超昂大戦SS ヴァルハラに咲く紅い花〜ユカ、未来への槍撃   作:環 藍河

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※原作第1部11章~12章までの内容が含まれます。
 ネタバレを気にされる方はご注意ください。


中編 終わり無き死闘! 哀しみのヴァルハラ・エスカレーション

洞穴の奥深くからルビーを救出したエスカリバース。

だが、決死の脱出戦の中、リバースの瞳に映る虚無。

その哀しみに触れたルビーは、ユカに「生きてください」と願う。

 

……

〘リバース…どうして…?!

あなただって、並大抵じゃない努力で、こんなに強くなったはず…! それを成し遂げて、地球を護ったあなたが…どうして自分を誇れないんですか!〙

〘…へっ、勝ち組のお前らに、わかるわけがねえんだよ! 屠って潰したダイラストの奴らはクソゴミ共だが、護った奴らはそれ以上に腐り果てた、ゲロクソクズ共。

…オレが本当に護りたかったのは…あんな奴らじゃなかったんだよ!〙

 

救護室で治療を受け、ベッドにうつ伏せになり。

アカリは、エスカリバースと敵として対峙したときの言葉を思い出していた。

 

「アカリ、体は大丈夫だったみたいね。良かった。」

「エリーちゃん…」

幻魔の出現データの解析を待つ間を縫って、アカリの見舞いに訪れたエリー。

曇る表情が示す、アカリの憔悴。

そんなことをしなくても一目瞭然なのだが、エリーは水晶玉に手をかざす仕草をして、言葉を継ぐ。

「ふむふむ…でも、心は荒波真っ只中ね。何かあったかな?」

「…あのね、エリーちゃん…」

 

アカリは語った。

背中越しに垣間見た、ユカの虚無を。

 

「…皮肉なものね。」

「えっ?」

「エスカリバースの必殺技が、【ヴァルハラ】エスカレーション…なんて、ね。」

「エリーちゃん、それ、どういうこと?」

 

「【ヴァルハラ】は、北欧神話で、最高神オーディーンを始めとする神々が集う、神殿の名前なの。だけど、もう一つ、意味があってね。」

「…うん。」

「人間界の戦士が力尽き、その命を散らしたとき…戦乙女に選ばれた戦士は、神の許へ還るの。そして最終戦争ラグナロクに備え、今度は神の戦士として、死してなおも戦い続ける。

そのための特訓場…それがヴァルハラなの。」

「えっ…!!」

 

そう。さしずめ、エスカリバースの…ユカの渾身の剛槍は。

一撃ごとにその命を削り、ただひたすらに、終わりなき修羅の道を突き進む、魂の輝き。

いつかその身を全て業火に焦がし尽くす瞬間まで…あるいはその後までも。

 

敵とともに、死にゆく自分をも貫く、魔性の槍撃。

…それがヴァルハラ・エスカレーションの…エスカリバースの哀しき宿命だとでもいうのか。

 

「そんな…!」

「ユカさんがその意味を知ってか知らずか…だけどね。」

「でも…でも、それじゃ…ユカさんは死ぬために戦っているって…」

「うん、そういうことに、なるね。」

 

表情を引き締め、エリーが念を押す。

「…アカリ。私たちは直接ユカさんを救えないし、軽々しく救おうなんて考えちゃダメよ。」

 

かつて、沙由香がただ一つ、ユカに尋ね、そして知ったこと。

ユカの大事な人は…もう、既に居ないこと。

 

きっと、ユカと、その大切な人の過去は、筆舌に尽くし難い凄惨なもの。

…この世界への、人への、全ての慈しみも温もりも手放して構わないと思わせるほどの、惨劇であったのだろう。

そしてその過去は、何人たりとも、変えることも消し去ることもできない。

 

「…アカリ。ユカさんを信じなきゃ。」

「えっ…?」

「未来はね、希望ばかりじゃない。全ての人にハッピーエンドが標準装備されているわけじゃ、ないから。」

「…それは…!」

「そうじゃないから、私のような占い師がいるの。

そして、人さまの未来に自分勝手に海図を引いて、本人に代わって座礁や難破を防ごうなんてお節介は、占い師のタブー。

私にできるのは、荒波が来ることを伝えるだけ。」

 

アカリはエリーの話に、真摯に耳を傾ける。

きっとエリーは、哀しい過去を持つ人をたくさん見てきたから。

そしてエリー自身も、魔女の宿命の下、両親を失い、その哀しみを超えてきた子だから。

 

「八つ当たりを始める人、困難から逃げる人、諦める人…運命に負ける人の方が多いし、私はそんな人々を見殺しにしてきたのかもね。

けど、私の占いで迫る悲劇を知って、立ち向かう勇気を手にした人もいる。」

「…うん。」

 

「だから、私は信じたいの。人は強いものよ。

外の殻がひび割れても、中はしなやかに形を保つ。そして、孵った雛はいつか独り立って、母鳥になる。時間がかかっても、必ず。」

 

「…そうだね。…そう…だけど…。」

アカリは嘆く。

その日まで心に影を落とすユカに、何もできることが無い、自分の非力を。

「やっぱり…強いだけじゃ、ダメなんだ。

…悲しみを超える力…私、まだまだだ…。」

 




おはようございます。作者の環藍河です。
昨日「4夜連続」と申し上げたにも関わらず、お待ちいただいていた方には申し訳ありません。

「ヴァルハラ」の世界観…ヴァルキリープロファイルシリーズあたりのアレですね。彼女の修羅道に、希望を持たせたいと思って執筆中です。
※原作のユカは、現在は前向きに闘っている(はず)ので、このSSは原作途中の時間軸、ということで。
執筆していて一番困っているのが、環はエスカリバース未入手でして、キャラクターストーリーとカブりや矛盾が起きていないか…と懸念しています。
が、重複したら偶然の一致ということで、ネタばらしの意図はございませんのでご容赦ください。私もいつか入手できた暁に、びっくりした後に、こちらで追記報告する…ことがあるかも?

この後は閑話を1本、そしてクロージングの後編1本と続きます。
予定では今夜と明日の夜に。
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