サーゲイト国の魔獣襲撃が起きてから数時間、すでに空は暗くなっており、月が浮かび星空がチラつかせている。
そんな夜の中、とある山で事件が起きた。
「コォォォォーーーーーン!!」
突然鳴き声が聞こえてきたかと思いきや、突然草原が火の海となった。
「くっ!これでは近づけん!お前達、一旦引くぞ!」
迷彩柄の服を身に纏う猟師らしき人物は部下に撤退の指示を出し、ジープに乗り込み、この場から去っていく。
先程起こした火の海の正体、それは九本の尻尾を持つ狐だった。
翌朝、シン達は新たなる旅行先へ行く為、チョコボ車で移動中である。
「ね、ミコト。今、どこ向かってんの?」
「マダイン・サリ。あそこには聖獣壁と呼ばれるこのフロントワールドの世界遺産があるの。」
シン達が向かっているのは、マダイン・サリという場所である。
マダイン・サリは昔から存在していた召喚士一族が住んでいた村である。
しかし、その昔に謎の巨大生物により滅ぼされた。
今は観光名所として扱われている。
そして、人間の世界、妖精の世界に名前を付けられている。
機械やネットワークが普及しており、ゲームや映画等が盛んになり、スポーツや芸術を幅広く貢献してきた人間達が多く暮らしている世界をフェイスワールド、魔法や精霊といった有り得ない事物や、伝説という逸話しか存在しない幻獣やモンスターが存在し、人間にはできない隔てた異世界を行き来できる妖精達が暮らす世界をフロントワールドがある。
フェイスワールドとフロントワールドはイルマ財閥とそれに連なる財閥、そしてフィン連合の同盟国、リターナーに属する国々、アレクサンドリア王国、アルケイディア帝国、エスタ共和国の会合で決めた2つの世界の名称である。
「フェイス」と「フロント」を直訳すると、どちらも「表」という意味であり、問題は生じ難い為、それに決定した。
「でも、そこに行くには、アーシア山の麓にあるアーシア村に降りて、そこから徒歩で30分山道に通っていかないといけないの。」
「うへぇ・・・30分もか・・・」
真理奈はミコトの話を聞いて溜息をつく。
「いや、なのはの魔法で山越えするのもありかも・・・」
「ダメだよー?自力で歩かないと?」
「冗談よ。」
真理奈はなのはの魔法で飛行して、アーシア山を越えようと考えていたが、なのはに注意された真理奈は冗談だと言って諦める。
「あれ?なんだろう?」
アーシア村が見えてきた頃、リンネは何かを発見する。
シン達は窓から覗いてみると、ジープが3台あり、小型飛空艇が2機ほど滞在していた。
数分後、シン達はアーシア村付近に到着し、チョコボ車から降りる。
その後、ミコトはある人物を見つける。
「ラーサー君!」
「ミコト王女殿下!」
「どうしたの、こんな所で?」
ミコトはラーサーに何故ここにいるのか問う。
「このアーシア山に山火事が起きたという報告を受けたんです。ここに来た時、既に鎮火されましたが、その山火事は余りにも不自然なので、調査をするためにここに来たんです。」
ラーサーはアーシア山付近に来た理由を答える。
「この方がその原因を知っているそうなんです。」
ラーサーは山火事の原因を猟師の男性が知っていると教える。
「失礼ですが、あなたは?」
「初めまして。私はロックスレイ・グリーンアローと申します。フォーン海岸にあるハンターズキャンプの狩人をやっているものです。」
猟師の男性は自らをロックスレイ・グリーンアローと名乗る。
「この山で何があったんだ?」
シンはロックスレイに事件の詳細を聞く。
「フォーン海岸で魔獣退治依頼の掲示板を拝見した所、あのアーシア山で九尾の狐が潜んでいると言う噂を知ったのです。」
「九尾の狐って美女に成りすまして人を惑わすとも言われている9本の尻尾を持つ狐の妖怪の事?」
ロックスレイは山火事の原因は九尾の狐の仕業だという。
「えぇ。君の仰る特徴通り、人の姿に化け、探検家に近づき、隙あらばその者の食料を奪っているのです。それだけでなく、アーシア村でアジトを構え、一度は九尾の狐を捕らえたのですが、狐火という炎で檻ごと焼き払われてしまいました。もはや捕獲は不可能と判断した私は部下を引き連れ、討伐を行なったのです。しかし、九尾の狐は1匹だけではありませんでした。昨晩アーシア山で遭遇した時、8匹も目撃したのです。奴らの狐火を前に手も足も出せず、退却する他ありませんでした。」
ロックスレイは事の顛末を話した。
