マスターは語った
おやっさんとの出会いについて、おやっさんとの関係について
そして、おやっさんとの…別れについて……
「……なぁっ…また失敗か…」
私は自分で淹れたコーヒーが入ったカップを皿の上に置いた
カフェを運営する上で1番大事なのはコーヒーが美味く出来る事
だが私の淹れるコーヒーは何かと上手くいかず、失敗する事が多い
その為カフェを運営しながらも、日々コーヒーの研究を行っていた
すると、入口のベルの音が鳴る
来客の合図だ
「いらっしゃい」
「……」
客は白い帽子に白いスーツを着こなすダンディな男だった
口髭はそこそこ濃く、目元は帽子の鍔で隠れていた
「…コーヒーを頼む」
「…すまない…コーヒーは置いてないんだ。和スイーツならあるが……」
「……コーヒーの出ないカフェか…なかなか挑戦的だな」
「なにぶん、私のコーヒーは美味しくないみたいでな…客が納得出来る味になるまで出さない予定なんだ」
「…コーヒーにこだわりを持つ奴は嫌いじゃない…あんた名前は?」
「ミカ…この店のオーナーだ。あんたは?」
「…鳴海荘吉……この街の探偵だ」
これは、千束がリコリコに来る前の話だ
第25話「Sとの関係β/鳴海荘吉について」
「その日から、荘吉は私の店によく来るようになった…彼と話すうちに、彼がこの街を愛している事がよーく分かった……妻子は大阪におり、自身はこの街の涙を拭う為に日々勤めていると話してくれた。そんなある日だ…」
「……」
「……風都タワーが…テロリスト集団によって半壊させられた」
「…何っ!?風都タワーが…!?」
『念の為千束を向かわせました。ミカ、貴方にも援護を頼みます』
「わかった!」
私はスナイパーライフルを担いで急いで風都タワーに向かった
風都タワーの根元は煙に包まれ、状況が読めなかった
「……っ!」
その時、風都タワーが爆発を起こし、タワーのプロペラ部分が根元から切り離されたように落下した
地面に落下したプロペラは爆発を起こし、大きな煙も立っていた
「……千束ぉぉぉ!」
私は思わず叫び、その場に崩れ落ちた
あの爆発で、生きているわけが無い
いくら
「……っ」
すると、風都タワーの方から足音と共に何者かが歩いて来ていたことに気が付いた
そして、誰かを抱えていた
「……っ!」
そいつは人型だが、白い帽子を被った頭が頭蓋骨のように大きな目をした…怪人だった…
私はそいつの事を知っていた
巷で噂になっていた骸骨男だ
だが、私がそれよりも驚いたのは
骸骨男がボロボロになった千束を抱えて来ていた事だった
私のそばまで来た骸骨男
無言で千束を私に託した
千束はボロボロではあるが、大きな傷は無く
ただ気絶しているだけなようだ
「…千束ぉ!」
千束を引き取った私は、もう一度骸骨男に目をやった
「…お、お前は……」
「……俺の名は「スカル」…その子を頼んだぜ」
「…ま、待てっ…!」
「スカル」と名乗った怪人はすぐに風都タワーに戻って行った
程なくして事件は収束し、千束も大事には至らなかった
千束は彼の事を覚えてはいなかった
「……」
スカル……
そう名乗った奴はその後消息を絶った
風都タワー事件から数年経った今では、もう誰もその名を出さなくなった
DAの情報統制により、骸骨男の存在は世間から消されていた
だが、私は決して忘れる事はないだろう
奴の存在を……
「……っ」
私がいつものバーで考え事をしていると、入口の方で2つの声がした
「なぁ!いい加減俺を弟子にしてくれよおやっさん!」
「断る。お前にはまだまだ我慢が足りん、弟子にするには10年早い」
「まだそんな事言ってんのかよォ!俺もう高校に上がったぜ!?それに少しは機転が利くようにもなったしぃ!」
「いつも言ってるよな翔太郎。探偵は機転が利くだけじゃねぇ…何かしらの信念を持ってやらねぇと続かねぇ仕事だって」
「……むむむ…」
今日ここで会う約束をしていた荘吉と、1人の青年が来店して来た
