超昂大戦SS ヴァルハラに咲く紅い花〜ユカ、未来への槍撃   作:環 藍河

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※原作第1部第6章~第12章、要するにエスカリバースの登場から現在までの動きを描写した内容です。
ネタバレになってしまう方は、原作メインストーリー閲覧後にお読みいただくことをお勧めします。


閑話 穢れし泥水の底から、腑抜けの泉へ リバースの過去と昨日

…

……

護りたかった。

鉄臭い返り血と、薄汚れた獣の汗と、よだれと、臭い鼻息とにまみれて。

それでも、汚れきったこの身だけど、いつか再びあの人のもとへ。

昨日も今日もその先も、それだけを希い、更なる汚濁の中に身をやつした日々。

 

弱かった。

あるときは卑劣な敵に屈し、囚われ、蹂躙され、軍に救出され。

しかし味方のはずの軍からも嘲り笑われ、もう一度背中から蹂躙され。

二度の涙をシャワーで隠し、それでもまた屈辱の地へ立った。

 

倒れて、汚されて、辱められて…それでも。

今はビデオフォンで、かろうじて絆を繋ぐだけでも。

ただ一人の護りたい人を胸に想い、戦い続けた。

それなのに…!

 

その日、私はまた敗れた。

目覚めたのは病院のベッド。

(…ここの、ICUだよな…)

包帯の拘束をかなぐり捨て、松葉杖ももどかしく、ユカは最上階を目指す。

ああ、逢いたい。

肌も髪も汚濁に染まり、心もどす黒く淀み。

もう無垢でも純粋でもない、私だけど。

やっと。やっと。

 

辿り着いたICUは、空っぽ。

その前にたたずみ、ユカは与えられた通信端末でビデオフォンをかける。

「なあ、頼みがある。窓の外を…お前が見てる景色を、見せてくれないか?」

 

空っぽの部屋で、無人カメラがモーター駆動し、画角を窓へ向ける。

映り込むユカが、ユカの端末に像を結んだ。

 

(あ…あれっ? ユカが…ユカが…マドニ…?)

馬脚を露わした画像の人物は、バグってフリーズ。

たちの悪い、ディープフェイクのAI画像だった。

 

全ての血液が凍り、逆流する感覚。

あの人は、もう、いない。

 

…

……

『仕方ないじゃないか!

お前の男は死ぬ運命にあったんだ!

むしろ我々はよく延命させた方なんだぞ!!』

 

〘事切れて、馬鹿正直に話す奴があるか!

めそめそ泣く時間さえ許されねえんだよ!

奴等に滅ぼされたら、全てが終わるだろうが!〙

 

…隠蔽がバレたことを知った国防軍の科学者たちが、ビデオフォンに強制割り込みして、弁明と逆切れをわめいているが、耳には入らない。

 

今際の瞬間さえ、知ることが叶わなかった。

さようならの一言さえ、伝えられなかった。

たったひとつの希いさえ、奪われた。

共に地球を、人類を、同胞を護るはずの人間によって…!

 

私に…いや。

オレに弔いの一時すら与えず闘わせ続け、侵略者を根絶やしにさせて、軍と人類が生き延びる未来を作る。

軍のクソ共は、てめえらが生き延びたいだけの屁理屈を、君の為だ、人類の為だと、おためごかしで正当化。

ほざけ。

 

お望み通り、ダイラストはまず、ぶっ潰す。

お前らさえ来なければ…。

 

そして。

もう、人類はどうでもいい。勝手に生き延びろ。

だが、国防軍よ。

保身とムラ論理で腐った頭と、

頭に盲従して、よろしくオレを慰み者にし続けた、豚みてえな図体の下っ端と。

 

侵略者さえ消し飛べば、無条件で自分達は生き延びられる…ああ、都合のいいこったなあ。

だったらそのお花畑な思考回路、脂ぎった禿頭ごと、風穴開けてミンチにしてやるよ。

 

…

……

「な…何だこの破壊力、このスピードはあ!」

「ありえん! 従来のエスカレイヤーのデータから、乖離しすぎている!」

「こんな…こんな急激なパワーアップ、個体の耐久値が保つものか! 自滅前提か…!?」

「そんなことは、どうでもいい! 

