仮面ライダーW/L・R   作:キャメル16世

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今回結構長めです。章のラストなので無理やり詰めた感ありますが、ご了承ください。よろしくお願いします。



第36話「Zを振り切れ/漆黒のアクセル」

「……マスター…吸うんだな」

「……罪悪感を覚えると、吸いたくなる。自分を痛めつけるには丁度いい」

「そんな不味そうに吸うなら辞めろ」

「……フッ」

雨の日

リコリコに来ていた翔太郎とフィリップ

そしてミカにコーヒーを淹れたクルミが、カウンター席に座り煙草を吹かしているミカを見詰めた

 

「ところで、何か分かったかい?天下のウォールナットは」

「今のとこお手上げだな……アラン機関、吉松シンジ。ネット上には彼らにまつわる情報は皆消された後しかない」

「僕も色々と調べてはみたけど、いずれも収穫は無かったよ」

「……だろうな」

「だから、直接知る人間から訊こうと思って…今日はここに来させて貰った。それも、二人が居ない時にな」

「……」

クルミが淹れたコーヒーを飲むミカ

それをただただ見詰める三人

雨の音は、増すばかりだった

 

「…マスター、本当は気付いてるんだろ?ジンの件、千束の心臓を壊した女…黒幕が、吉松シンジである可能性に…」

「……」

「……」

「……10年前の話だ」

 

 

「……おー…ホントにヨシさんだ…」

橋の下

雨宿りをしていた千束は時間潰しに以前楠木から取り返したカメラの中を見ていた

そこには今よりも少しだけ若いシンジの写真が収められていた

 

「……っ」

だが、千束はそこで気が付いた

シンジの横に、白い帽子と白いスーツを身にまとった男性が立っていた事に

目元は帽子の鍔で隠れて見えないが、少々生えた髭に

千束はどこか既視感を覚えた

 

「……この人…」

千束は何かを悟ったのか、カメラの電源を切って鞄に仕舞い、彼から貰った銃もしっかりと仕舞った

 

「……」

 

 

 

「…突然だが、お前に頼みたい事がある」

「……え?」

先日、照井に呼び止められた千束はある事を彼から伝えられた

 

「俺は、あの看護師の女を探し出し倒すつもりだ」

「ちょ…そんな事しなくていいって!言ったでしょ!?あいつを殺したところで何も変わんないよ!」

「…殺す訳では無い」

「…え?」

「…錦木千束…皆が皆、お前たちリコリスと同じ思考であると思うなよ」

「…そ、それは……」

「殺す事だけが復讐じゃない。俺が奴を倒す理由は他にある」

そして、千束は照井の考えを伝えられた

 

「お前に、自分の思いを振り切る覚悟があるのならば…俺に協力して欲しい」

「……一体…何をすればいいの?」

「……──」

 

 

 

「……うん。私、決まったよ」

千束は雨空を見上げ、その瞳を輝かせたのであった

 

 

「……っ!」

道路を運転していた姫蒲

ヘッドライトとワイパーをつけて雨の中を走行する

しかし、突如ブレーキを踏み急停止する姫蒲

 

「……ハァ…」

大きなため息をついた彼女は車を降り、目の前に立っていた真っ赤に染る仮面ライダー、アクセルの前に姿を現した

 

「貴様がこの間の看護師の女だな」

「……だったらなんですか?」

姫蒲の言葉に、アクセルはエンジンブレードの切っ先を姫蒲に向けた

 

「署まで御同行願う…洗いざらい教えてもらおうか!」

「教える事なんて何もありませんよ…」

 

《 VOLTAGE 》

 

ボルテージメモリをアランドライバーに差し込みドーパントへとなる姫蒲

 

「それとも何ですか?貴方も彼女と同じ目に逢いたいのですか?」

全身の電気を収束させ稲妻の刃を生成するボルテージ

彼女の問い掛けに対し、アクセルはこう答えた

 

「……俺に質問をするなッ!」

 

 

 

第36話「Zを振り切れ/漆黒のアクセル」

 

 

 

「……シンジに千束を紹介した日、その日が運命の始まりだった…」

 

 

「……素晴らしい…銃では彼女を殺せそうにないな…」

いつものバーのカウンター席

ミカは千束のDAでの訓練映像をシンジに見せていた

千束は何人ものリコリスのインク弾を避け、更には千束を囲む彼女等を圧倒した

 

「…あぁ…しかし」

『…千束!』

映像の中で倒れる千束

すぐさまフキが駆け付け、訓練の中止を懇願する

 

「先天性心疾患だ…持って半年、病が彼女を殺す」

「……そうはさせません」

 

