静けさが好き
平和で安全
綺麗な風都
日本人は基本意識が高くて
優しくて温厚
法治国家日本
その中の風都には
危険などない
社会を乱す者の存在を許してはならない
存在していた事も許さない
消して消して消して
綺麗にする
危険は元々無かった
平和は私たち日本人の基質によって成り立ってるんだ
そう思える事が一番の幸せ
それを作るのが私たち、リコリスの役目
なんだってさ!
『風都』
この街では小さな幸せも大きな不幸も、常に風が運んでくる
俺の仕事はその風に耳を傾け、小さな幸せを守ってやる事だ
「……今日もいい風が吹くなぁ…この街は」
俺の名は左 翔太郎
極めてハードボイルドな、私立探偵だ
仮面ライダー…
その名が知れ渡ったのはおよそ10年前からだ
おやっさん…
俺の師匠の鳴海荘吉が仮面ライダースカルへと変身したことにより、この街には骸骨男の噂とガイアメモリの噂が持ち切りとなった
しかし、ある日
その噂は忽然と流れなくなった
まるでその話をすると祟が起こるかのように、全員が口を塞いだ
それからというもの、この風都からはガイアメモリや仮面ライダーといった噂が消え、街のみんなの記憶からも消え去っていた
「……この街も、随分と平和になったな」
ガイアメモリ…
ある組織によってばらまかれた、USBメモリのような見た目の悪魔の道具
それを身体に刺してしまうと、メモリの中に内蔵された膨大なデータが体内に流れ込み、人間を超人…いや、怪人に変えちまう代物だ
今はその組織は壊滅、街の中にばらまかれたガイアメモリもかなり数が減っていると思うが…
俺は風都の中心に大きく建つ『風都タワー』を見つめた
少し高いここから見れば、夜景と共に最高の景色が拝める
「……ん?」
ふと、視線を下にやると
何人かのベージュ色の制服を着た女子高生が身を屈めながら何個かのグループに別れて何処かに向かっていた
「…女子高生…?こんな時間に何やってるんだ?」
何一つ確かな情報は分からないが、何か嫌な予感を感じて俺は高台から降りて俺の愛車のバイク、ハードボイルダーに乗り込み、ヘルメットを被りエンジンをかける
夜道をバイクで走っていると
傍で爆発が起きた
「…だぁっ!」
突然の事でびっくりした俺はバイクを止め、ヘルメットを外した
「なんだぁ!?」
次に見えたのは、猫のような狐のような容姿を兼ね備えたドーパントが街中を颯爽と走っていくのと、それを先程の女子高生たちが追いかけているという構図だった
「…あの子たち…どういう事だ!?」
俺は再びバイクを走らせた
何か、悪い風が俺を急かせた
第1話「Jは暗殺者/事件は唐突に」
「グラァァ!」
「きゃっ!」
「チッ…近付くな!リコリス共!こいつがどうなっても良いのか!?」
「……」
「……くっ…まずい!」
彼女の名は春川フキ
ファーストリコリスとしてアルファ1のリーダーとして指揮を執っていたが、リコリスの1人である蛇ノ目エリカが人質に取られてしまっていた
「…おらおらぁ…早く逃げねぇとこいつの首根っこが俺の爪で切り刻まれるぞぉ〜?」
「…チッ…バケモノめ!」カチャ
拳銃を構えるフキ
しかし、無線が入りDAの司令官である楠木から命令が入った
『発砲は許可出来ない…千束を待て』
「司令部!千束が居なくても私たちで出来ます!射撃許可を下さい!」
『……』
「…司令部…司令部!」
「……どぉしたぁ?怖気付いたかぁ?…なら俺はここで退散させて……っ!?」
「…っ!たきな!?」
「……」
彼女の名は井ノ上たきな
セカンドリコリスの彼女だが、司令部の許可を無視して
マシンガンをドーパントに向かって連射したのだ
それも、人質がいるのにも関わらず…
