よくある、スカウト失敗したトレーナーの話 作:ヒメノリ
※何時も誤字報告感想ありがたく受け取っております。
ジリリリと、鳴り響くベルの音で目が覚める。
未だ耳元で俺の起床を促してる目覚ましを落ち着けるように、その頭についてるボタンに手を伸ばし、音を止める。
ぼんやりとしたまま、身体をベットの上から起こし、一瞬の思考の後、とりあえず顔を洗うという結論に至った俺は、ベットからゆっくりと降りると、洗面所へと向かった。
この部屋に備え付けられてるシャワー室の前、白い洗面台へと向かう。
洗面台を前にして、蛇口を捻り、水を出すとそれを手のひらですくい、一息に顔へとかける。
3度ほどそれを繰り返した後、ようやく頭が急速に冷やされる。
パチリと自分の目が瞬きをするのを確認し、水滴のついた顔をタオルで拭うと、当たり前だが、鏡には自分が写っていた。
周りから、と言っても交友関係があまりにも狭いため、担当か、先輩に位にしか言われないが、俺は目付きが悪いと言われる。
そんなに気にしたことは無いが、そこまで鋭いような気はしない。
だけど、まるでゾンビを見てるような、そんな生気のなさを感じるのも事実であった。
少しは、身なりに気をつけた方がいいな、なんて他人事のように考えた後、毎日のルーティンであるカフェインの摂取のため、その場を後にする。
特に使われてない寂しい台所に赤と黒を基調としたコーヒーメーカーが居座っている。
とりあえず、コーヒーを飲むのだ。コーヒーが好きとか、この豆がいいとかは無いため、市販の適当なものをコーヒーメーカーにセットして作る。
しばらくすると、ドボドボと、液体が抽出される音が聞こえてくる。
味が好きでは無いが、飲まないとどうも満足出来ないのだ。
もしかして、カフェイン中毒なのかもしれないが、特に業務に支障も無いためいいだろうと、これまた中毒者が言いそうな典型的な言い訳をする。
待っている間、特にやることも無く、義務であるように部屋のカーテンを開くため、先程まで自分が寝ていたベットの置かれた付近の窓へ近づく。
カーテンを開けて、朝日に目を細めながら、部屋の中に陽の光を通す。
ふと、俺を起こした目覚まし時計の方見てみると、時刻は6時12分を指していた。
起床時間は6時で設定している。
どのくらいに起きるのがベストなのかは、徹夜というものを覚えた辺りで考えるのを止めた。
その流れで、目覚まし時計の横にコレは自分で買ってきたカレンダーを見て、今日の日付を確認する。
今日の内容等、把握済みではあった。
今日は休日ではあるが、明日に備えて彼女と軽いミーティングをする段取りだった。
しかし、何となくで確認をしてみることにした。
するの、そこで俺は衝撃の事実に気づいた。
「あ。」
情けない声を出して、12月のカレンダーの、下部の方に目線が固まる。
慌てて自分の記憶と参照して今日の日付を思い出して、それでも何かの間違いかと思い、机の上に置いてあるであろう携帯を手に取り、画面を表示する。
しかし、現実は非情であった。
12月24日土曜日。今日は世間が騒ぐ楽しいクリスマスイブであった。
「…まずいな。」
窓越しから見ても寒気が伝わるような、そんな外の景色を前に、俺は一人表情を苦めた。
ーーー
「本当にすまなかった。」
少し早めにトレーナー室へと入った俺は、彼女と顔を合わせ開口一番に謝意を込めて頭を下げた。
「…えっと、取り敢えず理由を聞くわね。」
何をしているんだ、と疑問に思ったであろう彼女は学園指定の赤ジャージに身を包んだ姿でそう言った。
本日は、クリスマスイブだ。キリスト生誕前日にして、一般日本人にしては楽しいお祭り行事の1日である。
クリスマスと、クリスマスイブ。どちらが良いとか、悪いとか、気にするような人間は稀有であろうが、どちらにでも言えることは、どちらも大切な日であるという事だ。
そんな本日は、誰にとっても平等で、それ故にその楽しみはひとしきりなものだろう。
「で、そんな今日と明日をそれぞれトレーニングとレースで勝手に埋めてしまったから申し訳ない、とね。」
いつも通りソファーに腰をかける彼女と、その彼女の正面に立って本日の失点について説明する俺。
そう、彼女の言葉通り、俺はこの日を失念していたのだ。
別に、明日レースに出場する事がまずいのでは無い。世間的にも、特に明日のレース、『有マ記念』は全国的にも注目度が高く、そんな誉あるレースを前にクリスマスを無念に思う者も少ないだろう。
