「………うん、ここだ。ここにしよう。」
「ここに井戸を造るんだね!」
村に一度戻り、新しい井戸の位置に目星をつけたらしい。
「ここなら精霊もいるみたいだし、間違いなく水が出るよ。」
「それじゃあ早速始めよう。」
井戸を造るためには穴を掘らないといけない。その為にアヴァロがドリルを持ち出す。
「これは俺の機軸鎚にも応用している技術だ。ただ魔力を使うけどな。」
まんまドリルである。どうやらこれを自分で開発したらしい。
魔力を使える人じゃないと扱えないらしい。そこで女神さまの出番と言うわけだ。
「うおおぉぉおーーっ!!」
フィアの魔力に反応し、地面がどんどんと削られていく。
「よし、その調子だ!。いいぞフィア!」
「ふんっ、ふにょおおおおっ!」
「もっとだ、もっと熱くなれ!」
「んにゃああぁぁっ、頑張って井戸を造るんだぁぁ、ぬ、んぐぐぐ、よいしょぉぉぉーー!」
やたら気合の入った声と、それを応援するようなやり取りに、夫婦漫才を見せられている気分になる。
「ちょっと待って。アヴァロも魔力使えるんじゃなかったっけ?」
急に作業を止め、不思議そうにアヴァロに問いかける。
「バレたか。」
「ズルいよアヴァロ。交代っ、順番だからね!」
「それでも俺だけに任せないフィアが好きだぜ。分かった、順番にやって行こう。」
「え?えへへ、照れるなぁ。私もアヴァロが大好きだよ。たとえ私一人に穴を掘らせようとしてもね!」
砂糖吐きそう……。これは帰っても良いのだろうか?俺は一体何を見せられているんだろう?
この空間に居るのは気まずいが、まだ目標は達成扱いにはなっていない。多分井戸を造るまでが一連なのだろう。
それから何回か二人がお互いに順番で進めるが、次第に疲れが見え始める。魔力切れだろうか?
「フィアさん、おつかれさまです。良かったらこれ、飲んでください。」
今は休憩中のフィアに差し入れで水を差し出す。入れ物は村人から適当に貰った。
「ん?ありがとー!でもいいの?水は貴重だって……。」
「自分は大丈夫ですよ。それにこれからは困る事は無さそうですし……。」
「ふふ、そうだね。あとちょっとで解決出来るから。」
「アヴァロも一旦休憩を挟みましょう?これをどうぞ。」
「飲み物か、ありがとう。丁度乾いてたんだ。」
疲れていたからであろう、貰った水を一気に飲む。
「お代わりもありますので、どうぞ。」
空になった入れ物に再度入れて差し出す。
「いいのか?」
「頑張っていますし、お二人ならこの位許されますよ。」
「その分頑張らないとな。っよし!続きをしてくる。」
碌に休まなかったが、さっきよりやる気に満ちている。止めるのは野暮かもしれないな。
「ねぇねぇ、ちょっといいかな?」
「ん?どうかしましたか?」
休憩中のフィアから声をかけられる。
「さっきね、その瓶から私の分のお水入れたよね?」
「そうですね。」
「そして続けてアヴァロの分を二回入れたよね?………どうやったの?そんなに入る瓶には見えないよ?」
「……ああ、そう言う事ですか。」
小さな容器に三杯分の水が入っているのが不思議だったのだろう。
「残念ながら、秘密です。」
人差し指を口の前まで持って来て、ウィンクをする。
「おお、なんかそれかっこいいねっ!」
「でも、秘密ならしょうがないかな。誰でも言いたくない事あるもんね。」
「ありがとうございます。」
深くは追及しない女神の懐の深さに感謝する。これは俺の切り札に近いのでぺらぺらと話す訳にはいかない。
「フィア、そろそろ変わろう。」
アヴァロから交代のお知らせが来る。魔力の消費があるからか、少し疲れが見える。
「あれってさ、俺にも出来たりするのか……?」
ほんの興味本位で聞いてみる。
「魔力を持っていれば扱えるが……大丈夫なのか?」
「いや、実は自分がどの程度使えるかよくわからないんだ。」
正確には魔力を持っているかすら怪しいが……。
「試してみるか?使えなかったら動かないし、多分危険は無いと思うぞ。」
アヴァロからの許可をもらい、実際に試してみる。その前に……。
「危ないかもしれないから、一旦フィアさんといてくれよ。」
相変わらず俺に纏わりついている水精を引きはがして、地面に置く。結局あのまま付いて来てしまった。
なんだか緊張するな……。魔力とかよくわからないが、実は結構な魔力量だった……とか美味しい展開は無いだろうか。
