超昂大戦SS ヴァルハラに咲く紅い花〜ユカ、未来への槍撃 作:環 藍河
ネタバレを気にされる方はご注意ください。
洞穴の奥深くからルビーを救出したエスカリバース。
だが、決死の脱出戦の中、リバースの瞳に映る虚無。
その哀しみに触れたルビーは、ユカに「生きてください」と願う。
…
……
〘リバース…どうして…?!
あなただって、並大抵じゃない努力で、こんなに強くなったはず…! それを成し遂げて、地球を護ったあなたが…どうして自分を誇れないんですか!〙
〘…へっ、勝ち組のお前らに、わかるわけがねえんだよ! 屠って潰したダイラストの奴らはクソゴミ共だが、護った奴らはそれ以上に腐り果てた、ゲロクソクズ共。
…オレが本当に護りたかったのは…あんな奴らじゃなかったんだよ!〙
救護室で治療を受け、ベッドにうつ伏せになり。
アカリは、エスカリバースと敵として対峙したときの言葉を思い出していた。
「アカリ、体は大丈夫だったみたいね。良かった。」
「エリーちゃん…」
幻魔の出現データの解析を待つ間を縫って、アカリの見舞いに訪れたエリー。
曇る表情が示す、アカリの憔悴。
そんなことをしなくても一目瞭然なのだが、エリーは水晶玉に手をかざす仕草をして、言葉を継ぐ。
「ふむふむ…でも、心は荒波真っ只中ね。何かあったかな?」
「…あのね、エリーちゃん…」
アカリは語った。
背中越しに垣間見た、ユカの虚無を。
「…皮肉なものね。」
「えっ?」
「エスカリバースの必殺技が、【ヴァルハラ】エスカレーション…なんて、ね。」
「エリーちゃん、それ、どういうこと?」
「【ヴァルハラ】は、北欧神話で、最高神オーディーンを始めとする神々が集う、神殿の名前なの。だけど、もう一つ、意味があってね。」
「…うん。」
「人間界の戦士が力尽き、その命を散らしたとき…戦乙女に選ばれた戦士は、神の許へ還るの。そして最終戦争ラグナロクに備え、今度は神の戦士として、死してなおも戦い続ける。
そのための特訓場…それがヴァルハラなの。」
「えっ…!!」
そう。さしずめ、エスカリバースの…ユカの渾身の剛槍は。
一撃ごとにその命を削り、ただひたすらに、終わりなき修羅の道を突き進む、魂の輝き。
いつかその身を全て業火に焦がし尽くす瞬間まで…あるいはその後までも。
敵とともに、死にゆく自分をも貫く、魔性の槍撃。
…それがヴァルハラ・エスカレーションの…エスカリバースの哀しき宿命だとでもいうのか。
「そんな…!」
「ユカさんがその意味を知ってか知らずか…だけどね。」
「でも…でも、それじゃ…ユカさんは死ぬために戦っているって…」
「うん、そういうことに、なるね。」
表情を引き締め、エリーが念を押す。
「…アカリ。私たちは直接ユカさんを救えないし、軽々しく救おうなんて考えちゃダメよ。」
かつて、沙由香がただ一つ、ユカに尋ね、そして知ったこと。
ユカの大事な人は…もう、既に居ないこと。
きっと、ユカと、その大切な人の過去は、筆舌に尽くし難い凄惨なもの。
…この世界への、人への、全ての慈しみも温もりも手放して構わないと思わせるほどの、惨劇であったのだろう。
そしてその過去は、何人たりとも、変えることも消し去ることもできない。
「…アカリ。ユカさんを信じなきゃ。」
「えっ…?」
「未来はね、希望ばかりじゃない。全ての人にハッピーエンドが標準装備されているわけじゃ、ないから。」
「…それは…!」
「そうじゃないから、私のような占い師がいるの。
そして、人さまの未来に自分勝手に海図を引いて、本人に代わって座礁や難破を防ごうなんてお節介は、占い師のタブー。
私にできるのは、荒波が来ることを伝えるだけ。」
アカリはエリーの話に、真摯に耳を傾ける。
きっとエリーは、哀しい過去を持つ人をたくさん見てきたから。
そしてエリー自身も、魔女の宿命の下、両親を失い、その哀しみを超えてきた子だから。
「八つ当たりを始める人、困難から逃げる人、諦める人…運命に負ける人の方が多いし、私はそんな人々を見殺しにしてきたのかもね。
けど、私の占いで迫る悲劇を知って、立ち向かう勇気を手にした人もいる。」
「…うん。」
「だから、私は信じたいの。人は強いものよ。
外の殻がひび割れても、中はしなやかに形を保つ。そして、孵った雛はいつか独り立って、母鳥になる。時間がかかっても、必ず。」
「…そうだね。…そう…だけど…。」
アカリは嘆く。
その日まで心に影を落とすユカに、何もできることが無い、自分の非力を。
「やっぱり…強いだけじゃ、ダメなんだ。
…悲しみを超える力…私、まだまだだ…。」
おはようございます。作者の環藍河です。
昨日「4夜連続」と申し上げたにも関わらず、お待ちいただいていた方には申し訳ありません。
「ヴァルハラ」の世界観…ヴァルキリープロファイルシリーズあたりのアレですね。彼女の修羅道に、希望を持たせたいと思って執筆中です。
※原作のユカは、現在は前向きに闘っている(はず)ので、このSSは原作途中の時間軸、ということで。
執筆していて一番困っているのが、環はエスカリバース未入手でして、キャラクターストーリーとカブりや矛盾が起きていないか…と懸念しています。
が、重複したら偶然の一致ということで、ネタばらしの意図はございませんのでご容赦ください。私もいつか入手できた暁に、びっくりした後に、こちらで追記報告する…ことがあるかも?
この後は閑話を1本、そしてクロージングの後編1本と続きます。
予定では今夜と明日の夜に。