ラスト戦闘シーンです。
戦闘が始まり、キスニルさんの両側に居る騎士が剣を上段に構え、こちらに向かって来るのを見て後ろに下がり即座に相手との間に仕掛けていた罠を起動する。
「例の罠かっ!」
地面の魔法陣が光ると同時に即座に横に避ける。反応する速さから見て警戒はしているし足止め程度になるかどうか怪しいので右の騎士目掛けて即座に魔法を放つ。
「ぐっ……魔法だと!?」
俺からの直接の攻撃を避け切れずその場で仰け反り足を止めたのを見て逆側から迫って来る騎士にも同じ魔法を撃つ。
「そんなものが当たるかっ!!」
仲間が撃たれたのを見て即座に回避行動を取る。そこに目掛けてノータイムで腕に仕掛けていた魔法陣を開放する。
手では無く腕から電撃の魔法が飛んでくるのは想定外だったか防御も取れずに直撃する。そのまま敵騎士の足元にある罠を発動し、更に追い打ちで手を向け魔法を放つ。
「ぎゃああぁぁあっ!?」
最後にトドメを差そうとしたところで正面と先ほど止まっていた右側の騎士が距離を詰めてくるのを見て全力で後ろに下がる。
「待てっ!無理に深追いをするな!」
孤立する二人に罠を当てようと考えていると、後ろからキスニルさんの声が響き動きを止める。
「どうした?向かって来ないのか?」
「どの様な戦い方をするか確認してみたが……まさか水精ではなく魔法を使って来るとはな……。」
こちらの戦い方を見たかったと話すキスニルさんに手を向けて電撃を撃つ。が、簡単に避けられてしまった。
「この距離で易々と当たってはくれないか。」
袋から瓶を取り出しに飲み干す。
「……回復を?」
「こちとら一般人やらせてもらってるんだ、そんな連続で魔法を放つのは厳しいんだよ。」
「それを敵の私に話すべきでは無いと思うのだが。」
「どうせすぐに分かることだ、隠すだけ無駄。」
こちらが連発出来ないと知ると騎士達三人がそれぞれ離れ、ゆっくりとこちらとの距離を詰めてくる。
「また嫌なやり方を……。」
仕方ないので囲まれない様に右側の騎士目掛けて走り出す。迎え撃とうと剣を構える相手に向かって手を翳さずに、左の瞳に仕掛けていた魔法を開放する。
「なっ!?魔法!??」
多分手とか腕を警戒していただろう。反応出来ずに直撃する。背後からも驚愕する声が聞こえたが無視し更に距離を詰める。
「っ……!!」
体が痺れて上手く動けない騎士の腕を全力で蹴り、手から剣を手放させて鎧に触れゼロ距離で魔法を使う。指輪が光り右手から小さなスパークが起こると、鎧を削るような金属音と共に壁まで吹き飛んでいく。
「がぁああぁああ!!?がはっ!」
壁に叩きつけられその場に崩れ落ちる。魔法が当たった部分は鎧が破壊されており血まみれであった。城砦内のゴーレムに使った魔法を撃ったが……。
「ああ……まずいまずい。」
後ろから向かって来る騎士を無視して倒れた騎士に駆け寄り容体を見る……どうやら無事生きている様だ。
死んでもらっては困るので袋から瓶を取り出し傷口に掛ける。
「……攻撃してこないのか?」
背後から来ると警戒していたが一定の距離を取りこちらを警戒していた。
「仲間をどうするつもりだ……?」
「……そうだな、死んでもらっては人質にもならないからな。生きているからこそ価値があるってもんだ。」
「貴様……!!」
俺の背後は壁、正面には騎士が二人でその背後にキスニルさんが居る。本人は攻めてこないが……様子見か?
