仮面ライダーアナザーディケイド    作:@蛇足

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第1話 虫の知らせ

 

 

ああ。

 

 

またあの夢だ。

 

 

何度も繰り返し見るあの夢。

 

 

岩肌が剥き出す採石場。

 

 

夢はいつもここから始まる。

 

 

自然が作り出した足場を一歩一歩踏み進む。

 

 

高台のように下を見渡せる崖側までやってくると彼らはいる。

 

 

目の前で異形の姿をした無数の怪人たちが争っている。

 

 

拳を振るい、蹴りを喰らわせ、時にはバイクでぶつかり合って。

 

 

至る所で爆炎が上がっては消えてが繰り返される。

 

 

怪人たちはそれぞれ特有の力を使っていて。

 

 

あるものは自身の倍以上となる兵器や生き物を従わせ、またあるものはあらゆる姿の怪人に変わり蹂躙して。

 

 

夥しい攻撃の数々。

 

 

縦横無尽に広がる雄叫び。

 

 

しかしその動きは獰猛な動物のそれとは違う。

 

 

数多の混ざり合う感情がぶつかり合う中で。

 

 

特筆して大きく感じる感情が哀しみ。

 

 

何が彼らを突き動かしているのか。

 

 

何を彼らに背負わせてしまっているのか。

 

 

彼らはただただ抗えない運命に従い戦っていた。

 

 

なぜこんなことになってしまったのだろう。

 

 

皆、心の奥では繋がっているはずなのに。

 

 

瞳から溢れた涙が頬を伝い、地面に落ちる。

 

 

会ったこともない、出生すら知らない彼らのことを、まるで最初から知っていたかのように。

 

 

そんないわれのない感情になぜだか苛まれてしまう。

 

 

彼らは互いを拒絶していた。

 

 

己の世界の存続の運命を背負い、我らしか存在が許されないのだと、そんな背景が見えるような気がする。

 

 

そんな凄惨な戦場も次第に過激さが鳴りを潜めていく。

 

 

いつもならここらへんで目が覚めている。

 

 

いつも見れない決着の瞬間。

 

 

それなのにここ最近は。

 

 

夢を見ている時間が多くなっていた。

 

 

今日はどうなんだ。

 

 

目覚めるのか、それともこのまま続きを見せられるのか。

 

 

どうやら今日は後者の方のようだ。

 

 

あれほどまでいた怪人たちも、数えられるくらいまで数を減らしている。

 

 

残りは9体。

 

 

もうすぐ終焉を迎える。

 

 

そんなときに。

 

 

毎回ここで現れるんだ。

 

 

禍々しい力を身に纏ったあのマゼンタ色の怪人が。

 

 

宿命を背負いし勝ち残り続ける9体の怪人の殺意が、一斉に現れたその怪人へと向けられる。

 

 

1vs9の構図。

 

 

圧倒的な不利に見えるこの状況でヤツは気押されるどころか嘲笑って駆け出した。

 

 

遅れることなく勝ち残った9体の怪人も走り出す。

 

 

気が遠くなるほど見せつけられた戦いを通して。

 

 

僕は心の奥底から込み上げる思いを押し殺してただ一言漏らすんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………『ディケイド』…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝のニュースが予報した晴天などどこにも見当たらない、そんな重々しい雲が漂っている午後1時。

 

 

???(原因はわからずか…)

 

 

とある森林公園のベンチに1人の青年が座っていた。

手に持つ診断書に書かれた結果を読んで天を仰ぐと、果てない空をどんよりと眺める。

青年の名はー角田(かどた)ツカサ。

程よく伸びた茶色の髪に色の白い細やかな肌。

二重でクリクリした大きな目はその端正な顔立ちをより引き立たせている。

そんな彼が今イライラしている。

近くを通る通行人がわざわざ距離をとるほど人を寄せ付けないオーラを放っていた。

不機嫌。苛立ち。それとも焦りか。

どれも当てはまるが正解にしては足りない。

このイライラの根源。

それはここ最近ツカサを悩ませているある悪夢。

 

 

 

 

ツカサ「いったいどうすりゃ治るんだ…」

 

 

???&???「せーのっ…うわ!」

 

 

ツカサ「うわあ!!!」

 

 

 

 

気が滅入っているツカサの背中が不意に押しだされ、跳ねるように立ち上がる。

それを見て腹を抱えて笑うのは2人の男女。

どうやら背中を押し出したのは彼らの仕業だったようだ。

驚いている顔を顰めるツカサに笑いながら謝るのはリョウタとカンナ。

2人は共にツカサの高校時代からの友人である。

 

 

 

ツカサ「なんだおまえらかよ」

 

 

リョウタ「くくくっ。待たせて悪いな。それにしてもお前どんだけ気抜いてたんだよ」

 

 

