レックスがジオウに変身します。
ダイジェスト風に進めようとしたら結構書き込んでしまった。
一話限りの短編です。
後書きにて原作のおおまかなネタバレありなのでご注意を。
どこまでも広がる雲のような海―雲海。その中でポツンと存在する、小屋が立っている島の下である作業が行われていた。
暗い、暗い、闇の中。その中を進みゆく一人の少年がいる。身に纏っているスーツ越しに纏わりつく水の感触を感じながら暗い海を潜っていく。
「(見つけた・・・!)」
少年は目当てである大型の鉄の箱が見つかると、左腕に取り付けてあるアンカーを射出して、鉄の箱付近の地面へとアンカーを突き刺した。
アンカーが地面に食い込むと、リールを巻きながら地面へと近付いて行き、アンカーを回収して着地する。
少年は鉄の箱に近付くと、バルーン装置を取り付けて起動する。装置が起動すると鉄の箱は浮かび上がり、少年も鉄の箱にしがみつきながら上昇していく。
海に潜ると同時に一緒に沈めたクレーンのフックにバルーンを引っ掛け、クレーンを操作して上昇させた。
雲海を抜け出た後、クレーンを操作し鉄の箱を島に降ろし、自身もクレーンから降りてヘルメットを外した。
「ふう・・・やっぱり則探器は買い換えたほうがいいかな。目標地点から150もズレるなんて、ありえないだろ。」
サルベージスーツを脱ぎながらそう愚痴を溢す少年―レックスは小屋の中から工具を持ってきて鉄の箱を開ける作業に取り掛かる。
「で、どうじゃった?お宝の具合は。」
この島にはレックス以外誰も居ないはずだが、突如として老人の男性ような声が聞こえてくる。
が、レックスは気にすることなく聞こえてきた声に答える。
「まあまあ何じゃないかな?今回は。結構頑丈だったから、補強の必要もなかったし。手間賃差し引いても十分な儲けが出るんじゃないかな?」
「引き上げの構造計算には2日もかけるくせに、損得勘定だけは早いんじゃのう。」
島の一部が動き出し、長い首のようなものが姿を表す。まるで龍のようだった。島だと思っていたものは巨大な龍の背中だったのだ。
「うるさいなあ、じっちゃんは。俺は商売が得意なサルベージャーなの。たくましいって、褒めてくれても、いいじゃないか!」
龍と会話しながら工具を使って鉄の箱を開けようと奮戦するレックス。そしてその時は訪れる。
「おっと!?」
抵抗が無くなり、勢いよく扉が開かれると同時に後ろへと倒れ込むレックス。
「痛てててて・・・。」
「大丈夫かレックス?」
「ああ、勢い余っただけさ。さ~て、中身なにかなっと?」
引き上げたお宝の中身を確かめようと早速物色し始める。
「中身は・・・まあまあかな。」
見つかるのは数本のネジやボルト。そして何に使われていたのか不明な部品が幾つか。歴史の探究家の人が見れば分かるのかもしれないが、生憎とレックスは興味がない。精々どのくらいの額で取引してくれるのかが問題なのだ。
「ん?」
箱の中を物色していると、一つ気になる物を発見する。小型の箱だった。サルベージをしていると小型大型問わず様々な形をした物が見つかるのだ。いつも見慣れているはずの物だと言うのに、その箱が妙に気になって仕方がなかった。
「何だろう?これ。」
「何じゃ?気になる物でもあったのか?」
「気になるっていうか・・・まあ、そんなところかな。」
中身が何なのか気になったので開けてみることにする。手持ちの工具を使ってこじ開ける。
「何だコレ?」
箱を開けてみれば出てきたのは奇妙な形をした時計のような物だった。
もっと詳しく見てみようと手に取った瞬間。
「・・・えっ?」
世界の時間が止まった。比喩表現ではない。本当に止まったのだ。周りの雲海の動きも、龍の動きも、肌で感じる風の流れも。全て止まったのだ。
「な、何だ?何で止まって・・・。」
「ついに手にしたんだね。」
「えっ?」
止まったはずの世界で声が聞こえた。後ろからだった。声の正体を確かめるべく、レックスは振り返った。
「やあ。」
