がーりっしゅみみっきずむ!!!〜俺の彼女はどこにでもいてどこにもいないです。見つからないから〜   作:囚人番号虚数番

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趣味を理解してくれるミミック

午前中は酷い目にあった。あの後弁解をしてもらおうと木目さんを探しにあちこち走り回った。しかし校内をいくら探し回っても見つかることなく全て徒労に終わった。彼女が入れそうな空間も探してみたがどこも外れ、不思議とか謎が多いとか噂されるのもよく分かる。

 

佐藤にはどうにか説明をして納得してもらえ、単に木目さんが彼女になっただけだと認識してくれた。冷たい目はされたけれどあんな誤解され続けるよりは遥かにいい。

 

そして時間が経過して放課後、俺は一度も彼女を見かけることがないまま部活に向かった。古い部活棟に入り、奥の部室の扉を開ける。中にはいつものように先輩が一人、椅子に座っていた。彼女は俺を見ると「今日も一日お疲れ様ー!」と妙にハイテンションで声をかけてきた。俺はそれに軽く返事をする。彼女はノートパソコンで何か作業をしているようだ。

 

彼女は望月理沙(もちづき りさ)、このゲーム情報部の部長だ。二年生の先輩である。基本明るい性格で誰からも好かれるような人だ。顔も美人で身長も高い。だがしかし俺と彼女しか部員がいない小さな部活でのゲーム作成を好む変わった人だ。人間関係が不得意な俺も彼女とだけは仲良くできる。

 

俺が定位置である部屋の隅に行くと、先輩が話しかけてくる。

 

「噂には聞いてるよーなんか彼女が出来たんだって?」

 

「ええ、つい先日。誰から聞いたんですか?」

 

「多分佐藤の筋だと思うよ」

 

あの野郎……まあ、彼からも派手に情報を探すと噂になるとは言われていたし時間経過を期待しようノートパソコンを起動しながらそう考える。

 

「それで?どんな子なの?可愛い?」

 

興味津々といった様子で先輩が尋ねてくる。この人は他人の色恋沙汰が好きなのだ。俺はため息をつくと諦めたように答える。

 

「先輩が好きそうな子です。探すのには苦労しますけど」

 

するとパソコンが立ち上がってきた。画面を見つめながらキーボードを操作していく。

 

「へぇ~!その子私にも紹介してくれないかなぁ。なんてね」

 

冗談交じりに先輩が言ってくるがその言葉を聞き流しながらゲームの作成を進めていく。

 

「俺も紹介が出来たらしたい所ですよ。前から『高校入学したら彼女の一人くらい作れるといいね』って言ってましたしね」

 

「でもこんなに早く後輩に彼女が出来るとはね。じゃあさ今度二人でどこか遊びに行ってきなよ!きっと楽しいと思うよ」

 

「そのお誘いも中々きっついんですよ。なにせ既読は付かない上に本人も見つからないんです」

 

「んー?大変そうだね。私も探すの手伝おうか?」

 

「いや、大丈夫です。自分で見つけます」

 

「そっか。頑張ってね」

 

それからしばらく会話はなくお互い作業を続けた。やがて先輩が口を開く。

 

「ああそういえば私にも嬉しいニュースがあるんだ。何と!部員が1人増えます!」

 

突然の言葉に俺は手を止めて先輩の方を見る。先輩は嬉しそうに話を続ける。曰くこの廃部寸前であるこの部活に遂に俺以外にも部員が増えるらしい。

 

しかし部活から時間が経っても人の気配が無い。元々来客など無いに等しい部活であるから足音すらしないのなら居ないのと同義である。

 

「うんうん、正に問題はそれなんだよ。休憩ついででいいから探してきてくれない?」

 

彼女は少し困った顔をする。俺もまだ入学してから日は浅い。部活での技能もまだまだだし今も練習をしていた最中である。

 

「分かりました。今から探してきます」

 

先輩のお願いを聞いて立ち上がると、彼女は笑顔で見送ってくれた。

 

「宜しくねー後輩君!早く新しい子にも色々教えてあげないとだから早急にね!」

 

「で、その新入部員って誰ですか?先輩の前で言うのも失礼ですけどこの部活に入るって相当変わってますよね。一体どんな人ですか?」

 

「美々って子。入部届は先生経由で貰ったから顔までは私も知らないの」

 

「……木目美々?」

 

「おーそうそう。その子だよ。何だ、もしかしてどこかで知ったの?」

 

絶句、まさかそんな偶然あるのか?彼女には俺についての情報はおろか部活など話題にもしていない。本当に何もかもが不明で不気味な人だ。しかしこれはチャンスだ。上手く行けば木目さんと会えるかもしれない。

 

「知ってるも何も、そいつが俺の彼女です」

 

「へー……えっ本当に!?どんな子なの?」

 

「……変な奴です。あと実は彼女っていうのも少し怪しいです」

 

俺は部室を見渡す。物は少ないながらゲーム作成の為の資料や器具、その他私物が散らばり汚い。総合的な死角も多く彼女がここに隠れている可能性は十分にありえる。

 

適当に物を退かしながら木目さんが居そうな空間を探す。しかし望月先輩は探すと言いつつ部屋の中を探し出した俺を不思議そうに見ている。パソコンに入力する手を緩めて珍しい物を見る目で俺を目で追っていた。

 