止めろ! 誰でもいいっ、止めんかあああっ!

…あ、ああっ、ぐああああっっ!!」

 

【…ほどなく、修羅と化したユカの単騎吶喊によって、侵略者・ダイラストは壊滅した。】

 

【だが。

返す刀をユカが突きつけたのは、国防軍。

そして、軍を牛耳った政府。

さらには大政翼賛で軍をけしかけた国会議員たち。

…総理大臣以下、与党野党関係なく。

全て、すべて、槍と爪の錆と消えた。】

 

【その後、青い地球を護った紅き戦士の姿を見た者は…いないとされている。】

 

…

……

こっちの世界は、生ぬるく。

アルダークとやらの侵略もろくに進んではいなければ、国防軍も前の世界のように、瀬戸際へ追い詰められ、超昂戦士を徴兵して酷使する様子も無い。

じゃあ、どっちも知らないわけだ。

戦場の狂気が、人をモノ扱い、犬っコロ扱いさせ、オレみたいな異物を…劇毒を作り出すことを。

 

オレの同一存在は、別の地球では勝ち組になったと聞いた。

良かったな。敵も自軍もお花畑で。

 

その同一存在に憧れ、そいつみたいになりてえ、と言って戦士を志願し、エスカを名乗るひよっ子ども。

お花畑でコスプレしたくて、のこのこ戦場まで遠足ってか。

バカか。

 

だから、暴れる。

こいつらまとめて、オレの見た汚泥まみれの世界に引きずり込んでやるよ。

 

ディストバーンは使うだけ使ったら、いつでもぶちのめせる。せいぜい今のうち地球征服でも妄想しておけ。

 

国防軍は、また眼の前に呑気に出てきやがったら、真っ先に潰す。

 

エスカレイヤーは…アルダークが飛ばしちまったからな。また出てきたら、虐め抜いて這いつくばらせてやる。

 

その前に、ダイビートのエスカチームか。あのコスプレ野郎…とりわけ、あの赤い奴のカマトトぶりには、ヘドが出る。

エスカ・ルビーって言ったな。

正義だ、仲間だ、護るんだ、なんて砂糖菓子みてえなことを二度と言えなくなるまで、

潰して、砕いて、ぶち抜いて。

その甘ったれた精神、へし折ってやるよ。

 

…

……

そんな粋がりも、長くは続かなかった。

ワケのわからねえエネルギーを無理やりねじ込まれ、オレは暴走。

挙げ句、あれだけ侮っていたルビーが、捨て身でオレを助けに入り、暴走を止められ、ダイビートに担ぎ込まれるなんざ…かっこ悪ぃ…。

 

それからは…気まぐれで。

気まぐれで、ダイビートで戦士ごっこの片棒を担いでる。

 

…仕方ねえ。

助けられた借りは、まだ返してる途中だからな。

返済相手のルビーも…オレが何をやっても、何を言っても、嬉しいだの、ありがとうだの…鬱陶しい。

 

…正直に言えば、悪くねえ。

どいつもこいつも、利用できるか屈服させられるか、その二択でしかオレを見てこなかった、あの世界に比べれば。

 

…でもよ。

『悪くねえ』は、『良い』じゃない。

こんなぬるま湯で、来る日も来る日も、くたばりかけのババアみてえに湯治の日々。

 

…命は、ある。

でもよ…。

 

…オレは、生きてねえんだろうな。

 




おはようございます。筆者の環藍河です。
今回は閑話として、エスカリバースの別世界での戦いから、ダイビートに合流してからの経緯と心情の描写をお届けします。
原作をしっかり読まれている方には「今さら?」「クドい!」とお叱りもあるかも、ですが、再定義は重要、ということで。
前編・中編・閑話とお届けしました、このSS。次回(今晩または翌朝)、完結の後編をリリース予定です。
本来の意味での「後書き」も、その際に。それではまた。
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