がーりっしゅみみっきずむ!!!〜俺の彼女はどこにでもいてどこにもいないです。見つからないから〜 作:囚人番号虚数番
「黒姫……黒姫……一体誰なんだろ」
私は自分の部屋のベッドで寝ながらミミックの手帳を読みながら黒姫について考える。川崎の友人なら知ってるかもと相談してみたけれどなーんにも知らなかった。川崎かミミック本人に直接聞けば一発だろうけど……
……怖い。小動物っぽい見た目でも本性が何なのかさっぱり分からない。
今日の昼休み、羨ましくて食べた時怒らせちゃったけど……あの雰囲気だけは今までも何度か感じた事がある。ストーカーとか勘違い男が向ける過剰な愛から来る怒りだ。私は元々友達が多い方であった。男女共に人脈があり、当然私と付き合いたいと思う人も多かった。
それを私は全て断った。あんまり人を悪く言うのは気が引けるけれど何というか私に近づく人は共通で下心が丸出しなのだ。体目当てだったり、なんとなく人気だからと告白してきたり……人気者は死亡前提の高難度クエストじゃないんだぞ!って意味わからない事を友達に愚痴ったっけ。
で、逆恨みだったりでそうゆう輩とは何度も対峙した訳でして。まあ、嫉妬に狂った人というのは恐ろしい物ですよ。何でもするしいつまでも来る。しかしここまでの話は中学までの話、高校に進学した私は人間関係の疲れから陰気で誰もいない部活に精を出す事にしたのだ。まあ、今日は久しぶりに誘われたから遊んだけれどまさかあんなことになるとは。
閑話休題、私の過去はここまでにして彼女にはそのストーカーと似たような気質を感じた。何かに依存した不安定な精神が孕む狂気はいつも慣れない。しかし彼女から感じたのは今まで経験したそれとは比較にならない程に濃く深い闇であった。
「…………」
どうして彼女は彼にそこまで依存するのだろうか。佐藤からの話だと付き合ったのは数日前、たったそれだけの日数であそこまでの闇を孕めるとは考えられない。もっと別の要因、例えば誰も知らない秘密、関り、それらがあったのであれば納得は出来るけれど……
「私が知る話ではないよね」
ー--
先輩が部活に来ない。放課後に部室で待機し30分が経過。俺はいつものようにゲーム作成の作業を続けて彼女を待つ。しかしいつもなら開始前にいる先輩がいないのは違和感がある。
……いっそのこと俺も部活をさぼってしまおうか。丁度作業も先輩の技術がいる箇所で詰まった、俺は書置きを残して部室のカギを閉めようとする。が、その時、こちらに向かってくる足音が聞こえた。
「ゴメンゴメン!ちょっと遅れた!」
「先輩、遅刻なんて珍しいですね」
狭い廊下を走り望月先輩が部室に来た。彼女は部室の扉を前で止まってから息を整える。
「ちょっと友達から遊びのお誘いが来て。もしかして今から帰る所だった?」
「先輩が来なければ帰ろうかと。残りは先輩が必要な作業ですし」
「じゃあデータだけ貰ってから二人で行こうよ!」
行く?行くってもしかして俺もゲームセンタ―に誘うという事だろうか。俺自体は別に構わないけれど他の方にはどう説明をするのか。すると彼女は胸を張って自分の連れとして言い張るつもりらしい。毎度勝手で自由な人物である。
彼女の為に鍵を開けてデータの入ったUSBを回収する。一応俺も忘れ物が無いか部室を見回して再び鍵を閉めた。
「よーし、じゃあ一緒に下賤にレッツゴー!」
「本当にいいんですか先輩、俺達も付いてきちゃって」
「別にいいんじゃないか?私は君が良く所にはついて行く」
……? 今会話に何か異物が混入したような。背後に視線を回すと。
「私を差し置いてどこに行こうというのかね?カワサキ」
ー--
駅前の改札口前、帰宅ラッシュが始まりつつある夕刻の時刻。
「あ、あの?2人とも?」
「どうかしたか」ギュウウウウウ
「何もしてないけどどったの?」
確かに望月先輩は何もしてないな。しかし俺以外の彼女らの雰囲気が一方的に最悪である。原因は100%木目さんが道中からずっと不機嫌であるからだ。彼女は俺が「彼女」を差し置いて無許可で先輩と遊びに行こうとしたのが気に食わなかったらしい。
で、現在も木目さんは先程から俺の腕を掴み離さないままずっと先輩に鋭い視線を送っているのだ。人前だから視線が痛い。しかし彼女をどうにか引き剥がそうとしても離れないしそれどころか力は強まっていくばかりだ。せめて他に来るらしいメンバ―が来る前に離れてくれればいいけれど。
しかし現実は非常だ。遠くから数人の制服の男が数人やってきた。
「望月先輩、待たせましたーって川崎も来てたのか」