声の正体は薄い緑色の髪をした短髪の女性だった。しかし、ただの女性ではなかった。首輪のような金属部品の後ろから巨大な本を鎖で繋いで下げており、両腕には本を模した手甲が着けられていた。何より目を引いたのは、腹部の一部が抉り取られたかのような空洞となっており、空洞には光の球体らしきものが浮かんでいる。そしてもう一つ。女性の胸元には宝石らしきものが取り付けられており、そこから導き出される答えは一つだった。
「ブレイド、なのか?」
「いきなりで混乱してるかもしれないけど、時間がないから言わせてもらうよ。」
レックスが混乱しているのを他所に、彼女は言葉を続ける。
「まずはおめでとう。君は王となる道へ足を踏み入れた。」
「へっ?王?」
「そして警告が一つ。黒い鎧の男と仮面の男に気を付けること。」
「・・・どういうこと?」
「いずれ分かるよ。とにかく気を付けてね。我らが王よ。」
その言葉を最後に女性は消えて、世界が動き出した。
「レックス?」
「・・・え?」
世界が元に戻っていた。いや、自分が元に戻ったというべきか。
「何じゃ?その時計みたいなもんが気になるのか?」
「・・・まあ、そんなところかな。」
先程まで自分の身に何が起きたか説明しきれる自信がなかったので適当にはぐらかすことにした。
あの後、レックスは龍と共にアヴァリティア商会へと足を運んだ。手に入れたサルベージ品を交易所に持って行ったが、大した稼ぎにはならず、僅かな金を受け取って残りを故郷の育ての親へと仕送りするのであった。 今日の仕事はほとんど終わったため、このあとどうするか商会内をブラついていたが、ノポン族のプニンからアヴァリティア商会会長であるノポン族のバーンから話があると聞かされ、レックスはそこに赴く。 会長の執務室に到着すると、バーンから依頼を持ちかけられたのだ。どうやら雲海に沈んでいる古代船を引き上げるために他のサルベージャー達に依頼を出しており、腕がいいと噂が立っているレックスにも依頼を出すことにしたのだという。
その話を聞いた後、同行する依頼主である5人組のドライバー―黒い鎧の男メツと黄色の服の猫耳の少女ニアとブレイド―竜人のような姿のザンテツと白いトラのビャッコ、そして鬼のような仮面を被ったシンと少々揉め事があったが、バーン会長から手付金を貰って出発の準備をすることになったのだ。
翌日、古代船を引き上げるポイントに到着し、雇われたサルベージャー達が作業に取り掛かり、古代船を引き上げる。
古代船を調査する際にメツがレックスに同行しろと命令する。レックスも古代船の中に興味があったのでその命令を聞くことにしたのだった。
古代船の内部に住んでいたモンスターを蹴散らしながら最深部に到達すると、そこには巨大な装置なようなものが設置されていた。大きさは部屋の半分を占める程の物だ。一体どういう物かと好奇心でレックスは装置に近付いていく。
「これは・・・。」
装置の真ん中に淡く光る物体を見つける。半透明なガラスで覆われているようだった。目を凝らしてよく見てみると、その中には一人の少女が眠っていた。
「女の子・・・?」
眠っている少女の様子が気になったので更に近付くと、レックスはあるものに気付いた。少女の眠っている装置の真下に、赤い、燃える炎のような形した剣が突き立っていたのだ。
レックスはその炎のような剣に目が惹かれ、興味本位で触れた瞬間。
「小僧!そいつに触れんじゃねえ!」
「・・・え?」
自分の胸から突き出た刃が自分ごと炎の剣を貫いている異常な光景が目にはいった。
「悪く思うな。」
そんな異常な光景と聞こえてきた言葉を最後に、レックスは意識を闇へと落とすのであった。
―――ゴーン、ゴーン、ゴーン・・・。
「ん、んん・・・。」
聞こえてきた音を合図にレックスは目を覚ます。起き上がって辺りを見渡すと視界一杯の草原が広がっていた。
「ここは・・・。」
「悲しい音・・・。」
突如として声が聞こえてきた。声の高さからして女性の声だった。聞こえてきた方向に振り向いてみると、一人の少女が一本の木の近くに立っていた。その姿は、先程古代船で見た姿と瓜二つだったのだ。
燃えるような赤い髪に露出の多い赤い服。背中には羽のように広がるマント状の布が風に揺らめいていた。そして、その豊かな胸元には十字架を象(かたど)ったかのような緑色に輝くコアクリスタル。それは、彼女がブレイドである証拠だったのだ。
