引き続き防衛戦です。
「……来た。」
ピクピクと耳が動き、敵の侵入を感じ取る。
「騎士たちから、かみさま守る。」
フードを被り、気配を消してから暗闇に溶け込み敵が来るのを待つ。少し待つと足音が近づいてくる。
「くそっ!何なんだこの城砦は……!」
困惑と怒りが混じった声で王国軍が防衛区画に侵入してくる。
「……何人やられた?」
「罠にやられたのが四人です。負傷が三人いますが此方はまだいけます。」
「そうか。流石に罠がさっきの場所だけとは考えられない、むしろここからが本番だろう。」
「了解です。総員、罠に注意して進むぞ。特に足元には気を付ける様に。」
周囲を警戒しながらゆっくりと近づいてくる。
「……暗いな。」
「そうですね。ここは放置された場所なのでしょうか?」
「いや、あからさまに暗いのは逆にあやしい……。」
周囲を警戒している騎士たちの注意を逸らすために離れた場所に小石を投げる。
「……っ!?」
音が鳴った場所に剣を向けた騎士たちの背後に回り、こちらに意識を向けていない騎士二人の首を狩る。
斬られたことで声を出そうとしたが……喉に血が入り声を出すことなくその場に崩れ落ちる。
「どうしたっ!?」
金属が音を立てた事で後ろに向く。足元を見ると首から血を吹き出し力なく痙攣している仲間が居た。
「敵襲っ!!」
仲間の騎士がやられたと気づき警戒を促したが反対側で更に倒れる仲間が視界に入る。確認すると先ほどと同じく首を切られ致命傷を負っていた。
「各個撃破が狙いだっ!固まれ!」
即座にお互いに背を合わせながら周囲を見渡す。
「明かりを灯します……!」
騎士の1人が魔法で明かりを点けた道具を掲げる。ガレキや障害物が多く影に隠れる場所が出来るが、かなり視界が通しやすくなった。
「そこかっ!」
少し離れた場所に小さな人影が見える。
「……見つかった。」
そこに居たのは猫獣人の子供と思われる少女だったが、その子が犯人だと手に持っている武器に付いた血痕が物語っていた。
「でも、もう遅い。」
小さく何かを呟くと遮蔽に身を隠し、暗闇へ消えてく。
「逃がすなっ!追え!」
さっきまで少女が居た場所に騎士たちが辿り着くと、足元から魔法陣が出現し魔法を食らってしまう。
「誘われていたか……っ!くそっ。」
暗い場所かつガレキが多いせいで先ほどの敵を捕えることが出来ない。
「なるほど。ここで足止めをするつもりか……それなら。」
周囲の騎士達にガレキや障害物を手あたり次第破壊するように指示を出す。
「まずは視界を確保しろっ!敵が隠れる場所を減らしていけ。奇襲と罠への警戒も忘れるなっ。」
自分たちの周りの瓦礫を除去していると、どこからともなく石ころが飛んできた。
「……ん?」
複数人で固まっている騎士の1人の鎧に音を立てて当たったかと思うと、周囲に電撃の魔法が放たれた。
「ぎゃぁあああぁっ!!?」
想定してなかった攻撃が直撃しその場に崩れ落ちる。飛んできた石を見ると何かが包まれる様に貼られていた。
「何なんだこれは……。」
何故魔法が使われたか理解出来ずに居ると他の仲間の場所でも電撃の魔法が発動していた。
「……くっ!そこだなっ!」
自分たちに向けて飛んできている場所目掛けて駆ける。障害物ごと剣で切り捨てる。
「また見つかった。」
「もう逃がさん!」
こちらが剣を構え攻勢に出ると、攻撃の範囲から逃れる様に後ろに下がる。おそらく再び身を隠すのだろう。
「無駄だっ!」
距離を置かれない様に更に踏み込んだ瞬間、自分の足元に魔法陣が浮かび上がる。
「!?……くっ!!」
ここで後ろに下がるのは敵の思惑に嵌まると判断し更に前に踏み込む……が、踏み込んだ先で更に魔法陣が浮かび上がる。
「なっ!?」
完全に想定外だったが咄嗟に横に避ける。そのせいで体勢を崩してしまう。
「もらった。」
背後から小さく声が聞こえたのを反射的に腕で首を守る。と同時に敵の剣が首目掛けて振るわれる。
「ぐぅううっ……!」
鎧ごと腕を斬られたが首は何とか守る事が出来た。
「一撃で仕留められなかった。」
そう言うと後ろに下がろうと立ち留まる。ここを逃したら好機は無いと痛む腕を無視して斬りかかる。
「止まらない。でももう終わってる。」
一歩踏み出すと足元に魔法陣が浮かび上がる。既に避ける余力はなく足元から放たれる電撃を全身に浴びる。
「……ぁ……な、ぜ……。」
既に目の前の少女が何度も通った場所にも関わらず自分が踏み入れた時だけ罠が発動している。その前もそうだった。
