「……」
変身を解除した俺を、マスターとミズキはあんぐりした表情で見ていた
「ちょいちょいちょい!翔太郎さん!なんで変身解除しちゃったのダメだよ〜!」
「違うんです店長!これには深い理由があって…!」
事情を知らない二人は俺を必死に庇う
「…あぁ〜!もぅ二人とも落ち着け!これにはちゃんと理由があるんだよォ!」
挙句の果てには千束が俺の帽子で俺の顔を被せて隠すもんだから頭に来てひとまず二人を落ち着かせた
「……マスター…」
「…翔太郎くん……」
俺はマスターの前まで来て謝ろうと思った
今まで正体を隠して来て、マスターには色んな誤解を生んでしまった
今まで独りで抱え込ませてしまって悪かったと…
「……マスター…す──」
「翔太郎くん!すまなかった!」
「…え?」
すると、先にマスターが頭を下げて来た
「まさか君が仮面ライダーだったとは…!今まで君を憎むような発言をしてしまった事を謝罪する!すまなかった…!」
マスターのとてつもない勢いの影響で発言の機会を失ってしまった俺
すると、後ろからフィリップが俺の肩に手を置いた
「それを言うなら「君」ではなく、「君たち」と言って欲しいね」
「……フィリップくん…」
「…確かに貴方は今まで僕らを目の敵にしてきたかもしれない。でも、僕らも覚悟が固まった…僕たちと貴方たちの信頼を僕は…いや、僕たちは信じたいと思ったんだ」
真っ直ぐにマスターの目を見つめるフィリップ
そうか、フィリップもここまで人の心を理解出来るようになったんだな…
「まさかあんたらが仮面ライダーだったなんてね〜、まぁ納得っちゃ納得だけど〜」
ミズキもへらへらした笑顔で応える
「…クルミもどっかで見てるんだろ?これが俺たちの本当の姿だ」
「……っ」
すると、千束の携帯に着信が入った
相手はもちろんクルミだ
『まぁ、驚きはしたが…それなら今までの事にも合点がいく。詳しい話は後で聞かせてもらうぞー』
そのまま電話を切るクルミ
携帯を持った千束は少しだけ頬を緩ませた
「皆理解が早いね〜」
「私も驚きました…店長なら迷わず銃口を向けるかと思ってました…」
「私をなんだと思ってるんだ……君達が仮面ライダーならば、きっと荘吉の意志も君達に受け継がれているんだろう…私はそれが嬉しいんだ」
「……マスター…」
俺たちも自然と笑顔になる
「…さぁ!みんな帰ろー!私が翔太郎さん達に千束スペ〜シャルを奢ってあげる!勿論ミズキの代引きでね」
「おいゴラァ!何勝手に人の金使おうとしてんじゃ!?翔太郎!あんたのせいだぞ!」
「はぁ!?俺!?」
「ははは、だったらいっその事翔太郎の代引きにすればいいよ!」
「おい!何言ってんだよフィリップ!」
「左さん、ご馳走になります!」
「たきなも何言ってんの!?」
並び歩きながら店を目指す一行
その後ろで、ミカと楠木の肩を並べていた
「……」
「…いつから気付いていたんだ?楠木」
「……ずっと前からだ」
「…今までずっと私に黙っていたのか……」
「……それは…」
「今までずっと……彼らを見守り続けて来てくれたんだな…」
「……ミカ」
並び歩く彼らを見て、ミカは楠木に微笑んだ
「…ありがとう…私は大切な物を見失うところだったよ……」
「……」
「…信頼という、私にとっての宝物を……」
そう言って、ミカは彼らの後を追うように足を進めた
「……」
夕日に染る空を眺め、その奥にそびえ立つ風都タワーを見詰める楠木
「……私は守れたのだろうか…荘吉、お前との約束を…」
「……ここは…?」
俺は何故、こんな所に来ている…?
