FGO世界線と勘違いした一般アニムスフィア家長男   作:神崎せもぽぬめ

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 投票者300人越え、お気に入り登録4200人越え……………戦慄が止まらん…………!!!




おい、その(友人の)先は地獄だぞ

 

 

 

 入学から今日で二日目。

 

 無意識に溜め込んでいた疲れやストレスから開放されたボクは、昨日は早々に床についてしまった。

 おかげで充分な睡眠時間を取れて気分スッキリ、爽快な状態で学校生活に臨めるものだ。………………その代償として爆発した寝癖と一時間も格闘してしまったが。

 今日から本格的な学校生活ということでボクの気合いの入れようはひとしおも、ふたしお(?)もあった。

 

 

「おはようございます」

 

 既に雑然とした雰囲気が漂っていた一年A組教室に、ボクは勇気を持ってあいさつしながら入室する。特定の誰かではなく教室にいるクラスメイトらに向けて放った言葉だが、返ってきたのは声ではなく訝しげな視線だった。

 

 先ず髪色、次に顔。まるで示し合わせたように揃った視線の動きに、なにか既視感(デジャブ)を感じた。

 

 

 取り敢えず、第一印象は好感触といったところかな?

 

 一人でそう結論づけて、自分の端末を探すべく、机に刻印された番号に目をやる。IDカードに記載されている学生番号は既に暗記しているのだ。

 

 自分の席は一番左の一番前。五十音で席順が決まるなら、さも当然な配置だろう。(アニムスフィア・サニアエリー。日本流で表すなら「あ」から始まる)。

 

 昨日の内に顔合わせを済ませた生徒もいるそうで、教室には複数のグループが形成されている。

 そういったグループの間を縫うように、自分の席に向かっていたボクは、思いがけず声をかけられ顔を向けた。

 

「おはよう」

 

 そこにはこの如何にも最初に主人公の踏み台にされそうなエリートモブ風の少年がいた。

 

「うん、おはよう」

 

 ボクは嬉しくなった。そして同時に、この人物がいい人である事を確信した。だって、ボクのもとにまでやってきて挨拶を返そうとする人が、いい人じゃない訳がないだろう!差別なんてするわけないじゃないか!

 

 昨日の運が、今日も続いていることに心中でガッツポーズを決めつつ、逃がさないとばかりにボクは言葉を重ねる。

 

「助かったよ、さっきの挨拶の返答がなくて寂しいと思ってたんだ」

「…………多分君が知り合いに声をかけたと皆思っていたんだろ。少しのすれ違いだ」

 

 あぁ、なるほど。そういうこともあるだろう。

 

 ボクは挨拶が返されなかった事にそう納得をする。そして手を差し出し、

 

「ボクはサニアエリー・アニムスフィア。『サニア』でいいよ」

「僕は森崎駿。好きに呼んでくれ」

「じゃあ駿くん、よろしくね」

「あぁ、宜しくサニア」

 

 ボク達はガッシリと固く手を結ぶ。

 手の内でボコボコしたもの…………多分マメがあるのを感じ取る。日常的に武術を嗜む人の手だ。ちなみにボクはペンだこがあるだけの、武術を知らないよわよわのお手手だ。

 

 

 ボクと駿くんが友誼を結ぶのを見届けたのか、後方にいた男子生徒の集団がゾロゾロとこちらに寄ってきた。多分駿くんがさっきまで喋っていた人達なのだろう。もちろんこちらの人達とも同じように握手をし、挨拶を交わす。

 

 ボクがこうして友達作りに勤しんでいるのは、何も単純に仲良くなりたいからというだけでは無い。多少なりとも打算が含まれている。

 これから司波深雪さんがやってきて、ボクはボクの為に彼女に近付くことになる。その時に男子生徒らのやっかみを受けてしまうのは火を見るよりも明らかだ。だから先に彼らと仲良くなることで、少しでもそれを緩和させようとしたんだ。

 あと、彼らの中にひょっとしたら有能な魔法師がいるかもしれない。将来の為に一応親交を結ぶ、という保険も兼ねてるわけだ。

 

 

 

 そんな思惑とは裏腹に、ボクが大分彼らに馴染めるようになった頃。

 

 またしても冬風が肌をさらう、覚えのある体感幻覚を覚えた。

 

 ボクは瞬間的に教室の扉へと顔を向ける。それと同時にドアがスライドし、例の彼女が現れた。

 

 