荘吉はいつもの白いスーツを身にまとい、青年は高校の制服の中にパーカーを入れていた
「…ところで、いつまで着いてくるつもりだ?ここは会員制のバーだ、お前が来るような場所じゃねぇ」
「あぁ〜!話逸らしやがったなぁ〜!?待ってよおやっさん!!」
「お客様!未成年の立ち入りは禁止させていただいております!」
「ちょっとだけ!ちょっとだけでいいからァァ!」
店員に連れていかれる青年
荘吉は私の横に座りため息をついた
「…ったく…あのバカは…」
「彼は…?」
「ただのストーカーだ…どうやら俺の弟子になりたいらしい。半熟のくせに…」
「……良いじゃないか、弟子にしてやっても。私はいいと思うぞ?」
「…フッ…アイツはまだまだ子供だ……大人の世界を理解していない。アイツには、俺と同じ道を歩んで欲しくないんだ」
「……荘吉と…同じ道…?」
「……こちらの話だ」
「…荘吉…どうして千束と会ってやらない?」
「……またその話か」
「千束はずっと君を探して……」
「それは俺じゃねぇ……シンジだろ」
「だが…!」
「ミカ……俺はガイアメモリと深い関わりがある…だからこそ、あの日千束をお前達に託した。あの日の約束を守る為に」
荘吉が運営している鳴海探偵事務所には、何かとガイアメモリ関連の事件の依頼をされる事があるという
直接的な依頼でないにせよ、結果的にガイアメモリに辿り着くことも多々あるとか…
「千束は…そんな事望んでいない!」
「……俺があの子と一緒に居れば、あの子を不幸にする。それだけはしたくない…」
「…まさか荘吉…弟子を受け入れない理由って……」
「……」
私はあの時気付くべきだったのだ
荘吉が抱えている過去と、苦悩と、罪を……
「……鳴海さんのお父様と店長ってお知り合いだったんですか!?」
「うん…まぁ、それも私がこの街に来る前の話だから、確かかどうかは分からないけど……」
鳴海探偵事務所にて、自身の父親である鳴海荘吉についてたきなに語る亜樹子
「…あの、さっき言っていた…お父様がリコリスに殺されたって……?」
「あぁ〜…それも断片的な話を繋げて私たちが推測した内容なんだけどね……」
「……」
「リコリスが今仮面ライダーを狙ってるのは知ってるでしょ?」
「…はい」
「実はそれのきっかけになったのが、10年前の風都タワー事件なんだよ」
「そうなんですか……でも、どうして仮面ライダーが狙われる羽目に?」
「…あの日、風都タワーを破壊したのは…仮面ライダーだったんだよ。DAは同じ仮面ライダーの名を持つ翔太郎くん達を目の敵にしてるって訳」
「仮面ライダーが…風都タワーを…?……一体何故!?」
「……10年前の事件をきっかけに、仮面ライダーを狙ってたDAだったけど……お父さんの存在が、DAにバレちゃった事件があってね…」
「……」
「……それが、『ビギンズナイト』…翔太郎くん達がそう呼ぶ、ある夜の話なんだ」
「…その日、私は依頼を受けた。ある女から…その女はシュラウドと名乗った」
「……シュラウド…」
「…依頼内容は、「運命の子を、荘吉と共に救い出して欲しい」というものだった」
「……あの夜の事か…」
「本当に来て良かったのか?ミカ。言っておくが、あそこは地獄だぞ」
「上等だ。私がこれまで幾多の試練を乗り越えて来たのは知ってるだろう…今更後戻りも出来ない。それに…」
ある組織のアジトに潜入する為、組織の搬送船に忍び込んだ私と荘吉
その中で、私たちは静かに話した
「……」
「…親友とこうやって肩を並べて戦えるのが、私はこの上なく嬉しい」
私はそう言ってスナイパーライフルの整備をしていた
「……フッ…そうか」
軽く笑った荘吉は、次の瞬間目の色を変えた
「……ミカ、少しここで待っててくれ」
「…あぁ……」
荘吉が私の元から離れる
気になって様子を見に行くと、荘吉の横には以前バーに現れた青年が荘吉と話していた
青年はジュラルミンケースを片手に持っていた
あれは一体…?
