まだまだ途中ですが、最終回までのカウントダウンが始まりつつあります
最後までどうぞ楽しんでください!
「…一つ…一つだけ、思い出した事があるの」
「…ま、まさか…おやっさんの事…思い出したのか!?」
まさかの千束の発言に、俺は驚きを隠せなかった
さっきまでの作戦の疲れが嘘のようだ
「ほんと!一つだけ!一つだけなんだけどね…!」
「なんでもいい!話してくれ!」
俺は自然と口角が上がる
失われてしまったと思われた千束の記憶が、何が原因かは分からないが、こんなに嬉しい事は無い
少しでもおやっさんの事を知って欲しい
俺はこの時、そんな事しか考えていなかった
「……実は…!」
「千束、そんなところで何してる?もう閉めるぞ…」
店のドアからマスターが出て来た
「…翔太郎くん」
「よ、マスター」
「…すまなかったな、こんな事になって……もう君にコーヒーを淹れる事は出来なくなってしまった…」
「…い、いや良いんだよマスター…!俺全然気にしてねぇから!んじゃ、明日も早いんで寝るな!じゃあな!」
俺は身体の向きを変えて足早に帰ろうとした
「…あまり、無理をするな」
「……っ」
が、マスターの言葉が俺の足を止めた
「…はぁ…本当に、君と荘吉は良く似ている」
「…えっ?」
「嘘を着くのが下手くそなんだ…私には、君たちの心の悩みなんてのはお見通しだ」
「……マスター…」
「……千束には素直な気持ちを伝えたのだろう。私にも言ってくれ」
「……あぁ…なら代わりに…」
「…ん?」
「……マスターのコーヒー、飲ませてくれよ?」
「……フッ…あぁ、好きなだけ飲みなさい。千束もな」
「…お!いいの〜?先生太っ腹だね〜」
その日、俺は朝になるまで店に居続けた
コーヒーの飲み過ぎに注意しながらも、俺の思いの丈をマスターにぶつけては、泣いたり笑ったり、そんな楽しい夜を過ごした後
朝になり、俺は再びDAに戻った
「……そうかい、錦木千束が鳴海荘吉の記憶を…」
「おいおいもっと喜べって〜!嬉しい事だろ!?」
「…確かに喜ばしい事だが、素直には喜べないよ」
「…え?なんで?」
DAに戻った俺は早速フィリップに千束の記憶について教えた
だが、フィリップの表情は曇りを増した
「…きっと、ハートメモリを抜かれた事で、彼女の記憶が覚醒したんだ。それはつまり、記憶が戻る事がハートメモリの副作用…つまり効果が、どんどん減っているという事になる。失われた全ての記憶が戻ったその時、彼女は寿命を迎え……死ぬ」
「……ゴクッ」
フィリップの言葉に思わず息を飲む
「一刻も早く吉松シンジの居所を暴き、ハートメモリについて詳しく訊くしか…錦木千束を救う方法は無い!」
「……そうだな…その為にはまずは真島だ…!」
「…今日は風都タワー復興完了の完成セレモニー…真島が動くとしたら今日だ」
「DAもそれに合わせて作戦立ててるんだろ?俺達も向かうぞ!」
「あぁ!」
第39話「Fに別れを/辿る記憶の中で」
「……ねぇ先生」
「…ん?」
「……荘吉さんってさ、どんな人だったの?」
「…なんだ、興味あるのか?」
「……うん…ちょっとだけ…」
千束の言葉を聞いたミカは徐ろに立ち上がり、千束に背を向けた
「……着いてこい」
「…えっ?」
「警備のリコリス、配置完了しました」
風都タワーの周りを囲むように配置されたリコリス
楠木はその様子をDAから見ていた
『それではこれより、風都タワー完成セレモニーを開催致します!』
「……始まるぞ」
「……さて…真島はどう動くかな…」
「単純に10年前の模倣犯を起こすとも思えねぇ…奴は何かどデカい事を企んでる。そんな気がする…」
「……お得意の勘か…でも…」
「……」
「…用心するに越したことはない」
「……その箱だ」
「…コホッ…コホッ…いつから触ってないのよ……ライフル?」
リコリコの地下室
武器庫の棚の上に置かれた木箱を千束は運び出した
