がーりっしゅみみっきずむ!!!〜俺の彼女はどこにでもいてどこにもいないです。見つからないから〜 作:囚人番号虚数番
「ははは!隠れるのが好きなんだ!不思議な子って噂されてたのは君だったのね」
物だらけの机を片付けて望月先輩は木目さんに話しかけている。木目さんは宝箱の中に入り、それを望月先輩が興味深そうに眺めていた。
「私、箱の中に入るのが好きだ。こうやって狭い所に入ると落ち着くんだ。安心感がある」
「そうなんですよ先輩。だからもう振り回されてばかっかりなんです」
「いいじゃん面白くて。ミミックー、お茶とお菓子いる?」
「菓子はいらないが茶は貰おう」
木目さんは宝箱から出てきてテーブルにつく。そして先輩は木目さんに紅茶を淹れて渡す。先輩は木目さんの奇行を気にせず軽く片付けた。その上もう彼女に変なあだ名を付けているし完全に気に入っているらしい。
しかしネーミングは最適だろう。ミミックとはゲームにおける宝箱に擬態する敵の一種だ。宝箱の中や箱の中、たまに八頭身だったり狭すぎたりする。共通点は容器の中に体の大部分、あるいは一部が入っていてトラップのような扱いをされている。
同じように彼女は好んで閉所に体を仕舞い、誰に見つけられるでもなくただその中で孤独に安息を感じている。その様はまるで人間から隠れ虎視眈々と獲物を魔物なのかもしれない。俺からしたら単に閉所をこよなく愛する小動物にしか見えないけど。
……もっと直接的に表現すれば俺との接触を好む点からゴンズイとかが適切だろうけど。
「あ、そうだ木目さん、せっかくだし一緒にゲームでもやりませんか?」
俺は棚を漁りながら適当なゲームのデータを探した。確か前に作って保存したまま放置していた奴がどこかにあったはずだ。すると先輩もそれに便乗して提案してきた。
「いいねー、それなら部活動の紹介も兼ねて一石二鳥」
先輩も乗り気だ。しかし木目さんは申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「すまない、実はプログラムだけてなくゲームにも疎くて」
「え?マジですか?」
俺は驚いて思わず聞き返す。
「ああ、今までの人生でその手の娯楽はあまり嗜んだことはなくてね」
木目さんは遠い目をして呟く。
「そっかー、じゃあ私が教えてあげるよ!」
先輩は明るく笑いかける。木目さんも笑顔で応えた。
「ありがとう。是非お願いしたい」
こうして俺達は3人で遊ぶことにした。俺は昔作ったゲームのDVDROMをパソコンから呼び出す。そしてそれを使って簡単なアクションゲームを起動した。先輩はそのデータを見て首を傾げる。
「ん?これ結構古いやつだね。初めてみた」
「はい、更新日的に先輩が入部する前からあるやつですね。条件はみんな同じだからいいと思って」
先輩はコントローラーを持ち、操作方法を木目さんに教える。木目さんは真剣な眼差しで画面を見つめる。
「よし、これで準備オッケー。早速やってみようか!」
先輩が合図を出すと木目さんはゲームを始める。
「えっと、これはどうすればいいのかな?まずはこのボタンを押すのか?」
「そうです、それで敵が動きます。後はタイミングよく攻撃ボタンでダメージを与えてください」
ROMと物理的に同封された仕様書に書かれた情報をもとに説明をする。木目さんは必死に操作を覚えようとしていた。しかし、やはりと言うべきか、彼女はあまりこのゲームに慣れていないようで上手くいかない。
「えっと、次は……あれ?」
木目さんはキャラを敵にぶつけてしまう。当然、敵の反撃を受けてダメージを受ける。
「うわっ!?」
彼女は声を上げて驚く。プレイモあまり上手ではないしここは一度俺と先輩でクリアチェックをしておいた方がいいかもしれない。そう思って俺は先輩の方を見る。しかし、先輩の様子がおかしいことに気付く。彼女は画面に釘付けになりながらも口元を緩ませてニヤついていた。