 

 

「…千束に人工心臓を、だと?」

アラン機関、吉松シンジからの提案を聞いたミカは、それをすぐさま荘吉に伝えた

 

「…それで、千束はあとどれだけ生きれる」

「……持って千束が成人するまでだそうだ。だが、それだけ生きれれば充分…」

 

《充分殺しますか?》

 

「……」

「…充分…なんだ?」

「……いや…なんでもない」

歯切れの悪い会話に、荘吉は少しだけ疑問感を持った

 

「…吉松シンジと言ったか…?今度、その男に合わせてくれ」

「……分かった」

だが、数ヶ月による彼らの信頼が荘吉自身の口を閉ざした

 

 

 

「シンジは私にこう問い掛けた、充分殺しますか?と…リコリスの現役はせいぜい18、それまでにどれだけの人を殺せるか…シンジの目にはそれしか写っていなかった」

「…で、マスターはなんて答えたんだ?」

「……期待には応えよう、と…」

「…お前も千束を殺しの道具として見ていたのか……」

外の雨音は勢いを増すばかり

ミカの声やクルミの声が重く響く

 

「…いつ変わったんだい?」

「……手術も間近に迫り、私とシンジは仲を深め合っていた」

「……」

「…シンジはその際、私に質問した。子供の世話は得意かと……」

 

 

「はぁッ!」

「……フッ!」

「…クッ…すばしっこい奴だ…!」

アクセルの攻撃を軽々避けるボルテージ

雨は止める気配が無い

 

 

 

「……ハァ…ハァ…フゥー……こんにちわ〜…」

鳴海探偵事務所に訪れた千束

事務所には誰もおらず、部屋の明かりも消えていた

 

「……ヨシっ」

それは千束の思惑通りであり、彼女の目的は事務所自体では無かった

 

翔太郎の帽子が掛けられた扉、その奥の基地に忍び込んだ千束は目を懲らす

 

「……っ!」

目的の物を見つけた千束はそれを持ってすぐさま事務所を出る

雨空の下、今頃戦っているであろう彼の元へと向かって行く

 

全ては、己を振り切る為に…

 

 

「術後、千束が才能を活かせるように助けて欲しいというシンジの頼みから…私はリコリコで千束の世話をし、千束を本当の娘のように育てた。私たち3人にとっての娘が育つのは、悪い気はしなかった…」

「…ま、待て!おやっさんは千束の事どう思ってたんだ!?まさかおやっさんも千束の事…」

「荘吉が千束に求めていたのは殺しの才能じゃない。ただ長く生きて欲しいという単純な願いだ。それに、彼も君達と同じように、リコリスの事を肯定的には考えていなかったからな…」

「…そっか…良かった……」

「…話を続けよう」

 

 

 

「……」

「……」

手術本番、ミカとシンジは手術台に眠っている千束にオペを続けていた

 

人工心臓の移植にはほぼ成功。後は胸を閉じて手術は完了する予定だった

だが……

 

ピピピピ!ピピピピ!

 

「……クッ!」

「な、なんだ…!?」

人工心臓に不具合が発生し、手術室に響く警告音と心電図の音色

 

「…クッ…やはり耐久性に問題が…!」

「シンジ…!どうするんだ!?このままでは千束が…!」

「……っ」

千束の胸を抑えながら嘆くシンジ

ミカに人工心臓を見せた時、彼は忠告していた。人工心臓には耐久性の問題があり、まだまだ見直しの余地があると

だが、こんな所で問題が発生するとはシンジ自身も把握していなかった事態であっただろう

だが、彼には解決策があった

それはこの場に於いて最善の策であり、同時に最悪の選択でもあった

 

「……ミカ…私を信じてくれないか?」

「…え?」

「千束の心臓を正常に動かすには、同じ心臓の記憶を宿す力が必要となる」

「……シンジ…?」

「…千束に、()()を使う」

「そ…それは!?」

シンジが取り出した物、それはガイアメモリであった

黄金に輝く、イニシャルはハート型で「H」のガイアメモリ

それは世間を騒がす悪魔の道具であり、それの邪悪さはミカもシンジも把握していた

 

「な、何を言っているんだ!?そんな事をしたら千束が怪物に…!」

「大丈夫だ!このメモリによって千束が怪物になることは無い。このメモリは千束の心臓のペースメーカーのような役割を果たす、言わば命を繋げる糸だ。これがなければ千束は本当に死ぬぞ」

