さて、また移動の旅が始まります。
目を覚ます。どうやら、白い部屋での出来事は夢……だったらしい。
「なんだ、現実では無かったのか。」
やけに記憶ははっきりしていた夢だと思いながら寝床から出て、喉を潤す。
「………ん?あれ、これは……?」
足首を見ると、見覚えのあるリングがある。
「これは確か……。」
夢の中であの女神?から貰った装飾品だった。
「……夢じゃない?いや、夢だけど現実にも結果として反映された?」
寝ぼけた頭が覚める程度には驚いた。しかし、考えても答えに辿り着かないのでこう言う物だと決めた。
「次の目的地は……クミル村、だっけ?」
更新されていると思い紙を開く。
「おお、新しく出てるな。」
No3.今日泊る宿を探そう! ★COMPLETE★
new.ディートヘルムに会い、旅の同行を頼もう!
new.クミル村に辿り着こう!
と書いてあった。
「次の事は言ってた通りか。」
詳細を確認してみる。まずは一つ目だ。
『お店の場所は恐らく街の外にある?町の人に噂を聞こう!』
続けて二つ目、
『クミル村に着けば、素敵な縁に出会えるかも……?』
「素敵な縁って合コンかなんかでもあんのかよ……。」
目的がよくわからない。着けばわかるみたいなことを言ってたが。
「取りあえず、支度して場所の特定からか。」
朝食を食べながら、どう交渉すれば良いのか考えていく。お金は心もとないから勘弁してほしいものだが……。
宿を出て町の人に聞き込みを行った。どうやら来ているのは間違いないらしい。少し前に街の外でお店を構えているとか何とか。大丈夫なんだろうか?町の外に店など構えて……。この街の外壁を見る限り、魔物から守るためだと一目で分かる。つまり外は安全が保障されないのだ。
「辺境を回っているぐらいだし慣れているのかもしれないな。」
それなら安全に移動が出来そうである。
街を歩き、門から外に出る。自分が入って来た場所とは反対から出てみた。
「……多分、あれかな……?」
門からそこまで離れてない位置に、木造のキャンピングトレーラーみたいなのが見える。煙突らしき場所からは煙が上がっている。
近づいていくと棚にはよくわからない商品が並んでおり、工房と思われる設備もあった。
「ん?どうした坊主、何か買い物か?」
店内に居た人から声をかけられる。眼帯をしており、葉巻を吸いながら何かの作業をしていた様だ。
多分、この人だよな?そのまんまの見た目だし……。声と見た目が結構厳ついし。
「あ、いえ、買い物……では無くて、人を探しておりまして……。」
「人探し?またわざわざこんな店にまでか。」
「はい、えっと、ディートヘルムさんって人を……。」
あなたですよね?という視線を向けながら答える。
「なんだ、探してたのは俺の事か。俺がそのディートヘルムだ。それで?一体何用で。」
自分が捜し人と分かり、手を止めてこちらを向く。
「実は……。」
用件と目的を話す。
「なるほどなぁ、ここから南の村に向かいたいからついでに一緒に連れてって欲しいと。」
「そうなりますね……。クミル村って村なのですが。」
「ああ、あそこか。」
「どう……でしょうか?」
「そうだな……こちらとしては別に構わないんだが……、なぁ坊主。」
「は、はい?」
「村に行く途中までなら同行は可能だ。しかし、別の村での仕事があるから村まではついていく事は出来ない。だからそこからは一人で行くことになるぞ?」
どうやら別の仕事が入っているらしい。
「こちらとしてはそれで全然大丈夫です!」
「うーん……、でもなぁ……。」
でも納得は行かないらしい。
「おまえさん、一人で大丈夫か?見た所そこそこ育ちが良さそうだし、魔物と対峙したことがあるとは思えなくてな。もし遭遇しちまったらどうするんだ。」
「出会う可能性があるんですね……。」
「そりゃあな。まぁ、比較的に安全な地域ではあるし出会っても全力で逃げれば何とかなるはずだ。」
「そうですね、出会ったらまた全力で逃げることにします。」
「なんだ、すでに経験済みだったか。」
少しの呆れと揶揄う様な表情でこちらを見る。確かにこれは渋いな……。
「まぁいいだろ!出会わない事を神様にでも祈っておけ。日頃の行いが良ければ何事もなく村に着けるさ。」
「それでは……一緒に行っても?」
「ああ。と言っても道中までだけどな?」
「ありがとうございます!」
「なぁに、気にすんな。明日朝にまたここに来な。明日ここを出るつもりだからな。」
「分かりました。」
「それと、ついでに何か買って行っても良いんだぜ?」
にかっとお茶目そうな顔をしている。
「正直懐に不安はあるのですが……。」
「冗談冗談、無理してまで買わなくていいからな。」
そうなんだが……なにか金策でもあれば良いんだけど……ん?待てよ?