「佐藤!?お前企画かよ!」
数人の男の中に何と友人の佐藤が紛れていた。彼らは一先ず先輩と合流したのを確認し、暫くして俺に気が付くと痛い視線が飛んでくる。俺の腕に抱き着く木目さんを見てからだ。……あ、そうだ。ふと頭に過った俺はこう口走った。
「あの、コイツ俺の妹ですからね。先輩と遊ぶって言ったらついて来て」
「…………!」
すると彼らは一変して呆れたような態度に変わる。今の彼らには彼女が極度なブラコンに見えているだろう。放課後だから彼女は俺をそれに彼女はあまり情報が少ない、賭けだったけど騙されてくれたようだ。
「……妹も悪くないかも」
腕の方から小さく聞こえたけど満足してくれたなら嬉しい。心なしか彼女と接した部分が更にあったかく感じる。しかしそんな中唯一いつもと同じ調子で遊びに行きたいと仕切りに言っていた。
「おーい、早く行くよみんなー」
彼女の先導の元駅から出て近くのカラオケに入る。受付で学生証を提示してドリンクバーで適当な飲み物を組んで部屋に入る。L字の椅子に佐藤の連れの男達は先輩を囲って座り俺と木目さんは隣同士で座る。
「あーあ~ああ~」
「(先輩、こぶし効きすぎて演歌みたいになってるな。佐藤、知ってたか?)」
「(歌の癖が強いとは知ってたけどこういう風だったのか……一曲でこぶし50とか初めて見たぞ)」
先輩たちが流行りのポップスを歌っている間俺達はジュースを飲みながら適当に歌う曲を選ぶ。アニメのOPは多分セーフだとして彼女の選曲が非常に気になる。
彼女にコントローラが回ってきて彼女が曲を検索する。そして出てきた曲名はまさかの某国民的アイドルの新曲だった。しかも歌詞は恋愛系。
「……冗談だ」「だよなぁ」
彼女が選んだのは名前の聞いたことも無い曲。曲を予約し、画面にタイトルが表示されてイントロのピアノが響く。
「~~♪」……うん。意外と上手いな。
先輩の歌は下手ではなかったけれど正直に言うと普通より少し上程度だった。しかし木目さんの歌唱力は別格で音程も完璧、リズムもしっかり取れていて聞いていて心地よい。彼女の悲しげなラブソング聞き惚れてるといつの間にか曲が終わっていた。俺も負けじとマイクを握ろう。
その後、俺はアニソンやボカロなどを中心に歌って行った。しかし、彼女は一度も俺の知っている曲を歌うことは無かった。その事が何故か寂しく感じてしまう。
ー--
それからあっという間に時は過ぎてもう夜になってしまった。カラオケを出て俺と先輩は帰路に就く。
「今日は楽しかったよカワサキ!また一緒に遊ぼうね!」
「えぇ、是非」
駅前まで送ると望月先輩は大きく手を振って去って行く。その姿が見えなくなると木目さんがこちらを振り向く。
「じゃあ、私も帰るか。バイバイ」
「じゃあな」
俺が歩き出すと木目さんも家に向かって歩いていく。こうして先輩とのデート?は終わりを迎えたのであった。木目さんと別れてしばらく歩くと後ろから声を掛けられる。
「待ってくれ川崎!」
声の主は佐藤だった。彼は走って追いかけてきたらしく息が荒くなっている。
「どうしたんだ?」
「……いや、何でもない。それよりちょっと話したい事があるんだけどいいかな」
「別に構わないけど……」
そうして俺らは人気の無い公園に入りベンチに腰掛ける。俺は缶コーヒーを買い、佐藤に差し出して自分の分に口を付ける。
「それで?話って何だ?」
すると佐藤は言い辛そうな表情で口を開く。
「単刀直入に聞く。お前望月先輩の事好きなのか」
……一瞬、思考が停止した。今コイツなんて言った?俺が望月先輩を好きって?いやまあ確かに嫌いじゃないし寧ろ好感を持っている。しかしそれはあくまで先輩としてであって決して異性としては見ていない。
「いや、違うけど」
俺は本音を告げた。すると佐藤は安心したように大きくため息をつく。
「そうか、いや悪い。それが分かればいいんだ。うん……いいんだ」
そこで俺は彼の異変に気が付いた。彼は酷く青ざめており顔からは汗が噴き出ている。まるで何かに怯えているかのように見える。
「お前、大丈夫か?凄い震えてっけど」
「……なぁ、一つだけ教えてくれないか。もし仮に、もしもの話だけどさ。あの人が、あの人が死んだらお前はどうする」
佐藤の言葉には妙な重みがあった。悪い冗談だと笑いとばせればいいけれど今の彼を見ると妙な胸騒ぎがする。
「そうだな……。その時になったら分からないけど、でも多分悲しいと思う。だから出来る限りの事はするつもりだ。まあ先輩次第だろうけど」
「……そうか」
佐藤はそれだけ言って立ち上がる。
