文字通り「さかなぁー!」と「チンアナゴぉ〜!」のオマージュとして登場させました。フィッシュ・ドーパントは小説版仮面ライダーWに登場済みなので、オリジナルはガーデンイールだけとなります。
「…電車の脱線事故?」
「あぁ、ジンさんから教えて貰ってよ…でもやっぱおかしいんだよ」
「…ドーパントの仕業だと、君は言いたいんだね」
「……あぁ…この街で、また何かが動いている気がする」
直感だが、そんな気がする
俺は以前起きた電車の脱線事件の事をフィリップに話した
事故現場は今も全面立ち入り禁止、風都署の刑事ですら入れないのは異常だ
現場を見ていないからなんとも言えないが、嫌な予感がする
俺は勘だけは良いんだ
「……俺、ちょっと調べてみる!」
「待ちたまえ翔太郎…!」
帽子をとって事務所のドアを開けようとした瞬間だった
俺が開ける前に、ドアが開き
そこから声がした
「その必要は無い」
「……お前…!?」
事務所の中に赤い革ジャンの男が入って来た
「……照井…竜…!?」
「久しぶりだな、左…フィリップ…!」
「お前…いつ風都に戻って来たんだよ!?」
「俺に質問するな」
「うっ…出た〜いつものやつ〜……まぁでも、元気そうで何よりだよ」
事務所に入って来たこの男は照井竜
風都署の刑事で、我が所長の旦那様でもある
その肝心の亜樹子は今日は外出中である
「残念だが、そうも言っていられないようだぞ…」
「…あ?」
久しぶりの再会を喜ぼうとする翔太郎とフィリップを他所に、竜は淡々と話を進めた
「これを見ろ」
「……コンクリの壁の一部?」
「…しかもこれって…!」
竜が2人に見せたのはコンクリの壁の破片と思われるもの
そして、翔太郎はそこに埋まっているものを見つけた
「…銃弾…!?」
「現場に残されたのはそれだけだった…今朝捜査に向かったが……酷い有様だった」
「…いや行動力ぅ!相変わらずバケモンだな…!」
「それが彼のいい所だからね……他に収穫は?」
感心するフィリップは、竜に訊ねる
「駅内には幾つもの弾痕と裂傷の跡が見つかった……左の推測通り、ドーパントが絡んでいるに違いない」
「やっぱりか……」
「いざとなれば俺も加戦しよう」
「それは心強い…翔太郎、やっと風都の仮面ライダーが揃ったね」
「あぁ…俺たちで街の涙を拭おう、照井!」
「…当然だ」
腕を差し出す俺の手を、照井は思いっきり握った
「……っ」
すると、俺のスタッグフォンに着信が入った
相手はたきなからだった
「…おう、たきなか…どうした?」
電話を取った翔太郎はたきなと会話をした
それを見て竜が少しだけ疑問に思った
翔太郎から聞き慣れない名前が聞こえたからである
「……相手は誰だ?」
「えぇっと…翔太郎の知り合いさ…」
「……ほぅ」
すると、翔太郎はたきなとの会話でこう発した
「……ボディガード?」
「依頼人は72歳、男性日本人。過去に妻子を何者かに殺害され、自分も命を狙われた為にアメリカに長らく避難していた。現在は…きん…き、き…きん…」
「筋萎縮性側索硬化症」
「自分では動かないのでは?」
「そう!去年余命宣告を受けた事で最期に故郷の日本、それも風都を観て周りたいって!」
「…観光…ですか」
「泣ける話でしょ〜?要するに、まだ命を狙われている可能性がある為、ボディガードします!」
喫茶リコリコにて今回の依頼について話す千束、たきな、クルミ、ミズキ、ミカ、そして翔太郎の6人
「…ってかなんでまた俺まで…?」ヒソヒソ
「またドーパント絡みの話かもしれませんし…一応左さんにもお願いをと…」ヒソヒソ
「あー…そういう事ね…」ヒソヒソ
「ちょっとそこ!ヒソヒソしなぁい!」
