この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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復興編ですね。



第四十四話

 

街の復興作業が始まった。

 

倒壊した家の撤去や、壊れた家の修復も勿論だが、まず先に必要なのは外壁を元に戻すことだった。

 

「アヴァロっ!ここに石材や材料置いてくぞ!」

 

「すまんっ、助かる!」

 

街の外壁ともなれば大掛かりな作業で必要な物も馬鹿にならない。家なら倒壊した残りから何とか使いまわせる部分もあったが壁に関しては『お詫びとして前より丈夫なのを造りたい』と言うアヴァロからの強い要望があったためその素材採取に追われていた。

 

「そこの黒髪の兄ちゃんっ、これを一緒に運んでくれないか?」

 

道中に荷物の搬送を頼まれたりもした。皆早く街を元通りにしようと活気が出ている。

 

「フィアさん。怪我人とか出たりしたら遠慮せずにこれを使ってくれ。」

 

小さな子供の治療をしていたフィアに治癒の水を幾つか渡しておく。魔力はいつ必要になるか分からない。

 

休憩になればイオルが作った料理を振る舞う。思った以上に好評であった。あんなことがあったのに街の人達はこちらを好意的に受け入れてくれる。美味しそうに料理を食べる場には笑顔と笑い声が溢れていた。

 

「凄いな……これは街の人達が良い人たちなのか、フィアさんの人柄が成せる業なのか。」

 

勿論アヴァロが率先として皆を引っ張って街を直してるのもあるのだろう。それでも打ち解けるのが早すぎる。俺も頑張らないといけないな。

 

「さてと、壁を直すにはまだまだ必要だ。さっさと直すために頑張りますか。」

 

腹を満たし、再度材料の採取に出掛けた。

 

 

 

 

「そっちにまだ必要そうかー?」

 

「いや、こっちは足りそうだ。次に行こう。」

 

「オッケー。そんじゃエネ、次に動こう。」

 

壁の修復が進み、いよいよ地面からだけでは届かなくなったので城砦を壁に横付けし、更にエネに必要な材料を持って貰って作業を進めていた。

 

「このペースなら明日には元通りになりそうだな……。」

 

既に下から見上げる壁が立っている。これで街の人達は漸く安心出来るだろう。前より強度の高い壁を造ったとアヴァロが胸を張って話していた。何度も設計図を見直し、強度の確認試験も繰り返し行っただけはあるみたいだ。

 

次の日、完成した壁をみんなで見上げていた。

 

完成した外壁を見て街の人達は感慨深い表情をしていた。

 

「よかったね。みんな喜んでくれて。」

 

「ああ、皆のおかげでここまで早く修理することが出来た……なんて感慨にふけってる暇はないけどな。」

 

隣で見上げるフィアとアヴァロも達成感から嬉しそうな顔をしていた。確かに完全に元通りって訳では無い。まだまだ直さないといけない区画や道、作り直す家、街を離れ城砦に住む人たちのために家を建てなければならない。やる事が多いのでその分必要な物資も増える。持ち込んでも次戻ってくると無くなっている事など当たり前だった。一応街の人も手伝ってくれるがそれでも足りていない。

 

「何か別路線からの材料を探す必要があるかもしれないな……。」

 

もっと簡単に家を造るために煉瓦を制作出来る素材……。今度アヴァロに相談してみるか。

 

 

 

「今日も今日とて復興しないとな。」

 

壁の修復を終え、引き続き街内の修復に取り掛かる。こちらは既に外壁と同時進行で進めていたため大きな部分は終わっており細かい箇所を直すだけだった。

 

「ん?あれは、キスニルさんか?」

 

アヴァロとフィアを見かけたと思ったら誰かと話していた。何か話しているのだろうと自分の作業に戻り、暫くしてまた見ると追加でイオルとミケユまで居た。

 

「……なんの話をしているのだろう。」

 

気になったが持ち場を離れて遅れが出るのは気が引ける。切りの良い所で行こうと決め作業を続けた。

 

 

 

「よし、一通り終わったな。」

 

綺麗になった道を見て満足する。重労働だがこういった達成感はやはり気持ちが良い物だ。

 

「精が出てるな。」

 

後ろから声を掛けられ振り返る。

 

「キスニルさん?」

 

「先ほどのアヴァロ達にも言ったが街の復興を手伝ってもらい感謝する。」

 

感謝を示す様にこちらに頭を下げてくる。

 

「自分たちで蒔いた種だしな。するのは当たり前の事だろ。」

 

「ふふ、やはり同じことを言うのだな。二人の言う通りだ。」

 

俺の返事に対して面白そうに笑う。二人……?アヴァロとフィアが俺の言う事を予想したとかか?

