がーりっしゅみみっきずむ!!!〜俺の彼女はどこにでもいてどこにもいないです。見つからないから〜   作:囚人番号虚数番

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教室までも来る必要があるだろうか

「……」

 

「おはよう、カワサキ。今日もいい天気だ」

 

木目さんと付き合い始めた後日、放課後は連絡先を交換した以外特に何事もなく解散した。放課後も出会う事なく連絡もあまりしていないので、俺は相変わらず木目さんの事を詳しく知らないままだ。

 

そして今朝、いつも通り朝起きて登校をしている最中だった。ここ2日の事を考えながら通学路を歩いているとゴミ捨て場の冷蔵庫が目についた。普通に考えるのであればただの粗大ゴミであるだろう。だが流石に3回目となると嫌でも気になってしまう。

 

ふと気になった俺は再び冷蔵庫の前に立ってみた。すると中から微かに音が聞こえてくる。誰かがいるようだ。しかしそれはどう考えても普通ではない状況である。

 

俺は周りを確認し、恐る恐る扉を開くと中には一人の女の子が入っていた。膝を抱えて座っているその少女は俺の存在を確認すると目を丸くして驚いているようだった。

 

その直後の会話が上記に記した物である。

 

「ああ、驚かなくていい。最近の冷蔵庫は簡単に中から開く。この型番なら恐らく平気だ」

 

「あ……そっか。そうなんだね……。えっと……何で?」

 

「それを答えるのは3回目だ。それより早く学校に向かおうか」

 

俺達はふたりで通学路を歩く。俺はつい昨日まで恋愛沙汰とは無縁な存在だった。ゲームやラノベでは多少なり学習している。とはいえ彼女など夢のまた夢のような話であった。

 

それが急展開を迎えてしまったのだ。隣には美少女と言って差し支えないような容姿の少女が居る。しかし余り緊張はしない。どちらかと言えば不気味さの方が上だ。

 

何故彼女が住所を教えていないのに俺の家を知たのか。その理由を聞いていないからだ。それを聞くまでは迂闊に信用する事はできない。

 

「何で俺の家が分かったんです?住所教えてないよね」

 

「少し後を付けた。一度行った方が覚えやすいし潜伏には自信がある」

 

彼女はさらりと恐ろしい発言をした。まさかそんな事までしてくるとは思わなかった。ストーカーという単語が脳裏に浮かび上がる。せめて住所を教えて欲しいと言ってもらえば必要に応じて教えてあげたのだが。まぁもう過ぎた事は仕方がない、彼女には後で住所を送っておこう。

 

それにしても冷蔵庫の中で寝ていたと言うのに彼女の髪の毛は一切汚れておらず艶やかなままだった。冷蔵庫の中の環境でどうしてそう綺麗な髪を維持できるのだろうか。謎だ。着ている服は相変わらず崩れているけれどそれ以外はモデルさん、というよりキッズアイドルの様な出立ちである。

 

「? 私がそんなに気になるか」

 

「いや別に。一応彼女ではあるけど知らない事ばっかだから色々考えてた」

 

「そっか。てっきり私に見惚れでもしたかと期待していたんだけどな……」

 

確かに可愛いがそこまで意識する程ではないと思うんだよな……。見た目はともかく中身がおかしいし。

 

「結構可愛いとは思いますよ。小さくて小動物感は誰にも負けてません」

 

「ははは、彼氏らしく良いこと言ってくれるな」

 

セリフこそいつもと変わらないが声色は嬉しそうだ。顔も少し赤くなっている。きっと俺が思った以上に喜んでいるらしい。ただ褒め言葉を口にすると恥ずかしくなってきた。今になって照れくささが湧き上がってきたのだ。

 

「しかし君からばかりというのは不公平だ。私からも一ついいかい?」

 

すると彼女は俺の腕を引っ張り腕を組んできた。いきなりの行動に驚きつつも心臓はドキドキと鼓動を上げ始める。密着した部分から伝わる温もりに頭が沸騰してしまいそうだ。

 

「ふむ、やっぱり君の体温は高いな。冬場は助かりそうだ」

 

「今だけですよ。今は5月ですし暑いですよね」

 

「私は平気だよ」

 

……これは慣れるしかないのか。いや無理じゃないかこれ。だって女の子特有の甘い匂いとか凄いし……なんか凄く柔らかさを伝えてくるし……胸なんて小さいけど殆ど当たってるし……!

 

「どうだい、私の体温も伝わってくるだろう?」

 

どうやら木目さんも同じ様にドキドキとしているようだ。心音すら聞こえる気がする程の距離なので当然の事ではあるが……。

 

それからはお互い無言のまま通学路を歩いた。周りの視線はやはり感じたが温かい目か犯罪者を見る目で見られているかのどちらかだった。木目さんの容姿も合わさり、俺は周りからはロリコン扱いされているかもしれない。

 

それでも俺達の間に初めて普通のカップルっぽい空気が流れた。俺達の足取りは徐々に軽くなっていくのを感じるのだった。

 

ー--

 

校門前で彼女と別れ教室に入る。生徒らの声が騒がしく、俺は搔い潜り自分の席に座る。相変わらず教室はいつもこうだ。皆友達同士やグループで固まっており俺みたいなぼっちが近寄れる場所ではない。俺は机の上で突っ伏すようにして目を瞑った。

 

……が、こんな俺にも友人の一人くらいいる。今日は珍しく一人だった様でこちらに向かって歩いてくる。

 

「ようおはよう、元気してたか」

 

「あぁ……お陰さまでな……。てか昨日は来なかったけど何かあったのか?」

 