「お前のだ、開けてみろ」
「…あ、鍵閉める?お客さん来るかも」
「いや、いいんだ…武器じゃない」
「…?」
卓袱台の上に木箱を置き誇りを拭くミカは、千束に木箱を開けさせた
「……着物?」
「お前の晴れ着だ。成人式にはちょっと早いがな」
「……」
呆気に取られる千束に、ミカは続けて言った
「……この着物はな、荘吉からの贈り物なんだ」
「…え?」
「将来、千束が立派な女性になったら、これを着させて欲しいと……」
「…っ!」
「お、おい!」
「…ん〜〜〜!!!」
ミカに抱きつく千束は、しばらくその姿勢を変えなかった
「……どう?」
「あぁ、ちゃんと撮れてるよ」
着物に着替えた千束は、陽に照らされているのもあってとても綺麗に見えた
「いやそうじゃなくて!先生の感想を訊いてるのぉ!」
「あぁ勿論素敵だよ!すっかり、大人の女性だな」
「えへへ〜ありがとう先生!」
「…お前に感謝されるような事など、何も出来てないさ」
「またまた〜…私に名前を付けてくれたのも先生だし〜銃を教えてくれたのも〜この店も〜…たきなと出会えたのも!何より、私の為にヨシさんを探してくれたのも先生じゃん!」
「……」
「あ!さっきの写真ヨシさんに送ってよ!それが良──」
「そうじゃないんだ!!」
「…っ」
突然声を荒らげるミカ
千束は普段温厚なミカが怒鳴る所を目の当たりにして驚きを隠せなかった
「…な、なに先生…大きな声出して……」
「……千束…シンジの事で、話す事がある」
「真島の車を捉えました」
「…始めろ」
「セレモニーを避けて、北側へ誘導。風都タワーへの他のルートは、全て封鎖!」
「…ひぇ〜…実際DAの仕事ぶりを見るとすげぇもんだな」
「……これが最強のAIシステム、ラジアータの実力か」
DAの仕事ぶりを目の前で体感する翔太郎とフィリップ
そんな二人に、楠木が近付く
「早速お前達にも出動してもらう。良いか、慈悲は無用だ…殺せるだけ殺せ」
「……それを決めるのは俺達だ。あくまで俺達の仕事は、真島を含むガイアメモリを所持する奴らを倒す事だ…殺すかどうかは俺達次第ってとこだな…」
「…勝手にしろ」
一方、風都タワーの制御室に潜入した真島の部下達
「…後は頼んだぜ…マイハッカ〜……」
「……この日の為のバックドアだ…ヒッヒッヒッ!」
真島やロボ太による作戦も進んでいた…
「…あの時…私がシンジにオペを頼んだのは、司令官としての利益の為だ。少なくともあの時はそうだった……」
『リコリスの現役期間だけ生きればいい』
『そういう事なら引き受けよう…だが、これだけは約束してくれ』
「……約束…?」
「……っ」
『…彼女を最強の殺し屋として育ててくれ』
「…だからシンジは、お前が最強の殺し屋になる為ならばと…一切躊躇わずお前にメモリを挿した」
「……嘘…うそうそ!だって…自分は人を助ける救世主だってヨシさん…」
「……っ」
千束の言葉に首を横に振るミカ
「……じゃあ…どうして?」
「言えなかった…もはや荘吉を忘れてしまったお前の中で、どんどん大きくなるシンジに対しての憧れは…いつ終わるか分からない命を支える力となっていった…!それはとても眩しくて…儚い」
「……先生」
「…っ…言った方が良かったのか!?お前の生き方は間違いだ…殺しを重ねれば、シンジはまたお前を助けてくれると……言えばよかったのか…!?教えてくれ千束…!」
頭を抱えるミカは、千束が居るにも関わず嘆いた
だが、一方の千束は冷静だった
「…ありがとう先生」
「……っ」
そして、彼女の口からはまさかの言葉が出て来た
「私に決めさせてくれて、ありがとう。それ聞いてたら、たぶん私は負けてた。そんで仕方なくリコリスの仕事してたと思う…んで、やな事とか辛い事は全部先生やヨシさんのせいにするんだ…それは嫌だわ〜うん、ないない」
「……」
「…私ね、一つだけ思い出した事があるの」