 

「それで、俺に何か用でも?向こうで何か話していたみたいだが。」

 

「ああ、実のそのことをサイトウにも伝えておこうかと思って来たんだ。」

 

何やら大事な話しみたいだな。

 

「既にフィアから許可を貰ったのだが、今後私が城砦へ滞在することになったんだ。」

 

「滞在?キスニルさんがか?」

 

「そうなるな。」

 

「えっと、理由を聞いても?」

 

「城砦には街の人達が移り住もうとしているだろ?」

 

「そうだな。」

 

既に移住済みやこれから移る人も居る。

 

「一度に人が大勢増えるのだ。管理体制など直ぐには整えられていないだろう。そこで私も少しでも助力したいと思ってな。」

 

「なるほど……。」

 

確かに懸念点ではあった。城砦に住めば街に住むのと勝手が変わる。住んでいる人達が生活できるための体制を作る必要はあるし、騎士団でまとめ役をしてくれていたキスニルさんならそこらへんは問題無さそうだ。

 

「俺からは特にいう事は無いかな。これから宜しく頼む。」

 

「フィアもだったが、随分とあっさり受け入れるのだな。こう、言いたい事とか無いのか?」

 

「既にフィアさんが許可出してるなら何言っても無駄だしな。それにキスニルさんの人柄は知っているし戦力としても超頼もしい人だ。こんな優良物件こっちからお願いしたいほどだ。」

 

「自分で言うのもなんだが、少し前までは敵だったというのに……。」

 

「そんなこと言ったらイオルとか仲間になる前は俺の命奪おうとしてたしな、大した問題じゃない。」

 

「命を……!?しかし今は仲間になっているのだが?」

 

「まぁ、色々数奇な出来事があって城砦に住むことになったんだ。今では頼もしい仲間だな。」

 

「なるほどな、それなら私も問題がないというわけか。」

 

「そう言う事だ。うちの神様は寛大な心を持っているんでな。」

 

寛大なのか何も考えてないのか、神の思考回路は人とは違うのか……。

 

「と言う感じでこれから宜しく、色々大変ごとに巻き込まれると思うが、一緒に頑張っていこう。」

 

「ああ。よろしく頼む。」

 

握手を交わし、丁度良い所だったので一旦休憩に入る。

 

「それじゃあ、キスニルさんの家も用意しておかないとなぁ……。」

 

フィア辺りが、『今日は宴会だぁー!』とか嬉しそうに騒いでそうだと想像しながら、近くの岩場に腰を下ろした。

 

 

 

それから暫くし、キスニルさんが城砦に住んだ祝いとして家に招待してもらった。

 

「ちーす。キスニル。入るぜー。」

 

「お邪魔しまーす。」

 

「おお、よく来たな、遠慮なく上がってくれ。」

 

中から声が聞こえ、二人に続いて中に入る。するとアヴァロから驚くような声が上がる。何事かと思って後ろから覗くと、そこに薄着で料理の支度をしているキスニルさんが居た。

 

「ふむ、料理の支度をするのが遅かったか……。少し待ってもらう事になるが、構わないか?」

 

「い、いやいや。別にそれくらい構わないけど、それよりっ、その恰好はなんだよっ!?」

 

突っ込みを入れるアヴァロに対して、首を傾げながら下を向き後ろを見たりと自分の恰好を確認した。

 

「なにかおかしいか?」

 

「いやっ、おかしいよ!?男が来ると分かってるのにその恰好はまずいだろ!」

 

ごもっともな意見が飛び出す。

 

「そうか?家ではよくこの恰好なのだが……。」

 

さも当たり前の様な口調で返事をする。うーん、羞恥心が無い系かぁ。

 

「それでも、アヴァロやサイトウさんが居るんだから気を付けないとダメだよ。誘惑しているのなら別だけど。」

 

誘惑しているのなら良いのかい。

 

「特にそう言った目的は無かった。今後は注意しよう。」

 