この森は…かつて俺とシュラウドが初めて会い、初めてアクセルのメモリを手に入れた場所……
「……っ!」
そうだ…!
勤務中に勝手に身体が動き出し、気付けばここに…!
「……誰だ…!一体誰が俺をこんな所に…!」
出来れば、ここには二度と来たくはなかった…
「かつて自分を復讐の道具に仕立て上げ、駒のように扱われたあの女の事を思い出すのが嫌なのだろう?」
「…っ!誰だ!?」
すると、背後から声が聞こえた
竜の背後にはジャック・ドーパントが立ち塞がっていた
「…貴様…左が言っていたジャック・ドーパントか!?」
「その通り…如何かな?私の才能は…?」
「……俺に質問をするな!」
「 ACCEL!」
「…変…身ッ!」
アクセル!
仮面ライダーアクセルへと変身した照井竜はエンジンブレードを構えてジャックに向かって行く
「…はぁッ!」
「……フフッ」
「…クッ…はぁッ!」
しかし、攻撃が当たらない
一見ジャックがあらゆる攻撃を避けるように見えるだが…
「……違う…俺が攻撃を…!?」
「…その通り。君が攻撃を当てようとしていないのだよ」
「なにっ!?」
まるで竜自信が攻撃を抑えているようだったのだ
ジャックの身体にエンジンブレードが当たりそうになる瞬間、エンジンブレードが極端に重くなったり軽くなるような感覚があった
だが実際は重量に変化は無い
「私はありとあらゆる物を乗っ取り操る事が出来る。いくら園咲来人と同じ特殊体質の人間であろうと、私に攻撃を与える事も出来なければ…」
ジャックは人差し指をアクセルに向ける
「…私の攻撃を避ける事も出来ない……フッ!」
指先からビームを放つジャック
この距離なら避ける事が出来る
だがアクセルの身体は身動きが取れず、攻撃をもろに喰らってしまった
「ぐわぁぁ!」
変身が解けた照井は地面に這い蹲る
「…ふふふ…悔しだろう?君は私に指一本触れる事さえ出来ない……己を乗り越えなければ、君は私に勝つ事など出来ない……」
「……っ…何を言って…!」
「君はまだ、己を乗り越えられていないのさ……全てを振り切る?君は未だに井坂深紅郎や園咲文音に縛られている…」
「……クッ…!」
「…それが君の…“弱さ”だよ……」
ジャックは竜を見下すように言い放つ
そして、彼の目の前にひとつのジュラルミンケースを置いた
「…悔しかったら、この力を使うんだね……それがあれば、君は更なる進化を…己を振り切れる……」
「……っ!」
竜は恐る恐るそのジュラルミンケースを開けた
中には、トライアルメモリに似ている特殊形状のガイアメモリが一本入っていた
イニシャルは『Z』
「……さぁ、君の才能を見せてくれ…」
そう言うと、ジャックは霧のように消えていった
「……っ…」
第34話「Zを振り切れ/最悪なギフト」
「なにっ!?ジャック・ドーパントが!?」
鳴海探偵事務所に帰還した照井竜は早速探偵事務所のメンバーにこの事を話した
「…一体何を考えている…?今の僕らにガイアメモリを支援するなんて……」
「…今回の事で、以前俺たちにメモリを支援したのも奴で間違いなさそうだな」
「…だね。それよりも照井竜、そのメモリは現在所持しているかい?」
「……あぁ」
照井が懐から出したメモリは黒のメモリで、メモリの上部には特殊な形状のバイザーのようなものが搭載されている
「これは…!」
「……『ゼロメモリ』…以前、僕や照井竜が一戦交えた「ゼロ・ドーパント」と同じメモリだね」
「なんだってこんな物を…」
「……」
謎を残した今回の事は、一旦保留となった
だがゼロメモリはこちらで預かる事にした
フィリップ曰く…