「がぁぁぁぁあ!……この糞ガキ共がぁ!」
怒り狂ったドーパントは人質であるエリカを襲った
「エリカァ!」
フキの叫び声と、たきなの放つ銃声の残音が響く
「……」
「……」
「……ヘヘッ…俺様の邪魔をするからいけないん…だ…?」
ドーパントは不思議に思った
自分は女の身体を切り刻んだ筈だ
しかし、煙が晴れた時見えたのは
地面で気絶している無傷の女だった
「…ど、どういう事だ!?」
「『こういう事だ!』」
「…っ!?」
「ぐわぁ!」
突如、ドーパントの顔面を黄緑色の右腕が殴った
と思えば、今度は黒色の左足が出て来てドーパントを襲った
「……まさか…あんた…!?」
「……っ」
「…き、貴様ァ!何者だァ!?」
「『…仮面ライダーダブル…それが俺たちの名だ』」
「……俺
たきなは不思議に思った
更に煙が晴れた先に見えたのは、左右で色が違う1人の超人だったからだ
「やっと現れたなぁ!ジャッカル・ドーパント!」
『君の事は既に検索済みさ…』
「『……さぁ…お前の罪を数えろ!』」
1週間前
「……一瞬で首が?」
「あぁ…この間更に犠牲者が出た」
「……またドーパント絡みの事件か」
「…翔太郎くん…いつものように頼めるか?」
「…もちろん、この街は俺の庭だ!誰一人、涙を流して欲しくねぇ……俺はこの街の笑顔を守る、探偵だからな」
「…フッ…相変わらず頼もしいな」
俺は行きつけの喫茶店を後にし、鳴海探偵事務所へと帰って来た
「…ただい…まぁ!?」バコッ!
帰ってくるなり、後頭部にスリッパで叩かれた衝撃がした
「何すんだよ亜樹子ォ!」
「何すんだよっ!じゃないわよ!ま〜たあのお店行ってたんでしょ〜?」
「良いだろ別に!俺がどこに行こうと俺の勝手だろ!」
「…あれ?あれあれあれあれ?ここの所長は誰だかお忘れかなぁ?」
「……クッ…!」
「はい、ご唱和ください?ここの所長の名前はぁ?」
「…な、鳴海荘吉の娘である、鳴海亜樹子様です…」
「そう!せいかーい!よう出来ました!」
彼女の名は鳴海亜樹子、鳴海探偵事務所所長で、おやっさんの血の繋がった娘だ
ある日この街に来た亜樹子は俺たちをここから追い出そうとしてた
ここに来てフラストレーションがMAXまで溜まったようだ
そんな風にいつも通りのじゃれあいをしていると、事務所の横にある部屋のドアからあいつが顔を覗かせた
「…おかえり、翔太郎」
「おう…フィリップ、早速頼みたい事があるんだが──」
「すまない翔太郎!それは出来ない」
「…は?何でだよ、なんでそんな事急に……まさかお前!?」
「今ちょうど、今川焼きと大判焼きの違いを検索していたところなんだ!地方によってどうしてこんな差が生まれてしまったのか……興味深い…ゾクゾクするねぇ…!」
「……あーー…嘘だろぉ?」
こいつの名はフィリップ
俺の相棒であり、かつて組織に囚われていたところをおやっさんに助けられ、この探偵事務所で匿うことにした
今は追っ手もないから安全だが
こいつは一度暴走すると本当に収集がつかなくなる
何度この性格に悩まされた事か……
こいつに言う事を聞いて貰う方法はただ1つ
「…なるほど、今川焼きと大判焼きの全てを閲覧した!」
「…ふぁ〜…よし、それじゃあ早速始めようか」
「…あぁ」
フィリップは手を広げて目を閉じた
今こいつは「
つまり、フィリップの中には地球の全てが詰まっている
それが本棚という形で表れ、フィリップはそれを閲覧することによって知識を得ている
ただ、さっきみたいに知識が偏りすぎているのもあり
そして本人は興味を持つとそれ一筋になってしまう
フィリップの興味が引くまで、俺がフィリップを待つ必要があるんだ
なかなか厄介な相棒だろ?