もしかしてと思い、袋の中から色のついた液体が入った瓶を取り出す。
「あの、すみません。これって売れたりすることは可能ですか?」
「ん?これか?ちょっと貸してくれ。」
ポーションと思われる瓶を三つ手渡す。
「一応買い取る事は可能だが……良いのか?保険として持っておかなくても。」
「こういうのってもったいなくて使えないんですよね……それならいっそお金に換えて懐を温めた方が賢いかと。」
「まぁ、坊主がそういうならいいが……。」
渡された瓶を観察し、専用の置物と思われる場所に置く。
「こっちの二つは買いとっておく……が、こっちは売らずに持っておきな。」
三つの内、緑色の液体の瓶だけ返される。
「こういうのはいざと言う時の保険として保管しておくのがベストだ。旅には何があるかわからないからな。」
多分、緑のは体力とか傷を治す系のなのだろう。危険が伴うから保険として備えるのは大事と……。
「分かりました。それじゃあそのふたつでお願いします。」
「おうよ。んじゃ、これが買い取り金額だ。」
瓶を売り、お金を受け取る。
「……思ったより高く売れるんだな。」
この世界での回復などの薬が、どの程度の価値があるかは分からないが懐は温まった。
その後、少し同行するにあたっての注意やルールを教えて貰い、解散した。
「つまりなんだ、お前さんはその村に行かなくてはいけないってことか?」
次の日、無事ディートヘルムさんと合流し、出発となった。この移動工房をくそデカい馬が引きながら道を進んでいく中、暇が出来たのでお互い世間話を始めた。
「そうなります、命令……とまでは行かないですが自分の今の目的みたいなものです。」
流石に白い部屋であった事を正直に話す訳には行かないが、多少の事情は濁して話しておいた方が良いと判断した。
「昨日の持ち物もその依頼主が支給したと?」
「みたいな感じです。」
「随分と太っ腹な依頼主なこったっ。」
「そうなるんですかね……?」
「そりゃな。昨日買い取ったあれ。軽々と渡すようなもんじゃないと思うぜ?もしかして、その指輪もか?」
「これですか?いえ、これまた別ですね。話すと長くなるのですが……。」
一昨日の出来事を説明していく。
「なるほどなぁ、運が良かったってことか。まさしくお前さんにとって天使だったってわけか。」
「ですね、彼女に介抱されなかったらどうなってたか……。」
そうして街から離れ、村へと向かう。道中は特に問題は起きず平和に歩みを進めて行く。
「おっと、坊主と一緒なのはここまでだな。」
どうやら、目的地まで着いたらしい。
「ここから左の道を真っ直ぐ行けば村に辿り着く。分かれ道とかねぇはずだから迷いはしないだろ。」
「すみません、ここまでありがとうございました。」
道に降り、お礼を言う。
「気にすんな、いいってことよ。それよりも気を付けて行け。」
「はいっ。またどこかでお会いしましょう。」
「おう、坊主も元気でな!」
お互いに別れを告げると、馬が動き始め移動していく。自分とは違う別の道に行くのでその先にも村があるのだろう。
工房の姿が見えなくなったのを確認し、左の道へ進み始める。
「そこまで遠くないと良いけど……。」
まだ日が真上いる位なので時間には余裕はある。食料にも問題はない。
武器とか護身用を何か買っておけばよかったのかも……。
後は、何事もなく村に辿り着くことを祈るばかりであった。
グアラクーナ城砦まではさくっと進めて行きたいと思います。
次回にようやく女神とその使徒さんが出てきます。