そして、次の瞬間、彼女は急に叫び出した。
「あぁ!!この木目ちゃん可愛い!!」
木目さんは驚きの余り体をビクッと震わせる。俺は彼女の反応を無視してそのままゲームの指示を続ける。が、先輩は木目さんに抱きついて頬ずりを始めた。木目さんは突然の事に固まっていた。
「先輩ついに壊れました?」
「ちっがうよ!だって可愛すぎるじゃんこんなの!ねぇミミック、私の家来ない?ずっと大切にしてあげるからさ!」
木目さんは先輩の言葉を聞いて苦笑しながら答えた。
「はは、お断りさせて頂こう。」
ーーー
木目さんがゲームオーバーとなり次は先輩がプレイする番になる。彼女は元からゲームセンスがある方で先人の作ったゲームをテキパキと後略していく。はっきり言ってこのゲームの出来はあまり良くはない。妙な慣性が乗りゲームバランスも微妙だ。そんなゲームの構造の考察を呟きながらクリアしていく所は流石と言える。
画面の方は一段落、リザルトが表示され何とも言えないスコアが表示されていた。そしてコントローラーを俺に渡す。今度は俺の番らしい。木目さんは俺の隣に座り、じっと見つめてくる。俺はその視線に緊張しつつスタートボタンを押した。
そして、ゲームは始まった。最初のステージは敵の動きも遅く、簡単にクリアーできる。俺は特に考えることもなく適当にゲームを進めていた。
しかし、中盤に差し掛かった辺りで事件が起きた。それはゲームではなく現実の話で。木目さんは俺の服の袖を掴んでくる。その行動に俺はドキッとした。そして彼女は顔を赤らめつつ俺の耳元に囁いた。
「君、予想以上に上手なんだな」
俺は顔が熱くなるのを感じた。恐らく真っ赤になっているだろう。
「あの、集中力が乱れるので止めて貰ってもいいですか……」
木目さんはクスクス笑いながら謝った。
「すまない、少し悪ふざけが過ぎたようだ」
その後も俺は動揺しながらも何とかプレイを続け、ステージ最後のボスに辿り着く。先輩はここまでを涼しい顔で攻略していたけれどこの操作性と難易度で良くできたと感心する。
俺は慎重に操作を行い、敵の攻撃をかわす。しかし、ここでミスをしてしまった。敵の攻撃が当たり、体力ゲージが削られていく。俺は焦りながらも操作を続ける。しかし、そこで先輩が動いた。彼女は2つ目のコントローラーを接続しコマンドを入力すると2Pとして乱入してゲームを進めたのだ。
「先輩!?何してるんですか!?」
「起動前のメモファイルにあったからね。手伝うよ!」
俺は慌てて止めるも時すでに遅し。先輩は操作を始める。
「まず足に3発、その後頭に総攻撃!いいね?」
「え、あ?「Let's GO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!私は後ろから襲うよ!」
彼女はボスの背中に回り込んで部位を破壊する。ボスはのけ反り大きな隙が生まれる。成程、だから足なのか。俺はボスの足に接近し強攻撃を3発叩き込む。するとバランスを崩したボスはそのまま倒れ込んだ。
「先輩、行きます!」
「OK!頼んだよ!」
そしてすかさず頭部に最高火力の溜め攻撃を当てる。先輩も更に追い打ちをかけるように大技を放った。
「よし、これで終わりだ!」
ボスは断末魔を上げるとそのまま倒れた。画面にはリザルトが表示される。ランクは上から2つ下、前半のグダグダした攻略のせいでスコアは低いが先輩とのボス攻略が大きく、逆にここで抑えられたと言える。俺はホッと胸を撫で下ろすと同時に先輩に感謝を述べた。
「ありがとうございます先輩。正直助かりました」
先輩は満足そうな表情で答える。
「どういたしまして。でもまだ油断はできないよ?だって……」