しかし、それとこれとは別であった。
別に、彼女は明日『有マ記念』に出る訳では無い。
デビューから順調にトレーニングを重ねた彼女は、その後も危なげなく勝利を収めていた。
2度の勝利を持ち帰ってきた彼女は、徐々に新株として注目されつつあった。
しかし、それでもまだジュニア期である。
この調子ならば、問題はなく、
絶対に明日でなくては行けない理由も、無理にスケジュールを合わせるような厳しい環境に彼女はまだ居ない。
そう、つまりそれは今日明日が本来なら彼女にとってかけがいのない1日となるはずであったことを意味にする。
そんな日に、それを失念していた俺はレースをぶつけたのだ。
「すまない。」
もう一度、謝るために顔を下げる。
「いや、別にレースに関しては私も事前に承諾したしねぇ。」
それでも、気にしてないと言って彼女は答えた。
たしかに、事前に明日のレースの事は彼女に伝えたし、いくら何でも2人ともクリスマスを忘れてたなんてバ鹿げた話も無い。
しかし、俺は今朝カレンダーを見た瞬間に今日がクリスマスイブである事と同時に1週間前の事も思い出していた。
ーーー
『という事で、来週末にレースを申し込みたいと思う。幸いな事に、目的のレースは空いているようだが、良いか?』
1週間前のクリスマスのクの字も頭に無いような表情の俺が、今日と同じようにソファに座る彼女に提案をしていた。
『え!その日は…。』
少し悩んだ様子の彼女に、俺は道理の知らない愚者の如く質問を投げかけた。
『何か都合が悪いか?無理なら変えるが、問題ないならこの日が望ましい。』
と、頭の中にレースしかない男が言い放った言葉に、『あー』と言いながら、彼女は少し察した様子で答えた。
『…まぁ、トレーナーが良いなら私は構わないけど、本当にいいのね?』
本当にいいのね?なんて言った彼女の言葉の真意に気づかなかった。
『よろしく頼む。』
と、愚かにも答えてしまった。
ーーー
とまぁ、こんな感じであった。
あの時、何故か疑問にも思わなかったが、あの日彼女が言った『本当にいいのね?』という言葉の真意は、単にスケジュールへの確認ではなく、『その日クリスマスだけど、お前には暇しかないのか?』と言った類の質問であった。
阿呆である。
「たしかに承諾はされたが…ほら、こんな日にレースの話ばかりというのも些か寂しいというか。」
自分ではなく彼女がという意味である。
若い生ける青春である彼女等からクリスマスを奪うと言う行為は1級犯罪にあたると、樺咲先輩から把握していた。
いや、別にあの人の言葉を鵜呑みにした訳では無いが、あまりに対人関係に疎い上クリスマスに特別な思い入れが無い俺は樺咲先輩位しかクリスマスの参考材料には出来なかった。
それに、世論的な目から見ても、クリスマスが大事な日であるという認識は確かだろう。
「うーん、確かに華の乙女としては少し寂しいけどね。」
今回の件に関しては、俺のクリスマスの認識の相違が招いた悲劇である。
「すまない、俺から出来ることであれば、何かしよう。」
やはり、せめてもの贖罪として、何か刑罰があるべきである。
そう考え、俺の誠意を彼女に伝えると、少し考えたように天井を見つめた後、彼女は何か思いついたのか、その場を立ち上がった。
「じゃあ、さっさとミーティングを終わらせちゃいましょ。」
そう言いながら彼女は、レースの作戦を寝る時だけ使うホワイトボードを持ってきた。
「あ、ああ。もちろん明日のレースの為、作戦会議は行うが…。」
そう言ってホワイトボードを俺の元に、そしてそのボードに磁石でつけてある黒のボードペンを俺に渡して彼女は言った。
「そ、明日のレースも勝つけど、その前に…。」
彼女はトレーナー室の窓を背に、親指で後ろを指しながら言った。
「クリスマスの買い物、付き合ってもらうわよ。」
またもや、良い悪戯が思いついたと言わんばかりの表情で彼女は言った。
「…は?」
突然のクリスマスのショッピングの誘いに、俺は呆然とその場に立ち尽くした。
ーーー
寒さが頬の肌を撫でて来る中、所々イルミネーションで彩られた街道を呑気に歩く。
道行く人々は、楽しげに笑っていたり、妙に騒がしかったり、人それぞれのクリスマス前日を楽しんでるようだった。
「ほら、さっさと行くわよ。」
