千束が連れ去られ、一夜が開けた
あの後、リコリスの存在を秘匿する為、DAがリリベルという存在を差し向けて来て、リコリスを始末しようとした
そこは何とかウォールナットの協力もあり、ラジアータは回復、結果的に街に流された映像は風都タワーで行われるリアルアクティビティショーの広告映像として情報統制された
ラジアータをハックしたロボ太は刃さんとマッキーによって逮捕され、リリベルは退散。結果的にリコリスの存在は秘匿された
だが、もちろん無念は残る
まず、照井が相手をしたエターナル基真島
真島に勝利した照井。だが奴はスカル・ドーパントの登場・攻撃により崩壊する風都タワーに巻き込まれ、逮捕に一歩届かず風都タワーを落下していったらしい
その後の消息は不明。DAも死体の捜査に明け暮れていた
そして最大の無念は千束だ
ウォールナットやラジアータ、フィリップや風都イレギュラーズの力を借りてもなお手がかりが掴めず、途方に暮れていた
「……ジャックの目的はなんだ…?何故千束を攫う必要がある…」
俺は様々な視点から物事を考察し、解決の糸口を探っていた
これはおやっさんから教えられた探偵テクだ
「……千束…」
第46話「Lの花束/ハーフボイルド探偵」
「……おぉ〜…」
これは、俺が喫茶リコリコに初めて一人で来店した話だ
「こじんまりとした外見…優雅に響くステレオ…この雰囲気……正に、ハードボイルドぉ…」
「いらっしゃいませ〜〜」
俺が入口で店の空気を吸っていると、裏から赤い和服を着た金髪の店員がやって来た
「…あれ?君は……」
「お兄さん初めての御来店ですか!?嬉しい〜な〜!」
「…え?」
最初は人違いかと思った
だが、その話し方とテンション、そして彼女から溢れる特殊な雰囲気は、すぐにピンと来た
間違いなく、あの事件で出会った少女だと
「どうぞ〜うちの店自慢のコーヒーで〜す!」
「あ、あぁ…ありがとう……美味っ!」
「へへ〜でしょ〜!」
だがあえて口には出さなかった
あえてと言うと勘ぐった感じに聞こえるが、実際最初は黙っていた。だが時が流れるにつれ、その事を忘れてい自分がいた
「この街にこんな良い店があったとはなぁ〜…もっとリサーチしておくべきだったぜ〜」
「おぉ〜お兄さんお目が高いね〜…ヘヘッ」
店を褒められた千束はとにかく嬉しそうだった
すると、カウンターの奥から中年の黒肌の男が出て来た
「…おや、お客さんか」
「先生〜聞いてよ〜お兄さんにお店褒められちゃったー!」
「はははっ…それは嬉しいね……フッ」
「……っ」
男は俺の目を見ると、ニコッと笑った
その笑顔には、何故だか初めてな気がしない、何か親近感のようなものが湧いてきた
「ここの店長のミカだ、よろしくな」
「あ、あぁ…よろしくな…あんたがここのマスターか」
「先生は凄いんですよー最初の頃のコーヒーなんてとてもじゃないけど美味しいとは……」
「千束、余計な事を言うんじゃない」
「は、はぁ〜い……」
ミカさんの地雷を踏む事を恐れた千束ちゃんは店の奥に消えて行った
「すまんな、あの子は昔からあぁなんだ…」
「ま、まぁなんとなく分かるぜ…俺も似たようなもんだったしな……ハハッ」
そんなぎこちない会話だったが、それがなんだか心地よかった
「…ミズキーホールを手伝ってくれー」
「えぇ〜なんでまた私が〜?……あ?」
上の階から降りてきたおそらく俺より年上な女性
「あんた誰?」
「あ、そういえばまだ名乗ってなかったな……鳴海探偵事務所ってとこで私立探偵やってる、左翔太郎だ…困った事があったらなんでも、この私にご相談を……」
「なーんだただのキザ探偵か」
「えぇ〜!?」
「え〜!お兄さん探偵だったの〜すご〜!」
「んふふ〜…まぁな!」
「あんま調子乗んなガキ!」
「ガ、ガキィ!?」
「普段はどんな仕事してるの?」
「まぁ普段は人探しや猫探し、猫糞被害とか…」
「だっはっは!あんた風貌の割に半熟ね!」