「君は?オレはレックス。それと、ここはどこ?」
「私はホムラ。ここは、楽園。私の記憶の中にある楽園。」
「楽園・・・!」
「レックス。簡潔に言います。あなたは死んでしまったんです。」
「・・・へ?」
少女―ホムラの放った一言によってレックスは先程自分の身に起こった出来事を思い出す。
「そうだった・・・俺、あの時殺されて・・・!」
「ですが、貴方が生き返る方法があります。」
「え?そうなの?」
「はい。ですが、その前にお願いがあるんです。それを聞いてほしいんです。」
「お願い?」
「私を、楽園に連れて行ってください。」
「楽園に!?」
「どうしても、行かなければならないんです。お願いします。どうか連れて行ってください。」
「・・・わかった。俺が君を楽園に連れていく。」
「本当ですか!?」
「ああ。俺も楽園を目指してるんだ。だから、一緒に行こう!」
「ありがとうございます!これから宜しくお願いします。」
「で、どうやったら生き返るの?」
「私の胸に・・・このコアクリスタルに触れてください。」
「えっ!?胸に・・・?」
「私と同調して、私のコアクリスタルの半分をあなたに移すことでお互いに命を共有します。そうすれば、レックスは生き返ることができます。」
「そうなのか。あれ?命の共有ってことは・・・。」
「あなたの考えてる通りです。私かレックス、どちらかが命を落とせばもう片方も命を落とします。危険なリスクも背負うことになります。それでも、私と同調しますか?」
「するさ!俺は、こんなところで終わるわけにはいかない!」
「では、手を。」
レックスはホムラに促され、コアクリスタルに手を触れる。
その瞬間、夢の中の世界が光で満ち溢れた。
「うう・・・!」
「気が付いたかな?王様。」
夢の世界から目覚めたレックスは、聞こえてきた声に顔を向ける。
「あ、君は・・・。」
「自己紹介がまだだったね。ボクはシキ。ブレイドさ。昨日ぶりだね。」
「やっぱりブレイドだったんだ。」
「色々と話したいことが山積みだけど、それはまた今度だ。単刀直入に言うよ。君を殺した連中、他のサルベージャーをこの船ごと沈めるつもりさ。」
「何だって!?」
「この件に関わった人達が生きていると都合が悪いのさ。何しろ連中は、天の聖杯を手に入れたからね。」
「天の聖杯?」
「その話は今は後にしてくれ。それよりも、君はどうしたい?」
「そんなの決まってる!早く止めなきゃ!」
「今の君にはどうすることもできない。でも、方法がないことはない。」
「どういうこと?」
「君は先程、天の聖杯であるホムラと同調して、ドライバーになったはずさ。それはつまり、天の聖杯の力を行使できるということ。」
「どうやって使えばいい?」
「その手にイメージすればいい。そうすれば、その手に聖杯の剣が現れるはずさ。」
レックスは言われた通りにその手に意識を集中させる。すると、自分の周りにエーテル粒子が集い、炎が燃え上がりながら剣を形作っていく。
レックスはその炎を強く握ると、炎は弾け飛び、その手に炎の剣が完成した。
「これが、聖杯の剣・・・!これなら!」
「残念だけどドライバーになったばかりの君だと瞬殺されるのがオチさ。連中は戦闘のエキスパートだからね。」
「じゃあどうすればいいんだ!?このままモタモタしてると他の人達が殺されちゃうよ!」
「大丈夫だよ。もう一つ手があるさ。これをお受け取りください。我が王よ。」
そう言いながらシキは懐からあるものを取り出すと、献上品を渡すような姿勢でレックスに跪く。
「これは?」
見たことのない機械の道具にレックスは不思議に思い、シキに問う。
「それを手に取り、腰に当ててください。」
シキの言う通りに機械を手に取り腰に当てた瞬間、機械からベルトらしき帯が飛び出し、レックスの腰に巻き付く。
『ジクウドライバー!』
「うわっ!?」
「次に、君が持っているウォッチを君から見て右側に取り付けるんだ。」
「ウォッチ?そんなの持ってないよ?」
「持っているよ。こないだのサルベージで手に入れた筈さ。」