背中を見られつつ部屋を漁る。すると部屋の隅に布を掛けられた謎の箱を見つけた。RPGに出てきそうな宝箱であり、木材に似せた段ボール箱であった。

 

「また参考資料ですか?」

 

「いや、演劇部が要らないって倉庫代わりに置いてった。後で捨ててくれるらしいからしばらく放置ね」

 

「因みにいつ置きました?」

 

「昨日君が帰った後にね」

 

……またこの人変な仕事請け負ってるよ。物が増える理由にはこういう事情もある。しかし木目さんの行く宛があるのなら開けずにはいられない。

 

「あ、それ気をつけてね。結構重いから」

忠告を受けつつも俺はゆっくりと蓋を開ける。

 

「今朝ぶりですね。木目さん」

 

中には木目さんが入っていた。そして目が合う。彼女は俺を見て一瞬驚いたような表情を見せるとすぐにいつもの顔に戻る。まるで最初からそこにいたかのように。

 

「やぁ。存外に心地のいい宝箱であった」

 

俺の質問に答えず彼女は挨拶をする。木目さんは宝箱に横向きに膝を抱えて丸まっていた。小さな箱にすっぽりと隙間なく入る彼女は見た目的にも収まりがいい。どうやら機嫌は良いようだ。

 

「何してたんですか?こんな所で」

 

すると彼女の口元に笑みが浮かぶ。

 

「これから君には彼氏として私の趣味に付き合あわせるんだ。だから私も歩み寄らなければと思いここに来た次第」

 

「彼氏……まあ、趣味を理解してくれるのはありがたいですけれどゲーム好きですか?」

 

「古い作品のみだが多少の教養はある。プログラムは素人だから今から学ぶことにするよ」

 

「そんな楽観的でいいんですかね……」

 

相変わらず木目さんの自由度は常識はずれである種破天荒だ。宝箱に潜んでいた事といい、やはり彼女は普通の感性を持っていないのだろう。見方によっては彼女自身がシューリズムの化身みたいだ。

 

「それよりカワサキ、私を起こしてはくれないか?」

 

言われて俺は木目さんに手を伸ばす。

 

「何でまた?」

 

「あまりに心地が良くて宝箱から出る事が出来ないんだ。もし蓋を閉められでもしたらずっとここに閉じ込められたままになりそうだ。助けてくれないか?」

 

彼女は両手を広げる。その目は期待で輝いていた。仕方ないので俺は彼女を引っ張り出す事にした。しかし狭い。とてもじゃないが自力では出られそうにない。

 

「せーのっ!」

 

掛け声と共に引っ張ると、木目さんは俺の胸に飛び込んできた。勢い余って二人とも倒れる。そのまま木目さんは俺を押し倒したまま離れようとしない。

 

「ちょ、ちょっと木目さん!どいてください」

 

「ん?ああ、ごめん……って君は誰だい?」

 

彼女は素直に俺の上から退いて俺も視線を上に向けると望月先輩が生暖かい目でこちらを見下ろしていた。

 

「いやー青春だねぇー。先輩も後輩の恋愛が成就して嬉しいよー」

 

「ち、違いますって!あ、いや正解だけど!正解だけどそんな目で見ないで!」

 

慌てて弁明する俺に対し、木目さんは首を傾げる。

 

「違うのか?それともまさかあれだけ私に踏み込んでおいてしらを切るつもり?」

 

「木目さんも変なこと言わなくていいですからっ!」

 

俺は急いで起き上がる。そして木目さんの腕を引っ張って立たせた。そして彼女を椅子に座らせて先輩に木目さんを紹介した。

 

「彼女が新入部員で、この際言いますよ、俺の彼女です」

 

「木目だ。彼と共に世話になる」

 

木目さんは堂々と自己紹介をした。先輩は彼女をまるで愛玩動物のように見つめる。

 

「へー、君があの美々ちゃんか!私は望月、よろしくね」

望月先輩は笑顔で手を差し伸べて彼女も応じる。しかし望月先輩は俺の方を見るとニヤリと笑う。

 

「それで、二人はどこまでいったのかな?私としてはキスまで進んでて欲しいんだけど」

 

「いやだからそういうんじゃありませんって!」

否定する俺に対して、今度は木目さんが不思議そうな顔で尋ねてきた。

 

「彼には私の趣味に付き合ってもらっている。ああ、君が期待しているような物ではない」

 

木目さんは冷静に答える。しかしそんな事を言われるとこっちが恥ずかしくなる。

 

「えっと、まあ、そういう訳でして……」

 

「じゃあ川崎のどこが好きなの?」

 

先輩は木目さんに詰め寄って質問をする。木目さんは少し考えて答えた。

 

「身体」

 

「………え"!?」

 

瞬間、部室の空気が凍る。確かに始めて合った時から妙に距離が近いと思ってはいた。だがその言い方はあまりにも語弊を招くのでは。先輩は誤解をした瞬間に頭が沸騰し顔を赤らめる。しかし当の本人は至極真面目な顔で淡々と続ける。

 

「このゴツゴツした男の体と観察眼、非常に魅力的だと思わないか」

 

彼女はそう言うと俺の手を握った。それはもうガッチリと掴んで離さない。その言葉を聞いて俺は自分の腕を見る。木目さんはそんな俺の様子を見つめて満足げに微笑む。

 

「……変態」

 

望月先輩の言葉が胸に刺さった。

 

「な、違うから。そういうのじゃねええええええ!!」

 

「あっはっはっはっは!」

 

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