「ロックスレイさんが捕まえた九尾の狐以外にも仲間がいるのね・・・」
「ねぇ、オジサン。アーシア村でアジトを構えたって言ってたけど、村にも被害出てんの?」
「先程も言いましたが、一度捕まえたものの、狐火によって檻ごと焼き払われました。被害に遭ったのはそれだけです。村の食料や服飾が奪われたという知らせは受けていません。ただ、探検家の食料を奪っていったのは事実。そういった人達は九尾の狐の有害な行為に困っているわけですから、討伐するに越したことはありません。」
ロックスレイの話では村の方では構えていたアジトが焼き払われた事以外は被害は出ていないが、旅人の食料が奪われたという被害は出ている模様。
「まぁ、確かに猪や猿に畑の野菜や米を食い荒らしたら問題だもんね・・・」
「そうね・・・」
真理奈とミコトは田畑を脅かす猪や猿のような害獣を例えて言う。
「とりあえず、その焼き払われたアジトを案内してくれませんか?」
ラーサーはロックスレイに現場へ案内するように言う。
「分かりました。」
ロックスレイはラーサーの言う通りに従い、アーシア村に向かう。
勿論、エクセル達も一緒である。
同時刻・・・
「ルナ、遅いな。」
「ママも一緒だから大丈夫だと思うけど・・・」
「あいつら、また来るのかな?」
「その時は私達が追い払いましょ。」
アーシア山の奥地に4匹の九尾の狐が待機していた。
「ロロ、リーシャ、ナム、ナハト。」
「ママとルナは戻ってきた?」
樹洞から2匹の九尾の狐が出てきた。
「パドメ、テッド。まだよ。まだ戻ってきてないわ。」
「クゥラはどう?」
「食べ物を食べたり、水を飲んだりするくらい元気になったけど、怪我の痛みで苦しんでる。」
「ヨハンが仕掛けた罠でできた怪我か・・・」
「薬草の事もママとルナが持ってきてくれるみたいだけど・・・」
「まだ帰ってきてない・・・」
6匹の九尾の狐は残る2匹の帰りを待つ。
その頃、ロックスレイの案内の元、焼き払われたアジトを見るシン達。
「建物の半分が焼かれてるわね・・・」
「九尾の狐の魔力はそれ程高かったのね・・・」
「えぇ、特に母狐の狐火は強力でした・・・」
ロックスレイの話からして、彼が捕まえたという九尾の狐は母親のようだ。
「でもこの村には大きな被害は出てないんでしょ?」
「九尾の狐は確かに強力な狐火を放ちますが、並みの狐と同様警戒心の強い魔獣です。だから人が多く住んでいるこの村を手出ししなかったのでしょう。」
ロックスレイの言う通り、狐は知能の高い生き物故警戒心が強く、その為獲物によって狩りの方法を変えて厳しい環境から生き延びることができるのだ。
「しかし、相手は旅人の食料を奪う害獣。魔獣討伐を専門にしているハンターとして早急に対処しなければ・・・」
「何が害獣よ?何が魔獣討伐専門のハンターよ?私にとってはアンタなんか迷惑よ。」
ロックスレイの話を遮るように割り込んで声を掛けてきたのは、フェイスワールドにいる人間と変わらない服装をしており、マルーン色の髪をしたサングラスの少女だった。
「フルーラ!ハンターさんが態々被害を食い止めるためにここに来たのにその言い方はやめなさい!」
「冗談!あんな如何にも怪しいオジサン。それに野生動物は野生動物の生き方ってものがあるでしょう?」
フルーラと呼ばれる少女は手を下から上へ振るハンドサインをする。
ちなみにそのフルーラを宥めている彼女の姉である。
「あなた達はこの村の人たちですか?」
「えぇ。私はヨーデル。ここで年に一度の祭事を執り行ってるの。この子は私の妹のフルーラ。」
「フルーラよ。そこにいるのはサーゲイト国のお姫様ね?それとあなたはまこぴーの付き人のモロボシ・シンさん?」
ヨーデルと名乗る女性とフルーラは自己紹介した後、フルーラはシンの方を見て、まるで知ってるかのように言う。
「え?知ってる人なの、シン兄さん?」
「あぁ。どこかで会った事があるなと思ったが、確か、ギフト・フェアリーズってアイドルグループの・・・」
「そう、そのメンバーの一人ってわけ。」
シンとフルーラとは真琴がアイドル活動をしている時に顔見知りになった関係のようである。
「こんな所で会うなんてね?ま、いっか。はい、歓迎♪」
フルーラはシンに近づき、サングラスを外すと、シンの頬にキスする。
「えぇっ!?」
「なぁっ!?」
ミコトとセレナはその光景を見て驚愕していた。
「さ、サバサバしてるわね・・・」
「またシン兄さんに好かれてる女の子が増えんのか・・・」