「半熟!?俺はいたってハードボイルドな探偵で…!」
「ハーフボイルドの間違いじゃなぁ〜い?」
「あ!あんたもうちの所長みたいな事言うのか!?」
そんな会話に一喜一憂しながらも、俺はこの雰囲気を楽しんでいた
そして、たきながリコリコに来て、あの二人がリコリスだって知った時は驚いたが…でもまぁ、そう考えるとこの一年はあっという間だったな……
「……ヘッ…懐かしいな…」
だからこそ、こんな所では終われない
例え千束が居なくなってしまう未来がやって来ても、千束には今を楽しむ権利がある筈だ
絶対千束を取り戻して、またあのメンバーで…リコリコを盛り上げて欲しい
「……こうなったら…やっぱり足で稼ぐしかねぇな…!」
俺は鳴海探偵事務所を飛び出し、街に出て捜索に当たった
近くで金髪の少女の目撃情報を探り、街中を練り歩いた
「ウォッチャマン!そっちの方はどうだ?」
「全然ダメっ!こんだけ探して見つからないなんて、あの子一体何者なの?」
「詳しい事は話せないが、とにかく俺たちの大切な人だ!頼む!人助けだと思って引き続き頼む!」
「…も〜わかったよ!」
道中でウォッチャマンに遭遇し現状報告を受けるも結果は変わらず
俺は死に物狂いで手がかりを探し続けた
「……はぁ〜…」
千束が居なくなって一週間
もう街の隅々まで散策した。それも何周も…
風都イレギュラーズのみんなも打つ手なしで捜査を諦めちまったし……どうしたもんか…
「こんな所で何してる、左」
「…照井…!」
とある神社の石階段の上で寝転がる俺を、照井が見つけた
「…そうか、まだ手がかりは出てこないか」
「あぁ…ここまで街を探して出てこねぇなんて……今までにないぞ……」
「……」
「…はぁ〜…どぉすりゃいいんだよ……」
帽子を深く被り仰け反る俺
それを見て照井が言葉を走らせた
「お前はそんな事で挫けるほど、ヤワな男だったのか?」
「…っ」
照井の言葉に、衝撃を受けた
「違うだろ?俺の知っている左翔太郎という男は、不器用ながらも前に進み、必ず事件の尻尾を掴む…そういう男だ」
「……だが、そんなの全然ハードボイルドじゃねぇ」
「それでいいのさ」
「…フィリップ!」
今度はフィリップがここに来ていた
「君は知らないだろう翔太郎〜君のそのハーフボイルドな一面に助けられた人物が何人も居ることをね」
「…え?」
「だってその通りだ。きっと君でなければ解決出来なかった事件が、幾つもある。ジャッカルから篠原沙保里を救えたのも、ウォーシップからウォールナットを救えたのも、全部君の活躍のおかげだ」
「だがそれは、俺だけの力だけじゃ…!」
「その通り、君だけの力では無い!」
「な、何が言いてぇんだよ…!?」
嘆く俺に、フィリップは問い掛けた
「僕達は二人で一人の探偵…そして、仮面ライダーだ」
「…っ」
「誰かと肩を並べ支え合う…お前たちは今まで、そうやって誰かを救ってきたんじゃないのか?」
「……照井…フィリップ…」
「思い出したまえ!君が今まで、どれ程の奇跡を起こして来たのか!」
「……っ!」
きっと俺だけじゃ出来なかった
でも、俺にしか出来ないこともあった
それをお互いに支え合い、補い合う
それが、仲間……
「ハーフボイルドでも構わないのさ、君が開けた穴は、僕たちが…僕たちが開けた穴は、君が満たしてあげればいい。もちろん、ハードボイルドを目指すのは君の勝手だけどね」
「……ハハッ…何言ってんだか…」
だんだん自分が馬鹿らしく思えてきて、俺は帽子を抑えながら笑った
「……よし、行くぜ…照井、フィリップ!」
「あぁ」
「あぁ!」
もう、俺が迷う事はないだろう
「おや、翔太郎君…フィリップ君に照井君も…」
「…よ、マスター」
「クルミは居るかい?」
喫茶リコリコにやって来た俺達は、クルミを呼び出した
「なんだ〜ボクは調べられるだけ調べたが、奴はなかなか尻尾を掴ませてはくれないぞー」