「…検索を始めよう」
「…首が一瞬で切断される事件?」
『あぁ、今探偵にその調査を頼んでいる所だ』
「…あぁ〜…あの半人前の小僧かい」
『…彼もいい大人だ、いつまでもそう言ってやるな』
「…ま、私はこの事件を未然に防げたら…それでいいけどね」
『……千束にこの事は伝えるか?』
「……いざとなれば彼女の力を使わせてもらいたい…頼めるか?」
『わかった』ピッ
DA司令官、楠木は渋い声のするスマホを取って通話を終了した
「……リコリスの出番だ」
「……はぁ…」
「どうしたの?先生」
「…千束か、少し話がある」
「…ん?」
喫茶リコリコの店長で黒肌のイケボな中年であるミカは
錦木千束に今回の事件のあらましを伝えた
「え〜!?またドーパント出るの!?」
「既に被害者も出てるんだ、早急に対処しなくちゃならん」
「それ私じゃなくても良くないですかぁ〜?他のリコリスに頼めば……それに…」
「……それに…?」
「…どうせ、あいつが助けてくれるんでしょ?仮面ライダー…」
「よせ千束…その名を口にするな」
「……さーせん」
「……事件を一旦整理して話そう…およそ2日前──」
「南町の外れで、首が惨殺された死体が見つかる。首はまるで鋭利な刃物が切りつけたような感じで、とてもじゃないが人間業じゃねぇ」
『…キーワードは、鋭利』
「この事件はDAによって隠蔽され、事故死と判断されたが……監視カメラの映像を見ると…」
「……」
「明らかに何かが超高速で首を切りつけていた…」
『…次のキーワードは、超高速』
「……そして現場には、殺した人間の血で文字が書かれていた…」
「…うわぁ…酷いねぇ…」
「「JKは、JがKOROSHITA」…笑えねぇダジャレだぜ」
『……最後のキーワードは、ダジャレ…』
「それはキーワードじゃない!」
「……」
「…待って!?殺されたのってリコリスなの!?」
「…そうだ…そのせいでDAは今躍起になってる。一刻も早く犯人を殺したいと…」
「…まぁ…身内が殺されたら黙っちゃいないよね〜あの人は」
「……そこでだ…次に奴が現れたら、お前も現場に向かってくれないか?」
「……ん〜…先生の頼みなら聞きたいけどぉ…DAの言いなりにはなりたくないだよなぁ〜…」
「そこを頼む…お前だけが頼りだ」
「……わかったよ…わかりましたぁ!」
『…最後のキーワードは、J』
「…どうだ?」
『……ビンゴだ』
「Jから始まり高速移動が可能で、かつ鋭利な爪を持っている…敵はおそらく「ジャッカル」のメモリの使用者だ」
「…ジャッカルメモリか…まだこの街に知らないメモリが存在したとはな」
「敵は目にも留まらぬ速さで移動する事が可能だ、何かしら対策を考えておかないと、戦闘では不利になるかもね」
「…そうだな」
「……で、どうするんだい?」
「…なにがだ?」
「この依頼、受ける?それとも受けない?」
「……もちろん受けるさ!…この街の誰かが泣くのは、これ以上御免だからな…」
俺はダブルドライバーとジョーカーメモリを持った
「…おやっさんから託された想いに掛けて、この街は俺が守る」
「…翔太郎、そこは「俺」ではなく…「俺たち」だと思うが?」
「……ハッ…そうだな…俺たちで守るぞ」
「…あぁ!…僕たちは二人で一人の探偵だからね!」
「…あの子たち…どういう事だ!?」
俺はハードボイルダーを操縦しながらダブルドライバーを腰に巻き付けた
「フィリップ!奴が現れた!予想通りジャッカルっぽいぜ!」
『了解した』
「じゃあ、いつもみたいに行くか!」
『勿論だ!』
『CYCLONE!』「JOKER!」
「『変身ッ!』」
ダブルドライバーの右サイドにサイクロンメモリが転送されてくる
俺がそれを奥まで差し、ジョーカーメモリを差し込んだ
ドーパントを展開させると、ドライバーがWの文字を表した
風都の風を受けながら、俺たちは仮面ライダーダブルへと変身した
ハードボイルダーの速度を上げ、ジャッカルを追いかける
「がぁぁぁぁあ!……この糞ガキ共がぁ!」
「エリカァ!」
「……ヘヘッ…俺様の邪魔をするからいけないん…だ…?」
「……っ」
「…ど、どういう事だ!?」
「『こういう事だ!』」
「ぐわぁ!」
「……まさか…あんた…!?」
「……っ」
「…き、貴様ァ!何者だァ!?」
「『…仮面ライダーダブル…それが俺たちの名だ』」
「やっと現れたなぁ!ジャッカル・ドーパント!」
『君の事は既に検索済みさ…』
「『……さぁ…お前の罪を数えろ!』」
次回
第2話「Jは暗殺者/喫茶店の女神」
これで決まりだ!