やはりそういう系統のお人だったか。それよりも……。

 

「騎士さま。なんか、匂いヘン。」

 

イオルから嫌な指摘が飛ぶ。

 

「この料理の事か?ふふん、楽しみに待っててくれ。この間、近所の者から珍しい調味料を分けてもらってな。今日初めて使うのだ。きっとおいしくなるぞっ。」

 

「……今日、初めて?きっと……?」

 

自信あり気なキスニルさんを見てイオルが信じられないと言った顔をしている。イオルがそう言うってことは……。

 

「なんか、色も変なんですけど……。なんて料理でしょう?」

 

「料理名か……。考えたことなかったな。良い名が思いつけば名付けてみよう。」

 

「ど、独自性が高いのですね。わぁ、楽しみ……。」

 

何かを察したミケユが現実から目を背ける。言動と顔が一致してないし。これは更にメシマズも追加か……。

 

皆が不安に声が上ずってしまういるが、フィアだけはウキウキとしていた。

 

「へぇ、今日はお酒も持ってきたし、合う料理なのかな?ちょっと味見してもいい?」

 

何も知らないフィアが鍋に入っている何かを味見……いや毒見した。

 

「ーーーっ!!??」

 

口に入れた瞬間目を見開く。

 

「がががががっ!?」

 

壊れた機械の様な声を出し、その場に崩れ落ちる。

 

「どうしたっ!な、なにが起こった!?」

 

即座にアヴァロが体を支える。

 

「あ、ああぁ……。アヴァロ、これ……。変に甘くて、でもなぜか酸っぱくて、欲しくない感じで、後味が苦いんだよ。」

 

逆に何を入れたらそんな味がするんだよ!?

 

「ふむ、どれどれ……なるほど、舌がピリリとするな。新しい。」

 

ピリリ!?辛いのかっ。しかも食べても平然としている。味覚までやばいのか?

 

「もうすぐ完成だっ。大丈夫、きっちり火を通したから問題なく食べられるぞ!」

 

もはや何を目指しているかよくわからない料理が皿に盛られる。しかし誰一人として手を出さない。

 

「サイトウ……。」

 

『この状況どうするんだ!?』と言いたげにこっちを見てくる。

 

「……飯は食わずに酒で満たすしかない。それでなんとか逃げ切るんだ……っ!」

 

先の城砦防衛戦よりも緊張が場を包む。イオルとミケユは耳と尻尾がしな垂れている。

 

「どうしたのだ?みんなも食べないのか?」

 

誰も食べない事にキスニルさんが不思議そうに聞いてくる。

 

くそっ、これは誰かが食べて感想を言わないといけない奴だ……!するなら、俺かアヴァロかだろう。

 

「……アヴァロ、俺が行く。」

 

「っ!?正気か!」

 

「誰かが犠牲にならなければいけない……それに、どんな味か怖い物見たさがあるのも確かだ。」

 

スプーンを手に取り魔の料理と向き合う。

 

「墓は青空が良く見える丘の上に建ててくれ。」

 

「サイトウ……っ!」

 

「サイトウさん……。」

 

「はやまっちゃ、ダメ。」

 

皆に声を聞きながら一口掬い、口に入れる。いざっ!

 

「ーーーーっ!????」

 

舌に乗せた瞬間、脳にスパークの様な何かが駆け巡る。

 

それは弾けたと思うと視界がチカチカと光る。味覚が認識出来たのは苦みと痛み、その中で粘りっ気の様な甘みが広がる。嗅覚など一瞬で機能停止になった。

 

「あががががっ!!?」

 

言葉を発しようにも身体が食べた物を拒絶するように痙攣する。

 

「サイトウっ!!?」

 

隣でアヴァロが声を掛けている様な気がするが、もはやどうでも良い事だった。

 

力が入らず手からスプーンを落とし、テーブルに顔から崩れ落ちる。

 

兵器に使えるんじゃないのか……毒とかに。

 

頭の片隅に過ぎった言葉を最後に、視界がブラックアウトした。

 

 

 

 





人を殺し得る魔の料理……。

フィアは女神だから何とか耐えきりそうなイメージ。主人公は……きっと身体が耐えれるだけの耐性を付ける為に適応させてそう……。

後、二話位で三章が終わる予定です。

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