「サルベージ?あっ、もしかして。」
シキ言われて思い出し、ズボンのポケットを探る。すると、先日のサルベージで手に入れた時計らしき物が出てきた。
「コレが・・・。」
「前面のリングを回して、上部分のスイッチを押して。その後さっき言ったように取り付けるんだ。」
そう言われ、レックスは言われた通りの操作を行い、ウォッチのスイッチを入れる。
『ジオウ!』
その後、ウォッチを左側部分に装着する。
「後はベルトの上部のスイッチを押して、一回転させるんだ。そうすれば、変身は完了するよ。」
「変身?」
すると突如として船が大きく揺れた。
「な、何だ!?」
「どうやら奴等が動き始めたみたいだ。この船を沈めるつもりだ。」
「ヤバ!早く行かないと!」
「申し訳ないけど変身はぶっつけ本番でやって頂戴。」
「ぶっつけって!?」
「道はボクが作るからそこから行って。」
シキは本を開くと同時に本のページを大量に浮かび上がらせ、竜巻のように回転させながら天井に穴を開けて外への道を作る。
「すげー。」
「ではいってらっしゃいませ。我が王よ。」
驚いているレックスを他所にシキはエーテルを操作して風を作り、レックスを浮かび上がらせて外へと放り出した。
「うわあああっ!?」
古代船の甲板では一方的な虐殺が繰り広げられていた。シキの言う通り、依頼に関わった人間とノポンを抹殺するためにメツとシンは同調しているブレイドと共に刃を振るい、一つ、また一つと命を刈り取っていった。
だが、このやり方に異を唱えた者がいる。彼らの仲間であるニアとビャッコだ。
ニアは、メツが船の屋上に出た後に耳元で「ここにいる全員を抹殺しろ」という命令を下そうとしたが、ニアはそれを拒否した。メツはニアが命令を聞かないとわかると、メツがザンテツに命令し、近くの船のクルーに襲いかかったのだ。
それと同時にシンもまた、背負った刀を抜き、ザンテツと同じく近くにいたクルーに襲いかかったのだ。
「ねえどうして!?どうして関係ないやつの命までを奪おうとするんだよ!!メツ!!」
「ここで起こった出来事を知られる訳にはいかねえのさ。こいつらの命の値段は先に払ってある。」
「そうやってレックスのことも殺したのかよ!」
「・・・奴は天の聖杯と同調した。それだけでも殺さなければならない。」
「シン・・・!」
「ニア、逆らうってんならお前もここで始末してやってもいいんだぜ?」
「・・・!」
始末するという言葉を聞いてニアは動揺する。ニア自身、メツの仲間に入ったのはごく最近だが、ここまで非道なことを平然とやるとは思わなかったのだ。世界中を放浪していた自分を拾ってくれた恩はあるが、流石に犯罪に手を染める覚悟は持てないのだ。
「やる気がねえならそこで大人しく・・・ん?」
メツが何か異変を感じ取り、ニアと向き合っている方とは別の方向を向く。すると次の瞬間、屋上の床の一部が赤く燃え上がり、巨大な火柱が立ち上がる。
「何だ?何がどうなってやがる?」
メツが起こっている出来事に動揺していると、メツが抱えている巨大な箱が立ち上がっている火柱と呼応するように燃え上がる。
「くっ・・・!」
燃え上がる箱の熱を感じ、放り出すようにメツは箱を落とす。炎が箱全体を包み込んだ瞬間、同じように火柱が立ち上がり、一つの炎の塊が箱の中から飛び出す。それと同時にもう一方の火柱から炎の塊が飛び出し、屋上の真ん中に並ぶように止まると、炎が弾け飛んで形を成した。
「お前は・・・!」
「嘘・・・!」
炎の正体は、先程殺した筈の少年、レックスだった。そして、その隣にいるのが夢の世界でレックスと同調したブレイド―ホムラだった。
「さっきはよくもやってくれたな・・・倍にして返してやる!」
そう言った瞬間、レックスはベルト―ジクウドライバーのスイッチを押す。押した瞬間、レックスの背後に時計のようなエフェクトが発生し、時針が回転する。
「何だ!?あれは!」
「時計?」
「レックス?」
メツは目の前で起こっている光景に目を見開き、ニアも同様に表情を驚愕に染め上げ、レックスの隣りにいたホムラも動揺する。
