俺らガンプラ楽しみ隊   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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とりあえず、始めるぜの一話

この世界で一番楽しいもの?

 

そんな事を唐突に聞かれたって、答えるのは難しいだろう。だって、好みは人それぞれなわけだし、娯楽っていってもかなりの種類もあるし、楽しみ方も違う。

でも、まぁ、俺が決めていいのなら、一つだけある。万人受けするかは別だが、世界中でかなりの人気を誇る娯楽の一つ。

 

『ガンプラ』だ。

 

まず、ガンプラというのはアニメ『機動戦士ガンダム』シリーズに登場するモビルスーツ(以下MS)やモビルアーマー(以下MA)などを再現した、プラスチックキットモデルの総称だ。その種類、百点をはるかに超える。一説によれば、日本人なら一人当たり四個持っていてもおかしくはないという量のガンプラが毎年で回っているらしい。

ガンプラは基本的に誰でも楽しめる。初心者に易しいキットも多くでてるし、幅の広い手軽なハイグレード(HG)、リアル感を求めたリアルグレード(RG)やマスターグレード(MG)、精密さを求めたパーフェクトグレード(PG)と、自分にあったレベルの物を買えばいい。旧キット以外は接着剤不要だからな。ペイントしなくても、原作に近いカラーだから、初心者にも安心して組める。

また、出展作品を知らなくても、外観だけで買う人も少なくはない。だが、ほとんどの人は、出展作品を見てから買う事が多い。中には、欲しいキットが高すぎるとか立体化されてないとか、という事もしばしば。…………HGでも三万くらいするやつあるしな。

ガンプラにおいて最も楽しいのは組み立てていく事。自分の手によって作り上げられていくMS。完成して飾った時の達成感は、そうそう味わえる物ではない。そこに改造や塗装が加われば、その思いは数倍に膨れ上がるだろう。そして、何よりも、そのガンプラに注ぎ込んだ思いが、そのガンプラをより引き立てるに違いない。

 

「おーい、レン。ちょっと客の相手頼むわ〜」

「おう、今行くぜ。どうせ、またアレなんだろ?」

 

さて、ガンプラについてもっと語りたいが、親父からお呼び出しだ。だが、俺がこれからするのはもう一つの新しいガンプラの楽しみ方だ。そいつについては誰かが語ってくれるだろう。ん? メタ発言はよせって? んなもん知ったことじゃねえよ。

 

「おーう、今きたぜー」

「んじゃ、この親子の相手頼む。俺はちょっと忙しいから」

「わーってるから。とりあえず、まぁ始めましょか。こちらです、ついてきてください」

 

親父に言われたとおり、俺は親子をとある場所へと連れて行く。といっても店の奥のほうだ。行き慣れている人も大勢いる。この親子は初心者みたいな感じだが。

しばらくいくと、カプセル状の筐体が見えてきた。

 

「んじゃ、先にパイロットスーツに着替えてきてください。更衣室はすぐそこなんで」

「どうも、ありがとうございます。さ、行こう」

 

父親は子供を連れて更衣室の方へと行った。

数分後。

 

「すみません、なれない物ですから遅れてしまいました」

「いえいえ、問題ないっすよ。それにしてもお似合いですね」

 

父親かきているのは機動戦士ガンダムの連邦軍ノーマルスーツ、子供がきているのは機動戦士ガンダムAGEの子供用ノーマルスーツ。とても似合っている。

 

「君もよくにあっているよ」

「ありがとう! でも、ボク、お兄ちゃんに勝つからね! ストライクと一緒に!」

 

子供は自分で組み上げたと思われるHGストライクガンダムを見せてきた。どうやら、やる気はあるようだ。

 

「ほぅ、これまた大きくでたな。これじゃ、お兄ちゃんも本気だしてしまうぞ?」

「ハハハ。それじゃ、筐体の中に入って下さい。中にハロスキャナがあるので、その中にガンプラを入れたらスタートします」

「パパ、早く行こうよ」

「そうだね。じゃ、先に」

「わからないとこがあったら言ってくださいねー」

 

親子が筐体に入ってガンプラをセットしたのを確認する。どうやら、俺の説明で全て通じたようだ。

さて、俺もガンプラをセットしますか。俺はケースから一体のガンプラを取り出す。

FA-78-3 フルアーマーガンダム7号機。

機動戦士ガンダム戦記シリーズで登場してきたガンダム。お客さん相手にはこいつが丁度いい。もう一機あるけど…………そっちは今は使わない。ちょっとひどいことになるから。