「…だ、だがそんな事荘吉が知ったら…!」

「ミカ!今大事な事はなんだ!?千束の命か?それとも友との信頼か?……答えはすぐに出るだろう?」

「…そ、それは…!」

ミカの両肩を抑えるシンジは、彼の目をじっと見詰めた

 

「…ミカ…私を信じてくれ」

「……クッ…分かった…!」

渋々了承したミカ。それを見たシンジはメモリを起動させた

 

《 HEART 》

 

千束の胸にハートメモリが吸い込まれていく

確かに千束の身体はドーパント化はせず、更には心電図の数値も正常になっていく

 

これにより、手術は成功に終わった

 

 

「……千束の心臓に…メモリ…?」

「…つ、つまりそれでは…錦木千束は……」

「…ドーパントだった…というわけか」

「……嘘…だろ」

ミカから伝えられた衝撃の事実に、3人は動揺を隠せないでいた

 

「…姿こそ人間だが、千束はドーパントとして生きて来た。あの子の強靭な肉体と身体能力は、このメモリの能力によるものだ」

「……」

だからリコリス襲撃事件の時、車に引かれてもピンピンしてたわけか…

 

「……じゃあ…あの看護師の女は…」

「高圧電流により千束の心臓を1度止めて、メモリに死んだと思わせ、メモリを体外に排出。それを持って逃げ出したんだ。そうすることによって、千束の寿命を縮ませたんだ」

「……なるほど…インビジブル・ドーパントの時と同じ方法で…」

「…千束はそれを知ってるのか?」

「教えるわけが無いだろう…だからこそ、私は今まで一人で背負って来た。シンジが犯した罪を、私が犯した罪を…」

「……」

 

 

 

「……おいわい?だれから?」

「…救世主だ」

「……なら、人を助ける銃だね…」

 

術後、目が覚めた千束にシンジから預かった銃とフクロウのペンダントを渡した。あの日、1度だけシンジと出会った千束は、シンジの口から出た「救世主」という言葉に感化され、自分も救世主になる事を誓った

 

「シンジは、その日から姿を消した。私の前からも…」

「…千束が殺しをしない理由はそういう事か…皮肉なもんだな」

「……でも、これで大体分かった。ボクを狙ったアランは多分吉松だし、あの日メモリを受け取った真島とも繋がってる…思想的に奴を支援する理由も理解出来たしな」

「真島を捕えれば、千束の心臓について何か分かるって事ですか?」

すると、カウンターの奥からたきなが姿を表した

 

「聞いていたのか!?」

「はい、ミズキさんも」

「ハッ…私までバラさなくてもいいじゃなぁい…!」

どうやら隠れて俺たちの会話を聞いていたようだ。つまり、千束がドーパントだったという事実も…

これは悪い事をした

 

「…彼の足取りが掴めない以上、動きの派手な真島から辿る方が早いね。DAの作戦に参加出来るのはチャンスだ!」

「……断ろうと思ってました」

「何故だい!?望んでいた復帰だろう!?」

「……そりゃ、千束の最後の2ヶ月だからな…」

俯くたきなだったが、今の会話で決心が着いたのか

真っ直ぐフィリップの目を見た

 

「…でも私、DAに戻ります。千束が生きる可能性が、少しでもあるなら……」

「…私から千束に言おう」

「いえ、自分から言います。時間をください」

「……っ」

すると、このタイミングで俺のスタッグフォンの着信音が静かな部屋に鳴り響いた

 

相手は亜樹子だった

 

「…どうした?亜樹子」

『翔太郎くん!竜くん見てない!?』

「あ?照井?こっちには来てねぇぞ?」

『…そう…フィリップ君が危ないって言ってたあのメモリ!基地に無いのよ!』

「何っ!?」

「……っ」

俺とフィリップは目配せをする

これは大変な事になった

 

『それだけじゃ無いの…メモリが置いてあったそばに落ちてたんだけど……』

「……」

『ふうとくんのキーホルダー…』

「……っ!」

 

俺とフィリップはすぐさまリコリコを飛び出し、2人でハードボイルダーに跨りエンジンを掛ける

 

「左さん!」

「たきな…!皆も来る気か!?」

「今の千束に無茶はさせられん!私達も共に行くぞ!」

「行けぇ!ハーフボイルド探偵!!」

「……よし、行くぞ!」

「あぁ!」

フルスロットルで雨の中を進んでいくハードボイルダー

後ろにはリコリコの赤い車が後を着いてくる

 

「……照井…!千束…!」

頼む…間に合ってくれ!!

 

 

「 TRIAL!」

 

トライアル!