「……ミカ、しばらく別行動だ。どうやら俺のバカ弟子がここに来ちまったらしい」
戻って来るなりそう呟く荘吉
それよりさっき……
「……弟子…そうか、守ってやってくれ…その弟子くんを。私は荘吉の援護に徹する」
「……助かる」
荘吉は私の元を離れ、私も私で行動に出た
「……っ」
すると、私の携帯に着信が来た
『…あ、先生ー大丈夫〜?アシストしに行かなくて〜』
「…千束か…安心しろ、私ひとりでなんとかやってみるさ。それより、店を頼んだよ」
『は〜い!あ、早く帰ってきてね〜!私が発案したパッフェ〜があるから食べて欲しくて〜』
「はいはい、分かったから……必ず帰る」
『うん!お店で待ってるね〜!』ピッ
通話を終え、携帯を閉じる
「……あぁ…必ず帰るさ。なぁ…荘吉」
だがこれが…
荘吉との…最初で最後の事件になるという事を、その時の私は知る由もなかった
「……っ!?」
次の瞬間、館内に警報が流れた
私たちの存在がバレた…!?
「……荘吉…!」
私は急いで荘吉の元を目指し、ある拓けた場所に出た
「……あれは…!」
《 TABOO!》
「出て来なさい、こそ泥」
「……っ!」
私の視界に映りこんだのは一体のドーパントだった
やはり、ここはドーパントの巣窟のようだ
「それとも産業スパイかしら?いずれにせよ、うっかり地獄に舞い込んだ、愚かな小動物というところね」
宙に浮遊するドーパント
その足元には組織の構成員であろう男達
私は隠れてスナイパーライフルの準備を始めた
だが、次に聞こえたのは構成員達の悲鳴だった
「……なんだ…?」
「……」
「…っ!?」
そこには荘吉が立っていた
組織の構成員達をなぎ倒し、ドーパントを睨み付けていた
《 MASQUERADE!》
次々にドーパントに変貌する構成員
いくらドーパント事件を解決して来たからと言って、ドーパント相手にどう太刀打ちするつもりだ!?
「……こそ泥にしてはやるわね。好みのタイプの男よ…でも残念ね…」
ドーパントは空中にエネルギー弾を出現させた
「…っ」
まずい……!
そう思いスナイパーライフルを構える
すると、荘吉の声が聞こえた
「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだぜ……レディ…」
「……っ」
「ガイアメモリを仕事に使わないのが俺のポリシーだったんだが、やむを得ん……」
「ロストドライバー…!?」
すると、荘吉は腰にロストドライバーと呼ばれた物を装着した
「なぜ、お前が!?」
「……っ!」
そして、荘吉は懐から1本のガイアメモリを取り出した
色は黒く、イニシャルはS
荘吉は同時に帽子も外し、ガイアメモリをドーパントに見せつけるように起動させた
「 SKULL!」
荘吉はそのメモリをドライバーに差し込んだ
「変身」
スカル!
ドライバーを展開した荘吉の身体は黒色に変化し、頭は頭蓋骨のように大きな目と脳天に刻まれたS字の模様
改めて帽子を被ったその姿は、数年前の風都タワー事件の現場に現れた、「スカル」と名乗った怪人だった
「……まさか……荘吉が…!」
この時の私の頭は、混乱していた
風都タワー事件の日、風都タワーが半壊させられた
その犯人は、メモリを使ったドーパントとは別の存在だった
それこそが……
「仮面ライダースカル……さぁ、お前の罪を…数えろ」
「……まさか…荘吉が……風都タワーを…?」
仮面ライダーという名の怪物だったのだ
次回
第26話「Sとの関係β/怪物の夜」
これで決まりだ!