この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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準備期間最終段階ですね。そろそろ砂蛍渓谷に向かいましょうか。



第三十四話

 

「雨かぁ……。」

 

天気が悪く今日一日はずっと雨が続いている。天候なのでこればかりはどうしようも無いという事で本日の仕事の大半は中止となった。

 

「エネ達は楽しそうだけどな。」

 

雨の中普段とは違ってあっちこっちをわいわいと動き回っている。雨の中はしゃぐ子供みたいである。

 

「いいな~、楽しそうだなぁ……ねぇねぇアヴァロ、私も加わって来てもいいかな?」

 

「体冷やして風邪引くぞ?」

 

「大丈夫!アヴァロに温めてもらうし看病もしてもらうから!それに神様は風邪を引かないんだよ?」

 

それは神特有なのか、それとも知能的な……いや、聞くのは止めておこう。

 

「今日は雨だし暇だな……何かやる事無いのか?」

 

「イオルちゃんとミケユちゃんはお家でゆっくりしてるって言ってたしサイトウさんもそうしてみたらどうかな?」

 

「……そうだなぁ、適当に過ごすのも悪くないか。家とか練習所で何かしておくよ。」

 

ここに居ても雨を見ているだけだしそれなら少しでも魔法の練習をしておいた方が良いだろう。それにたまにはこっちの二人にも自由な一日があっても良いと思うしな。

 

ちらっとフィアを見るとこっちの思惑に気づいたのか嬉しそうに笑みを返して来る。

 

「そんじゃ、何かあったら呼んでくれ。」

 

部屋から出てエネを呼ぶ。俺が呼んでいるのに気づいて駆け寄ってくる。

 

「雨に濡れたくないからこう……雨を防ぐように上で広がってくれないか……?」

 

ジェスチャーで何とか伝えると要望に応える様に体を広げてくれる。

 

「おお、ありがとな。」

 

頭を撫でながら家へと帰る。玄関着き元の姿に戻ったエネは俺に手を振りながら雨の中に戻っていった。

 

「……昼くらいまで寝るか。」

 

工房は恐らくアヴァロが使うだろうし、探索もこんな雨では危険度が上がる。昼までに雨が上がらなければ練習場でも行こうと考え横になった。

 

 

 

 

 

そんな彼らが過ごしていた時に一人の少女が雨の降る森の奥で身を隠す様に逃げていた。時折何かを探す様に周囲を見渡しながらふらふらと歩いてきたが、遂に力尽きた様に藪の中にしゃがみ込む。

 

小さな身体を藪に隠してしまえば、冷たい雨を多少は凌ぐことが出来た。だが降りしきる雨はそれでも枝葉の間から零れてくる。長い雨の中歩き続けたため着ている服はすっかり濡れ、裾なども泥だらけであった。

 

何かに怯える様に身体を縮こまらせる。その顔はすっかり泣き腫らしているがそれでも涙が出る、それを必死に抑える様に声を殺そうとしていた。

 

暫くするとゆっくりと立ち上がりまた歩き始める。雨の中行く当てが無いかの様に、目的地も目指す方向すら分からないまま遠くへと逃げる様に、誰かの言葉を信じてただ前に歩き続ける。

 

「できそこないの……わたしにはなにもできないから……。」

 

静かに呟く声は雨の音でかき消される。

 

そんな角と翼の生えた幼き少女と彼が出会うのはまだ先の事であった。

 

 

 

 

 

「なぁサイトウ……こんな感じで大丈夫だったのか?」

 

心配そうなアヴァロがこっちを見る。

 

「全然おっけーだ。遠くからじゃ分からないし、複数のパターンを作ってもらえただけ上出来だと俺は思うぞ?」

 

「それなら良いんだが……それにしても……。」

 

「アヴァロー!村の人が商会に用が……って!なにこれ!?私が一杯いる!!??」

 

工房に入って来たフィアが驚いた顔で声を上げる。それも仕方ない。

 

「え、え?なにこれ!?もしかしてアヴァロが私への愛情が抑えられないあまりに造ったの?」

 

「違うわっ!」

 

「そうだったら軽くホラーだよな。愛する人の木製の人形……それも等身大とか。」

 

現代的に言えばフィギュアとかに当たるのか?

 

「えー、それだったらどうして造ったの?あ、わかった!私の認知度を広めるために城砦の入口に置くんだね!」

 

「これは囮に使うんだ。今度の王国との戦いの為に。」

 

フィアの予想を正面からアヴァロがぶった切る。

 

「正確にはフィアの場所を攪乱させるためのデコイだな。四体居るから計四回分の身代わりって感じだ。」

 

「な、なるほど……でも出来が凄く良いねっ!表情はともかく身長とか体格は私とほとんど同じだよ!」

 

「それはつまり常日頃からアヴァロがフィアさんの身体をじっくり見ているってことだな。」

 

「アヴァロからの熱い視線が……なんだか照れますなぁ……。」

 

「俺を変態みたいに言うのはやめてくれないか!?」

 

でも見ているのは否定しないのであろう?

