大体の予想は出来てると思いますが…最後まで楽しんでいってください!
「……」
ボルテージ・ドーパントへと変貌した姫蒲は千束の胸に手を伸ばす
「……これが…」
目的の物の摘出に成功した姫蒲は、手術室の照明を付けた
「……っ!」
背後の足音と殺気を悟った姫蒲は攻撃に備えた
手術台の陰に隠れ、相手の正体はすぐに分かった
「…千束…!千束!」
井ノ上たきな
錦木千束の相棒であり、彼女がここに来る事は予想出来ていた
だが、少し早かったか…
「ふんっ!」
「……っ!?」
すると、彼女の背後から現れた照井がエンジンブレードを引きづりながら走って来て、振り下ろすように姫蒲を牽制した
「貴様!彼女に何をした!?」
「……」
「…黙秘か…ならば…!」
「 ACCEL!」
「…変…身ッ!」
アクセル!
仮面ライダーアクセルへと変身した照井はエンジンブレードを構える
「……っ」
「はぁっ!」
窓を突き破って外に出る2人
「照井さんっ!」
たきなは窓から身を乗り出したが、既に2人は視界から外れていた
「……千束っ!」
振り向いたたきなは手術台で横たわっている千束を見つめる
「……千束…?千束!」
「……」
何度も声を掛けたが、彼女の目は覚めなかった…
第35話「Zを振り切れ/迫るタイムリミット」
「……クッ…」
「……」
逃げるボルテージ・ドーパントを追う照井
「……っ!」
しかし、その距離は縮まるどころか遠ざかって行く
「…逃すものかッ!」
アクセルドライバーを腰から外し、表裏を反転させる
すると、アクセルの身体は変形していきまるでバイクのような形態
仮面ライダーアクセル バイクフォームへと変形した
背中のパーツは前輪に、脚部が後輪・マフラーに、複眼はヘッドライトのように青く光る
「……フッ!」
マフラーから一気に熱風を放ち加速するアクセル
「……ッ!」
あっという間にボルテージに追い付いた
「はぁっ!」
「グッ…!」
後輪でボルテージをなぎ倒すアクセルは変形を解除し人型に戻る
「……なるほど、流石は仮面ライダー…と言ったところですか」
アクセルに感心したかのように、ボルテージはアクセルに身体を向ける
「少しは口もきけるようだな…」
「はい、ですが……」
「……っ!」
ボルテージは手に稲妻のような小型のナイフを出現させた
「……早急に終わらせて頂きます。これも、仕事なので」
「…何をふざけた事を!」
切り掛るアクセルだが、それを簡単に避けるボルテージ
更に稲妻のナイフによる近接攻撃
アクセルもそれを見切りエンジンブレードで対処する
「貴様が何者かは知らんが、ここで倒させてもらう!」
「……それはどうでしょう…?」
「…何っ!?グッ…!」
突如アクセルを蹴り上げるボルテージ
「……フッ!」
「……グッ…」
アクセルの胸に手を置くボルテージ
次の瞬間、アクセルの全身に高圧の電流が流れる
「ぐがぁぁぁぁ!」
流石のアクセルもこの攻撃には対処出来ず、変身が解けそのまま地面に倒れた
「……クッ…貴様…!」
「貴方を殺すつもりはありません。それでは…サヨナラ、仮面ライダー…」
アクセルの前から姿を消すボルテージ
結局、事件を聞き付けてやって来た翔太郎に助けられるまで、照井は地面に這いつくばっていた
照井の中には、大きな屈辱が残った
「……」
夢を見た
「……」
深く、深く
水の中を堕ちる夢
「……」
怖い
怖い
私は、恐怖で支配されていた
「……っ」
すると、私の頭を誰かが撫でるように触れた
とても優しい
暖かくて、大きな手が……
《…大丈夫だ…お前は必ず……》
「……っ……ん…んん〜?」
「…っ!」
目が覚めると、千束の横には彼女を心配そうに見つめるたきなの顔があった
だが、彼女だけでは無い
リコリコのメンバーだけでなく、鳴海探偵事務所のメンバー、そして照井もその場に集まり、彼女の目覚めを待っていた
「…おー…お揃いだな……」
状況が把握出来ていない千束だけは、その雰囲気に抗った
「…眠剤の影響で暫くダルいかもだけど……」
千束を診察する山岸
一方の千束は、自身の胸元に触れた
「……何された?山岸先生」
「……あの女…」
山岸はその場にいた全員に説明した
千束の胸に埋め込まれた人工心臓は充電式となっていて、DAの定期検診の度に千束の心臓に電気を送っていた。しかし、ボルテージ・ドーパントへと変身したあの女により、急激な高電圧による過充電でハードへのアクセスが不可能となり、それは同時に充電の不可を意味していた