 沈黙が教室中を包み込み、誰もが彼女に視線を注ぐ。それはボクの時と似ているシチュエーションで、しかし違っていた。

 

 昨日よりも格段に近い距離。語彙にすることすら憚られるその人外じみた美貌。様々な状況が重なり合い、まるでショートを起こした機械のようにフリーズを強いられていた。

 

「………?おはようございます」

 

 彼女───司波深雪さんは自身に向けられる視線にキョトンとしながらも、丁寧な挨拶を返す。首を傾げてしまうその仕草は、本当に可愛く、その顔面偏差値の暴力から意識を取り戻した(帰ってきた)連中にギャップ萌えという追加攻撃を与えた。恐らく再起不能だろう。司波深雪…………恐ろしい子だ。

 

 と、言いつつも。ボクは割と耐性があったので、理性を充分に保てていた。多分マリーとか幼なじみとか、あるいはこの前会った親戚の末っ子のおかげかもしれない。

 

「おはようございます」

 

 ボクと同じ焼き直しにはなってほしくない。珍しく純粋な思いで、挨拶を返した。

 その後に始まるのは、理性を取り戻したクラスメイトたちによる「おはよう!」の合唱だ。中には声を掠れさせる位声をあげた狂気者(バーサーカー)がいるが、それを気にしている人はいなかった。いや、理性取り戻してないじゃないか。

 

 教室に一歩進んだところで、クラスメイトから取り囲まれた彼女を見て、ボクはため息を吐きたくなった。

 

 これ、ボクが話しかけてもやっかみを受けなかったじゃないか。

 

 彼女という偶像を過剰に崇拝していたのは彼らではなく、ボクなのかもしれない。

 

 

 

 

 

♦♦─────────♦♦

 

 

 

 

 昨今の通信技術の進化によって、「担任の先生」と呼ばれるような人たちは極小数に、その数を減らした。そして魔法科の教育機関ではその学問の特異性から、担任ではなく「魔法指導官」が就くこともある。

 一年A組にもそれは配属されており、担当指導官百舌谷(もずや)教授という男性がそれであった。

 

 彼のスピーチの内容を纏めると、『A組は特に優秀、B~D組は優秀、E~H組は底辺・スペア(意訳済み)』というヘイトスピーチじみたものだった。

 確かに、自分たち以外を下げることで、相対的に自分らの立場は上になるだろう。しかし、それは現状維持であり、ボクからすれば現状維持は後退と同義でもあった。

 

 まるでお手本のような偏狭教育に、ボクは百山校長の采配を疑う。差別を排他すべき教職員が、あまつさえ助長を促すのはどうかと思うからだ。……………いや、もしかしたらあえて差別を作っているのか?クラス間の実力差を煽ることで一握りの『玉』を作ろうとしているのであれば確かに効果的とも言える。非人道的とも言えるが。

 

 なんにせよ、ボクの頭脳では職員らの考えを推し量ることなんてできない。自分の意志を貫徹させるだけだ。

 

 

 退屈と思えた百舌谷(もずや)教授の話が終わると、カウンセラーの先生───男女一名ずつの軽い挨拶に入り、その後にガイダンスが始まる。

 ガイダンスはカリキュラムの説明、施設案内、クラブ活動紹介が、端末に再生される。ボクはそれを見て今後の学生生活に思いを馳せながら、履修登録を素早く行う。

 ところでこの履修登録は主に魔法理論の内訳を選択するもので、必修科目である基礎魔法学・魔法工学以外の選択科目である魔法幾何学・魔法言語学・魔法薬学・魔法構造学の内から二科目、魔法史学・魔法系統学の内から一科目。合計五科目の履修登録を行う。

 

 必修科目の二つを登録し、残り三つの組み合わせにボクは悩み─────決断。早速端末から送信した。選んだのは・魔法幾何学・魔法構造学、そして魔法史学の三つだ。

 魔法幾何学は言わずもがな、魔法構造学は起動式・魔法式の解析をする学問、魔法史学は名の通り歴史を遡って魔法を研究する学問となっている。魔法史学は正直興味本位で取ったので、定期試験が怖いとこだ。

 

 

 

 

 

 日本とアメリカとの勝手の違いから手間取ったボクが最後に履修登録を終えたそうで、

 

「いや、すまないね。まだ余り慣れてないみたいでさ」

「かまわない、お前が噂の留学生なんだろ?最初は帰化した奴と思っていたが、どうやら違うみたいだし」

「おぉ、正解(エッザート)

「なんでイタリア語なんだよ」

 