エクセルはミコトとセレナ程じゃないが驚いている一方、真理奈はシンの周りにまたシンに好意を持つ少女が増えるのかと呆れている。
「モテモテだね・・・」
「シンって罪づくりな人だな・・・」
「お話には聞きましたけど・・・」
「色んな意味で大物ね・・・」
なのはとユーノとアミティエとキリエは苦笑いしながらシンを見る。
「・・・」
「リンネ、どうした?」
「!あ、ううん!何にも!」
リンネの様子がおかしい事に気付いたフーカは尋ねるが、リンネは何でもないと答える。
尚、シン本人はフルーラがしたキスの意味を理解していない様子。
「フルーラさん、あなたの妹はアーシア山に入山してから帰ってきていないとか・・・」
「えぇ、そうよ。だから態々休暇を取らせてここに帰ってきたわけだけど。」
「その妹さんが九尾の狐に捕まっているのかもしれないのです。それを取り戻す為にも私はここに・・・」
「お・こ・と・わ・り!アンタの力を借りなくてもなんとかできるわよ!今日の夕方はこのアーシア村のお祭りがあるから、お姉ちゃんに呼ばれてダサい恰好して巫女の仕事をする羽目になってんのよ。その前に妹を見つけてその娘にやらせておくわ。」
フルーラとロックスレイの会話からして、九尾の狐が住み着いているアーシア山にフルーラの妹が遭難されたようである。
フルーラはロックスレイの言う事を聞かず、自分で探すと言う。
さらにフルーラの話からして、アーシア村の祭りの行事の一つである巫女の仕事はフルーラがやる予定だったが、本人はその気はないらしく、巫女の仕事を彼女の妹に引き継がせるつもりで探しに行く事になったらしい。
「フルーラ!」
「大丈夫!私はこのオジサンよりアーシア山の事は詳しいし。それに、シンさん達も手伝わせるから。」
「えっ!?」
エクセル達はフルーラの発言に驚く。
「オイオイ、ただのお祭り娘を連れていけるかよ?」
「それを言うならアンタもただの小娘じゃん?」
「うるさい。アンタに言われたくないわ。」
フルーラは真理奈のお返しと言わんばかりに揶揄う。
真理奈はジト目で余計なお世話だと反論する。
「アーシア山の案内くらいお茶の子さいさいよ。」
「おう。頼りにしてるぜ。」
ミコトとセレナはシンとフルーラが親しそうに喋り合っているのを見て不機嫌になる。
「僕達はこの近辺を調査しようと思います。警戒心が強いとはいえ、人里に降りる事も不思議じゃありませんから。」
「そうですね。ご協力感謝いたします。」
ラーサーはロックスレイと共に村中調べ回ることにした。
「まずは聖獣壁の方へ行こう。」
フルーラは案内人として、シン達を聖獣壁へ向かう。
その頃、昨夜火災が発生したと言われている現場に赤い飛空艇が駐艇しており、その付近に白地の鎧を身に纏い、長い銀髪の男性と白いローブを身に纏う金髪のポニーテールの女性がいた。
「ここで火事が・・・」
「九尾の狐、古代図書館の本で見たことあるけど、実在していたなんて・・・」
二人の男女は現場を見て呟く。
長い銀髪の男、セシル・ハーヴィ。
バロン王国の主力部隊・飛空艇団赤き翼の元隊長である。
昔は暗黒騎士だったが、試練の山でパラディンへと生まれ変わり、バロン王国の国王となる。
そして、金髪のポニーテールの女、ローザ・ファレル。
バロン軍白魔導師団所属の白魔導士である。
セシルと婚姻を交わし、バロン王国の王妃となる。
「ラーサー君の話だと、ロックスレイというハンターが九尾の狐の討伐に行ったそうだけど・・・」
「あぁ。旅の途中の人達の食料が奪われたという報告を受けてる。しかし、住処になっているこの山を燃やす必要あるかな・・・」
「どういうこと?」
「どの動物だって、天敵から身を守る為に巣を作っているはずだ。それなのに山を燃やすなんていう自分から生態系を壊すような事するんだろうか・・・」
セシルは九尾の狐の行動に疑問を持つ。
確かに本来狐は肉食に近い雑食性動物、ウサギや鳥等の小動物や昆虫を食べる生き物である。
狐の捕食対象として捉えているそういった動物を追い払うような事するだろうか。
「陛下!」
「どうしたんだい?」
一人の兵士がセシルの許に駆けつける。
「焼け跡の傍にこんな物が。」
兵士は焼け跡の傍に拾った物をセシルに見せる。
セシルに見せた物は指輪のようだ。
「!これは!?」
セシルはその指輪に見覚えがあった。
その指輪の正体は・・・
次はこの話のメインキャラを登場させます。