「……ふぁ〜…」
平和な朝だなぁ…
いつもこんな感じだったら良いのにな…
「こらぁ!」
「お痛ったぁ!何すんだよ亜樹子ォ!」
窓から黄昏れる俺の後頭部を亜樹子はいつものスリッパで叩いた
「なんであの店のあの2人がリコリスだって私に言わなかったのよォ!私聞いてなかったんですけどぉ!?」
「悪い悪い!お前に言うと怒ると思ったからさぁ…」
「…はぁ…バカね、翔太郎くんは…」
「あ?」
「私がリコリス全員を憎んでるとでも思ってるの?」
「…いや…そういう訳じゃ…」
そんな会話をしていると、フィリップがガレージの扉から出てきた
「…翔太郎、これを見てくれ」
「…
「彼の事を調べている内に、僕は一つの仮説を立てた」
「…仮説?なんだそりゃ」
フィリップはたまにおかしな事を言うなと思いながら、俺はマスター引き立て豆のコーヒーを飲んだ
「最近現れるドーパントの正体は、皆アランチルドレンだったという事さ」
「…ブゥゥゥゥ!」
フィリップの言葉に俺は思わずコーヒーを吹き出してしまった
決して、俺が淹れたコーヒーが不味かったからじゃない
「どういう事だ!?……っ!?」
そういえば…葛原柊一もアランチルドレンの1人だってウォッチャマンが言ってた…
「…君には黙っていたが、ウォーシップの正体だった若倉和真もアランチルドレンの1人であり、今回のホーネットの正体、樋口裕隆もアランチルドレンだった」
「…なんで…!?」
「若倉和真…彼は射的のスペシャリストだ。サバイバルゲームなどでその才能を遺憾無く発揮できていた。その結果アラン機関に選ばれアランチルドレンへとなったが。ある日に妻が病気で倒れ、金が必要になり、ドーパントに変貌した。樋口裕隆…彼はボディービルダーの1人で、風都でもかなり有名だったようだ…それもアラン機関に選ばれ、まぁその後は一緒だ。挫折を味わい、DA襲撃を行った。動機は分からないけど…彼の言動から考察するに、誰かから…いや、十中八九アラン機関からの依頼だろうね。若倉和真の時と同じだ」
「……」
なんなんだよ全く…意味が分かんねぇ…
俺はアラン機関から送られて来たフクロウのチャームを握った
「……アラン機関…」
新たな敵の像が見えた気がした
「……」トゥルルル トゥルルル
すると、俺のスタッグフォンにメールの着信が来ていた
「……お」
相手は千束からだった
メールの内容はこうだった
『今夜みんなでボードゲーム大会を開きます!翔太郎さんも来てください!』
第10話「勝敗はMで/元相棒の決意」
「……」
《…さぁ…君の罪を数えな……》
「……私の…罪…」
「たーきなー!みんなでボードゲームやろーよー!」
「……結構です」
レジ締めを終えたたきな
入口のベルに気付いてドアの方に振り向いた
「…よっ」
「左さん…!」
「あ!翔太郎さんいらっしゃい!」
「おぅ、ボードゲーム大会やるんだって?俺は無敵だぜ?」
カウンターに肘を着いてキメ顔をする翔太郎を見て
ちゃぶ台席に座っていたとある2人が反応した
「言ってくれるね〜翔ちゃーん!」
「ほんとほんと、相変わらず自信過剰だな!翔太郎」
「…ゲッ!ウォッチャマンにジンさん!?何でここに!?」
それは翔太郎がいつも世話になっているウォッチャマンと刃野刑事だった
「なんでって…ここにはいつもお世話になってるもんっ」
「仕事終わりによく来るんだよ、マスターのコーヒーは格別だからな〜」
「だからってなんで今日なんだよ〜…俺の箔が落ちるだろ!?」
「まぁまぁまぁ!翔太郎さんそう言わずに〜!」
ちゃぶ台席に促す千束
「……」
しかし、それを見たたきなは不満そうな顔をしていた
「……ん」
たきなのその表情に気付いた千束だったが
そのままスルーしてボードゲーム大会を始めた
「……」
「…混ざって来たらどうだ?」