「いや、前にも言っただろう?必要なキーワードさえあれば、あとは俺の相棒がなんとかしてくれるってな」
「…あぁー」
「クルミ…彼女を探すのに、協力して欲しい」
「…願ってもない頼みだな。そういう事ならお易い御用だ」
リコリコの奥部屋のタンスの中
モニターを前にしたクルミはVRゴーグルのようなものを身に付ける
「よぉ〜し、準備出来たぞー」
「よし…あとは相棒、頼めるか?」
「もちろんさ」
フィリップはその横で目を閉じ手を広げる
「地球の本棚」へとダイブしたフィリップの前には無数の本棚が現れた
『知りたい項目は、ジャック・ドーパントの正体。そして、錦木千束の居場所』
「一つ目のキーワードはそうだな…やっぱり「アラン機関」だな」
フィリップの目の前に「Alan agency」というキーワードが浮かぶ
「地球の本棚」の本棚が移動し、少しだけ減った
一方クルミはネット空間にて情報を模索していた
以前アラン機関に接触していた経験を活かし、ジャックの正体を裏付ける情報を探っていた
「……っ」
「どうした…?」
すると、クルミが何かを見つけた
モニターに映し出されたのは、姿は物陰に隠れ見えなかったが、何者かが吉松シンジにハートメモリとスカルメモリをケースに入れて手渡している監視カメラ映像だった
「これっ…この影に居んのが、ジャック本人なのか!?」
「別のカメラ映像は無いのか?」
「ダメだ…どのカメラ映像にも奴の特徴を捉える物がない……だが、このカメラアングルは明らかに不自然だ…」
『…まさか、彼がジャックの力でカメラアングルを変え、容姿が映らないようにしたのか…!?』
「は!?で、でも相手は生身だぜ?それでメモリの力を使えるのか!?」
「思い出せ左、かつての組織の親玉…テラーに変身していた園咲琉兵衛も、ドーパントに変身することなく力の一部を発揮していた。奴にも、同じような特殊な力があるのだろう」
「た、確かに言われてみれば…!」
「驚くべき所はそれだけじゃない…」
「…えっ?」
俺が驚いていると、クルミが追い打ちをかけてきた
「この映像を何処で手に入れたと思う?」
「え?そりゃ、アラン機関のサーバーから……」
「いや、正解は…ラジアータだ」
「…っ!?」
『…何故ラジアータの中にアラン機関の映像が…?二つ目のキーワードは、「ラジアータ」』
フィリップの前に「Radiata」とキーワードが浮かぶ
更に本棚が減る
『まだ断定出来ない…もう少し絞らないと…』
「……」
何故ジャックは千束を攫った…?
ハートメモリが目的なら、奴の意図もまだ分かった
だが、ハートメモリが破壊され、普通の人間になっでもなお千束を攫うなんて……
《私の目的は…千束自身だ!》
奴の目的は千束自身……だが今の彼女に何がある…?
何か…何かある筈だ…
奴が千束を攫う理由のヒントが……
俺はとにかく千束との過去の記憶を蘇らせヒントを探った
《私はね、人の命は奪いたくないんだ》
《私はいつも、やりたい事最・優・先っ!》
《何が私の使命だったとしても、決めるのは私だから》
《…一つ…一つだけ、思い出した事があるの》
《…私は、結構幸せだった…出来れば誰かの役にたちたかったんだけど……》
《…命を粗末にする奴は嫌いだ!》
《……ヨシさんを…お願い!》
「……っ!」
千束は、本当にこの街が好きだった
この街に生きる、皆が好きだった
俺も、あの日この店が好きになった
千束やマスターやミズキの明るいやり取りにコーヒーの匂い、個性豊かな常連客、この店は俺を受け入れてくれた
「やーい半熟卵〜!」
「あっ!また言いやがったなぁ〜!?」
「…フフッ…でも私は好きだなぁ〜…半熟の卵」
「……えっ?」
「…だって、完璧すぎると…誰かと助け合えられなくなっちゃうじゃんっ?」
「……っ」
あの日から、この街を見る目が少しだけ変わった気がする
千束が遺したかった想い…
そうか…!
そういう事だったのか…!