「…つまり、錦木千束の人工心臓は……」
「……あの女に破壊された。と言っていいわね…」
「……マジかぁ…」
山岸の言葉により言葉が出ない一行
「……後どのくらい持つ?」
「…幸い充電の直後だったから、持って2ヶ月」
「……2ヶ月って…?」
「…動き回らなければもうちょっと持つわ」
たきなが口を挟む
しかし、山岸は構わず事実を述べる
「…なんの2ヶ月!?」
「余命だ」
「「……っ!?」」
たきなの質問に答えたミカ
その知りたくもない答えに、たきなと翔太郎は過剰に反応した
「……千束の余命」
「……嘘…だろ…?そ、そんなの!壊れた所を交換して…!」
「出来ないのよ…」
「……っ」
取り乱す翔太郎を、山岸は絶句させた
「…悔しいけどよ!私たちの技術と知識じゃ、どうにも出来ないのよ!」
「……っ」
「……千束の人工心臓に…代わりは無いんだ」
「……そん…な…」
その場の全員が絶句する
その中で、たきなは勢いよく診察室から出ようとする
「ちょっとたきな!どこ行くの!?」
「あの看護師を始末します!」
「いいのよ、こんな事しなくて」
「良いわけないでしょ!?」
「…いいのよ」
「……え?」
荒れるたきなを、千束は手馴れた様子で収めた
「…元々、そんな長くなかったんだから」
「……元々…?」
「あいつを殺したところで、変わんないよ…さ、帰ろ!」
「……まさか、こんな事になるとはね…」
「……」
事務所に戻った俺たちは、まずは状況の整理から話し始めた
だが、やっぱり落ち着かねぇ……
「……悪ぃ…俺はパスだ」
「どうしてだい?彼女の事が心配じゃないのかい?」
「心配に決まってるさ!!千束はおやっさんから預かった大切な命だ!それが奪われるかもしれねぇなんて……そんなの…あんまりじゃねぇか…」
「…人には必ず、死期が訪れる。それが早まっただけだ」
「……照井テメェ!」
照井のあまりにも無慈悲な発言に対し、翔太郎は衝動的になる
照井の胸ぐらを掴んだ彼の目尻には雫が溜まっていた
「…だからこそ、残りの時間に彼女に何が遺せるのか…それが大事なんじゃないのか…?」
「…っ」
だが、照井のその言葉が翔太郎の目を覚ました
「彼女に残された時間は少ない…だからこそ、彼女のこれからの余生に悔いの残らないよう全力で支えてあげる事が、今の僕らに出来ることだ。かつて君が、僕に残してくれたものがあるように……」
「……フィリップ…」
「…あの子はきっと、運命を受け入れてる…だったら、君が彼女の想いを受け入れないとね」
「……亜樹子…」
2人の言葉に、翔太郎は俯く
そして、涙が流れぬように上を向き、鼻をすすりながらこう答えた
「……そうだな…おやっさんの依頼はまだ果たせてねぇ……最期まで見届けてやんねぇとな…」
涙を堪えながら答えているのは一目瞭然だった
だが、これが翔太郎なりの決断なんだと、その場の全員が納得した
「…あの看護師の女…奴の腰にはドライバーが装着されていた」
「…ドライバー…!?」
「あぁ…ジャック・ドーパントと同様のものがな…」
「…となると、その看護師の女はアラン機関の人間で間違いなさそうだね」
「……でもよ、なんで千束の命を救ったアラン機関が、千束の命を奪おうとしてるんだ…?」
「…しかも、機能を完全に停止させる事も出来た筈だ…でもそうはしなかった……まるで彼女に生きるチャンスを与えているかのように……」
ここで、翔太郎とフィリップの頭に、一つの結論が思い浮かぶ
それは事実でもあり、希望でもある事に、この2人は気付いていた
「……フィリップ…一つ頼みたい事がある」
「…あぁ…君の考えている事と、僕の考えている事が同じなら……その答えはYES以外ありえない」
「……流石は俺の相棒だな……っ」
すると、翔太郎のスタッグフォンが鳴る
相手は……
「……楠木…?」
「……」
黙って鳴海探偵事務所を去る照井
すると、後ろから亜樹子が追って来ていた
「竜くん、どこ行くの?」
「……あの看護師の女を探す。なぜ彼女を襲ったのか…きっちりと聞き出しておく」
バイクのエンジンを掛け、ヘルメットを被る照井
不意に亜樹子の頭を撫で、その場を颯爽と走り去った
「……竜くん…」
「……」
《……それが君の…“弱さ”だよ》
《それでは…サヨナラ、仮面ライダー…》
「……」
もし奴らが繋がっているのだとしたら、奴らの目的は一体なんだ…?
