それは大きく分けて二つのパターンがある。
一つは、ただガンプラバトルで勝つ事のみ考え、
そして、もう一つは、自分の気に入らない作品のガンプラを破壊する為に、レギュレーション違反武装を施した者。
さて、彼らの罪の重さについて説明する前にまずレギュレーション違反武装について説明しよう。レギュレーション違反武装とは、完全に金属で作られた武装の事だ。ガンプラバトルでは、その武装の材質も性能判断基準の一つになっている。材質が硬ければ硬いほど、攻撃力の高い武装になる。それまでならよかったんだけど、ガンプラバトルではゲーム内で受けたダメージがガンプラにフィードバックされる。つまり、レギュレーション違反武装の一撃を食らってしまえば、ダメージが普通の比じゃなく、最悪ガンプラ自体が大破する事だってある。勝つ事のみ考えた人は、ただ降伏勧告する時のみ使用する。ここまでなら、まだ罪は軽い。だが、気に入らない作品のガンプラを破壊する人は、容赦無くレギュレーション違反武装を叩きつけてくる。
これは、ガンプラを楽しむ上で最もやってはいけない事。自分だけが楽しいだけではダメ。皆が揃って楽しめなかったら、何の意味もない。
だからこそ、彼らを取り締まる人間達が必要なんだ。
「リン、
どうやら、早速でてきたみたい。違反者は早いうちに排除しないといけないからね。ガンプラとその製作者である、ビルダーを守る為にも。
『ここで会ったが百年目! ここで討ち取ってくれるわ!』
『待て⁉ それ、レギュレーション違反武装じゃないか‼』
『弟の仇ィィィィィッ!』
…………また面倒な事になったものだ。勝つ為だけに罪を犯すとはな…………ガンプラ本来の楽しみ方を忘れてしまっている。
そんな悠長な事もいってられない。今、バトル中のデュエルダガーがシェンロンガンダムに鈍い輝きを持つ大剣を振り下ろす。攻撃数値がおかしな事になっている上、ダメージを受けたエフェクトが普通とは違う。間違いなくレギュレーション違反武装ーーイリーガル・ウエポンだ。
基本的にガンプラはプラスチックが原料。だから、反映されるダメージもパーツが外れる程度で済む。しかし、イリーガル・ウエポンは金属で作られている。反映されるダメージが大きいのだ。前にも見たが、あの破壊力は危険すぎる。自慢のガンプラが見るも無残な姿で、帰ってくるからな。あの、ガンダムMk.Ⅱの人は立ち直れたのだろうか。
『くそぉぉぉぉぉっ!』
やべえ、掠めただけでシェンロンの肩アーマーが抉れている。今すぐにでもでて止めたいところだが、生憎俺の対違反武装ガンプラは改造中。フルアーマーガンダム7号機は相手にならない。頼みの綱は、
『ごめん、遅れちゃった。すぐに出るね』
「二番筐体のバトルフィールドにコードを繋げ。急いで止めてこい」
『了解』
同じく対違反武装ガンプラを持つリンだけだ。すると画面には新たにもう一機、ガンダムが現れた。そう、違反者を決して許す事なき
『あ、あの、ガンダムは…………!』
こっちを見た途端、デュエルダガー乗りは動揺していた。イリーガル・ウエポンを使ってしまったからには、たとえ謝罪されようとも許す気にはならないし、許そうなんても思ってはない。あのシェンロンガンダムだって、パーツの一つ一つにビルダーの思いが込められたガンプラだ。勝つ為に、ただそれだけの為に罪を犯す…………悲しいけど、これが現実なんだよね。
「行くよ、ガンダム。あの違反者を捕まえる為に」
その言葉と共に、あたしのガンダムはツインアイを光らせた。
今、使っているガンダムはいつものフルバーニアンとは違う機体。まぁ、カラーリングは一緒なんだけどね。
RX-78GP03SC ガンダム試作3号機スティメン改。
通常のガンダム試作3号機スティメンにある改造を加えた機体。その改造のせいで別名『デンドロビウム・ファレノプシス』、略してデンファレなんて呼ばれたりしている。実際の花言葉は確か『お似合いの二人』だったような気もする。でも、あるところでは『可憐な』という意味だった気も…………ま、いいか。
『マイスターがいたのか…………まぁいい。ここで諸共倒してくれるわ!』
デュエルダガーはあたしのところへ一直線に向かってくる。その手に大剣を持ち、今にもあたしに振り下ろすような勢いで。
『そぅらァァァァァッ‼』
というか、マジで振り下ろしてきた。当たればこのスティメン改といえども耐えられはしないだろう。多分、本当の意味での木っ端微塵。
『さ、避けろ‼ そいつはイリーガル・ウエポンだぞ‼』
シェンロンガンダムのビルダーがあたしに警告を促してくれた。でも、
「それくらい知ってるよ。それにーー」
スティメン改の背中から突如伸びるアーム。
「ーー私のわがままな美女は、あなたに倒せないから」
背中から伸びるアームが、デュエルダガーの右手をがっちりと掴み、動きを封じた。このアーム、実は1/550デンドロビウムのクローアーム。改造を施し、この華奢な感じを思わせる1/144スティメンに取り付けたその姿に違和感はない。
クローアームは力をどんどん込めていき、暫くしてデュエルダガーの右手を砕いた。
『ぬぁっ⁉ み、右手が‼』
「早いとこトドメ刺そうかな」
『そう簡単にやられるか!』
