第三話
day1 20:00 quarter“caster”
キャスターこと土御門春虎の式神・飛車丸は夜の町を飛び回っていた。
飛車丸と角行鬼は春虎の命により、この町の事について調べていた。
この町は冬木市の深山町というところであるらしく、『聖杯戦争』は過去にも何度か開催されたことがあるらしい。
ちなみに『陰陽師』や『陰陽庁』などはこの世界には存在しないものとされていた。
(何らかの結界…いや、どこかに飛ばされたのか?それとも幻術…?)
飛びながら思案する飛車丸は突然空気を足場にするようにして上へと跳躍した。
瞬間、飛車丸がいたところを前方ななめ上から飛来した水色の閃光が、ドゴォ という音と共に通り過ぎる。
「不意討ちを仕掛けるなど、何たる卑劣さか!そこにいることは分かっている。姿を現わせ!」
その言葉の返答は刀の一撃だった。
その一撃を逆手に持った小刀で受ける飛車丸。
「ほう。魔術師の使いっぱしりと聞いていたが存外やるものだな。」
陶器のような白い肌の襲撃者が呟く。
「貴様ッ…!その刀、貴様、剣士か!?何という卑劣な…」
「違う。俺はランサーだ」
飛車丸が言い切る前にランサーが返答する。
ランサーの刀を飛車丸は押し返し、小刀で胸を一突きするが、
「なっ…」
小刀はランサーの頑丈な皮膚によって阻まれた。
その程度で、とランサーは抑揚をつけずに言う。
「その程度の一撃で俺の鋼皮を貫く事は不可能だ。」
ランサーが弾かれた刀を横なぎに振るう。刀の一閃は飛車丸の上半身と下半身を両断した。が、飛車丸の体が呪符へと変わる。
幻覚。
それをランサーが認識した瞬間、
「ひふみよいむね、こともちろらね、しきるゆいとは、そはたまくめか!」
飛車丸は光の弓に呪力の矢を番え、蟇目神事の神言を唱え終えていた。
莫大な呪力が込められた矢が放たれる。
僅かに目を見開き、これを避けるも避けきれず、左手を吹き飛ばされるランサー。
「片手を失ってなお春虎様の護法たるこの私と相対するというのなら…相手になるぞ、ランサー」
「…見くびるなよ」
その時。
飛車丸にとって驚くべきことが起こった。
ランサーの左手が。
再生していく。
ランサーは再生した左手から水色の閃光を再び放つ。
たまらず吹き飛ばされ、地面に危うくぶつかりかける飛車丸だが、
「ノウマク・サラバ・タタギャテイビャク・サラバ・ボッケイビャク・サラバタ・タラタ・センダ・マカロシャダ・ケン・ギャキギャキ・サラバ・ビギンナン・ウンタラタ・カンマン!」
何とか体制を立て直しつつ、唱える。
不動明王の火界咒。
爆炎がランサーを包み込む。
しかし、ランサーはその身に受けたダメージを即座に回復してしまう。
(再生能力…!?まさかこやつ、件の今朝の襲撃者か!?)
と考えている飛車丸へとランサーが上空から連続して閃光を放つ。
さらに。
「…AMEN!!」
閃光の雨を結界を張って防御しつくす飛車丸の耳に雄叫びが飛び込んでくる。
間髪入れず、剣を三本爪の様にして持つ新たな襲撃者が、飛車丸を襲う。
20:13 quarter“caster”
襲撃者‐アサシンの不意討ちを避け、アサシンのいる下方へと狐火を放つ飛車丸だが、
(こいつも再生能力を!?)
アサシンの傷がみるみる塞がっていく行く。
上方のランサー、下方のアサシン。
再生能力を有する者が二人。
ランサー一人でさえも苦戦していたというのにそれにアサシンも加わればどうなるかは明白である。
頭の中に敗北の二文字がちらつく飛車丸だったが、攻撃を捌くのに精一杯で春虎へ救援を頼むことができない。
そして、ついに、その時がやってきた。
ランサーの放った閃光を避けた瞬間に飛び込んでくるアサシン。
飛車丸はそれを避けることができなかった。
思わず目をつぶる飛車丸だったがアサシンの凶刃が身を貫く事はなかった。
その代わりにドゴォ!という轟音を飛車丸は聞いた。
20:10 quarter“berserker”
一人の男が扉を開ける。
「‐正義執行」
20:17 quarter“caster”
壁面までぶっ飛ばされれ、身体を文字通りズタズタに引き千切られたアサシンを、飛車丸だけでなく、ランサーですら唖然として見ていた。
ハゲ頭の突然の闖入者。
この男は一撃でアサシンを打倒した。
そう。
一撃で。
再生していくアサシンを見てその男‐バーサーカーが笑いながら呟く。
「…こいつは少しくらいなら楽しめそうだな…!」
どんな敵でも一☆撃☆必☆殺☆!