「キスニルさんは来ないのか?大事な仲間が人質になっているぞー?」
聞こえる様に大声を出し足元のお仲間を小突く。目の前の騎士からは殺さんばかりの殺気が漏れ出るが、キスニルさんは顔をしかめるだけで冷静だった。
「二人とも落ち着け、これも相手がこちらを怒らせ冷静さを無くすための罠だ。」
騎士二人を宥めながら前に出てくる。ようやく本番か。
「サイトウ。君の戦い方は十分に見せてもらった。水精が出てこないのは出し惜しみか?それともこの場に居ないのか?」
キスニルさんが敬称を付けずに俺を呼ぶ。
「いーや、キスニルさん為の出し惜しみだ。」
袋を軽く叩きエネを呼ぶ。出て来たエネは俺の腕から体へと巻き付いていく。
「……やはりそうだったか。」
少し笑う様に目を閉じ、再び目を開き剣を構える。
「竜鰐騎士団所属キスニル・カグ……。」
ーーー今。
こちらに名乗るキスニルさん目掛けて即座に魔法を撃つ。こちとらそんなのに付き合う必要もない。
「リっ!?くっ!」
名乗りの途中に撃たれたのにも関わらず即座に回避を取る。それを見て避けた方向に居る騎士に広範囲で魔法をばら撒く。
「くそっ、範囲が広い……!」
避けられないと察しその場で防御態勢に入る。数秒の隙を作り、即座に反対側の騎士とも距離を詰める。
自分に向かって来ると分かり迎撃しようとする相手に手を翳す。魔法を撃ってくると回避行動を取ろうとしたが、俺から出たのは魔法では無くエネの腕だった。
想定外の攻撃を避けようと体勢を崩した騎士だが、避け切る前に意志を持った触手がそのまま薙ぎ払う。
「かはっ……!?」
壁際まで転がって行くのを追いかけ追い打ちでエネからの水弾を食らわせトドメに電撃をお見舞いしておく。背後から迫る足音に振り返らずにフードの背中に仕掛けていた魔法陣を全て開放する。
「なにっ!?」
背中から魔法陣が出現したのを見て驚きつつも全力でその場を飛び退いていた。
「ちっ、まともに食らいはしなかったか……。」
まぁ、魔法陣を見逃さなければ避けれるって考えれば対処は難しくないしな。不意打ちでもない限り。
「……君は何者なんだ。」
困惑と闘志を燃やした様な表情でこちらに語り掛けてくる。
「……それは別に、今知るべきことではないだろ。」
警戒し向かって来ないのを見て魔力を回復させる。そうしている間に俺を挟むように左右に分かれる。
「それは各個撃破されるだけの的だ……ぞっ!」
エネに足元に転がっている騎士をキスニルさんに向けて投げつける様に指示を出す。それを受けて気絶しているお仲間を投げつける。仲間を斬る訳にも行かないので咄嗟に剣を下ろし避けている。
「エネっ!キスニルさんの相手を任せるっ!」
俺の身体から離れるエネを信じて反対側の騎士に向かって飛び出す。背後で戦闘音が聞こえるが気にせずに一直線に距離を詰め、目の前の敵に集中する。
剣を構え迎え撃とうと此方に向かって来る騎士に魔法を撃つが即座に回避される。
「織り込み済みなんだよっ!」
着ているフードを脱ぎ投げつける。咄嗟に剣で切り裂いたが切れ込みが剣に引っ掛かる。
「起動、ーーー
服に仕込んでいた残りの魔法陣を全て発動させる。服から幾つもの魔法陣が浮かび上がったのを見て慌てて剣を捨てたが間に合わず周囲に電撃の魔法が炸裂する。無差別に飛び交うが至近距離に居た騎士は当然避けれず電撃を食らい倒れる。
「念には念を……!」
フードを回収するついでに魔法を撃っておく。小さな呻き声と痙攣したのを見て戦闘継続は出来ないと判断し後ろの戦闘音に体を向ける。
状況を見ると、エネが押され気味になっていた。手数で攻撃しているがそれらを捌き、避けながら徐々に距離を詰めていた。キスニルさんの攻撃範囲に入りそうになれば味方の騎士を投げつけては距離を稼ぐ。
「残りはキスニルさん一人だ。」
エネの傍まで向かい、目の前の残り一人の敵に向け宣言してやる。
「まさかこんなに早く決着が付いたとは……。」
「大事なフードを犠牲にしたけどな。」
背中部分がザックリと斬られているフードを見せる。
「先ほどの魔法はそれを使ったというわけか。」
「一瞬で片を付けるには一撃に掛けるしかなかったからな。お陰でこいつにあった魔法が全部無くなった。」
話をしていると正面のキスニルさんの視線がわずかに俺から外れ、横にズレる。嫌な予感がしたので振り返らず後ろに倒れているであろう騎士の方角に向けて魔法を撃つ。
「なにっ!?ぎゃああぁぁあ!!!」
「……どうやらお仲間が立て直すために時間稼ぎと言うわけか。」
あぶな。キスニルさんのが無ければ後ろから襲われていたかもしれないのか……。撃っておいて良かった……!
でも正直キスニルさんとやり合うと無事でいられる可能性がそこまで高く無いから出来れば戦いたくない。ぶっちゃけここに留める事さえ出来れば御の字である。無理に倒す必要な無いよな……?