彼は同じクラスの佐藤昭(さとう あきら)、俺のいとこでイケメンで身長も高く女子から人気があり、おまけに性格も優しい為か男からの人気もある。素行には少し問題はあるが何よりも面白い奴だ。俺とは何もかも正反対な奴だが俺とよくつるんでいてゲームもよくしている。

 

「まー色々と忙しかったんだわ、気にしないでくれ」

 

「忙しいってどうせ遊びだろ?」

 

「いや、お前の頼み事についても絡んでくる」

 

どうやら本当に何かあるようだ。俺の頼みで思い当たるのはまず間違いなく木目さんについてだ。彼女には不明な点がまだまだある。俺は佐藤から詳しく聞いてみることにする。

 

「あぁ、あの子な。陽キャ組の間でも噂になってたぞ。有名というかあまりにも不明すぎて存在が謎の塊扱いされてるんだ。彼女は一言で言えば不思議ちゃんかな」

 

やはり俺と同じ様な評価を受けているようだ。俺としては彼女がただ可愛いだけの少女にしか見えないのだけど。

 

「彼女に関しては真面目に謎が多くてさ……学校にはいるけど誰も見てないし、人前に出ては一人で過ごしてる。そしてたまに来る時は必ずと言って良いほど話題になっている。まぁそういうこと」

 

「誰も見てないのは当たり前だろ」

 

「あれ、お前なんか知ってんの?」

 

しまった口に出してしまった。彼女は冷蔵庫の中に居たんだから人目につく訳がない。だが調査のお礼も兼ねてここ数日の彼女の奇行の一部を彼に教える。

 

「単に隠れてて見つからなかった?流石にそれはねぇだろ。嘘だとしてももう少しマシな事言いそうじゃん」

 

「いやマジなんだって。俺だって信じたくは無かったよ……」

 

すると突然背後から誰かに肩を叩かれる。振り向くとそこにはいつの間にか木目が立っていた。

 

「おはよう、君の教室はここだったか。噂話の最中失礼」

 

どうやら会話を聞かれていたらしい。しかしそんな事は些細な事だと言わんばかりに佐藤は彼女に話しかける。

 

「君が木目?」

 

「そうさ、木目美々とは私だが」

 

木目は俺の机に腰掛けながら答えた。

 

「おお、噂通りの美幼……美少女じゃん。なぁなぁ今度一緒に遊ばない?」

 

「佐藤、悪いが私には既に彼氏がいる。それに遊ぶにしても私と君では趣味が合わないだろう」

 

木目の言う通り佐藤と木目では真逆の存在だ。恐らく話が合うとは思えない。しかし彼は遊べないことよりも彼女に彼氏がいる驚きが勝ったらしい。彼の顔つきが変わる。

 

「彼氏持ちかー。彼氏ってどんな感じの?」

 

ああ、これは完全に「狩る者の目」だ。女性と話す時に使うナンパ専用のモードだ。彼がこうなると大抵彼は相手の素性を知ろうとしている。同時に女の子をナンパするモードでもある。出会って二、三日でも寝取られるのは悔しいな……

 

「ふーむ、実は私もまだよく知らないんだ」

 

「そうなのか!なら今度俺と遊ばね?」

 

「残念だがそれも無理だ。何故ならば私は彼と付き合っているからね」

 

木目さんが俺の腕を掴み自分の胸に押し当てる。柔らかい感触が腕全体に伝わり、教室中が騒つく。男子は嫉妬の目で、女子は羨望の眼差しで俺を見つめている気がする。

 

俺もかなり恥ずかしいのだが、当の木目さんは顔を赤く染めながらも堂々とした表情でいる。

 

「ッ……え?え!?彼氏ってお前なの!?」

 

「そうだとも、私達はラブラブカップルだ」

 

「ちょっ!木目さん!?」

 

「そっかー……そりゃあ仕方ないか……。うん、諦めるわ……。川崎、ごめん。二度としないから許してくれ」

 

「ま、世間話くらいなら後でしようか」

 

佐藤は申し訳無さそうに俺に謝る。まあ彼は意外と誠実な面もあるし教えられた物であった為事故としよう。代わりに彼には少しの羨望と多くの期待の混じった視線を送る。

 

「おい!どういうことだよ!?何でお前がこんな奴引っ掛けてたんだ!?」

 

「ちょちょちょ!?揺らさないで揺らさないで!」

 

佐藤に肩を揺られてさらなる詳細を問われる。

 

「どこまで進んだ!?手は繋いだ?ヤったか?万年童貞のお前がどこまでできた!?」

 

「っても出会ってたった3日だぞ……まだ何もしてない。あと首締まって死ぬほど苦しいからちょっと離せ!」

 

「彼には私の趣味に理解を示してくれたからな。私の協力者だよ。で、どこまで進んでいるかだって?」

 

彼女は立ち上がる。と、同時に予鈴が鳴り彼女は教室から出る。そして彼女は去り際に一言俺らにこう残した。

 

「彼とは既に何度か体を重ねている」

 

「木目さん!?」「っおいク……川崎ぃ!」

 

最後にそれを伝えて彼女は遂に立ち去った。残された俺らは硬直、静止、二人で目を合わせる。10秒ほどしてやっと事情が呑み込めた結果俺らは同時に叫んだ。

 

「流石にそれはやり過ぎだろこんの馬鹿野郎おおおおおおおおおお!!!」

 

「体を重ねたって物理いいいいいいいいいいい!!!」

 

……朝の教室に悲痛な叫びが響いた。

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