レックスはそんな観客を他所に、ベルトのバックルに当たる部分―ジクウサーキュラーに手をかけ、心に浮かんだ言葉を高らかに発する。
「変身!」
ジクウサーキュラーを反時計回りに一回転させると、変身シークエンスが完了する。
『ライダータイム!カメンライダー!ジオウ!』
時計のバンド型のエフェクトがレックスの体を包み込み、その体にアンダースーツとアーマーが形成されていく。
黒をベースにしたスーツに肩と胸に銀に光る金属製の鎧が装着され、続いて両手両足に黒のガントレットとシューズが装着されていく。頭部は時計を模したようなマスクが装着され、顔の中心となる部分から時計の針が延びており、長針が「2」を短針が「10」を指している。ベルトからは時計のバンド状のエネルギー伝達ラインが頭部と繋ぐように延びている。最後にベルトから飛び出たパーツがマスクの目に当たる部分に嵌まり、「ライダー」の文字が形成される。
ここに、今は無き「平成」と呼ばれる時代に君臨し、全ての仮面ライダーの力を受け継いだ、仮面ライダーの王、「仮面ライダージオウ」がここに再誕した。
「何だ・・・その姿?」
「祝え!」
急に聞こえてきた声に甲板にいるジオウ以外の全ての人物が聞こえてきた方角に目を向ける。
「全仮面ライダーの力を継承し、時空を超え、過去と未来を知ろ示す時の王者。その名も仮面ライダージオウ!今ここに、新たなる歴史の幕が開いた瞬間である!」
シキが船のブリッジの上に立ち、嬉々とジオウが誕生した祝辞を読み上げるかのように口上を並べていた。
「「「・・・・・・。」」」
突然の出来事に辺りは静まり返り、誰もがシキの姿に目を釘付けにしていた。
「・・・あの?レックス?アレと、その姿は一体?」
いち早く意識を戻したホムラは、同調したドライバーであるレックスに聞く。
「彼女はシキ。ブレイド何だって。色々と聞きたいことがあるだろうけど、後で話すよ。今はこの状況を乗り切ろう。」
「はい!」
「ホムラ、はいコレ。」
レックスは手に持っていた聖杯の剣をホムラに手渡す。
「あ、ありがとうございます。でも、レックスの武器は?」
「ああ。それなら。」
レックスは右腕を伸ばすと同時に、ジクウドライバーから虹色の光線が放たれ、一つの武器を形作る。
『ジカンギレード!』
形成された武器―ジカンギレードを手に取り、構えを取る。
「一緒に戦おう。ホムラ。」
「はい!」
「次から次へと訳の分からんことばかり起きやがって・・・まあいい。もう一度てめえを殺すまでだ!ザンテツ!」
「おう!」
「俺は小僧をやる。おまえは女をやれ!」
「わかったぜ!」
そう言ってメツとザンテツの二人は走り出し、それに対してレックスとホムラも迎撃すべく走り出した。
「オラァ!」
「やぁっ!」
メツはザンテツから渡されたトンファーブレードを振り下ろし、レックスはジカンギレードを振り上げる。
刃同士が火花を散らしながら互いに刃をぶつけ合い、一進一退の攻防を繰り広げる。
「せいっ!」
「はっ!」
一方、ザンテツは自らの得物をメツに渡しているため、肉弾戦でホムラと戦う。ホムラに向かって拳を突き出し、ホムラはその拳を剣で逸らす。
「喰らえ!」
拳を逸らされた後左脚を軸にした回し蹴りを放ち、ホムラを蹴り飛ばそうとする。
ホムラは自分に向かってくる蹴りを剣を盾にして防ぎ、その衝撃を利用して後ろへと後退する。
「案外やるじゃねえか、小僧!」
「そいつはどうも!」
「まさかてめえがそんな力を隠していたとはな!どこで手に入れた!?」
「教えると思うか!?」
「そりゃそうだな!」
そんな会話を挟みながらもお互いに一歩も引かずに刃をぶつけ合う。
「ちっ!」
このままだと埒が明かないと判断したメツはレックスの攻撃の勢いを利用して距離を取る。
その様子を見たレックスは追撃しようとメツとの距離を詰めようとする。だがメツは、トンファーブレードを振るって斬撃波を放ち、自分に向かってくるレックスの足元に着弾させる。
「うわっ!?」
足元に放たれたことによって体勢を崩したレックスは前方に転がってしまう。
「レックス!?」
「よそ見してんじゃねえ!」
「貰った!」
大きな隙を見せたことによって好機と見たメツはトンファーブレードを構えながらを一気に距離を詰める。