いや、そんな事よりも…
照井の脳裏には、ボルテージ・ドーパントの姿が思い浮かんでいた
それと同時に、とても悲しそうな笑顔を浮かべる少女の顔
それがかつて、井坂に殺された妹の笑顔に少し似ていた事に気が付いた照井は、情動が抑えられなくなっていた
「……あの女は、俺が倒す…!」
「……」
「……」
とある高速道路
俺たちは楠木に呼ばれ、DA本部に向かっていた
バードボイルダーは今日も風の抵抗を受けながら颯爽とスピードを上げていく
「…よくDAに行く気になったな」
「なってなぁ〜い!なんか渡す物があるとかで楠木しつこいのよー!」
俺の後ろに乗っているのは千束だ
俺は楠木から千束と共にDAに来て欲しいという指示を受けなんとか千束を説得
1度は諦めたが、後に本人から直談判があったようだな
「……」
「……もしかして意識してる?」
「…そりゃそーだろ……いきなり余命2ヶ月なんて、あんまりな話だ」
「…ま、それもそうかっ……はぁ〜だから言いたくなかったのよぉ…」
「……フッ」
「…なに?」
「…いや、お前はいつも通りだと思ってな……」
「……」
千束がそれに返事をする事はなく、俺たちは何事もなくDAの本部、楠木が待つ司令室に入った
「時期死ぬにしては、元気そうだな」
「おいおい楠木、そりゃあんまりじゃねぇか?」
「いいのよ翔太郎さん。耳が早いですね〜流石は天下のDAはー…で、何ですか?」
「……単刀直入に言う、DAに戻れ」
「ゲヘッ!ゴホッ!もう死ぬんでちょっと体調がぁー!」
楠木の言葉に下手な芝居を打つ千束
そのままソファにくつろぐと、楠木は釘を刺すように言った
「真島が来たそうだな」
「二回会いましたねー」
「…二度取り逃した」
「それは私の仕事じゃないんで」
そんなギクシャクした空気に耐えかねたのか、翔太郎が大きなため息をついた後口を挟んだ
「なぁ楠木さんよぉ…千束はもう長くねぇんだぞ?そんな話よりも、もっと楽しい話題を──」
「いつまで経ってもそんなんだから半熟のままなんだぞ、小僧」
「……クッ」
今、額の血管が浮いた気がしたが気のせいだろう
千束がいる手前だ、今日はそんな口論をする為にここに来たわけじゃないのだからな…
「ところでぇー楠木さーん何くれるんですか〜?」
「……」
千束の煽りに対し、楠木は無言で机に1台のカメラを置いた
何の変哲もない、一般的なデジタルカメラだ
「……それがなん…」
「なんで楠木さんがこれ持ってるの!?」
すると、千束はそのカメラを勢い良く拾い上げた
「…情報漏洩阻止の為、回収していた」
「ずっと探してたのにー!ドロボー!」
「近く、大規模な真島討伐作戦を行う。お前達も参加しろ」
「なっ…!」
「…へへ…冗談キツいね…」
「…多くの者が、お前を優秀なリコリスにする為に尽力したというのに、ろくに役割を果たさずに死ぬんだな……」
「おい楠木!それ以上は…!」
耐えかねた俺は再び口を挟んだ
だが、楠木の眼光が俺の動きを止めた
「お前は黙っていろ。これは荘吉との約束なんだ…」
「…おやっさんとの……」
「…荘吉もお前を育てる為に尽力し、死んだ。お前は彼らの信念を無駄にするつもりか?」
「……」
「…千束の役割は千束が決める事だろ!何であんたが口を挟む必要がある!?」
「……それがこいつの使命だからだ」
「…っ!」
楠木の言葉に、俺は今度は腹から声を出そうと息を溜めた
だが、それも束の間