「……えっ…?」
「…荘吉さん…いや、キチさんの話」
「……その呼び方…まさか本当に…!?」
千束はカウンター席に手を置いて、机をなぞるように触れる
「…男の仕事の8割は決断だ。それ以外はおまけみたいなもん……翔太郎さんもよく言ってる、あの言葉」
「……あぁ…」
「…お前の人生はお前が決めろ。それは簡単な事じゃないし、勇気のいる事だ……だが、それでお前は自由になれる。そして自由になったら……お前の罪を数えろ…って…」
「……あぁ…」
あれは、リコリスとしての千束と荘吉が初めて出会った時の事だ
当時、まだゴム弾を使っていなかった千束は殺し屋そのものだった。だが、それを荘吉は良しとしなかったのである
「私はきっと、あの言葉があったから今まで自分を信じて生きてこられたんだと思う。でも、それはキチさんだけの影響じゃない。その環境と場所を作ってくれた先生と、時間をくれたヨシさんへの感謝は、今の話を聴いても全然変わんない。みんな、私のお父さんだよ……それが一番嬉しいって感じがする」
「……すまない…すまない…」
「ほら先生泣かないで〜」
涙を流すミカ
それを宥める千束
今の私の姿を荘吉が見たら、きっと嗤うのだろう
でも、それでもいいのだ
「先生こそどうなのよ!」
「…っ?」
「この千束はどう?好き?」
「…あぁ…あぁ!自慢の娘だ…!」
「……へへへ!」
今私の目の前には、こんなにも綺麗な花が咲いているのだから……
「それではこれより、風都タワー完成セレモニーのラスト!風車回転式を行います!カウントダウンと同時に、風都タワーの大風車が回り、同時に電波の発信も自動で行われます!それでは皆さん御一緒に!」
『 5!』
「…翔太郎…始まるよ」
「……あぁ…」
ハードボイルダーに乗り風都タワーを目指す二人
『 4!』
「……っ」
風都タワー完成セレモニーを警備する照井竜
『 3!』
「……っ」
風都タワー内に潜伏するたきな
『 2!』
「……フヒヒッ」
それを遠くから見るロボ太は、その時を待っていた
「 1!スタート!」
「……っ!?」
すると、セレモニー会場にある大きなモニターにノイズが走った
『……よぉ…愚民共』
モニターに映し出されたのは、仮面ライダーエターナルだった
『俺の名は仮面ライダーエターナル…ガイアメモリに命運を握られた哀れな箱庭の住人達を…解放する者だ』
「…真島…!何をするつもりだ…!?」
を確認した照井はすぐさま持ち場を離れた
『……』
変身を解除するエターナル、真島はカメラに向かって淡々と喋っていた
『今日は真実を話す為、集まってもらった…他の国がテロやら戦争やらでドンパチやってるのに、この国だけは平和そのもの。気持ちわりぃくらいにな』
「…見たまえ翔太郎!」
「…っ!真島…何考えてやがる!?」
「急ごう!」
「……クッ…あぁ…!」
『民度の高い国民だから?日本人ってすごーいってか?取り柄の無い奴に限ってカテゴリーに誇りを持ちやがる。テロは何度も起こっているのさ…隠蔽されてしまうだけだ。虚偽と誇張に塗れた平和の押し売り…汚点には蓋をしてしまう。この街にはそんな薄汚い平和に執着する連中が居るんだよ…俺はそれが気に食わない。だから…』
『「 ETERNAL!」』
『…変身』
『 エターナル!』
エターナルへの再び変身してみせる真島
そしてエターナルバレットを後ろのガラス窓に向け、発砲する
『…これと同じものを、街中にばらまいた』
「……1000本のメモリはこの為か…!メモリを持った民間人には関わるな!絶対に発砲するな!リコリスとガイアメモリの存在を炙り出す、それが奴の真の目的だ!」
「……ん」
真島の放送を見ていたサラリーマンが、さっきから気になっていたベンチの下にある紙袋に手を伸ばし、中を見た
「……これは…」
それはモニターに映っていた男が持つ小道具に似ていた
「そこのお前!それを捨てろ!」