《ゼロメモリは大変危険なメモリだ…一度使えば死に繋がりかねない。無の記憶を内包するこのメモリは、人間が扱うにはリスクが大き過ぎる……》
照井に渡すと使う恐れがある為、照井の保護の為に預かったというわけだ
「……ハァ…ハァ……はぁッ!」
切り株の上に縦に置かれた丸太が、照井の振り下ろしたエンジンブレードによって粉砕される
額から流れる汗が首をつたり上半身裸の胸まで滴る
「…はぁッ!はぁッ!」
風都のある山奥で、照井竜は修行に明け暮れていた
ジャックと対峙したあの日から照井は己の弱さを実感し、改めて力を蓄えることを決意した
「ハァァァッ!」
直径約1メートルの岩を粉砕する照井
「……ハァ…ハァ…」
少し休憩しようかと、振り返った時
木の影から井ノ上たきなが覗いていたことに気が付いた
「…お疲れ様です。照井さん」
「……何故君がここに…?」
「鳴海さん…奥さんから見張りを依頼されました」
「……所長か…まぁ、それならいいか」
たきなは照井に水の入ったペットボトルを手渡し、照井はそれを雑に飲み込む
「……ジャックは俺たちを利用して何をするつもりなんだ…?」
「…やっぱり、ジャック・ドーパントはアラン機関の人間なんですよね」
「……それはまだ分からん。あいつがアランの名を騙っているだけかもしれん、それに…次世代型ガイアメモリを設計していたのはシュラウドだ。何故あいつが次世代型ガイアメモリを作れるのかも不明な点だ」
「なるほど……」
たきなは腕を組み考え込む
そんなたきなを見て照井は再び問いかける
「……みんなの所に行かなくていいのか?」
「…え?」
「俺に気を使うことなんて無いぞ。俺は全てを振り切る…過去も、使命も…」
「……使命、ですか…」
「…あぁ」
「…照井さんの使命って、なんなんですか?」
「……罪を憎んでも、人は憎まない。この街の人間が俺たち仮面ライダーに求めているものこそが、俺の使命だ」
「……罪を憎んでも、人は憎まない…」
「……」
「…ありがとうございます。なんだか少しだけ、わかった気がします」
「……何がだ…?」
「……」
最後に照井の質問に答えたたきなは、その場を去った
「……フッ」
一息ついた照井は、再び修行に戻ったのだった……
「…あ、おかえりたきなぁ〜」
「はい」
日も暮れ、街灯が灯り出す時間にリコリコに帰って来たたきな
店の前のベンチで銃の手入れをしている千束と鉢合わす
「DAの銃じゃないですよね、それ」
「…うん〜これと一緒に貰った」
千束は胸のペンダントに手を添える
たきなはそのまま千束の横に座る
「…吉松氏に?」
「……そぅ…だね。大切」
「……寒くなって来ましたね」
「…そうだね〜たきなが来た日は桜が咲いてた……」
「……」
「……あれから…ヨシさん来ないね〜…」
「……」
千束の言う通り、吉松シンジはとある日を境に店に来なくなっていた
バーでの件を除けば、彼は半年以上店に顔を出していない事になる
「……千束は、吉松氏がアラン機関の人間である事をどう思ってるのですか?」
「……うぅん〜…どうだろう」
「……」
またしばらくの間、静かな時間が流れた
「…少なくとも、ヨシさんがガイアメモリに関わってる事は分かるけど…でも、それは街にメモリをばら撒く理由にはならないし……」
一見現実から目を背ける言い訳のように聞こえるが、これが彼女の本心であり、シンジを信じたいという思いの表れでもあった
「……大切なんですね、彼が」
「そりゃー命の恩人だも〜ん」
「でしたら、その身体も大事にしなくちゃですねっ…定期検診、行ってくださいね」
「…えぇ〜…分かったよぉ……」
たきなの急な塩対応に落ち込む千束
