この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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後半戦ですね。書いている内に長くなってしまった……。


第三十一話

 

 

「駄目だ、ダメージが通っているとは思えねぇっ!」

 

ゴーレムとの戦闘が始まりアヴァロとイオルが前に出て後方で俺とミケユが魔法で援護、フィアが弓で牽制と回復などのサポート役をして立ち回っていたが相手に攻撃が碌に通っていない。

 

「さっきの土精より硬い……。」

 

「魔法も少しは通っていますが大した効果は望めないですね。」

 

「んむむむ、どうして言う事を聞いてくれないのぉ~。えい、えい!」

 

フィアが遠距離から弓矢やら魔法を撃っているがゴーレムは従う素振りを見せない。

 

「フィア、止めるのはもう無理だろ。何とかして倒すしかない。」

 

「アヴァロ~、この子言う事聞いてくれないよ~!」

 

「見てれば分かるって、諦めてくれ。」

 

どうやらフィアの説得も失敗で終わったらしい。自分の体内の機構なのに制御出来ないっておかしいと思うが、……実はフィアに従えているゴーレムでは無くて他の誰かが創った物ととかか?

 

「アヴァロ、その機軸槌はどこかに通ったりしないか?唯一の打撃だと思うんだが。」

 

「駄目だった。腕や足は分厚くてどうしようも無さそうだ、関節とかにはもしかしたら少しは与えられるかもしれないが……。」

 

「弱点的な部位は?ゴーレムだしコアみたいな制御場所があると思うんだが。」

 

「あるとしたら胸の部分に光っている箇所ぐらいだと思う。見えるだろ?」

 

確かにゴーレムの心臓部位周囲は青く光っている。考えれるのはあそこくらいか……。

 

「でもあれに攻撃するには攻撃を避けて懐に入り込まないといけないと……。」

 

「そうなるな。」

 

当たったら怪我では済まない速度と重さの腕が振るわれている。イオルは余裕を持って避けれているが他はそうはいかない。

 

「……一度関節部位に攻撃でもしてみるか?」

 

「イオルがタゲを取ってくれれば可能だし試してみるか。」

 

アヴァロからの提案を受け入れ反撃の準備を始める。

 

「アヴァロ、一応攻撃が当てられた時の為に……。」

 

アヴァロの機軸槌の先端に触り魔法陣を組み込む。左右どちらでも大丈夫の様に両サイドに二つ仕込む。

 

「おお、ありがとな。頑張って当ててくるぜ。」

 

「無理はせず確実に当てれるタイミングでな。」

 

仕込み終えアヴァロがイオルが居る前線へと向かう。

 

「フィアさん、なるべくアヴァロに意識が向かない様に邪魔をお願いします。」

 

「任せて~、言う事聞かない子にはお仕置きしてあげる!」

 

さてと、念のためにこれがいまいち成果が得られなかった時の為に……。

 

袋から大量の紙状の札を取り出す。特製の電撃札である、忍者漫画でよくある奴を真似して作ってみた……はいいけど、投げ飛ばすことが出来ないので実際に対象に張り付ける必要がある。今回は俺じゃなくてイオルにお願いするつもりだ。

 

「たいちょ、今……!」

 

イオルからの声を聞きアヴァロが足の関節に攻撃を仕掛ける。金属と石がぶつかる甲高い音が響き直後に機軸槌から電撃が放たれる。

 

「……っ!?くそ、まだ甘いっ。」

 

直撃後一瞬体の軸が揺らいだが直ぐに体勢を立て直す。その隙にアヴァロがゴーレムの攻撃範囲内から離脱する。

 

「一応効いてはいたな……。」

 

腕や足は分厚い岩石で覆われているが関節部位はそこまでらしい。鎧と同じで可動域の確保のため難しいのだろう。

 

「すまんアヴァロ、イオルに渡したい物があるから一旦代わってほしい。」

 

戻って来たアヴァロに交代をして欲しいと伝え、イオルと交代してもらう。

 

「戻った、何?」

 

「この札をゴーレムの身体に貼って欲しい。場所は最悪どこでもいいけど可能な限り装甲の薄い箇所が良いかもしれない。出来ればあいつの脇下とか……。」

 

「わかった、全部貼ったら合図する。」

 

何の札とか説明を聞かずに受け取り戦線へ戻って行く、何をするのか予想が付いているんだろうか……?

