遂に三章も終わりですね。
日が落ち始め、夜が現れ始めると宴会も終わりが近づき、皆がお開きモードとなっていた。
「それじゃあ少し寂しいけど、片付けを始めようか。」
アヴァロの号令と共に各々片付けを始める。余った食材は街の人達が持って帰り、残っている料理は皆で何とか食べ切った。
「それでは各自、気を付けて帰ってくれ。」
まだ小さな賑わいがあるが、暗くなってきたことでそれらも落ち着きを見せる。そんな中、飲み切れていないアルコール類をちびちびと飲んでいた。
「さっきまでの賑わいを思い出すと何だか寂しく思えるな。」
祭りなどで閉会した後に、片付けを終えた会場と同じ気分である。要は感傷に浸っているのだ。
「サイトウ?まだ残っているのか?」
そこに、俺を見つけたアヴァロがやってくる。
「ん?ああ……まだ飲み切れてなくてな。」
隣に座り俺と同じように先ほどまでの宴会の場を見る。
「何とか乗り切れたな。」
正面を向きながらそう呟く。
「そうだな、リックベルの人達に救われた所は大きいけど、今回の戦いは勝利と言って問題無いだろ。」
「街の人達には感謝しないとな。壁を壊しちまったのにここまで好意的に打ち解けれるとは想像してなかったよ。」
「アヴァロの貢献と、フィアさんの明るさが成せた業だと思ってる。尊敬もんだな。」
「皆のおかげだろ。俺一人じゃこうも上手く行けなかった。勿論俺とフィアだけでもだ。」
「そうだな。皆で乗り越えて掴んだ物だったな。」
日がほとんど落ち切り、空は夜に染まっていた。
「サイトウはもう少しここに残るのか?」
「これを飲み切ったら戻るよ。そっちは?」
「……実は、この後、フィアが部屋に来ることになっているんだ……。用事があるって。」
あー、聞き返さなければ良かった。
「……ファイト。」
反応に困ったので取り敢えず親指を立てて置く。
「おう……、ありがとな。」
アヴァロをチラ見するとどんな展開になるか想像出来ているのか少し恥ずかしそうに頬を掻いてた。
「……景気づけに飲んでおくか?」
手に持っている飲み物を見せる。
「あー、いや、やめておくよ。大事な用だしな、ちゃんと素面で聞こうかと思う。」
「さいですか。」
持っていた飲み物を一気に飲み干し立ち上がる。
「そんじゃ、俺は今日疲れたから戻って寝るよ。頑張ってな。」
「あ、ああ……お休み。」
「お休み。」
手を振りながらその場を離れ城砦へ向かう。途中で遭遇したミケユとイオルもついでに回収していく。
「今日は楽しかったですねっ!」
「だな、美味しい飯も食べれて旨い酒も飲めたしな。」
「イオはもっと料理を振る舞いたかった。」
「それは明日に取っておいてくれ。今日は沢山食べたし、明日は軽めのものが良いかもな。」
「了解、考えておく。」
「サイトウさんはこの後はもう寝るのでしょうか?」
「そうするつもり。二人も早く寝ることをおススメするよ。」
「さっきまでの余韻がまだ残っているので、直ぐには寝れそうにないですね。」
「確かに。少しテンションが上がってるから浮ついた感じがするよな。」
「そうですよねっ。サイトウさんの場合はお酒のもあると思いますけど。」
「少し、ふわふわした感じ。」
二人も宴会を楽しんだようで未だに余韻を感じているらしい。
「ま、部屋に戻って布団に入ればすぐに疲れが来て眠くなるだろ。」
良い子は寝る時間だ。その後は大人の時間だからな。
二人と話しながら城砦に戻り、別れる。
「ふぅ……。」
寝床のベッドに腰を下ろし、寝転がる。少し汚い気もするが今日は勘弁。
「ようやく一段落したな。」
城砦を守り切り、破壊してしまった壁や街も直した事で次へ進むことが可能になった。
「やるべきことは増えたけどな。」
一部の人が城砦に移り住むことになり、予定ではもう少し増える計算だ。それに伴って家の増築と生活に必要な物を揃えないといけない。キスニルさんが大部分を担ってくれると言ってはいたが、一人だけに任せるだけではなくこちらでもある程度の把握は必要だろう。もしも急にキスニルさんが動けなくなった時にサポートに入れる人が居ないのは不味い。
「まぁ……何とかなるだろ。」
人が増えた。同時に労働力が増えたとも言える。今まで少ししかしていなかった栽培や農業系を拡大していけるはずだ。生活区画のインフラを進めて行くことも可能だ。今までは少人数の為、最低限の範囲でしかしてなったし……。
取りあえずは王国……正確には王子の独断での行動ではあったが、乗り切る事が出来た。これで少しの間は平和的な時間が流れるだろう。その間に色々と次に備えれば……何とか、……。
横になった事で急激に襲い掛かって来る睡魔に抗う事が出来ず、瞼を閉じる。
ーーーああ、今日は気持ちよく寝れそうだ。
酒が入っている事もあったからか、すんなりと眠りに入る事が出来た。
夜も深まり、城砦の中が静まった中、燃えるような赤髪の女性が城砦の中に立ち入っていた。
城砦の光景を見る様に周囲を見渡し、不敵な笑みを浮かべる。
「うふふ、不用心ですわねぇ……。リックベルを無事に抜けたとの報せを受けて来てみれば、みな気持ちよさそうに眠ってしまっているではありませんか。」
「少し人も増えている様ですが、管理体制はまだまだのようですわね。見張りに割く人員も足りていない。」
「何よりもまず、あなた方は戦闘を前提としない外敵が存在するという危機意識が働いていない。だからこんなにも簡単に、敵意が無いだけで誰よりも危険な私を入り込ませる。」
「ふふ、将を射んとする者はまず馬を射よ、ですわ。城砦を手に入れるのなら、動かすものではなく、それを管理する者を我が手に収めれば良い。」
愉快に微笑みながら規則正しい足取りで、ある部屋へと向かう。幸せそうに肌を寄せ合う恋人たちが居る部屋へと……。
「これからじっくりと、私の輝きで魅了して差し上げますわ!」
月夜に照らされた赤髪の女性は、不敵な笑みを浮かべながら、そう宣言するのであった。
少し短いですが、これで最後のエピローグモドキは終わりです。
次は四章に入り、ラウロソの双盾姫編ですね。
今書いている天結いを一時休憩して、他のを進めて行きたいと考えています。そちらが一段落したらまた書き進めようかと思っていますので、気長に待って頂けると助かります……。(内容は大体出来ているので書く気はありますので……。)