじゃあ今から調達に出かけて来るよ。」

 

「おう、すまないけどよろしく頼む。」

 

手を振りながら城砦を出ていく。城砦を降りると少し離れた場所でさっきの男が立っていた。

 

「どうかしたのか?」

 

近寄ってみると何やら手持ちのお金を数えていた。資金のやりくりでも考えていたのだろうか。

 

「ああ?ってあんたはあの男の仲間の奴か。」

 

「先ほどアヴァロと何か取引をしているのを見かけてな。何事も起こらずに済んで安心している。」

 

「へっ。こっちも問題ごとは起こしたくないからな。穏便に出来るならそうするさ。」

 

「商会にバレたくないもんな。」

 

「そういうことだ。」

 

行く方向が同じなのか、歩きながら話していく。仲良しかよ。

 

「これからどこに行くつもりなんだ?」

 

「それを俺が言うと思うか?てめぇが商会に話すかもしれないのに?」

 

「確かに。リスクだな。」

 

お互い無言になる。

 

「……俺がいうのもなんだが、てめぇは俺を恨んでいねぇのかよ?」

 

隣の男が急に話し出す。

 

「なんなんだ急に?」

 

「いや、城砦で取引したあの男からはこっちを警戒してた。そりゃ理解できるぜ?依頼でしたとはいえあんたらにとってこっちは敵なんだからよ。けど、おめぇからはそれが感じられねぇ……。」

 

「ああ、それか。」

 

確かに普通は話しながら歩く、なんてしないよな。不審に思ってるなら尚更。

 

「簡単だよ、あんたはあくまで商会からの依頼として仕事をこなしたんだろ?今回の事件だって。」

 

「そりゃな。」

 

「それで今は商会から隠れる為に逃亡中なんだろ?それなら無駄な事はしないってわかってるからな。」

 

「俺が危害をおまえらにしねぇってわかってるって言いたいのか?」

 

「そうだな、確かに多少思うところはあるけど、今後はこっちにちょっかいをかけて来ないのなら水に流すさ。」

 

「はは、随分と物分かりがいいじゃねぇか。」

 

「そんな事より、この際俺たちをを狙った商会の情報が少しでもほしい。」

 

「んあ?商会のか?」

 

「ああ。有益なら俺個人で報酬を今渡しても良い。そっちも資金は幾らあっても困らんだろ?」

 

「そりゃそうだが……。」

 

「何でもいい。相手の見た目、口調、態度……得れるなら何でも。」

 

「……報酬が先だ。それが条件だ、嫌なら話さねぇ。」

 

「先払いか。」

 

袋から金を取り出し、適当に渡す。

 

「これで足りるか?」

 

「ああ。欲を言えばもうちっと欲しいが……まぁ足しにはなるだろ。」

 

受け取ったお金を懐に仕舞い、思い出す様にはなし始める。

 

「そうだな、一回だけ会ったが見た目は魔術師だなあれは。」

 

ほうほう。

 

「態度は落ち着いた感じで下手に出ている話し方だが、完全にこっちを見下していたなありゃ。目をみたら一発でわかるぜ。」

 

ふむふむ。

 

「そういえば商会の名前が……ガイダルとか言っていたな。ほんとかはしらねぇが。」

 

ガイダル商会……これはデカいな。

 

「思い出せるのはこれくらいだ。満足できたか?」

 

「ああ……十分に満足出来た。」

 

「ハハハッ、そりゃなにより。そんじゃここらで俺はいくぜ。いつまでもここの辺りには居られねからよ。」

 

「だったな。」

 

去ろうとする男に袋に入れたお金を投げ渡す。

 

「ああ?なんだこれは。」

 

「餞別だ。後はさっきの情報の追加報酬だな。」

 

「随分と気前がいいじゃねぇか……?」

 

「それともう関わるなって意味も込めているけどな。」

 

「安心しな、もう関わる事はねぇよ。これはありがたくもらっておくぜ。」

 

「おう、達者でな。」

 

手を振り男を見送る。向こうも手を一度上げて返事をし背を向ける。もはやこちらを警戒すらしていない。

 

「……エネ。」

 

小声でエネを呼ぶと、グローブからエネが出てくる。

 

「ーーー撃て。」

 

俺から指示でこちらに対して無防備に背を向けている男に水弾を放つ。

 

「っぐわぁ!?」

 

背中に水弾が直撃し吹き飛び、転がる様に地面を数回バウンドする。

 

「……っ!てめぇ……、一体何を……!?」

 

近づくと、痛みで立ち上がれない男がこちらを睨んでくる。

 

「稲妻。」

 

指先を地面で転がっている男に向け撃つ。

 

「あががぁぁああああ!!!」

 

エネの水弾を喰らって体は水浸しである。さぞ通りが良いだろう。

 

電撃を喰らい、跳ねる様に痙攣をおこす。

 

「稲妻。」

 

念のためもう一度撃っておく。

 

「がぁぁぁああああ!!」

 

二度目を撃つと目から意志が消え、小さく痙攣だけをおこす。

 

「駄目押しで最後に。」

 

最後に撃つが、既に死んでいるのか声も上げることは無く、電気による筋肉の反応でピクピクと動くのみだった。

 

「エネ、喰って良いぞ。」

 

ここに放置しておくのは良くないのでエネに証拠隠滅をお願いする。『了解!』と手をこちらにあげて足元にある死体を取り込んでいく。

 

袋から闘技の水を出し飲みながら周囲を確認する。城砦からは十分に離れているから問題はないだろう。

 

……恨みは無いが、攫った件を許している訳がない。今後万が一の可能性を放置しておく様な頭じゃないんでな。

 

「終わった?それじゃ今日の業務をこなしに行こうか?」

 

死体が消えたのを確認してから地面に落ちてあるお金の袋を拾い、エネと一緒に歩き出した。

 





稲妻≪ライトニング≫


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