とうとう来ました防衛戦当日。
「皆、準備は出来ているか?」
「ばっちりです!」
「問題ない。」
「俺の方も大丈夫だ。」
アヴァロからの確認にみんなが答える。
「よし。それじゃ最後にフィアが配置に着いたら移動を開始しよう。ここからはもう後戻りは出来ない。皆無事に渓谷を乗り切ろう!」
「私も早く抜けれるように頑張るねっ!」
「それじゃあフィアさんはこっちに。場所に着いたら最後に俺の方で厳重に守りを固めるから絶対に一歩も範囲内からは出ないでほしい。」
「わかった、よろしくね。」
「もし移動が必要なら嵐燐結騎で移動するか、最悪弓矢で罠を起動して破壊してくれ。」
所定の位置に移動しながら最終確認を行う。
「一応、水精を全数護衛として付かせる。危機が迫ったなら即座に結騎達を呼び戻してくれ。」
「えへへ、好待遇で何だか緊張しちゃいますなー。」
「実際最重要だからな。本当ならアヴァロも傍に付けたかったけど、腐らせる可能性より外で暴れてもらう事にしたよ。」
「ありがとね、私の為に色々考えてくれて。」
「気にしないでくれ。確かにこれはフィアさんの目的の為に起きた戦いだが今更どうこう言うつもりはない。」
「やっぱり私が神響の霞廊を目指そうとしているからだよね。」
「相手からしたら止めたいし、王国では上から城砦の拿捕しろと指令が出ている筈だ。前回は失敗に終わったが今回は万全の準備をしている、屈辱を晴らそうと全力で向かってくるのは間違いない。」
適当なフォローを入れても良いがここははっきりと知ってもらっておかねばならない。これからも起こり得ることだからな。
「私は街や国の人達に迷惑を掛けるつもりはないのにね……。」
「それを知っているのは俺たちと商会に関わった人達だけだ。赤の他人から見れば山ほどデカいのを動かして街に向かって来ている様にしか見えないからな。」
「街の人達と沢山話せば解決出来たのかな?」
「残念ながら戦闘はどの道避けられないし、幾ら街の人に理解を得ても国がそれを許さない。向こうは民を守るために城砦を止めるって大儀名分で居るからな。」
多くの人に迷惑を掛けていると考えたか、少し落ち込んでいる様に見える。……こういったのはアヴァロの役目なんだがなぁ。
「フィアさん。」
「ん?どうかしたの?」
「こちらが理解されずに怖がられているのは今までと一緒だ。それを無事乗り越えてここまで来ている。それならこの先もやる事は変わらない。違うか?」
「……うん、そうだよね。最初もクミル村の人達から怖いって言われてたもんね。」
「それならリックベルの人達とも分かりあえるさ。フィアさんの得意分野だろ?なんせ縁の女神様だしな。」
「うん……!そうだった。結局やるべきことは変わらないっ。沢山の人とお話して、知り合って行けば大丈夫だよね。」
「その為にまずは身に降りかかる火の粉を振り払おう。話はそれからだ。」
「そうだねっ、えへへ……ありがとね。」
「こういったのは本来アヴァロの役割だったんだがなぁ……ま、元気になってくれたなら良いさ。」
「サイトウさんはアヴァロと違って事実を突きつけてくるタイプだね。ちょっと心にチクチクってきたよ……。」
「変に取り繕う方が嫌だったからな。事実は事実だ。」
「そういった所はまた違う優しさを感じますなぁ……。」
照れくさそうに笑うが、こっちだって恥ずかしいんだ。……戦闘前で少しテンションがハイになってしまっているのかもしれない。
「それじゃあ、俺は戻るよ。必ず全員無事で抜け切るから安心して城砦に集中していてくれ。」
「うんっ、頼りにさせてもらいます。」
手を振りその場を離れ、最後に罠を隙間なく仕掛ける。フィアさんも弓ならその場から動かずに打てるから相手の体勢を崩せば後は罠で処理出来るだろう。
城塞中央に戻るとアヴァロがまだ居た。他の二人は既に配置に向かったらしい。
「フィアは平気そうだったか?」