 

もしもこれでもあまり効果が見込めなかったらどうしようか……。長期戦とか不安要素が出るから嫌だしなぁ……ここはやっぱりあの装甲を貫けるだけの貫通性の高い攻撃が必要になるんだろうな。

 

現時点でそんな攻撃はこっちには無い。ちまちまと魔法で攻撃を続ければその内倒せると思うがさっさと終わらせて早く温泉計画に移行したい気持ちもある。

 

「無いなら創るしかないか……。」

 

今ある電撃をどうにか一点集中型に纏めて放つことが出来れば……か。

 

そうこう考えている内にイオルから合図が来る。

 

「了解した!二人ともっ、そいつから離れてくれ!」

 

二人が十分距離を取ったのを確認し、札に仕込んだ魔法陣を起動する。ざっと見ても二十以上はある。

 

「おおっ!?ゴーレムちゃんが輝いているよ!」

 

近くにいるフィアから驚きの声が上がる。起動した電撃はゴーレムの全身を駆け巡る。電撃を喰らったゴーレムが動きを止め仰け反る……が、停止には至らなかった様だ。

 

「くっそぉ……あんだけ食らわしたのに表面の装甲が削れただけかよ……!制作した時間を返せ……っ!」

 

そもそも王国との防衛戦に向けて作り始めた物である。予期せぬ消費に苛立ちを覚える。

 

「サイトウっ、今の結構効いた様に見えたんだがもっとあったりしないか……!」

 

「残念だけど品切れだ。検証としては十分なデータが取れたなっ。」

 

半分やけくそ気味である。

 

「すまん二人ともっ!少しだけ時間をくれ。試してみたい事がある。」

 

「大丈夫だが……何をするつもりだ?」

 

「むかついたからあのくそゴーレムの装甲をぐちゃぐちゃにしてやる……。」

 

「なんだがキレてるけど大丈夫か?」

 

「実際怒ってるしな。ちょっと採算度外視で攻撃を仕掛けてみるさ。」

 

「了解、出来たら言ってくれ。」

 

楽しそうな顔をしたアヴァロが戦線に戻りイオルに声を掛けていた。

 

「フィアさん、すみません今から少し集中するので何かあったら教えて下さい。」

 

「うん、わかったっ。ミケユちゃーん!少しの間援護強めにお願いー!」

 

「分かりましたっ、任せてください。」

 

二人の協力も得て新しい攻撃の作成に移る。

 

いつも撃っている電撃はどちらかと言うと拡散型に入るんだと思う。取りあえず前方に電撃を飛ばす……後は指から出す少量の電撃、こっちは威力をかなり弱めて出す。一応方向性と火力はどっちも調整が可能と言うのは理解出来ている、今回はそれらを前方の一点に纏めて発動する必要があると……。

 

「やっぱり回転とか螺旋がセオリーかな。」

 

貫通性を上げるのによくある展開だろう。漫画でもあるし現実でもそれは適用されている。試しに魔法を撃つ前の魔力をその場で回る様に仕向ける。

 

「……いけるな。」

 

霧散せずにその場で回転するように留めながら速度を上げる。手の平で収まる様に意識をし続ける……これを……。

 

「魔法を撃つ感覚で前に放つ……!」

 

適当に後ろに向けて魔法を撃つ。すると今までのとは違い直線上に電撃が放たれる。拡散はせず壁まで突き抜ける。

 

「あ、ああ……もしかして成功したのか?」

 

思ったより拍子抜けではあったが割と楽に成功した。後はこれにどれだけ魔力を込めるかによるだろう。先に魔力を回復させる為に瓶を飲み干す。

 

「取り敢えず現時点のを全部ぶち込むか……。」

 

電撃数回分の魔力でどれだけの威力か確かめたい。片手を前に出し、反対の手で腕を抑える様に握る。

 

「回転をイメージして……!それを前方に撃つ感覚で……。」

 

手の平に小さなスパークが起こる、円を描くようにその場で迸る。

 

「アヴァロ!イオル!そいつから離れてくれ!」

 

俺の言葉に反応するようにその場から飛び退く。よし、これでいつでもいけるな……!