俺も筐体の中に入る。中は本物のガンダムを意識したコクピットレイアウトになっていて、以前流行った戦場の絆というゲームの筐体に近い。レバーやフットペダルの操作になるから、結構楽しい。

その中にハロスキャナがある。これの口をくぱぁと開けて、中にガンプラをセットして閉じる。すると、ガンプラをスキャンしてそのデータをバーチャル空間に立体再現、これを操作する。

相手はストライクガンダムとデュエルガンダム・アサルトシュラウド。言うまでもなく、あの親子。だけど初心者相手ってのは中々厳しいんだよな、いろいろと。

 

『カタパルト、オンライン』

「フルアーマーガンダム7号機、ハジロ・レン、出る‼」

 

そして、これがこの世界でのガンプラの楽しみ方。自慢の機体でバトルする、ガンプラバトルだ。

 

 

 

 

 

「惜しかったなー、あと少しだったのにね」

「次は絶対負けないからね! またね!」

「おう。では、ありがとうございましたー」

 

…………あぁー、疲れた。子供で初心者の相手ってのは、存外辛いもんだ。下手に勝てば泣かれるし、逆に下手に負ければそれでいて手加減されたと思われる。その微妙なところが難しい。

 

「…………親父、そろそろ親父もガンプラバトルやってくれよ。俺だけだと何かと辛いから」

「ああ、でも今無理。もう少しでEz8ヘビーアームドカスタムが完成するから、それまでの辛抱」

「待て⁉ サラミス砲なんて1/144で無いぞ⁉ ま、まさかーー」

「フルスクラッチ」

「オーマイガーッ!」

 

そ、そうだ、俺の親父はこう言うヤツだ。ハジロ・シロウ。ハジロ模型店の店長にして、地区のガンプラ自治会会長。ちなみに、俺がよくその代理で出される。理由、ガンプラのフルカスタム中だから。

 

「ちょっとあなた、これ見てこれ」

「ん? どうしたーーって、やっとできたのか! ジムⅡセミストライカー!」

「ツインビームスピアは本家(RGM-79FP)から流用するわ」

 

ハジロ・アイナ。俺のお袋。ものすごいガンダム好きの女。ちなみにガンダムフェイスよりもバイザー系が好み。あと、俺が言うのもなんだが…………美人だ、かなり。

 

「お袋からも言ってやってくれよ、親父にガンプラバトルするようにさ」

「無理じゃない? だって、こんな感じだし」

「…………妻にこんなん呼ばわりされる夫って何?」

 

その親父はというと、ビルダーズパーツからサラミス砲をフルスクラッチしていた。

 

「お邪魔しま〜す!」

 

元気な声で店内に来たのは一人の少女。カガミ・リン。俺の古くからの付き合いで、所謂幼馴染。金髪だが外人でもないし、染めたわけでもない。特に引っ込みも出っ張りもしてない平らなモールドが特徴である。…………生で言うと殺されるがな。

 

「やぁ、リンちゃん、いらっしゃい」

「おじさん、おばさん、こんちわーっす。ところでレンはいます?」

「レンなら、そこにいるよ、ほらすぐ隣」

 

そして、横を向くリン。気がつけば俺と目があっていた。

 

「ごめんごめん、気づかなかったよ」

「いや気づけよ⁉」

 

え、なに、俺ミラージュコロイドでも使ってるの? どんなステルス性能だ…………

 

「それで? 俺に用ってことと、時間帯的に見てアレしかないと思うけどな」

「まぁ、そのいつものアレ」

「しゃーねーなー。やるか!」

「うん!」

 

とりあえず、筐体の方に向かう俺ら。やることはただ一つ、ガンプラバトルだ。

 

 

『堕ちろ!』

『ええい! こうまで押さえられるとはな!』

『ファンネル、敵を焼き払え!』

『…………目標、達成』

「始まってるねえ。あれ、お前持ってきた、ガンプラ」

「もっちろん、忘れるはずないでしょ」

 

そう言ってリンがカバンより取り出したのは、RGガンダム試作1号機フルバーニアン・リペイント。胴体のブルー部分を彼女のパーソナルカラーであるオレンジに染めた機体。あとバーニアとスラスターの増設が行われており、機動性は抜群。さすが宇宙世紀界のオーパーツ。

 

「よし、それじゃ2on2やろうぜ」

「結局いつも通りか」

「フルメンでしたくても人が足りないから我慢」

 

早速俺たちは筐体の中に入り、それぞれのガンプラをセットする。準備はよし、相手も揃ったことだし、始めるとするか!