何気に気に掛けていたらしい。
「大丈夫。いや、正確には大丈夫になったって言った方が正しいかな。」
「そうか……ありがとな。」
こっちが奥で何を話したか大体察したみたいだ。……後で何か奢って貰おう。
「それじゃ俺も行くよ。サイトウも気を付けてくれよな。」
「こっちには最強のエネ様が居るからな。王国騎士など塵芥に等しい……さ。」
カッコつける様に前髪を払う。
「はっ、その位余裕があるなら安心そうだな。」
持ち場に向かうアヴァロを手を振りながら見送る。
「さてと、俺も動くか。まずは城砦に纏わりつこうとする蝿どもを打ち落とす所からだな……。」
グアラクーナ城砦が砂蛍渓谷に立ち入ると、その谷間を挟むように武装した集団が待ち構えていた。
「来たか。あの城砦の規模では北上するのはここを通過するしかないからな。」
覚悟を秘めた顔で振り返り、声を張り上げる。
「皆のもの、遂に雪辱を晴らす機会が訪れたぞ!!前回は責務を終えられず、主へ情けない報告をあげてしまった。此度の成果により、我ら騎士団の誇りを取り戻すのだ!」
「主ギルシュの命は渓谷を通過し切る前に城砦を占領せよとのこと。あの城砦がリックベルに近づく前に何としても確保するのだ。抵抗する者は容赦なく捕えろ!」
「ははっ!ギルシュ殿下の名の下に!」
「我らの背後には守るべき民がいる!我らの雄姿を民が見ている!我らの勇猛さを民が誇らしく語れるように奮迅せよ!」
キスニルの言葉に騎士たちの士気が上がる。
「行くぞ、恐れず飛び移れ!この戦いで我ら竜鰐騎士団の勇名をインフルース王国全土に轟かすのだっ!」
「うおおぉっ!!インフルース王国に栄光あれ!!」
「さぁ!足の生えた城砦を攻め落とすぞ!全軍、前進せよ!」
刀を抜いたキスニルが城砦に向け剣先を向ける。それに合わせてキスニルが率いる竜鰐騎士団が怒号を上げ城砦へと向かう。
「うおおぉぉ!!行くぞっ!」
崖際まで迫った騎士が覚悟を決め城砦に飛び移ろうとした瞬間、足元の魔法陣を踏む。
「うぐっあぁぁああ!!」
意識外からの攻撃が来たことで体勢を崩しその場に倒れ込む。後ろから続く騎士が咄嗟に横に避け難を得たと思いきや、その騎士も電撃を喰らい崩れ落ちる。後ろから続いていた騎士たちは突然の事に立ち止まれずにドミノ倒しの様に前にぶつかって倒れ込む。
「何があったのだ!?」
騎士たちの異常を感じ取ったキスニルが呼び掛ける。
「恐らく敵からの魔法です!最前線の者たちに攻撃があたり勢いが止まっています。」
「流石に楽には乗り込ませてくれないか。」
それでも数は此方の方が多い。その内対応しきれなくなるだろう。それに足元にもこれから乗り込む者たちが大勢居る。少しの時間稼ぎにもならないはずだ。
そう考え引き続き城砦へ向かおうとした時、近くにあった岩場や岩の壁に爆発するような衝撃が起きる。
「っがはっ!?」
すぐ横に居た騎士に飛んできた石が直撃する。
「今度はなんだ!?」
「近くの岩場などが突然爆発し……恐らく既にこちら側に罠が仕掛けられていたかと……。」
「っく、向こうはこちらの出鼻を挫こうという考えか。立ち止まるな!その場に留まれば相手の術中に嵌まってしまう。急いで城砦に飛び移るんだ!」
騎士達が飛び移ろうとしている間にも攻撃は続く。
「近くに敵の気配はしない。予め仕掛けていた罠が正解だろう。ならばここを急いで捨てた方が良さそうだな。」
続々と城砦に飛び移ろうとしている騎士を見ながら馬に跨り走らせる。
「さて、抵抗がいつまで続くか試させてもらうぞ。」
自分も乗り込む体勢に入るため、動き出した城砦より先へ向かった。
防衛中は各々の視点を行き来する予定です。
防衛側は
1.サイトウ、エネ
2.アヴァロ、華燐結騎
3.ミケユ、嵐燐結騎
4.イオル
その他
フィア、水精ティエネー、木精ユイチリ
って組み合わせです。