そんな愉快で楽しげな雰囲気の学園近くの商店街を彼女に連れられる形で歩く。
「…なぁ、なぜ俺は今ここにいるんだ?」
流されるようにこの場を歩いている俺は、どうしてこんなにも自分とは真反対な雰囲気の場所を、それも自分の担当と歩いているのか、本人に聞くことにした。
「なぜって、盛大にクリスマスイブを祝うために決まってるでしょ。」
「…俺と君でか?」
「ええ、私とトレーナーで。」
あっけからんとした様子で話しながら、俺の目の前を歩くウマ娘には、動揺は見えなかった。
そう、今俺がトレーナー室に籠って明日のレースに備えてる訳でも、やることも無くぼーっとしてはコーヒーを飲むという何時もの休日を送ってるわけでも無く、昼間から買い物に出掛けているのには理由がある。
午前中に明日のレースについて、対戦ウマ娘の確認や、バ場の確認等、行うべき確認は済ませた。
普段であれば、明日の集合時間のすり合わせをした後に解散という流れであったのだが、まさかの彼女からの提案により、今このような状況になっているのだ。
「…正直、愛想の愛も想も無いような俺が君と楽しくクリスマスを祝う光景が想像出来無いのだが。」
考えてみる。
色とりどりの飾り付けをしたトレーナー室で、ニコニコとしながら楽しく2人でクリスマスを祝う俺達…想像するだけで、頭痛が襲いかかって来そうだ。
「うーん、たしかにトレーナーとパーティとか、微塵も盛り上がる気がしないわね。」
…否定した此方が言うセリフでは無いが、誘った本人が微塵も盛り上がらないと言うのは、如何なものだろうか。
「ま、ケーキでも食べればそれっぽくなるでしょう。」
なんて、特にプランも思い浮かばないまま、取り敢えずケーキを買うことに決めた俺達は、甘い物の売ってそうな店を巡ることに決めた。
それから、1軒目。
彼女がクラスメイト達から評判だと紹介してくれた店へと赴く。
しかし、俺達と同じように評判を聞いたのか、店の前には予約受け取りや、ケーキの買い出しで並ぶ者で列が出来ていた。
仕方なく、今度は彼女が休日のお出かけで見かけたと言う老舗的な店を訪れる事にした。
今度は、見てるだけで嫌気が差すような長蛇の列は出来ておらず、ケーキゲットかと思われたが、店に入るとそこにはマカロン、プリン、シュークリーム等。
見事にケーキだけを外したラインナップの甘味が並んでいた。
これでいいのではないかと考えた俺だったが
「いや、クリスマスはケーキよ、ケーキ!」
と言う彼女の主張に押し出される形で店を後にした。
そして3軒目。
今度はもう彼女に行く宛てが無かったため、俺の知ってる範囲でケーキを売ってそうな店を絞り出した結果、昔、1度だけ入店した事のある店でケーキが売ってたことを思い出した。
三度目の正直というか、意気込み十分で記憶を頼りに何とか訪れた店。
入店するとそこには、ショーケース越しにまだ在庫のあるケーキがあった。
やっとだと思い俺は彼女と目を合わせてから
「このケーキ、売ってくれますか?」
と、懐から財布を出しながら言った。
そして、次の瞬間、提示された値段を見て、見て、3度見て、買うことを断念した。
数値を言う事がはばかられる様な値段であったためだ。
具体的には、想像より3桁違った。学生ながらその値段を目の前にした彼女は、呆然として1分程動けなくなってしまった。
何だったんだあの店は。ケーキとはあそこまでの相場がするのであろうか。
そんなこんな、かれこれケーキを求め、何軒も店を巡って歩き回った。
そして…。
「…全っ然!売ってないんだけど!」
今の所、全滅の状況であった。
それもそのはず、ケーキとは、一瞬にして生産される手軽な菓子とはわけが違った。
クリスマスとなれば多くの人がケーキを欲し、その結果、賢い者たちは事前にケーキを予約するという手筈を行う。
「つまり、俺達は出遅れた訳だな。」
さながら、レースでゲートが開くタイミングを掴み損ねた時のように、当日になってクリスマスの準備を始めるということ自体が愚策であったのだ。
「ぐぬぬ…もう、小さいケーキでも買って満足するしか…いやでも、折角のクリスマスよ…。」
しかし、目の前のウマ娘は耳と尻尾を悔しげに動かしながら、まだ聖なる夜の望みを捨ててないようだった。
どうやら、俺と違いクリスマスを楽しみにしていたのは本当であり、尚更悪い事をしたなと、罪悪感が湧いてきた。