 

「せめて装甲ぐらいは破壊させろよ……なっ!!」

 

限界まで貯め速度を高めた一撃をゴーレムに向けて放つ。バチバチと光っている俺に意識を向けたゴーレムにビーム状の電撃が飛んでいく。胴体の中心を狙ったつもりだったがゴーレムが体を動かしたことで中心から外れ腕に直撃する。

 

「おおおっ!?当たったぞ!」

 

アヴァロが歓喜の声を上げたのを聞きゴーレムを見ると腕の分厚い装甲部分が消し飛んでいた。……いや、あれだけで腕一本かよ!?

 

「やったなサイトウ!アイツの一番厚い部位を破壊出来たぞ!」

 

「それは、ほんと良かった……うん。」

 

全力で撃って腕の装甲か……いや、謙虚気味に言ったつもりだったがほんとにそれだけとは……。

 

魔力切れの為なのか虚しい気持ちが湧いてくる。が、これで終わりでは無いので再度瓶を飲み干し魔力を回復させる。

 

「……んく……ぷはっ!これ一本でさっきの一回とは相変わらず魔力少なすぎないか俺は。」

 

要領は把握できたので再度準備を始めるが、自分に損害を与えた敵だと認識したのか俺の方に全力で向かって来る。

 

「え、ちょっとっ!こっち来るな!」

 

負けじと全力で距離を置く。逃走した経路にトラップを仕掛けゴーレムがそれを踏み電撃が放たれるがお構いなしで向かって来る。

 

「なんだよ……!この執着具合は……っ!」

 

袋から瓶を三本取り出しその内の一本を飲み干す。一定の距離を確保出来たので今度は地面に先ほどの貫通型の電撃を仕掛ける。

 

「……次っ!」

 

尽きた魔力を二本目の瓶で回復し再度地面に魔法陣を設置する。

 

「おらっ!ゴーレム!こっちだぞ?」

 

声を上げかかって来いと挑発をする。道中の普通の電撃トラップを踏むが表面が多少剥げる程度で大したダメージには至って無い。

 

「……!来たっ!」

 

今設置した陣をゴーレムが踏み、足元で魔法陣が輝き発動される。岩などの岩石を削り取る様な音と共にゴーレムの片足が半分ほど砕け散る。

 

「よっしゃ!」

 

急に足が消え重さのバランスが偏った事で体制を崩し前に倒れ込む。倒れ込んだ先に二つ目の陣があり続けて発動される。

 

ゴーレムの脇腹辺りが吹き飛びその場に転がる。

 

「アヴァロっ!」

 

倒れたゴーレムを見てアヴァロが即座に追撃を仕掛ける。持ち手を回しまだ使っていない方の陣を下に向け全力で背中に振り下ろす。

 

「砕けろっ!!」

 

全体重を掛けた一撃と電撃がゴーレムの全身に響き背中の装甲が砕け散る。

 

「まだ仕留め切れていない!」

 

胸の青い光が消えていないのを見て最後の一本を飲みアヴァロに駆け寄る。

 

「最後の一撃、決めてくれ!」

 

再度機軸槌に魔法陣を仕込む。今度は貫通型の方なので流石にこれで貫いてくれよ……!