「…そうすればDAに戻れますか?」
「……」
たきなを心配して声をかけたミカだったが
その言葉に絶句した
「……」
「たーきなー!」
「…なんです?」
「一緒にゲームやろ?ね?」
「もう帰るので」
「じゃあ明日は?」
「明日は定休日ですよ?…着替えるので」
更衣室の戸を閉めるたきな
「……そう〜だから、明日も集まってゲーム会を…」
「千束」
「ん?」
しつこくたきなに声をかける千束をミカが止めた
「健康診断と体力測定は済ませたのか?」
「あ、いや、まだ…」
「明日は最終日だぞ?ライセンスの更新に必要だ。仕事を続けたいなら行ってこい」
「うぇ〜…そこは先生上手くやってよぉ…先生の頼みなら聞いてくれるでしょ?楠木さん」
「司令と会うんですか?」
楠木の名前に反応して下着姿のたきなが戸を開ける
「おぉい!馬鹿服ぅ!……っ」
「…ん」
咄嗟に更衣室の戸を閉める千束
ミカに疑いの視線を向ける
ミカは知らんぷりをした
「私も連れて行ってください」
「……早ァ…」
「お願いします」
「……」
「お願いします」
「……わかったよ、たきな」
ミカと目を合わせた千束はそう言った
「……何やってんだかあの子たちは…」
その一部始終を聞いていた翔太郎はため息をついた
「たきなも混ざれば良いのにな」
「ほんとだな、俺笑ってるたきなの顔見たことないぞ」
「ボクもだ。まぁ興味もないが…ボードゲームは思考を要するから面白い」
「……てかお前、普通に出て来て大丈夫なのか?仮にも喫茶店だろ?誰かに狙われても知らねーぞ」
「問題ない。もうボクは立派なリコリコの店員だ。働くのはめんどいが、まぁ退屈しないし良い」
「……そうですかぁ…」
クルミは俺との会話を終わるとまたウォッチャマン達とボードゲームをしに行った
「……」
「…混ざらないのか?」
「ちょっと休憩だ。マスターコーヒー淹れてくれるか?」
「あいよ、ちょっと待ってろ」
俺はカウンター席に座ってコーヒーを飲んだ
「…最近たきなの様子がおかしいのだが、何か知らないか?」
「…何かって?俺はたまにここに来るただの客だぞ」
「時期はそうだな…DAが襲われた日のあとくらいからだ」
「…っ」
「何か心当たりが?」
「……たきなは迷ってるんだ。自分がどうすればいいか……でも…」
「……」
「…まだその答えは見つかってないみたいだな……」
俺はそう言ってマスターのコーヒーを一口飲んだ
「……これは?」
マスターは俺にカードキーのようなものを渡してきた
右上には特殊な事態で「DA」と書かれていた
「DAの入場許可証だ、今度千束たちと一緒にDAに行ってもらいたい」
「えぇ!?なんで俺が!?」
「…DA内で、リコリスが1人殺された」
「…っ!?」
「……」
風都で1番の敷地を持つこの施設が、まさかDAの本部だったとはなぁ……
「……はぁ」
「…どうした?千束」
「…私本当はこんなとこ来たくないんですよ〜…でも仕方なくぅ〜?」
「……たきなはノリノリみたいだが?」
「あれはノリノリなんじゃなくて、楠木さんに話があるだけなんですよ〜……」
「……楠木…か」
その聞き覚えしかない名前を呟きながら、俺たちはDA本部の正門を車でくぐった
流石はDA、顔認識で関係者かどうかを見て正門を開けているようだ
「…………来たか……小僧」
そんな3人を、楠木はモニターから見ていた
入口に入ってすぐに手荷物検査と再度顔認証による入場許可
俺はマスターから貰ったカードで入場した
「お待ちしておりました。錦木さんは体力測定ですので、隣の医療棟へ。井ノ上さんは…」
「楠木司令にお会いしたいのですが…」
「司令は現在会議中です。お戻りになられるのは2時間後ですが…」
受付を進めている俺たち
そんな受付嬢が俺を見て不思議そうな目で見る
まさか話が通ってないのか…?