千束が机を思いっきり叩き威嚇した
「……いい加減にしてよ二人共!私の事で喧嘩しないで…!」
「……千束…?」
普段温厚な千束が…こんな乱暴に発言するとは……
「…それに、今だから言うけど…私はその荘吉って人は覚えてないし、知らない人から信念を託されても困るよ……」
「……」
千束の言葉に絶句する翔太郎と楠木
千束のカメラを握った手に力が入りながらも、彼女は述べた
「…翔太郎さんの言う通り、私の思う役割と楠木さんが思う役割は違うよ。何が私の使命だったしても、決めるのは私だから」
手の力を緩めた千束は出口に向かう
「…話は終わっていない。座れ」
「……たきなを
「……えっ?」
翔太郎が驚いたのは、千束の提案もそうだが
さっきまでの表情とは打って変わっていつも通りの顔に戻っていたからである
「……行こ、翔太郎さん」
「…え…あ、あぁ……」
「…あ、
「……」
司令室を後にした俺たち
廊下を歩く千束に、俺は問い掛けた
「…本気か?たきなをここに戻すって…」
「ん〜?だってたきな、ずっとここに戻りたがってたから」
「……まぁ、それはそうだが……お前が…」
「……」
翔太郎はそのまま言葉を詰まらせた
彼の口から、その後の言葉が出てこないからである
「……いや、なんでもない」
「…うん」
「……」
我ながらハーフボイルド
そう思いながら再び風都の街をバイクで駆ける翔太郎と、いいつまで経っても表情の掴めない千束であった……
「…いらっしゃいま……」
「……」
翌日
リコリコに来店して来たのはフキとサクラだった
「パフェパフェ〜!なんでもいい!すぐ出来るやつ!」
「ははは、フキもいるか?」
「…い、いえ…すぐ帰りますので」
ミカにパフェをねだるサクラと、たきなに一つの封筒を渡すフキ
封筒にはDAのロゴが印刷してあった
「明日までに返事しろ」
「……これは?」
「おそらく、復帰の辞令だ」
「…っ!」
「真島のアジトが判明した。突入にあたって戦力がいる」
「良かったな〜おーい!」
「オラ帰るぞー」
「えっ…ちょ……」
ミカにまた来ますとだけ伝えたフキはサクラを乱暴に店から引きずり出した
「……」
「やったじゃないか井ノ上たきな!」
「……」
「……?」
本来、ここは喜ぶべきなのだろう
明日までに返事を…
そのフキからの言葉を反芻しながら、たきなは無言で勤務に戻るのであった……
「なんすかあいつ!DA戻りたかったんだからもっと喜べって話っすよねー!」
「……バカが移ったんじゃねぇの?」
「……え?」
「……ふぅ〜!今日も一日お疲れ様〜!」
その夜
店締めのゴミ出しを終えた千束は、腕を組み背伸びをした
とてもじゃないが、死にかけの女の子には見えなかった
「……ん?」
「……」
「あれ〜?刑事さんこんな所で何やってるの〜?捜査?」
「……」
そんな千束をそばで見ていた照井に、千束は話しかけた
だが、照井は無言で千束に近付き口を開いた
「…突然だが、お前に頼みたい事がある」
「……え?」
照井の瞳からは、覚悟の意が感じられた
次回 仮面ライダーW/L・R
「…10年前の話だ」
「お前も千束を殺しの道具として見ていたのか…」
「千束が生きる可能性が、少しでもあるなら…」
「……俺は、独りじゃない」
「今名付けよう、彼の名は……!」
「…さぁ、振り切るぜッ!」
第36話「Zを振り切れ/漆黒のアクセル」
これで決まりだ!