カンナ「全く驚きすぎだって!どうしたよ浪人生?浮かない顔をしててさ。あっ。さては恋のお悩みか?ん?」

 

 

リョウタ「あっ…バカ」

 

 

ツカサ「…別にそんなんじゃねぇよ」

 

 

 

 

同級生だというのにどこか先輩風を吹かせるカンナ。

彼女はツカサの肩に肘を乗せて冷やかしてくる。

それを嫌そうに振り払うツカサ。

そんなやりとりを見てリョウタは1人苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

リョウタとカンナの肩には大学が刺繍されたバックが下げられている。

ツカサは2人から午前中は大学の入学説明会があると聞いていた。

1人時間を持て余してたツカサにとってそれは、少し妬みに近い感情を孕む事実でもあった。

 

 

 

 

リョウタ「カンナ、いくらなんでもそこは」

 

 

カンナ「え?」

 

 

ツカサ「別に。気にしてないって。2人ともおめでとう。これで君たちはこの春から立派な大学生だ」

 

 

 

ツカサは2人に向かって大袈裟な拍手を送る。

それをリョウタだけが晴れない気持ちで受け止めていた。

ツカサは合格できなかった。

志望校に落ちたのだ。

3人の中で唯一、1人だけ。

 

 

 

リョウタ「そんな他人行儀になるなよ。先生も言ってたろ。ツカサが目指していた大学は全国指折りの難関大学だって」

 

 

ツカサ「ああ。だが先生はこうも言ってた。君の学力なら決して目指せない場所じゃない。必ず合格出来るって」

 

 

リョウタ「あ、はははっ…」

 

 

 

 

なんとか話題を逸らそうとリョウタはあの手この手を尽くす。

そんな彼の頑張りなどつゆ知らずカンナはどこから上の空だ。

 

 

 

 

リョウタ「あ、あれ?ツカサが持ってるそれ、なに?」

 

 

ツカサ「あ?いや、なんでもねえ。そんなことより腹減ったわ。早く飯いk……」

 

 

 

 

 

ツカサが踵を返して歩き出そうとしたその時。

それはいた。

物陰からドきついほどの熱量を含む視線がツカサに対して降り注がれる。

ツカサの身体は固まり、冷や汗をかきはじめる。

嘘だ。

なんであいつがこんなところに。

こんなところに居るはずがない。

だってそれは夢の中で見る怪人なんだから。

 

 

 

 

リョウタ「おいツカサ。どうした?」

 

 

ツカサ「…あ?あ、腹?腹の調子が急に悪くなって。ははっ。悪いけど今日帰るわ。また今度埋め合わせさせてくれ。じゃあ!」

 

 

カンナ「ちょっと!ツカサ⁉︎」

 

 

リョウタ「ツカサ!おい!…ったく。こうなったのお前のせいだからな」

 

 

カンナ「は?なんで私?」

 

 

 

 

邪悪な視線はツカサの後を追うようについていく。

それは人混みを掻き分けものすごい速さで移動していった。

道から道へ。

そしてリョウタとカンナの横を通り過ぎていく。

しかし。

2人はその視線の持ち主に気づくことはなかった。

彼らよりも大きな身体をした異形の姿をしているというのに。

邪悪な視線もまた2人に構うことなく執拗にツカサを追いかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ツカサ「なんで。なんでだよ…」

 

 

 

街の中を走り回るツカサ。

彼はずっと邪悪な視線から振り切ろうと懸命に足を動かしていた。

けれど振り切れない。

ずっとついてくる。

振り切るどころか、その視線の濃さがより増しているようだった。

 

勘違いじゃなかったんだ。

変な夢を見るようになってから、どこからか見られている視線を感じることが多くなった気がしていた。

それがまさかこんな形で襲ってくるなんて。

逃げ回る中で邪悪な視線の数は増していた。

ひとつやふたつ。いやそれ以上。

ツカサには視線だけでなく様々な怪人たちの姿が映っていた。

 

緑と黒に色が分かれた顔をしたやつに。

白いイカみたいな顔したもの。

幽霊ようなユラユラ揺れているやつとその種類はさまざま。

 

こんなにはっきり見えるのに。

周りの人たちは誰も気づいてる様子はない。

やっぱり、視えているのは俺だけなんだ。

 

 

 

 

ツカサ「また店長に頼るしかない」

 

 

 

 

ツカサは自宅に向かっていた進路を切り替え、自身が勤めるバイト先のカフェへと足を進める。

このバイト先、カフェといっても極ありふれた形態のカフェではなく写真館も経営しているというちょっと変わったカフェで。

コーヒーと写真が大好きな店長が二足の草鞋で営む店なのだ。

この個人の趣味全開のカフェなのだが、コーヒーや写真意外にも店長がハマっている趣味がある。

それはオカルト。

ホラーや都市伝説、スピリチュアル等々全国各地を渡り歩いた店長の記録まで置かれている知る人ぞ知る名店らしい。

いろいろなお客さんから心霊相談が持ち込まれるこの場所でツカサが悩まされている原因もきっとこの類に値する。

そう確信して紹介してもらった霊媒師の診断結果について後日話し合う約束を取り付けていたのだが。

急遽前倒ししてもらう必要がありそうだ。

 