「…ん"ん"……ミカさんより依頼を受けてきました。鳴海探偵事務所で探偵をしています。左翔太郎と申します、以後お見知りおきを…」
そう言って俺は受付嬢の手の甲に唇をつけようとした時、受付嬢は手を激しく弾き、銃を構えた
「おっとぉ…流石はリコリスだぜぇ」
「ちょっと何やってるの?翔太郎さん…?」
手を挙げる俺を見て千束は呆れていた
「……っ」
すると、前髪が短めのリコリスがこちらを見ている事に気が付いたが、俺と目が合う前に何処かに行ってしまった
「ミカ先生のご紹介でしたか!申し訳ありません!」
「い、いえいえ〜…」
事情を説明し、俺はDA内に入る事に成功した
「……たきな?」
「…っ…はい」
「どうした?元気ないみたいだが?」
「…い、いえ…私、訓練所に行ってますから…」
「あ、ちょっと待ってよたきなぁ!」
「……」
そう言って走り去るたきな
その背中からは哀の感情と焦りを感じた
「……すげぇな」
訓練所にて、たきなが銃の練習中
俺は訓練所の上からその様子を見てたきなの銃捌きに感心していた
楠木が来るまでの間の時間潰しだ
「……久しぶりだな、小僧」
「…よっ……楠木さん…」
仮面ライダーになっていた時に一度会っていたが、やっぱり変わってねぇな…
「相変わらずのようで安心した。探偵の仕事は上手くいってるのか?」
「まぁな…お陰様で最高の相棒と一緒にありとあらゆる事件を追ってるぜぇ?…あんたらリコリスが取りこぼした事件をな」
「……所詮は半人前か」
「あんたも、ドーパントに襲われたって聞いたけど元気そうだな…相変わらずしぶといぜ」
「昔の私と一緒にするな…今や私はリコリスをまとめる者、そう易々と死んでたまるか」
楠木はそう言って俺の横を通り過ぎて行く
「…んで?こんな私立探偵に、天下のDAがなんのようだ?」
事情は知っていたが、俺はこの人の口から聞きたくなった
この事件の事を
「……先日、リコリス棟の中で…1人のリコリスの死体が見つかった……全身鉄の液体が固着したようなものに囲まれ、首だけが苦しそうに出ていた……まるで、晒し首のようにな」
「…晒し首っ!?」
楠木は俺に資料を渡して来た
添付の写真には、首からしたが鉄で覆われたリコリスの死体の写真だった
「……なんでこんな…!」
「恐らく、先日のドーパントを機に我々の存在を消そうとしている者が現れたのだ……まったく…仮面ライダーが変に刺激を与えるからだ…」
「……なに?」
俺は資料に向けていた目を楠木に向けた
「…分からんか?ドーパントが現れる所に、奴は現れる。それはつまり……」
「…仮面ライダーがいるから、ドーパントが現れるって言いてぇのか…?」
「その通りだ」
「…くっ……」
俺は自然と拳に力が入る
気付けば資料もぐちゃぐちゃになっていた
「……この事件を解決すれば、お前が知りたい情報を教えてやろう」
「……あ?」
「…この街の真相をな」
「……はぁ…」
訓練を一段落終えたたきなは銃を置き
ヘッドホンとグラスを外した
そして、後ろに気配を感じて振り返った
「…へぇ〜…やばいっすね〜」
「……?」
「どーもーっす!乙女サクラっす!」
次回
第11話「勝敗はMで/今は次に進む時」
これで決まりだ!