レックスは距離を詰められてることに一瞬焦りを覚えるが、ジガンギレードをケンモードからジュウモードに変形させ、照準を向かってくるメツに合わせてトリガーを引く。
「何だと!?」
予想外の攻撃に向かってくる光弾を弾きながらも足を思わず止めてしまうメツ。動きを止めたメツに対し好機と見たレックスは光弾を連射しながら今度はレックスの方から距離を詰めていく。
「はあっ!」
間合いに入った瞬間、ジカンギレードをケンモードに変えて再び斬りかかる。
「クソがっ!」
悪態をつきながらレックスの攻撃を捌いていくメツ。このまま無駄に体力を消費するだけの時間が過ぎていくのかと思った次の瞬間、戦況が変わる出来事が発生する。
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
古代船が大きく傾いたのだ。辺りに吹き荒れる嵐のせいで雲海が大きく波打ち、古代船を大きく揺らしたのだ。そのせいで双方がバランスを崩して予想外の部分に攻撃が入り、その衝撃で互いに距離を取ってしまう。
だが、戦況が変わったのは二人だけではなかったのだ。
「きゃあっ!?」
「おっと!?」
ザンテツと対峙していたホムラもまた、船の揺れに体勢を崩してバランスを取るために剣を床に突き刺して揺れに耐えようとする。
「貰ったぜ!」
ザンテツは両腕と両足の爪を床に突き立てながらバランスを取り、揺れを物ともせずホムラに向かって猛スピードで距離を詰めていく。
「くたばれ!」
ザンテツの凶悪な爪がホムラの命を刈り取ろうとしたその時。
「ホムラーーー!!」
レックスの声が聞こえると同時にザンテツの姿がホムラの目の前から居なくなる。ザンテツと入れ替わるようにジオウに変身したレックスがホムラの目の前に現れた。
「レックス!?」
「大丈夫!?ホムラ!」
「ええ、何とか。」
ホムラが無事なことにレックスは安堵の生きを漏らす。船の揺れも落ち着いてきており、二人は手を繋ぎながら共に立ち上がる。
「てめぇ・・・!よくも俺様を蹴り飛ばしやがったな!!」
レックスに吹っ飛ばされたザンテツが怒りの形相を浮かべながら二人を睨みつける。
「許さねえ・・・テメエ等纏めて切り刻んでやる!!」
「待て!ザンテツ!」
怒りによって我を忘れたザンテツは感情のままにレックスとホムラに向かって走っていく。
「行こう!ホムラ!」
「はい!レックス!」
向かってくるザンテツに対して二人は聖杯の剣を掲げ、剣にエーテルを流し込み巨大な炎の刀身を作りながら天高く振り上げる。
「うおおおおっ!!!」
「「バーニング・・・ソーーード!!」」
天と地を裂くような勢いで振り下ろされた炎の剣は、真正面から向かってきたザンテツを捉え、叩き付けられると同時に巨大な火柱を上げて斬鉄を焼き尽くす。
「ぎゃあああ・・・!?」
致命傷を負ったザンテツは、断末魔を上げながらコアクリスタルへと戻り、床へと転がり落ちる。
「ザンテツ!」
「後はお前だ!メツ!!」
メツに止めを刺すためにレックスは、ベルトを操作して必殺技を発動させるシークエンスを実行する。
『フィニッシュターイム!タイムブレーク!』
レックスは天高く飛び上がると同時に何処からともなく出現した大量の「キック」のエフェクトが出現し、メツを囲うように拘束する。
「やああーーー!!」
拘束されているメツに向かって右足を突き出し、撃ち出された砲弾のごとく上空から飛び蹴りを放つ。
「・・・っ!」
レックスのキックがメツの胸部に当たる瞬間、それまで沈黙を続けていたシンが間に割り込み、刀を前に構えて盾にするように付き出す。
「グッ・・・!」
「うおおお!?」
キックがシンの刀に当たった瞬間爆発が起こり、メツとシンは勢いよく吹っ飛ばされて共に海へと落ちていった。
敵である二人の姿が見えなくなったのを確認するとレックスは変身を解除する。
「やった・・・。」
「はい。やりました!」
敵を倒したことに喜びの声を上げる二人。だがその直後、船が再び大きく揺れる。
「うわっ!?何だ!?また嵐か!?」
「違うみたいです!見てください!あそこ!」