 

「一応他にも装填式だが弓機も幾つか作って置いた。これだけでもフィアが弓を撃ってきていると思わせれるかもしれないからな。」

 

「他にも色々と情報の攪乱はさせるつもりだから即座に場所の特定はされないはずだ。」

 

「例えばどんなことするの?」

 

「フィアさんは結騎を使役しているからな。あえて別の場所に結騎を置けば本人が居ると勘違いしてくれる……とかな。」

 

「それだとそこに居る人が危なくなっちゃうよ?」

 

「それはどこも同じだ。こちらの勝利条件はフィアが無事で渓谷を抜け切る事が第一だ。勿論皆の安全第一ではあるけどな。」

 

「だから基本的にはフィアさんには戦闘には参加せずに城砦を動かすことに集中していて欲しい。」

 

「うーん。私が頑張って渓谷を抜けるのが皆の安全に繋がるってことだよね……わかったよ!」

 

「それじゃあこれらの配置場所を相談しながら置いて行こう。」

 

「イオルとミケユにもちゃんと話は通すし、後は人員の配置場所だな。一応イオルは決まっているんだが。」

 

イオルには専用の防衛場所を用意した。他と比べて暗く遮蔽が多く身を隠しやすい区域である、魔法陣もイオル専用で設定しておいた。

 

「すばしっこいイオルにはピッタリだな。」

 

正直あの区画でイオルを捕えるのは俺には無理だった。攻撃を仕掛けて来たところにエネで押さえてからのカウンターで何とか返せるがまた身を隠されたら振り出しに戻るって感じで長期戦になる。

 

「サイトウさんはどうするの?」

 

「正直俺の仕事は今の前準備でほとんど完了している所あるけど……当日は自由に動くから気にしないでくれ。」

 

「また変な無茶はしない様には。」

 

「魔力切れにならないようにねっ!」

 

二人から謎の心配を掛けられるが……すっかり魔力切れのイメージが付いているみたいだな。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ~。生き返る。」

 

フィアの木像やら防衛当日の話し合いも終わり、疲れを癒すために温泉に来ていた。

 

「やっぱり無理行って造ったのは正解だった……。」

 

熱伝導管を設置後、すぐさま温泉作製取り掛かった。作業や休みの合間に少しでもと進め何とか理想の形を造り上げることに成功した。

 

冬などの寒い気候では無いが、上を見上げると星空が見え魔物から襲われる心配が一切無いシチュエーションでの温泉である。一商売が出来てしまう位には……。

 

「お、先に入っていたのか。」

 

後ろから声が聞こえてきたがこの場所に来るのはアヴァロしか居ない為振り返らずに返事を返す。

 

「お先に堪能させてもらっているよ。」

 

温泉を味わっていると、体を洗い終えたアヴァロが温泉に入って来る。

 

「あぁぁああ……体に染みわたるな……。」

 

「一日の疲れが飛んでく様な感覚がたまらんよな。」

 

「それは物凄く同意だな。」

 

少しの間温泉を楽しみなら雑談をしているとアヴァロから話を切り出して来る。

 

「なぁサイトウ。今回のインフルース王国との戦い、勝てると思うか?」

 

「どうしたんだ急に弱気な発言して?心配事でもあったりするのか?」

 

「いや、出来ることはしたつもりだし勿論無事に乗り越えるつもりではいるぞ?だけどやっぱりな……。」

 

「そんなもん皆思っている事だし気にしたら負けだぞ?戦う前から弱気だと勝てる物も勝てなくなるからな。」

 

「それはサイトウもか?」

 

「当たり前だろ。多分一番ビビっている自信あるからな。だからあんなに過剰に城砦に罠は仕掛けるし回復とかも沢山用意したし皆にも配分してる。最悪城砦内に一時的に籠れるだけの貯蓄も準備も進めて来た。それが尽きそうになっても最悪嵐燐結騎に頼んで空からの物資調達も視野に入れてる……ほら、ビビりだろ?勝つつもりで居ながら敗走した時の事も考えている。」

 

「それは用心深いというんじゃないのか?」

 

「かっこよく言えばな。悪く言えば臆病者、小心者だな。」

 

「でも勝つつもりなんだろ?」

 

「それこそ当たり前だな。王国兵に城砦に手を出せばどんな目に合うか恐怖を植え付けるレベルで嫌がらせするつもりだからな。手を出した方が損を食うって思わせるぐらいに……。」

 

「商会のイメージが落ちなきゃ良いけどな……。」

 

「そしたらまた一から縁を広げて行けば良いだろ?こっちにはそれが得意な女神さまが居るから簡単簡単。」

 

「はは、そうだな。………頑張って乗り切ろうな。」

 

「当然。寧ろ王国軍を全滅させてやろうぜ。」

 

「本格的に国に喧嘩は売りたくは無いんだけどな。」

 

少し呆れた声でこっちに拳を出すアヴァロにお返しとこっちも拳を合わせた。

 

 





温泉で男二人の友情……あつあつですね()

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