「悪かったな引き留めて。変なこと聞いて」
「気にすんなよ」
佐藤は一体何を怖れているのだろうか。彼は何を知っているのか。そんな疑問を抱えながら俺は帰路に向かう為にベンチを立った。
「今から5分後」
佐藤がつぶやく。
「俺の連れが今、望月先輩を連れてホテル街の方に向かった。計画では今から5分にカラオケのドリンクに仕込んだ薬の効果が表れる」
「……え?」
佐藤の声はいつもより冷たく、暗い感情を含んでいる。そして彼が発している言葉の意味を理解すると同時に全身に鳥肌が立つ。
「どういう事だ……どうして先輩を」
俺の質問に佐藤は何も答えずに背を向ける。
「……おい、待てよ。説明しろ」
俺の制止も聞かずに佐藤は歩みを進める。
「お前、先輩に何し「早く!俺だってこんなことしたくなかった!3つ先の大通り、ピンクと青の看板が目印だ。俺は深入りし過ぎた、早く走れ!」
佐藤は俺の言葉を遮り叫ぶ。その表情は悲痛そのもので、俺はそれ以上何も言えなかった。それよりも俺にはやるべき事がある、考えるより先に体が動いた。
俺は全速力で走り出した。目的地は先程佐藤が言った場所。俺は今まで運動をしてきた経験がほとんど無い。しかし今は先輩を助ける為に夜の街を全力疾走をしている。肺や心臓が爆発しそうになるのを感じながらもひたすら足を動かす。
それから数分、ようやく目的の建物が見えてくる。建物自体はそこまで大きくは無いが如何にもといった感じの雰囲気がある。そして建物の前には複数の男達に囲まれた先輩の姿が見える。
「先輩!」
俺は叫びながら駆け寄る。
「川崎!来ちゃダメだ!!」
先輩は必死の形相で俺を止める。しかしその時忠告はもう必要はない。俺は男達の間をすり抜け彼女の手を掴むとそのまま力任せに引き寄せた。そもまま手を引き彼女と共に夜の街を逃げる。
少しでも遠く、彼らが追えないところまで。いつの間にか俺達は1駅先の駅まで走っていた。丁度こっちは俺達の帰り道に当たる駅だ。そのまま改札に入り飼えりの電車に乗った。彼女を席に座らせ俺も隣に座る。
「……大丈夫ですか先輩」
俺は先輩に声をかける。
「うん、ありがとう。川崎のおかげで助かったよ」
彼女はそう言うと俺に抱き着いてきた。
「ちょ、先輩!?」
突然の出来事に動揺するが、先輩は俺から離れる気配が無い。俺は先輩に優しく声をかける。
「良かったです。無事で」
俺の言葉に先輩は小さくうなずく。
そこで俺は違和を感じる。何故なら俺が知っている望月先輩という人物は、こんな風に誰かに甘えるような性格ではないからだ。どちらかと言えば凛とした佇まいで誰に対しても毅然とした態度を取る女性だと思っていた。
しかし今の彼女はまるで小さな子供のように俺に体を預けている。しばらくすると先輩はゆっくりと離れていく。
「ごめんね川崎。急に取り乱して。なんかさ、急に力入んなくなっちゃって……」
そう言いながら先輩は苦笑し眠ってしまった。
ーーー
「私の知る話ではないよね」
黒姫のメモをベッドから机に投げ布団を被る。今日は遊び疲れてもう眠い。帰り際にも寝てしまったけれど時計は既に12時を指している。明日に備えて今日は寝てしまおう。
「……zzz」
明かりをつけたまま体を暖かなベッドに委ねる。しばらくしないうちに睡魔に襲われて私は眠りに落ちた。
カチッ
深夜2時、彼女の部屋の明かりが消える。同時に一人、部屋に入る者がいた。
『ふふふ、確かにそうだ。君の知る話ではない。君はただ、たまたまそこにいただけ。私とは違うんだ』
彼は机に置かれたメモを取る。
『だけど君は少々障害になりすぎる。既に手は打ってあるけれど念の為、君は隠させてもらう。特にこれは彼以外には知る必要のない情報だ……君もそう思うだろう?』
メモをしまい、彼女の眠る布団をめくる。そして持ってきた袋、ロープ、テープを駆使し望月を完全に拘束して大きな鞄に詰めた。最後に彼は窓から外に飛び出し路上に止められた車に乗りその場から去る。
『……佐藤、もう返事ができない状態では無いだろう』
「っぅは、はい……今帰還します。で、でも、本当に先輩も必要で『こうなったのも君がしくじったせいだろう。責任を持って遂行しろ。』
月夜、何処か誰も知れぬ場所、彼女はそこにいる。危うい橋の電話指示にはこれ以上ない最適な場所であった。その傍らには彼女の愛する「彼」が寝ている。秘匿されたその場所に一体何人が辿り着けようか。
「……ふふふ、やはり君は愛おしいな」
新しく買ったHLLLOW KNIGHTやってて投稿おくれました