 

「フルアーマーガンダム7号機、ハジロ・レン、出る‼」

「ガンダム試作1号機フルバーニアン、カガミ・リン、出るよ‼」

 

一気に加速された俺たちの機体は森林地帯に降り立った。

 

「森林地帯か…………マジ不利じゃん、あたし」

「空飛んでスナイプでもしとけば? ロングビームライフル主装備だろ」

「そうする。…………こんなんだったらあっちの方でくれば良かったかも」

「アホか」

 

スラスターをふかして空を飛ぶ俺たち。眼下にはバーチャルとは思えないほどリアルな森林が広がっていた。隣には目立つフルバーニアン。だが、全スラスターをオンにしてない。全部オンになるのは、戦闘に入った時。

すると、聞き慣れたアラート。

 

「ロックオン⁉ どこだ‼」

「二時の方向! 気をつけて!」

 

その場から離れると、俺がいた場所を山吹色のビームが過ぎ去った。マジか、スナイパーいるのかよ。

 

「おぉう、ザクF2のスナイパー仕様が一機、ジェスタ・キャノンが一機」

「あたしはスナイパーをやる。ジェスタの方はお願い」

「はいよー」

 

俺はスラスターをいれて背部のビームキャノンを構える。そして、躊躇いなくトリガー。高出力のビームが木々をなぎ払っていく。視界が開けるも、いまだ視界は悪い。てか、木が燃えて黒煙が辺りを漂っているもんだから、見えない。やってしまったと後悔するも遅い。

黒煙の中から放たれる、ビームとグレネード。俺は横にずれることで難を逃したが、どうやったらいいのやら。やっぱり

 

「フルアーマーは突っ込むしかないのか…………‼」

 

全スラスターをフルスロットル。一気に黒煙の中を駆け抜ける。すると見えた、黒煙に紛れるジェスタが。

 

「ハイヤァァァァァッ!」

『ひょえぇぇぇ!』

 

両手に装備された100mmマシンガンをジェスタ目掛けて放つ。一マガジン撃ち切っても構わない。目の前の標的を蜂の巣にするだけだ。

だが、それでも相手は増加装甲付き。本体までダメージはそんなに届いていない。やっぱ、マシンガンだけじゃ無理か。

 

『そらっ! これでもくらえ!』

 

ビームキャノンが放たれるが、軽く体をずらすだけで避けれた。命中精度が粗いとこを見ると、素組みの可能性がある。

 

「当たらんよ。勝ちたいんなら、もう少し手を加えてくるんだな」

 

俺はジェスタの両腕を掴み、胸部に背部ビームキャノンを突きつける。

 

「あばよ」

 

そして、トリガー。高出力のビームはジェスタの胴体を抉り飛ばし、爆散させた。俺は巻き込まれないようにシールドを前に構え、後退。

一旦リンの方に目を向けて見たが、向こうも余裕そうだ。フルバーニアンのバーニアポッドが莫大な推力を生み出し、それに対応するリンの腕がザクのビームバズーカと腕、足、頭の順にロングビームライフルで撃ち抜いていく。

リンの戦い方は一撃離脱。だからこそ、反撃も許さない。そしてこの速度だ、狙撃機のロックオンにもかからないだろう。そうこう考えているうちに、リンがザクの胴体を撃ち抜き、ゲーム終了の合図がなった。

 

 

「いやー、楽しかったな。ガチでやれるのは嬉しいねえ」

「そうだね。というか、そのビームキャノン相変わらず強すぎ」

「改造機だしな、これくらいいいんじゃね?」

 

ゲームを終えた俺たちはひとまず店の奥にあるフリーコーナーで休憩していた。てか、ここ模型店だよな、親父。なんで自販機なんてものを店の中に堂々とセットするかな?

 

「でもさー、やっぱり欲しくない?」

 

突然リンが何かを言い出した。

 

「何が?」

「もう一人、新しいメンバーだよ。そろそろ三人でのチーム戦をしたいしさ。誰かいないかな?」

「もうそうそういなくね? まぁ、欲しいっちゃ欲しいけどさ」

「できればAGE-3かFX使ってる人」

「いるな、きっと」

 

そんな感じでいつも通りの会話をしていた。

ガンプラ。

それは、男も女も、大人も子供も楽しめる、最高のプラモデル。そして、このガンプラバトル。このお陰で人は楽しさを忘れる事はない。

だが、中にはいる。ただ勝つ事だけを求め、自分の考えを他人に押し付け、無理を通そうとする連中も。

違反者(イリーガル)も、世界にはいるという事を。

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