「…フィリップ」
『…ん?』
「3つ目のキーワードは……」
「……」
「…左さん」
「…よ、たきな」
俺は以前たきなと話した高台の上の柵に体重を掛けて街を眺めながらたきなを待っていた
たきなが来ると、俺は近くのベンチに座り、たきなにも座るよう促す
「……その後はどうだ?たきな」
「…どう…でしょうか……」
俺の質問に答えること無く俯くたきな
疲れきり腫れた目に、更に前髪が掛かり暗い印象を受ける
「……千束の居場所が分かった」
「っ!?それ、本当ですか!?それなら私も…!」
「…悪いが、それは出来ない」
「……えっ…?」
勢い良く立ち上がるたきなを俺は鎮めた
俺はたきなを見ること無く説明を続けた
「千束を攫った奴はかなりの強敵だ。それに、この真実を知れば、君のプライドが傷付く可能性だってある」
「構いません!どんなに辛い事実であっても、千束を救えるなら…!」
「ダメだ…!」
「…っ」
俺の怒号に狼狽えるたきな
「……と、言いたいところだが…」
「…え?」
「来るかどうかは君が決める事だな、悪い」
「……」
俺の言葉に唖然とするたきな
そんな彼女を見て俺はクスッと笑ってしまった
「…昔さ、フィリップが俺たちの前から消えた時があったんだよ。戦いで力を使い果たしたフィリップが、最後の思いを掛けて命を燃やしてくれたんだ。でも、あいつは今この街にいる」
「……」
「…なぁ…奇跡って、起こると思わねぇか?」
「……えっ?」
「俺はいつか相棒が戻ってきてくれると信じて一年間戦い続けた…あの時の俺と、今の君には近いものを感じる」
「……左さん…」
「…お前も信じてるんだろ?千束が戻って来るのを」
「…はい…!」
今度はしっかりと返事をしたたきな
その目は、何かを決意した目をしていた
「…ふふっ」
「な、何笑ってんだよ…」
すると、たきなは急に吹き出した
俺にはその理由が分からなかった
「…いえ…左さん、やっぱりハーフボイルドですね」
「は、はぁ〜!?」
「だって、普通ならここで「危険だから来るな」、「これは俺たちの戦いだ」、とか言いそうな場面ですけど…」
「…映画の見すぎじゃないのか?」
「でも……ありがとうございます。私に決めさせてくれて」
「……あぁ…ま、ハーフボイルドだろうがなんだろうが関係ねぇ!俺は探偵…左翔太郎だ!」
「…はい、そうですね」
「……フッ」
俺の言葉に、たきなは微笑む
そんな彼らを、近くの木陰から本のページをめくりながら見守る人物がいた
「…どうやら、心配なさそうだね……フフッ」
彼もまた微笑み、明日への備えを進めていた
「……」
計画は至って順調だ
真島や吉松の奇行には少々踊らされたが、まぁそんなものは障害にもならなかった
10年…ここまで10年の月日が経った
だが、全てはこの日を迎える為の余興に過ぎない…
この街は既に私の手の中にある
きっと街の住民も私に感謝するだろう
新たなる街の、風都の誕生を……
「……っ」
男が一人で考えていると、後ろの壁から衝撃音がした
コンクリートの壁を突き破る音が建物構内に響き渡る
「……どうやら、私は君達を見くびっていたようだね」
「……」
「……」
「……仮面ライダー…!」
逆光に照らされたシルエット
左翔太郎とフィリップがそこには立っていた
「やっと見つけたぜ、ジャック・ドーパント……」
「一連の事件を影から支持し、僕達にも真島やアラン機関と戦うように仕向けた…諸悪の根源!」
「それがあんただ…!」
「……フフッ」
次回 仮面ライダーW/L・R
「10年もの間千束の中で眠っていたハートメモリは、千束の身体を蝕んでいった…」
「若菜姉さんと、同じように…!?」
「私は千束の力で、新たなるガイアインパクトを引き起こす!」
「それがあんたの本当の目的か!!」
「だったら答えは一つだね、翔太郎」
「…あぁ」
「…なんなんだお前達は!?」
「……俺達は…」
「……僕達は…」
「「二人で一人の…仮面ライダーだッ!!」」
第47話「Lの花束/開花する才能」
これで決まりだ!