「まぁ、なにもケーキだけがクリスマスの要素ではないだろう…多分。」
小さな声で、後付けのように多分をつける。
いや、正直クリスマスでケーキを食べるという事がここまでの高難易度だとは思ってなかった。
これは、運が悪いだけなのか、クリスマスとはケーキ争奪戦の一面を持つ恐ろしい日でもあるのか。
いずれにしろ、俺に判断はつかなかったし、そもそもクリスマスにケーキとはそこまで大切な物なのか。
「せっかく乙女の尊厳を守った上で高カロリーを合法的に摂取出来るチャンスだと言うのに…。」
しかし、目の前でレースの時のように闘志を燃やしてるウマ娘の前でその疑問を口にする事は出来なかった。
どうするものか。不運にも、今の俺にはクリスマスの経験も、手段も持ち合わせてなかった。
そんなこんな悩んでると、うずくまって考え込んでる彼女の後ろから、トレセン学園の制服を着た生徒が2人、近づいてくるのが確認できた。
どうやら、結構な量の買い物のようだ、2人とも両手に袋を何個か握っていた。
「えーと、ツリーの飾り付けも、これで全部揃ったかな?」
「うん、言われてたものは全部買ったはず、後は設営班が何とかしてくれるでしょ。」
どうやら、パーティの準備の様だ。
いくつもの袋の中身は、全部飾り付けの為のものらしい。
随分と盛大に祝うのだろうか。
「それそうと、今年は随分と手が込んでるよね。」
「確かに、生徒会としては仕事が増えるけど、私はこういう行事好きだからいいけどね。」
そう言うと、忙しそうな2人は、そのまま俺達の横を通り過ぎて言った。
「生徒会…そういえば。」
トレーナー向けに先週あたりに連絡を受けてた事を思い出す。
トレセン学園生徒会主導によるクリスマスイベント。
毎年行われるらしいこのイベントは、学園の食堂を貸し切った生徒達の参加によって起きるトレセン学園の一大イベントらしい。
勿論、生徒達の参加がメインであり、トレーナーは1部の関係者やスタッフとして参加する場合を除き、基本立ち入ることが出来ない。
しかし、言い換えれば生徒ならば誰でも参加可能という事だ。
そう、つまり生徒であればクリスマスの夜にケーキを食すことも簡単だろう。
俺は、うずくまって唸っていた彼女に目線を向ける。
既にこちらを見ていたようで、目を向けると下から見上げる形でジトっと目線を送ってきていた。
「なによ。」
さっきの生徒会のウマ娘達の会話を彼女も聞いていたのか、何か言いたげな表情であった。
それから、膝を曲げてその場にうずくまってた体勢から、その場に立ち上がると、吊り目からなる高圧的な表情で彼女は言い放った。
「言っとくけど、私はアレに参加する気ないわよ。」
俺が話すよりも先に、彼女はその提案を断った。
「…一応聞いておくが、何故なんだ?」
もう、顔には絶対に行きませんと書いてあるが、いとも簡単に今の目的が達成される素晴らしい提案だろう。
「気分よ、気分。生徒会主導の奴でしょ?てことはアイツ、シンボリルドルフが主催者って言っても過言じゃないでしょ。」
そう言うと、彼女は我儘を言う子供の様な雰囲気を纏わせて言った。
「なんか、癪に障るじゃない。」
簡潔な回答だった。どうやら、このウマ娘はことクリスマスに置いてもシンボリルドルフに妥協を許さないらしい。
思わず、頬が少し緩む。
「っく、なんだ、君もとんだシンボリルドルフバカじゃないか。」
そうやって言うと、彼女は頬を少し赤くして言った。
「な、なによ。トレーナーと同じにしないでよね!てか、元を辿れば、トレーナーが明日にレースを…。」
恥ずかしさを隠すように、少しづつヒートアップを、重ねてく彼女の声が、急に止まった。
かと思ったら、今度は手を震わせながら、人差し指でこちらの顔を指して言った。
「い、今、と、トレーナー。笑ったよね…。」
まるで幽霊でも見たかのように、驚愕に表情を染めていた。
そんな彼女を置いたまま、俺は歩き出す。
「ま、それもそうだな。例えクリスマスでも妥協は無しだな。ほら、さっさと準備を済ませよう。」
どうやら、今日のパーティは最高のものにしなくてはいけないらしい。
「って、置いてくんじゃないわよ!」
少し間を置いてから、後ろから彼女が近づいてくる気配を感じた。
ーーー
「…美味し、かったわね。」
窓の外は暗く、たくさんの明かりがトレーナー室を彩っていた。
「ああ、それは良かったな。」