「…えっ…いや、これは……」
「……」
サラリーマンが警察官の誤解を解こうとメモリに手を出した時
「…っ!」
《 MAGMA!》
男の意志とは関係なく、メモリが男の腕に挿さる
「うわぁぁぁあ!」
強制的に人体に挿されたガイアメモリによって変身したマグマ・ドーパントは凶暴性を増し、無差別に火炎弾を放射する
『さぁ心のままにソイツを使え!そして変身しろ!何をするかはお前ら次第だ!嘘偽りの無い真実の世界を、そ──』
「風都タワーからの電波、遮断完了しました」
「…司令、本部から連絡です」
「……っ」
DAのメインモニターに白髪の中年の男、DA上層部の虎杖が映し出される
『楠木君。これはどういう事かね?』
「情報操作は、ラジアータでどうとでも可能です。リコリスの存在は必ず秘匿されます」
『しかし君たちの存在を日本中に向けて示唆されてしまった…これは失態だな。錦木千束を何故使わん?』
「……っ」
『こういう時の為に飼ってきたんじゃ無いのか?』
「作戦立案は我々におまかせください!」
『楠木君、我々を甘く見ているのではないか?もう一度言う、錦木千束を使え。君にはそれしかない』
「……っ」
『…えー繰り返します、風都タワーがテロリストに乗っ取られ、ハイジャックされた模様です』
「……なにこれ…」
リコリコのテレビを付けた千束は画面に映し出された真島を見て驚愕する
「…おい!これは一体どうなっている!?」
「刑事さん!?」
「照井君!?」
リコリコに突撃して来た照井も、テレビを見る
「左とフィリップは!?」
「え?刑事さん一緒じゃないの?」
「……っ」
すると、立て続けにリコリコの黒電話が鳴り響くと同時に千束のスマホからも着信音が流れる
「…楠木か」
『千束に変わってください』
「……千束はちょっと今、手が離せそうにないんだが…」
「先生貸して」
スマホ野画面を見た千束はリコリコの受話器を取る
「千束です」
『今すぐ本部に来い。我々と合流し、風都タワーの真島を討て』
「……っ」
楠木が話す間、千束はスマホの画面をミカと照井に見せる
スマホの画面には椅子に縛り付けられ、脱力する吉松シンジの姿があった
『…お前が下手な動きを見せれば、こいつの命は無い。一時間で起爆する』
電話の相手はおそらく真島の仲間
『お前のようなリコリスが必要な状況だ。多くの命が掛かっている』
『お前のようなリコリスに加勢されると都合が悪い。こいつの命が掛かっているんだぞ』
『…誰か居るのか?』
「…い、いえ……」
すると、照井が受話器を取る
「DAの司令官だな、そっちには俺が加戦しよう」
と、受話器を戻す
『それでいい、風都タワーの最上階に一人で来い。誰にも見つかるなよ?ずっとお前らを見ているからな…!』ピッ
「……っ」
リコリコの外に何台も配置されたドローン
これでは無闇な行動は出来ない
「……罠だろうな」
「だからって見殺しに出来ないでしょ!?」
「…さっきも言ったが、シンジは……」
「先生を疑ってる訳じゃない…けど、ヨシさんに会って直接聞きたい!」
「…今や街中は市民が変身したドーパントで溢れている。風都タワーの麓までは、俺が連れて行こう」
「…刑事さん…!」
「…フッ…そうだな、風都タワーはたきなやフキ、それに翔太郎君とフィリップ君が守ってくれる」
「…うん!」
千束の頭に手を載せるミカ
千束は着物からリコリス制服に着替え、ミカも自前の戦闘用の装備を整える
準備が整った3人は、出陣に向け、覚悟を決めていた
次回 仮面ライダーW/L・R
「この状況をみて、二人と連絡つかないなんて…絶対変ですよ!」
「……あとは頼んだぞ、左」
「もっと沢山の情報が必要だ…」
「……なにか、嫌な予感がする」
「悪魔と相乗りする…僕はその勇気を振り絞る事が出来たよ」
「……決めたぜ、フィリップ」
第40話「Dの囁き/運命の決断」
これで決まりだ!