「……何が嫌なんです?」
「嫌なんじなくてぇ…」
「…なんです?」
「……ち、ちゅ…注射…」
たきなから目を背けて頬を赤らめる千束
そんな千束を見て、たきなはクスッと笑う
「…注射が怖いんですか?銃向けられても平気なのに」
「そぅだよーだって注射避けられないしぃ〜!」
「はははは!風都タワーのリコリスが、注射怖いって!」
「うぬぅ〜!」
「……」
そんな二人の会話を影から見守る翔太郎
千束の元気の無い理由が判明したが……
「……フッ…どうやら、なんとかなりそうだな…」
たきなと共に笑う彼女を見て、安堵の表情を浮かべるのであった
翌日
先月から延滞していた定期検診にようやく出席した千束
悪夢の注射の時間がやって来た
「……さっさと済ませてねっ…」
震える声で腕を差し出す千束
看護師がその細い腕に注射を刺した
「……終わりました」
「ふぅ〜!1番の難関突破だわぁ〜」
「毎回こんなに怖がってるのですか?」
「ん〜痛いのもあるけど、身体に異物を入れられるってのがなぁ〜」
「……」
「山岸先生はただのビタミン剤って言ってるけど…」
「今日のは違いますけどね」
「……えっ?」
看護師の言葉に違和感を持った千束が振り返ると、急に意識が朦朧とし始めた事に気が付いた
「……おっ…お?」
「……」
看護師に扮した姫蒲がビタミン剤と睡眠剤を取り替えていたのだ
「……貴様…」
「……」
「……山岸…先生…」
倒れ込む千束を支える姫蒲
「……丁重にするんでしたね」
「…そういえば、今日は千束はどうしたんだ?」
「定期検診です。先月から延滞していたので、私が説得しておきました」
「おぉー流石だなぁ…」
いつものようにリコリコでコーヒーを堪能する翔太郎
ミカとのいざこざも解消され、やっと心から安心してコーヒーを呑める事に、翔太郎は幸福感を感じていた
「……にしても、遅いですね」
「…え?」
「もう帰って来てもいい時間なんですが……」
腕を組んで時計を確認するたきな
耐え切れくなったのか、スマホを取り出し電話を掛けた
「……」
3コールが過ぎ、次のワン切りでたきなは店の裏へと行き、リコリス制服に着替えて店を飛び出した
「えっ…ちょっ…たきな!?」
置いていかれ唖然とする翔太郎
だが、彼も感じていた
千束になにか、嫌な事が起こる。妙な胸騒ぎが、翔太郎の心を惑わしていた
「……ハァ…ハァ…」
街の中を颯爽と走るたきな
目的地はもちろん、今朝千束が向かった山岸先生の元
「……っ」
ここでたきなは道路の縁に停車している赤いバイクを見つけた
「……たきな、こんな所で何をしている?」
「…照井さん…!」
「……どうやら、答える余裕は無さそうだな」
たきなの表情から何かを悟った照井はバイクに跨りエンジンを掛けた
「……乗れ、飛ばすぞ!」
「…はい!お願いします!」
「……」
千束を手術台に乗せ、胸元を開く姫蒲は腰にガイアドライバーでは無い、また新たなドライバー…『アランドライバー』を装着した
「……さて、始めましょうか」
《 VOLTAGE 》
ガイアメモリをアランドライバーに差し込みドーパントへと変貌する姫蒲
「……」
千束の目は、覚める気配がなかった……
「……君のせいだよ、ミカ…」
あるビルの一室
吉松シンジはワインを呑みながらそう呟いた
次回 仮面ライダーW/L・R
「……なんの2ヶ月!?」
「…余命だ、千束の余命」
「…千束の役割は千束が決める事だろ!」
「それがこいつの使命だからだ」
「おそらく、復帰の辞令だ」
「あの女は、俺が倒す…!」
第35話「Zを振り切れ/迫るタイムリミット」
これで決まりだ!