原因を解明しようと考えるより前に体の限界が訪れ、事切れる。
「……背中の貼って置いた札、使わなかった。」
倒れている騎士の背中から札を剥がし、まだこの区画に居る王国軍に意識を向ける。
「残りは半分程度。でも油断しない。」
再び気配を消し暗闇に溶け込む。
既にこのエリアは暗殺者の狩場になっていた。
「さて、そろそろ騎士さん達がやって来る頃だな。」
相棒の機軸槌を構え、迎撃態勢に移る。
「僕も守るため頑張る。」
「ああ、期待してるぜ。華燐結騎。」
複数の足音がこちらに向かってくる。その音は徐々に近づいたかと思えばサイトウの罠にかかり悲鳴を上げる。そしてまた近づいてくる。
「……来たな。」
何度か罠が発動される音を確認しながら待っていると、疲労している状態の王国軍と対峙した。
「かなり罠に足止めを食らったみたいだな。それにここに辿り着いた数も少ない。」
パッと見た感じだと六人程度しか見えない。それに全員が明らかに息が上がり疲れている様子がありありと分かる。
「……くそ……っ!なん……なのだ、この城砦は……!」
「息を付く暇すら無かった……!至る所罠だらけだっ!ふざけている!」
こちらに気づかずにサイトウの罠の数を嘆いていた。そういえば俺が担当しているここが一番数が多いって言っていたな……。
どの程度か気になっていたが、目の前の騎士の様子を見る限り相当えげつない数を用意してくれたみたいだ。
「気づかれていない今の内に……お願い出来るか?」
隣に居る華燐結騎に先制攻撃を頼む。
「うん、任せてっ。」
杖を掲げると、後ろに控えているゴーレムから石弾が幾つか射出され、王国軍が居る場所目掛けて飛んでいく。
「がはっ!??」
急に飛んできた石弾をもろに直撃し、一人が壁まで吹き飛ばされる。
「ぐっ、て、敵襲っ!」
こちらの存在に気づき、剣を抜く。
「まだまだいける。」
一回で終わらないと更に石弾をゴーレムから飛ばす。流石に警戒していたからか、二度目は誰も当たらなかった。
「敵は二人!一人は情報にあったハーフエルフっ!もう片方は精霊だ!」
「こちらの捕縛する優先順位があるみたいな言い方だな……。」
前にサイトウから言われていたがその通りみたいだ。最優先はフィア。続いて俺になるのだろう。
「簡単に捕まるつもりはねぇ!全力で抵抗させてもらう!」
機軸鎚の先端に貰った札を張る。その間に騎士の1人がこちらに突進してくる。
「はぁああああっ!」
剣を振りかぶり振り下ろそうと此方に踏み込んだ瞬間、足元から仕掛けられている罠が発動する。
「っが!?」
警戒していたからか何とか直撃を避けるがそのせいで動きが止まる。その隙を逃さず騎士に向けて武器を振るう。
「ぐぁああっ!」
機軸鎚の打撃と先端から放たれた電撃を食らい吹き飛び倒れる。倒れた先に更に罠があり抵抗する暇もなく直撃し動かなくなる。
「うわぁ……運が無いな。」
多分今みたいな罠がここら一帯にあるんだろうなと思い下手に攻めるのを止めておく。
「今度はこっちの番……。」
後ろの華燐結騎が杖を掲げ、背後に浮遊しているゴーレムが敵陣目掛けて突進を仕掛ける。上半身しかなく浮いている為、足場の罠を気にせずに動いている。
「攻撃っ。」
「うわぁああああっ!」
攻めあぐねている騎士たちにゴーレムの剛拳が叩きこまれる。轟音が鳴り砕けた地面の瓦礫が周囲に飛散する。
「ぎゃぁああっ!?」
ゴーレムの攻撃から逃げようとその場を動くと魔法陣の罠に掛り、更に飛んできた瓦礫が直撃する。
「くっ!この……!」
負けじとゴーレムに攻撃するが、岩や金属類で構成されている体にまともな攻撃が与えられず薙ぎ払われた腕に弾き飛ばされる。
「このまま攻める!」
杖を掲げ更なる追撃を仕掛ける。距離を取ろうとした王国軍に石弾を飛ばし、距離を詰めても腕や拳の攻撃が繰り出される。更にどこに仕掛けられているか不明な罠の警戒もしなければならない。
「これは華燐結騎のゴーレムだけで充分そうだな……。」
未だに増援の気配はしない。敵もさっきまでの攻撃で無傷が二人、残りの騎士はダメージがあるため動きが鈍い。
「他も気になるのだが……まずは油断せずにこのまま守り切ろう。」
他の皆の事を心配しつつも目の前の敵に意識を切り替えた。
イオル戦
罠の起動設定はイオルより多い重量が掛った時に発動。
アヴァロ戦
アヴァロの元に辿り着くまでに通路を詰め尽くさんばかりの罠がありました。原作で言えばマップの一マス一マスごとに電撃トラップ(ダメージ+麻痺)がある感じですね。