ホムラが指を指した方向を見ると、何やら黒い影のようなものが視界に入る。影がこちらに向かって近付いて来ると同時に姿がハッキリと見えてきており、その全貌が露わになる。
「アレって、アヴァリティアの港で見た・・・!」
影の正体は、レックスがアヴァリティアの港で見かけた巨大戦艦だった。
巨神獣を使わない船であったので珍しい物だなと記憶に残っていたのだ。
「アレって、モノケロスじゃん!?」
「ニア、知ってるの!?」
「アヴァリティアに来る時にメツやアタシ達が乗ってた船だよ!他にも何人か乗ってる・・・うわっ!?」
ニアが黒い船のことを説明していると黒い船―モノケロスから砲弾が放たれ、古代船に次々と着弾する。
着弾した瞬間、次々と爆発が起こって燃え上がり船にどんどん穴を開けていく。
「マズイ!他の人達の避難を!」
「それならさっきの戦闘で生き残ってるのはみんな逃げたよ。後はアタシらだけ!」
「他の巨神獣船は!?」
「全部逃げた!」
「マジ!?」
「このままでは我々は古代船と共に沈んでしまいます!」
ニアのブレイドであるビャッコが言う。このままではビャッコの言う通り古代船ごと沈められてしまう。何か方法は無いかと探そうとする。
「レックスーーー!!」
その時、レックスの耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。聞こえてきた方向に目を向けると、巨大な龍が猛スピードで突っ込んできた。
「アレは、じっちゃん!!」
「セイリュウさん!?」
「レックス!早く乗れ!!」
「みんな!じっちゃんに乗ってくれ!!」
レックスの言葉を聞いた全員は古代船から飛び降り、飛んできた龍の背中へと飛び移る。全員が乗り込んだのを龍が確認すると、龍は勢いよく上昇し急いでこの場から離れようとする。
だが、目撃者は逃さないと言わんばかりにモノケロスは龍に向かって砲弾を放つ。次々と放たれる砲弾を躱しながら龍は逃げるが、何発か被弾してしまう。体に走る痛みを堪えながらもモノケロスの砲撃を潜り抜け脱出に成功した。
「じっちゃん!無事か!」
「それはこっちのセリフじゃ!まったく、危ないことに首を突っ込み追って!!」
「それは悪かったよ!説教なら後で聞くから!!」
「ああ!そうさせてもら・・・ぐうっ!?」
「じっちゃん!?」
「すまんが、もう保たん!」
「マジかよ!」
「落ちるぞ!」
「「「「うわあああ!?」」」」
被弾した時の痛みが響き、飛ぶ体勢を維持できなくなってしまう。その結果、龍はバランスを崩して段々と下へと下がっていき、近くの巨神獣へと不時着するのであった。
「かくして、我が王ことレックスと天の聖杯たるホムラとの旅が始まった。今後、幾重なる困難と試練が我が王に降りかかることになるが、それはまた別のお話・・・。」
誰もいない劇場のような空間で本を開きながら話すシキ。その顔は未来に起こる出来事に思いを馳せるような、そんな表情をしていた。
レックスをジオウに変身させたのは、レックスの名前の綴りがラテン語で王を意味するREXだったので変身させてみました。
一発ネタなので続きません。
人物設定
レックス=ジオウ
・レックスの名前の綴りが王を意味するREXから。
シキ=ウォズ
・本を持ってるからという安直な理由。
この話で書くときに予定としていた内容は以下の通りです。
原作第二話でアナザーライダーに変身するモーフと戦闘。
第三話でジオウⅡに変身。
第四話で何故かブレイドのウォッチを持ったジークと戦闘及び工場にてディケイドと戦闘。
第五話でアーケディアに盗みに入ったディエンドと戦闘。
第六話で一度ジクウドライバーを破壊される。
第七話で記憶を抜かれたホムラ/ヒカリがアナザーライダーに変身させられて戦闘及びグランドジオウに変身。
第八〜九話は未定。
第十話でメツがバールクスに変身及びレックスがオーマフォームに変身。
と言った展開を予定していました。
まあ、妄想段階で特にどう書けばいいのか定まっていなかったのでボツにすることにしました。
短編程度でも楽しんでいただけたのなら幸いです。
ではまたどこかで。