デュエルダガーは残った左手にビームライフルを持ち、あたしに向かって撃ってきた。その狙いは正確に胴体部を狙っている。
「狙いが正確すぎるんだよ!」
テールバインダーのスラスターを噴射し、回避する。狙いが正確すぎるから、回避しやすい。あたしも、両手に持つビームライフルをデュエルダガーに撃った。
『ち、ちくしょー!』
放たれた二本のビームは右腕を抉り取り、デュエルダガーはバランスを崩した。すかさず、そこにむけてブースターを全開にし、突っ込む。実を言うと、ブースターとテールバインダーにもデンドロビウムのパーツが流用されている。お陰で速さはフルバーニアンよりも出る。ただし、とてもピーキーな機体だけど。ある意味で地獄のような加速を生み出した魔物。別名からは想像がつかないスティメン改の裏の顔だ。
「おらぁぁぁぁっ!」
『ぎゃふっ!』
一気に追いついたあたしは、右のクローアームでデュエルダガーの胴体を掴んだ。圧倒的な握力にデュエルダガーは身動きが取れない。ついでにフォールディングアームも展開して、左手のライフルも押さえつける。あと相手がとれる攻撃方法は、対してダメージのないバルカン砲だけとなった。
『くそ、くそっ、くそぉぉぉぉぉぉっ‼』
「はいはい。後で処分が色々とあるからねー。手短に済ますよ」
『うわぁぁぁぁっ!』
左クローアームを起動、内蔵してあるビームサーベルでデュエルを切り裂いた。無論、デュエルは爆散、あたしの勝ちだ。
でも、勝ったけど気分は晴れない。それもそのはず、楽しいゲームとしてやったわけじゃないから。これは、あたしがマイスターとして、一つの仕事としてやった、制裁行為。だから、やったあとでも嫌な気分だけが残ってしまう。
「ガンプラ、どうして皆ルールを守って楽しめないんだろうね…………」
"どうしようもないよ…………こういった人の脳にあるのは、ただ勝つ事だけだから"
あたしの心に響いてきた
「イリーガル・ウエポンの製造と所持、そして使用のほか色々、ガンプラバトル条約違反ね」
俺は筐体から逃げてきたこの大学生を捕まえて、筐体エリアの奥にある取調室的なところで話を聞いていた。この大学生が使用したイリーガル・ウエポンは比較的作りやすい部にある大剣型。プラ板の中に鉛を流し込み、重量感を持たせた物。もちろん、下手に当たればガンプラなんてザクロだ、ザクロ。ひどい時は粉末状になった自分の傑作がハロスキャナから出てくることだってある。…………まぁ、そのレベルのイリーガル・ウエポンもそうそうないけどさ。ハンマーに砕かれたジム・コマンドの方はとても残念だった。
「まぁ、千二百円の罰金と入店一ヶ月禁止の刑がガンプラ協会から出されたから、それに従ってもらうとして…………なんでこんな事をしたんだ?」
刑の云々はどうでもいい。俺が気になったのは、なぜイリーガル・ウエポンを作ったのか、そこだ。確かに勝つ為だけという理由も少なくはないが、大半はいろんな理由ある。
すると、この男は少しずつだが話し始めた。
「…………俺には弟がいるんだ。中学二年のちょっと生意気なやつだけど、俺にとってはかわいい弟だ。弟も俺に似たのかガンプラが好きでさ、そりゃ色々作ったさ。でも、その中でもあいつはウィンダムが好きでさ、いつもガンプラバトルする時は一緒だった。だがな、ある日弟はそのガンプラバトルの所為で心を閉ざしてしまった。相手は、あのシェンロンガンダム、俺が相手していた奴だ。あいつに弟は完膚なきまでにやられた。『墨入れしただけで俺に勝てると思うな』と言われてさ、心に傷を負っちまったんだ。多分、あいつも悪気はなくて言ったんだと思う。でもな! 弟がああなってしまった原因があいつにある! 俺はそれが許せなくて…………イリーガル・ウエポンの事を知ってからそれを作って、復讐しようと思っていたんだ…………」
全てを話してくれた男の顔はとても悲しそうで、弟の事を大切に思っていることがひしひしと伝わってきた。こうなると、一概にこいつが悪いと決めつけにくくなる。
「だが、イリーガル・ウエポンは犯罪に匹敵する。暫く反省しておくんだな」
「…………ああ、済まなかった」
「あと、これは俺からの刑なんだがな」
俺は持ってきた紙袋からある物を取り出す。
「その様子だと弟と塗装まではしてないんだろ? これやるから、一緒に塗装までしてやってやれ」
ガンダムマーカー。それは、ガンプラを塗装するのに重宝する道具。手軽に使えるの便利なものだ。値段もそんなにしないし、まぁ、俺にとっての損はないかな。
「いいのか…………?」
「あくまでも、弟を立ち直らせる為だぞ。あとは出てってよーし」
「ありがとう…………‼」
男はそう言い残して、店を出ていった。まぁ、イリーガル・ウエポンをめぐる理由にも色々あるんだな。だが、何であれイリーガル・ウエポンは犯罪に匹敵するガンプラバトル条約違反だ。最近は守らない連中が増えて困ったよ、全く。
「よぅーし、レン、一戦やろうよー」
まぁ、それでも守っている人がいるから楽しいんだけどな。
「おう。一対一のサシでやろうぜ、久しぶりにさ」
またこうして、忙しい一日がすぎて行こうとしていた。
だが、世界にはいろんな人がいる。イリーガル・ウエポンよりもたちの悪い奴ら、ガノタ暗部と呼ばれる者たちが。