 駿くんすごっ、なんでイタリア語分かっちゃうんだ?というかそもそもどうして個人情報が漏れているんですかね……………主席だとバレてないのが奇跡すぎるでしょ。

 

 と、軽口を叩いている現在のボクは、駿くんと愉快な仲間たち一行に食堂へドナドナされている状態にある。

 実は、ボクの後に誘おうとしていた司波深雪さんがいつの間にか消えていて、教室中は阿鼻叫喚(過剰表現ではない)。そこで駿くんが、まるで魔王退治の旅に名乗りをあげる勇者のように、少数精鋭を引き連れて……………ボクは強制的に引きずられて、食堂へ向かっているわけだ。

 

 

 …………

 

 さて、ボクの記憶が正しければこの後、達也組と少々言い争いが勃発するはず。

 

 ほんの少しのシーンだが、この学校に蔓延する差別意識が垣間見える場面だ。そしてその舞台装置と成り果てたのが、森崎駿という少年になる。

 ボクの目から見て、森崎駿という少年は『正しい倫理観と常識があり、仲間に手厚くその他には排他的』という評価と言えよう。この評価が正しければ、仲間からの忠告も素直に聞き入れるはずだ。

 

 というか。こんなくだらない諍いで、司波深雪さんからの印象を落としたくないのが本音だ。

 

 

 …………大丈夫。駿くんの良心を信じ、ボクの忠告の言い回しに気をつければ何ら問題ないことじゃないか。

 

 そう思い立ち、胸中で決心を固めている所に、

 

「少し、宜しいですか?」

「はい?」

 

 司波深雪さんには及ばないものの、こちらも美少女と確信できる女性が横から声をかけてきた。

 途端にボクと駿くんたちは立ち止まり、一行は停滞を余儀なくされる。

 

「私は第一高校の生徒会長を務めています、七草真由美です。この中にサニアエリー・アニムスフィアさんはいらっしゃるかしら?」

 

 自意識過剰でなければ、確実にボクの方を向いてそう言ってくる彼女はなんと、この学校の生徒会長だった。……………たしかにこんな顔していたな、と不明瞭な記憶を思い返しつつ、ボクは生徒会長さんに顔を向ける。

 

「はい、ワタシがサニアエリーです…………どうされましたか?」

「この後のお昼のご予定を聞きたいのです。どちらで食事をされますか?」

「えぇっと、この先の食堂で取ろうと思っていますが。それがなにか?」

「大変申し訳ないのですが、生徒会室でお話を、と思いまして」

「話…………?」

 

 なんのことだろうか。全くもって、生徒会長と話をする話題が─────

 

「生徒会について、です」

 

─────……………あったわ。そういえば新入生総代は生徒会入りするのが割とスタンダードで、だから司波深雪さんも生徒会に入ったんだった。

 例年では昨日の新入生代表スピーチ後のタイミングで勧誘するけど、総代のボクはスピーチを辞退したし、終わったあとに即帰宅してしまったから、今日にそのタイミングがズレてしまったんだ。

 

「生徒会………?」

 

 おっと、駿くんが不思議そうに顔を向けてくる。別に成績を騙している訳じゃないが、それはそれとして『総代は司波深雪!』というイメージを崩したくないエゴがある。

 ボクのそんな胸中を察して、キーワードだけを投入するなんて……………生徒会長、やるじゃないか。

 

 つまり、ボクの取る行動は─────

 

「生徒会長さん、御足労ありがとうございます。自分で良ければ是非、ご一緒させてください」

「えぇもちろんです。ところで生徒会長さん、じゃなくて、『七草先輩』とか『会長』でも構いませんよ?あ、なんでしたら『真由美先輩』、なんて────」

 

「あ、では『真由美先輩』とお呼びしますね。では行きましょう」

 

「………え?………あ、アニムスフィアくん!?そっちじゃないですよ!」

 

 

 会話の主導権はボクに委ねてもらおうか!生徒会長さん────真由美先輩にこれ以上掻き乱されてはたまったもんじゃないし!

 

 ボクは駿くんたちに軽く手を振って、生徒会室とは全く見当違いの方向へ足を進めたのだった。

 

 

 

 






サニアくん「ボクの胸中を察して、ボクが着いてこなければならない状況を作り出すなんて……………やるじゃん、真由美先輩(着火)」

まゆみん先輩「え、なんか凄い方向音痴なんですけどぉ!?ちょ、足はっや─────」

駿くんとその仲間たち『(あ、留学生だからか)』

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