ドリルの取っ手を握り、目を閉じる。取りあえず、体の中の血流を動かすイメージをしてみる。
「………」
動かないな。もっと沢山のイメージが必要なのかもしれないな。
フィアも気合いを入れて作業していたし、もっとガッツリ行かないといけないのかもしれない。
深呼吸をして、カッっと目を開き、機械に一気に流すイメージをする。すると、ドリルが音を立てて動き始めた。
「おおお、動いた!?」
「すごい、ちゃんと動いてるよ。」
二人が驚く中、魔力があった事が嬉しくて、調子に乗ってもっともっとと送り付ける。
「ははは、動かせている……!」
楽しくなり、笑いながら進めると、急に体から力が抜けて崩れ落ちる。
「えええ!!?ちょっとっ!!」
「大丈夫か!?」
驚きと心配する声が耳に聞こえたがその時には視界が真っ暗になっていた。
「大丈夫かっ!おい!」
突然倒れた彼にアヴァロが声をかけるが返事はない。
「フィア!村の人に……!」
「待ってアヴァロ。その人多分……ただの魔力切れだよ。」
「魔力切れ……?」
「うん、見た感じね、只々魔力が切れて気絶しただけに見えるの。」
「えっと、つまりなんだ……、自分の量を考えずに使い続けたのか?」
「言ってしまえば、そうなるね。」
「馬鹿なのか?」
「きっと楽しくなっちゃって配慮出来なかったんだと思うよ。」
「心配した~っ。何かドリルに不備があったかと思ったよ。」
「少しの間横になっていれば回復して起きると思うよ。……だから君は身体中を動き回るのは止めておこうね?」
彼が連れてきた水精が心配するようにあちこちを触っていた。
「うんうん、大丈夫だよ~?だからこっちで一緒に様子を見ようね?」
アヴァロが彼をドリルから離し、横にする。
「ああっ!!?まってまって、顔は駄目っ!死んじゃう、トドメ刺しちゃうからっ!」
「その後、無事井戸造りを終えた私達は、城砦へと……二人の愛の巣へと帰るのであった。」
「どうしたんだ急に。」
「いや、一段落付いたからナレーションが必要かなって。」
「言っている意味が分からないが、まだ問題は片づいて無いからな?」
「分かってるよ、アヴァロが背負ってる彼の事だよね?」
「ああ、村の人だとばかり思ってたが、どうやら違ったみたいだ。」
「そうだよね、私も村の事情に詳しかったし、井戸の原因にも付いてきたから、てっきり少しでも早く村の事をどうにかしたいと思ってる心優しい青年とばかり……。」
「けど実際は、今日来たばかりの見ない顔だったと……。」
「不思議だよね、どうして今日来たばかりなのに私達を手伝おうとしたのかな?」
「フィアと同じように村の現状を知って解決したかったとか?」
「そうだとしたら凄い事だよねっ!」
「だな、今日来たばかりの村を救いたいとわざわざ危険な場所まで俺たちと行くんだから。しかもな……。」
「ん?どうしたのアヴァロ。」
「さっき、俺とフィアが休んだ時に水を貰っただろ?」
「うん、あの摩訶不思議な瓶から出たやつだよね。」
「そうそう、あれなんだけどな……推測になるが、水が無くなる事は無いんだと思う。」
「え?どういう意味?」
「瓶の中に対して明らかに内容量がおかしかっただろ?あれはそういった道具なのかもしれないと思っててさ。」
「えっと、無限に水が飲める魔法のアイテム……?」
「そんな感じだ。だからフィアにも秘密にしていたんだろ。バレたら危険だからって。」
「確かにそうだね。村の人達からしたら凄く欲しい物だし。」
「俺たちが何とか出来たから今ではそこまでだが、もし失敗してバレたら危ない目に合う可能性もあった。」
「でも解決する為に手伝ってくれたよね?」
「自分は水に困る心配は無いにも関わらずに、だ。普通なら危険だと考えて近寄らないはずだ。」
「つまり、私やアヴァロみたいに良い人って事だねっ!」
「自分でそれを言うのはどうかと思うが、そう言う事だな。」
「それなら城塞に連れて帰るのは間違いじゃないね!」
「起きて見知らぬ場所に連れて行かれたら拉致させてと思われそうだけどな。」
「大丈夫っ、その時は改めてお話すれば解決出来るよ。」
「それはフィアに任せるよ。」
こうして、気絶して未だに目を覚まさない彼を連れて、グアラクーナ城塞へと戻って行った。
気絶している間に井戸のイベントが終わってしまいました。
次回は目を覚ましてからですね。