お互いに食べ終えた食事の後片付けをするため、対面で空になった皿を前にした彼女から、皿を受け取る。
「…トレーナーって、料理出来たのね。」
彼女が、驚き5割、怪しさ2割、感心3割と言った表情で皿を手渡しながら彼女が言った。
あの後、何軒も巡った後、最初の店に戻ってみると、発注受け取りミスらしく、1品だけ余ったチョコレートにんじんケーキがあったらしく、それを買わせてもらう形で手に入れた。
もちろん、良心的な一般な価格でだ。
ケーキで手間取った買い物は、気づけばかなりの時間が経っていて、クリスマスらしい料理を彼女に問いかけると、チキンが食べたいらしく、鶏肉と必要な調味料だけ帰りに購入して、トレーナー室で調理をすることにした。
「ああ、トレーナーだからな。」
皿を流しに置きながら、彼女に返事をする。
「…なんか、私の中でのトレーナー観が、シンボリルドルフ狂いのトレーナーのせいで崩れそう。」
後ろでは、何か言いたげなセリフと感情の声が漏れていた。
しかし、結果としては、思ったよりも良いクリスマスパーティとなったのではないだろうか。
「ま、中々楽しめたし、レースの件は許してあげましょう。」
満足な様子の笑顔で答える彼女から、許しが降りたらしい。
「そうか、じゃ、後はクリスマスプレゼントだけだな。」
そう言って、俺は置いてあった黄色のファイルを手と赤のファイルを手に取る。
「クリスマスプレゼント?」
今度は何の話か、不思議そうな顔を浮かべる彼女に、ファイルを開いて見せる。
「ほら、俺からのクリスマスプレゼントとしてくれ。」
ページは、赤の、『皇帝完全攻略』と銘打ったルドルフの様子を事細かに記したファイルは、ルドルフの秋の成績が開かれてた。
「これ…。」
「ああ、秋に行われたサウジアラビア杯。ルドルフが獲ったぞ。」
ぴくりと、彼女の耳が動いた。
感情を、闘争心を刺激するよう、声に抑揚をつけるように言う。
「さて、我々の目的は打倒シンボリルドルフ…少し、物足りない気がしないか?」
サウジアラビア杯での走りも、見事と言うに相応しかった。
最初から最後までこの時期で完璧に支配するレースは、例えクラシック級であっても通用するものであろう。
「…分かったわ。」
明日のレースが特別な訳では無い。
勝っても、負けても次に生かせるならそれで良い。
だけども、彼女はその目に強い闘志を燃やしたまま、言った。
「最高のクリスマスプレゼント、あげるわよ。」
力強い言葉で、意志を示した。
ならば、勝てるのであればとことん勝っておけばいい。
もう、次の菊花まで、1年もないのだから。
そう思うと、この部屋でのクリスマスは、今年が最後で最初なのだと、少し感慨深く感じる。
「ああ、頼んだ。」
そう言うと、彼女は力強く頷いた。
コンコンコン。
そんな、一区切りついた中、トレーナー室の扉から音が聞こえた。
この部屋は、廊下の隅に位置してる部屋で、俺の人相もあってか、普段から人が訪れることなんて無かった。
だから、この部屋の扉が、ノックされるなんて事は…
「あ。」
俺が気づくより先に、彼女が声を上げた。
そして、またコンコンコンとノックの音が響く。
そう、今日は楽しいクリスマスだ。
調理と準備に手間取ったからか、時刻は10時を過ぎ、門限なんてとっくに過ぎていた。
コンコンコン。気のせいか、ノックの音が大きく聞こえる。つまりは、先程より力強く叩かれてるのだ。
「…まずいな。」
カチャリ。応答が無いことを確認してか、鍵が開かれた。
この学園で、トレーナー室を開けれる鍵を持ってる人物…容易に想像ができた。
有馬記念
↑
コレの変え方分からないのですが、どうやってるのでしょうか?
投稿時間は何時がいい?
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朝(6:00〜8:00)
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昼(12:00〜14:00)
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夕方(16:00〜18:00)
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夜(19:00〜21:00)