 

アクセルの赤い装甲が剥がれ落ち、青のトライアルへと変身する

 

「はァっ!」

「…ッ…少しは早くなったようですね」

「少しでは無い!俺は、音速をも超える!」

その言葉通り、アクセルトライアルはボルテージの周りを音速を超えるスピードで走行

何も無いところで雨粒が弾ける様は、透明な柵に囲われたような感覚だった

 

「はァァ!」

「がァっ!」

アクセルトライアルが振り下ろしたエンジンブレードの斬撃により、ボルテージはダメージを受ける

 

だが、それでも彼女は平気そうであった

 

「……クッ…やはり、あの力が必要か…!」

「…照井ィィ!」

「…っ!左!?フィリップ!?」

すると、背後から猛スピードで向かってくるバイクに乗った翔太郎とフィリップに気が付いた照井

その後ろには赤い車も着いて来ていた

 

「…来るな!これは俺の戦いだ!手出しは無用!」

「そんな事言ってる場合か!そいつってあの看護師だろ!?」

「……」

バイクから降りてヘルメットを外し、大声で叫ぶ翔太郎

 

「…なんで…なんでまた一人で抱えてんだよ!俺たち仲間だろ!?お前、復讐の連鎖を断ち切るんじゃ無かったのか!?」

「……」

すると、照井はゆっくりと振り返り、馴染みのある言葉を発した

 

「…左…俺にくだらん質問をするな」

「……えっ?」

「俺たちは仲間であり、俺は復讐の連鎖を断ち切るつもりだ…だが、一つだけ間違っている事がある」

「…?」

「……俺は、独りじゃない」

照井のその言葉の次に聞こえたのは、少女の大きな叫び声だった

 

「刑事さぁぁぁん!」

「…千束!?」

「これぇ!受け取ってぇ!」

走って来た千束は照井に向かって何かを投げ付けた

それは、以前彼から徴収した「ゼロメモリ」であった

 

「ゼロメモリ…!やはり彼女が持っていたか!」

「照井!そのメモリは…!」

「今は彼を信じてあげよう、翔太郎くん」

「…マスター…!」

翔太郎の肩にずっしりと重たいてを載せるミカ

その目は、真っ直ぐ照井の方を向いていた

 

 

 

「……茶番は終わりましたか?」

「何度も言わせるな、俺に質問をするなと…!」

 

「 ACCEL!」

 

アクセル!

 

再び赤い装甲を見に纏った照井はゼロメモリを構えた

 

「……」

「……っ」

そして、千束の方に振り向く

大きく頷いた千束を見て、照井は覚悟を決めた

 

「 ZERO 」

 

「……俺は俺を…振り切るぜ…!」

 

アクセルドライバーからアクセルメモリを取り出し、ゼロメモリを装填する

そのままハンドルを回すと、アクセルの身体が真っ黒に染まった

 

ゼロ!

 

「…グッ…がァァァァ!」

すると、ゼロメモリからアクセルの全身に黒い鎖のような物が巻き付いた。それはまるでアクセルの身体を絞めるように強固に、頑丈に巻き付いていた

 

「…やはりゼロメモリは危険だ!このままでは死ぬぞ!照井竜!」

フィリップの必死な説得も、彼には通用しなかった

何故なら彼は……

 

「…知らないのか…フィリップ…!」

「……っ!」

「…俺は…死なんッ!」

 

苦しみながらも、照井はゼロメモリのバイザーをアクセルドライバーの前面に下げた

バイザーの「Ø」の文字が白く光る

 

Shake off !!

 

すると、黒いアクセルの装甲ごと鎖は砕け散り、トライアルよりもコンパクトな体型へと変化した

トライアルにあったタイヤの装備がなくなり、全身は黒く艶やかに輝き、複眼のヘッドライトは黄金色に輝いていた

 

「……っ!」

この変化には、流石のボルテージも驚いていた

 

「……「ゼロシグナル」を乗り越えた…やはり彼は只者では無い」

「……あぁ…それでこそ照井だ…」

「……今名付けよう…彼の名は…!」

 

雨の降る中、漆黒のアクセルはエンジンブレードをボルテージに向けて構えた

 

「…仮面ライダー…アクセル・ゼロ!」

 

「……さぁ、振り切るぜッ!」




次回 仮面ライダーW/L・R

「メモリブレイク…出来ねぇ!?」
「ロボ太、作戦を思い付いた…」
「荘吉と千束が出会ったのは、雪の日だった…」
「見て見て荘吉さん!おっきい雪だるま出来たよ!」
「千束、お前は…自由に生きろ」
「……キチさん…?」

第37話「Fに別れを/雪の降る日に…」

これで決まりだ!
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