あ、これは不味い。そう思った時には既に遅かった。先輩を止める前に彼女は俺を抱き寄せた。
「やったああああ!ここまで上手く作戦が進むだなんてさっすが私達のチームワーク!」
「……っつ!……っつ!!」
俺は声にならない悲鳴を上げ続ける。彼女の豊満なバストが俺の顔に押し付けられる。男を刺激する柔らかな感触と甘い匂いに脳みそが溶けそうになる。だが木目さんと大きく違うのは胸のせいで俺の呼吸器の大部分が塞がれているのだ。先輩は俺の反応を見て楽しんでいるのかより強く抱きついてきた。
「あれれ~もしかして私に興奮しちゃってるのかね?だったらもう少し楽しんでおかなきゃね。うりうり~」
木目さんはそんな俺たちの様子を見ながら呆れた様子で呟く。
「全く、仲が宜しい事で」
ー--
ゲームを一通り楽しんだ俺達は結局プログラムの字すらなく今日の部活を終えた。俺はゲームやROMを片付けながらいつの間にか持ち込んでいた自身の荷物を纏める木目さんに話しかけた。
「今日は色々あったけど、本当にありがとな」
木目さんは首を横に振る。
「礼を言うのはこちらの方さ、まさかこんなにも楽しい時間を過ごす事ができるとは思わなかったよ」
木目さんは笑顔を浮かべる。しかし彼女は少し不満げに見えた。
「だけど、君はまだ私の事を信用していないみたいだね」
俺は思わず苦笑する。
「まぁ、それは仕方ないんじゃないか?初対面であんな事されたら警戒するのは当然だと思うぞ」
「むぅ、確かにそれは一理ある」
彼女は顎に手を当て考える仕草をする。
「しかし、そうでなくとも今日の君はいただけないぞ」
彼女は荷物を持ち俺に近づくと俺の首筋を指でなぞった。俺は背筋に悪寒が走る。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は別に何も……」
彼女は俺の言葉を遮り話を続ける。
「君は気づいてないだろうが、実は妬いているんだぞ」
俺は彼女の言葉の意味を理解するのに数秒かかった。そして理解すると同時に顔が熱くなるのを感じた。
「お、おい、それってどういう意味だよ!?」
「そのまんまさ。君と先輩の距離感を見ていて少しモヤっとしたんだよ。これじゃまるで私が嫉妬深い女みたいじゃないか」
彼女は恥ずかしくなったのか顔を赤らめる。そして誤魔化す様に話題を変えた。
「と、とにかくだ。これからはもっと仲良くしてくれよ?じゃないと私も寂しいし、それに……」
彼女はそこで言葉を詰まらせる。俺は続きを促す。
「どうした?」
彼女は意を決したように口を開く。
「君が思うより私は君に依存してる。なのに君はどうなんだ?」
彼女はそれだけ言うと鞄を持って部室から出て行った。残された俺は暫くその場に立ち尽くしていた。そして彼女が言った言葉を思い出す。
「……っつ!」
そして俺は自分の顔が再び赤くなっていくのを感じ、慌てて頭を振って思考を切り替える。そして先輩に見つからないように急いで家に帰った。
「……青春だねえ、あの子」
望月は部室の窓から見える夕日を見つめながら呟く。彼らはもう帰ったようだ。彼の足音が聞こえなくなると私は窓辺から離れてパソコンの前に座る。
「さて、可愛い後輩は帰った事ですしデータの移行を始めますか……?あれ、忘れ物?」
机の上には小さなメモ帳が置いてあった。
「あちゃー、これはまた後で届けないとですね」
彼女はメモを手に取り中を確認する。内容は川崎についての事が事細かに書かれている。若干ストーカーじみてはいるけれど何だか愛を感じる。
「きっとこれはミミックの……ってアレ?コレ誰の名前だ?」
彼女はメモ帳の表紙にある名前の欄に書かれた文字を読む。そこには木目ではなく『黒姫』の文字があった。
遅刻したあああああ
追記 どうしてこれが一番伸びてるの……