 

「これで……!トドメだ!!」

 

アヴァロの決め台詞と同時に重い質量が叩きつけられる音と削岩機の様な音が響き渡り、何かが砕ける甲高い音が鳴り響いた。

 

その音と同時にゴーレムの胸の部分の青い輝きが消え、活動を止める。

 

「うっし、これで流石に倒しただろっ。」

 

機軸槌を肩に担ぎ満面の笑みでゴーレムから飛び降りる。アヴァロが離れたのを見て念のために指輪から魔力を少し移しゴーレムに向けて電撃を放つ。

 

「……よし、完全に停止したな。」

 

「やっと倒せた。こいつ硬かった。」

 

「ほんとだよねー。イオルの剣があまり効いて無かったねー。」

 

戦闘が終了したのでイオルとミケユが戻って来る。

 

「二人ともお疲れさん。援護助かったよ。」

 

「いえ、あまり大したことは出来ませんでした。私もイオルも決定打を与えれていませんし……。」

 

「ん、サイトウの魔法が凄かった。」

 

「あれが出来たのは少なくとも二人がその間相手してくれたからだからなー。俺としては物凄く助かったからな?」

 

「何か策があると聞いたけど、また凄い物を出して来たな。」

 

「今回はたまたま上手く行った感じだな。後は回復薬でのごり押しでどうにかなった所が強い。」

 

足止めは出来たがトドメはアヴァロに手伝って貰ったしそもそも戦場で一つの事に集中する時間を確保出来たのがデカい。なので結局は皆のお陰ってことになる。

 

「……フィア?どうかしたのか?」

 

いつもなら真っ先に話に参加してくるはずのフィアが何やらご機嫌ナナメでゴーレムを見ていた。

 

「むぅー、なんなのこの子。勝手に襲って来るし、全然私の言う事聞いてくれないし……こういう子きらい。」

 

どうやら未だにゴーレムの事を根に持っていたらしい。まぁ……どんまい。

 

『フィアの機嫌取りを頼む。』とアヴァロにアイコンタクトを送る。それを苦笑いしながらも了承が返ってくる。こういった時はアヴァロに投げれば大抵解決出来るのを知っている。

 

「それじゃ奥の起点場所を修復して帰るとしようか。」

 

ぷんすかしているフィアを連れて奥の水場へと皆が向かって行く。後に続こうとした時足元のゴーレムが目に入る。

 

……このゴーレムはフィアの制御下にある城砦の中に待機していたにも関わらずこちらを敵と認識して向かってきた。つまりフィアとは別の人間……勢力が居て、多分それはフィアの事を仲間と考えていなかったと思われる。今の城砦の状態を合わせると何かしらの抗争や戦闘が起こったのは間違いない。これはそれの名残りか……?

 

記憶が無いと言っている期間、多分水晶に眠る前の活動していた間に何かが起き休眠状態になってしまった……?神響の霞廊に向かいたいと強く覚えているのはその場所に行かなければならない何かがある。となると少なくともフィアはあの神響の霞廊にいる神やそれを管理するエルフ族側の神に属するはずなのだが……。

 

「この国の歴史を調べる必要があるかもしれないな……。」

 

キスニルさんから聞いた話だけで判断するなら、パライア勢力と悪しき一族が居てバチバチにやりやっていた。と、フィアは多分パライア側なのだろう神なのだから。それだとこのゴーレムは後者の一族が制御していた物になる訳だが……こんな内部にまで侵入されていたのなら城砦内にある戦闘の跡は納得できる。

 

「そもそも聞いた歴史が本当かどうか分からないしな。」

 

ゴーレムに近寄り観察していると小さく文字の書かれた場所を見つける。

 

「……磁鉄石?」

 

何が刻まれているのかは分からないがどう読むかは分かる。このゴーレムの名前、何だろうか?

 

「おーい、サイトウ?こっちは終わったがどうかしたのか?」

 

気になっていると、修繕を終えたアヴァロ達が戻って来る。

 

「いや、すまんっ。何でもない。終わったならここから出ようか。」

 

結局はフィアが記憶を取り戻さないと真実は解らないと結論付け、探索から帰還した。

 

 





これから夏も終わり気温は下がるので温泉の期待値が高まる季節ですね。
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