ヒソヒソ話をするたきなと翔太郎を見て注意する千束
「…一つ質問だ…その男性は何故命を狙われているんだ?」
「それがさっぱり!大企業の重役で敵が多すぎるのよ〜…まぁその分報酬もたっぷりだから〜」
翔太郎の質問に答えるミズキ
「日本に来てすぐに狙われるとも思えないけどね〜行く場所はこっちに任せるらしくて、翔太郎にはそのプランも考えて欲しくて〜!」
「…おっけー…この街は俺の庭だ、最高のプランを考えてやるぜ」
「旅のしおりでも作ろうか?」
「それだ!」
「名付けて〜!風都大観光&ボディガード大作戦!」
おー!と声を上げる面々
俺は千束の胸元で光るそれを見ていた
「……っ」
フクロウのチャーム…やっぱり千束は…
第16話「おかえりA/風都大観光」
「……ってな訳で、明日は千束達と任務に行ってくる。留守番は頼んだぜ、フィリップ」
「それはいいが…照井竜が帰って来たこのタイミングでいきなり彼女らと行動して大丈夫なのかい?怪しまれるよ?」
事務所に戻って明日の事を伝えた俺はフィリップのその言葉に動揺した
「…そ、そこは心配要らねーよ相棒……何とかあいつを刺激しない方法を見つけて…」
「誰を刺激しないようにするんだ?」
「それは照井を…って…えぇ!?お前まだ居たのか!?」
すると、帰った筈の照井が勢い良くドアを開けて入って来た
「左、まさかとは思うが……リコリスと関わっているんじゃないだろうな…?」
「……っ」
照井の眼光が俺を容赦なく睨む
「……」
「…黙秘は肯定ととって良いんだな…?……お前は分かっているのか…リコリスがどのような存在なのか」
「……分かってるさ…でもよ、リコリス全員がそうじゃねぇんだよ!俺は知ってる!お前にもいずれ分かるさ!」
「……相変わらずのハーフボイルドか…」
「…なっ…なんだとぉ?」
「いいか、リコリスはこの街にとって有害な存在だ。武力を行使し事件をもみ消し、無かったことにする…警察でも対処出来ない厄介な連中だ。国家の機密組織だかなんだか知らないが……俺はあいつらを認める気は無い…」
「……お前の言ってる事は正しいよ……だが!呑み込めねぇ!」
「……なら、俺はとやかく言うつもりは無い……お前の勝手にしろ…!」
颯爽と事務所を出て行く照井
俺はあいつの言葉に悔しい気持ちになりながらも、1番悔しいのは何も言い返せない事だと知ってもっと悔しくなる
「……彼のリコリスに対する憎悪は、ドーパントに対する憎悪と匹敵する。忘れてたのかい?」
「…あいつにとってリコリスも、街を泣かせる奴らの一括りに入ってるんだよな……だから言いたくなかったんだ…」
「いずれバレる事だったんだよ。それが少しだけ早くなっただけだ」
「……相棒、ひとつ頼みがある」
「……なんだい?」
「……まったく…何を考えてるんだ左の奴は…」
「あれ、竜くんが翔太郎くんの事考えてるなんて珍しいね!何かあったの?」
久々に夫婦団欒のディナーを楽しんでいる最中
竜がそんな事を口ずさみ、それに亜樹子が反応した
「…所長、君は左たちがリコリスと関わっている事を知っているのか?」
「うん、知ってるよ?」
「な…何故そこまで平気でいられる…!?」
竜が一番衝撃的だったのは、亜樹子が翔太郎とリコリスの関係を知っていた事ではなく、それに対してなんの表情の変化もなかった事である
「ん〜……翔太郎くんが決めた事、だからかな?」
「……左が…?」
「ほら、いつも彼言ってるでしょ?「男の仕事の八割は決断だ。それ以外はおまけみたいなもん」って、お父さんの受け売りをさ!」
「…あぁ」
「…翔太郎くんが決めた事を、私は応援してあげたい。私が好きな翔太郎くんは、優柔不断な男なんかじゃなくて…ハーフボイルドのくせにカッコつけて無理な決断をするような男だから……それが一番翔太郎くんらしい…」