さっきの不意打ちで少し冷静になる。
「……さてと、キスニルさん。無駄な抵抗をせずにそのまま俺と雑談でもしないか?」
「無駄な抵抗だと……?それに急に何を言い出すかと思えば雑談などと。」
「昨日話し途中だったキスニルさんの故郷の話でも良いしさ……。」
「ふざけるのも大概にしておけ!」
「こっちは大真面目だ。それならキスニルさんが抵抗する素振りを見せるたびにそこで倒れているお仲間さん達に危害を加えるって言ったらどうする?」
「君にそんなことが出来るわけが無い。」
馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに剣をこちらに向ける。
「稲妻。」
一番近くで倒れている騎士に向けて魔法を放つ。意識がわずかにあった様で一瞬悲鳴を上げたが直ぐに静かになった。
「や、やめろ!本気か!?」
「本気に決まってる。」
こちらを睨むキスニルさんに向けて電撃を撃つが、回避される。それを見て別の騎士に向けて魔法を撃つ。
「何故撃った!抵抗しなければ撃たないのではないのかっ!」
「回避するのは抵抗に含まれるからな。」
「貴様……っ!」
サイトウ殿→サイトウ→貴様。にどんどんグレートダウンしている。そろそろ、『外道が……!』とか呼ばれそうな気がする。
「どうする?抵抗続けるか……?」
こちらを殺さんと目で見てくる……が、突然脱力したかと思うと目を閉じ深呼吸を始める。
何度か繰り返し、ゆっくりと目を開く。
「………騎士たちの事は好きにするがいい。先に宣言しておく、この先倒れている仲間が痛めつけられようが私は止まらない。」
覚悟を決めた目で真っ直ぐとこちらを射抜く。……これは、まずい。
「もとより……皆は決死の覚悟でこの戦いに挑んでいる。それで悲願の達成の邪魔になるくらいならば捨てゆくのみっ!!」
再び剣を構えこちらに向かって来る。
「エネ、退避するぞ。」
距離を空けようと魔法やら罠を使うがそれらをことごとく躱される。エネの水弾を避け攻撃を捌き続ける。
「私がこの程度でやられると思ってもらっては困るなっ!!」
本気モードなのか分からんがさっきとは比べ物にならない位には早いし強い。くそが、一人になった事で寧ろ枷が外れたパターンかこれ!
ここでは少し分が悪いので全力で城砦内部から出ようと走る。道中の罠を全部使い切る勢いで何とかキスニルさんから距離を空けれている。
「エネ、全力で行けっ!」
走り続け外の光が見えて来たのを確認し、エネに指示する。
するとエネから大量の水が飛び出す。通路を埋め尽くす質量攻撃に流石のキスニルさんも押し負け波に流される。
「よし、この隙に外に出よう!」
袋から水の瓶を取り出しエネに渡しながら駆け抜ける。外を確認すると渓谷を抜ける直前だった。
「逃がさん!」
背後から迫って来るキスニルさんから離れて対峙する。よく見れば先ほどの水でびしょ濡れだった。
「残念だがもう渓谷を抜けるぞ?」
「くっ、ここを突破させてしまうとは……!」
そうこうしている内に城砦が砂蛍渓谷を突破する。
「残念だが俺たちの勝ちだな。」
「兵力はまだ残っている!まだ諦める段階では無い。」
「でもこれ以上の増援は望めないだろうな。城砦に取り付くのすらままならなくなる。」
「それでも……!我々は示さねばならないのだ。街に被害が出せない為に城砦を止める!」
「……もう増援は来れない、それに対してこちらは誰一人やられていないし未だにフィアさんを捕えられていない。場所すら補足出来ていないこの状況は負けと言っても良いのではないのか?」
「そんなこと言われなくてもわかっている。しかし戦いを止める訳にはいかない!この巨大な城砦が街へ近づくだけで民が怯えてしまう。ならば我々が止めることで……行動で示さねばならないのだ!」
「……キスニルさんの覚悟はよく分かった。」
これ以上何を言っても無駄なのだろう。
「それなら俺も全力で城砦から王国軍を退けよう。誰一人この地に残る者が居なくなるまでな!」
エネも充分に回復している。更に木精を呼び出す。
「……な!?これは……。」
俺の周辺から木の根っこが生え蠢き、近くに木精が出て来る。
「なるほど、さっき城砦内部で入口を塞いだのはこれだったのか……。木精霊まで従えているとはな。」
「さぁ、俺も持ち出せるだけのものを使わせてもらうぞ。」
二人の準備が整い、先にキスニルさんが動き出す。それに合わせて魔法を撃とうと手を前に出す。
戦いが始まったと思った瞬間、城砦中に角笛の様な音が響き渡った。
次回は新キャラ金髪王子が……!?出てきます。はい。