「……所長…」
「…あ、今のは友達としてって意味だよ!?もちろん一番だいちゅきなのは竜くんであって…!」
「分かっている、所長……ありがとう」
「……ん??」
先程とは打って変わって豊かな表情になった竜を見て疑問を隠しきれない亜樹子
「……また、君のおかげで振り切れそうだ」
「…ここが風都で一番大きな川、風都川。この街を二等分する日本でも有名なんですよ〜!」
『これは予想外でしたね〜まさか川の上で観光するとは〜』
「この辺は渋滞が多い。この水上バスは渋滞なんかも気にせず色んな場所に行ける優れ物なんだ」
『時代も進歩しましたね〜感極まって泣いてしまいそうですよ』
「……」
その涙はどこから出てくるのやら……
松下みつお、72歳
これが今回の依頼人だ
筋萎縮性側索硬化症、フィリップにお願いして調べてもらったが
運動を司る神経に障害を受け、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなり、全身の筋肉が衰えるという難病らしい。この人はもう末期のようで、今も電動車椅子にスピーカーから流される電子音声。景色を読み取っているであろう特殊なサングラスをかけている。俗に言う、「機械に生かされている」と言う奴だ
『……あれが風都タワーですか…』
「見たことないのか?」
『はい…風都に来るのは初めてで……娘と約束してたんです。一緒に見上げよう、首が痛くなるまで…って』
「……」
『……あの世で土産話が出来る』
「まだまだぁー!始まったばかりですよ〜!」
意気揚々と松下の車椅子を押す千束
「……千束のやつ、テンション高いな」
「……」
「…ん?どうした、たきな」
「…あ、いえ…なんでも…」
「……そうか」
「……ふぅ〜…」
「ひと段落だな、千束」
「翔太郎さんお疲れ様〜!でもまだまだですよぉ!」
「……フッ…そうだな…」
俺は少しだけ休憩している千束の横に座った
今松下さんはたきなが案内してくれている
「……千束…それは…」
俺は千束の胸元にあるチャームを指さした
「あ〜…翔太郎さんには1回だけ見せたことあるよね〜…フクロウのチャーム…たきなに見せたらめっちゃ可愛いんだって!嬉しいよねぇ!」
「……でもそれは…」
「……そう、私の大切な人から貰った大事な物…そして私はその人を探す為に喫茶リコリコに居続けている。」
「……アラン機関の…誰かを?」
「……うん…それが私の願いなんだ」
「……」ズズッ
俺は缶コーヒーを開けて一口飲んだ
「……」
言うべきか悩んだ
これまでアラン機関に選ばれたアランチルドレンが、ドーパントに変身していたこと
そして俺は知っていた
そのチャームを千束に送った人物が、もう既に
この世には居ないという事を…
《あの子を……あの子を…頼んだぜ……》
《おやっさぁぁぁあん!》
「……千束…そのチャームはな……っ!」
俺が話そうとした時、タイミング悪くスタッグフォンに着信が届いた
「……どうしたの?翔太郎さん」
「…いや…悪ぃ……」
俺は仕方なく電話に出る
相手はクルミだった
『お前たちを着けている男がいる。気を付けろ、相手は殺し屋だ』
「……分かった」
しばらくこの話は持ち越しのようだな…
「……千束」
「…うんっ!」
「俺たちで、松下さんを守るぞ」
「……」
天才は神からのギフトだ…
それを支援するのが、我々アラン機関の使命
「……私からとっておきのギフトをプレゼントしよう…千束……そして、仮面ライダー…!」
次回
第17話「おかえりA/素晴らしいガイド」
これで決まりだ!