路地裏に入って奥にある味のある大きなオシャレ扉が目印。

カフェ兼写真館『ヒカリスタジオ』に辿り着くと、ツカサは重い扉に手をかけ、力を込めて開いた。

 

 

 

 

店長「いらっしゃいませ…あれ?ツカサくん?今日出勤日だっけ」

 

 

ツカサ「いえ、今日はその、以前相談させていただいた件で」

 

 

イシバシ「おーツカサくん。こんにちは」

 

 

ツカサ「こんにちは」

 

 

 

 

カランコロンと心地よいドアチャイムを響かせながら中に入ると、店長の他に背の低いおしゃれな服に身を纏ったお爺さんがひとり、コーヒーを嗜んでいた。

このお爺さんはうちの店の常連客であるイシバシさん。

ツカサがこのカフェで働くキッカケとなった、世話になっているお爺さんでもある。

そのイシバシさんが座るカウンター席を挟んで立つ癖毛モサモサヘアの最近で出て来たお腹が気になる男が店長である照本レンジ。

使い古してちっちゃくなったパツンパツンになったエプロンを着てツカサをカウンター席まで誘った。

 

 

 

 

ツカサ「すみません。お時間いただいた日はまだ先なんですが」

 

 

店長「その様子、ちょっと訳アリかな。ごめんねイシバシさん。少しばかり待っててくれますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

店長「ん〜なるほどねぇ」

 

 

 

 

ツカサが店長に相談する傍で店内には夕方の報道番組が流れていた。

真剣な面持ちでアナウンサーがニュースを伝えている。

内容はこの近所で建造物が忽然と消えたという奇妙な事件。

そんなショッキングなニュースが店内でBGMのように流れている。

ツカサは今日起きたことを打ち明けると店長が出してくれたホットミルクに手を伸ばした。

初めて店に来た時、ボロボロだったツカサが何気なく頼んだメニュー。

今じゃツカサにとって思い入れのあるホットミルクだ。

それをしばらく見つめてからツカサはゆっくりと小さく口に運んだ。

 

 

 

 

店長「まさか現実世界にまで影響が出るとは」

 

 

ツカサ「はい。自分もびっくりして何が何だか」

 

 

店長「今は?まだ気配感じる?」

 

 

ツカサ「はい。ずっと、店の外にいくつも」

 

 

店長「そう…」

 

 

イシバシ「どうしたんだいツカサくん。何かあったのか?」

 

 

 

 

イシバシさんの追求にツカサは俯いて口を閉ざし、話さない。

店長はツカサに断りを入れ、許可を得ると言葉を選んで語り出した。

 

 

 

 

店長「ディケイド…」

 

 

イシバシ「んぁ?でぃ…なんだって?」

 

 

店長「ディケイドですよイシバシさん。ここ最近ね、ツカサくんが見る夢に出てくる悪魔の名前なんだそうです。彼今、悪夢にうなされているようで」

 

 

イシバシ「へえ。悪魔のでる悪夢かい」

 

 

店長「そうです。しかも聞くと結構過激な内容なんですよ。ツカサくんが言うには同じような種族の怪人が全部で10体出て来てるらしいんですけど、名前がわかるのはそのディケイドたった1体だけなんですって。まあ熱中した分野が分野なんでこう店を営んでいると何度かその手の相談を受けてる僕ですから。何らかの糸口から専門家にコンタクトできるかなと思ったんですがね。どうもダメで。ディケイドなんて名前の悪魔、初めて聞きましたよ」

 

 

イシバシ「レンジくんでも聞いたことがないのかい。それはなかなかレアケースっちゅうやつだね」

 

 

店長「そうなんですよ。この照本レンジ、全国津々浦々語り継がれる伝説を調べ始めて早20年。もはや知らないオカルティはないと思っていたんですが。くやしい。なしくずしで頼んだ実力者である霊媒師の彼を持ってしてもなにも掴めないとは。どこかに、なにか手がかりにつながるものないかな…」

 

 

 

 

店長はキッチンから離れると店内に置いてある古い本棚の前まで来る。

そこには店長が20年近く集めた賜物であるありとあらゆるオカルト関連の手記が保管されている。

その中のひとつの古めかしい冊子を手に取り中身を広げた。

 

 

 

 

ツカサ「店長。もう大丈夫です。ありがとうございました。こんなぶっ飛んだ話、店長が親身になって聴いてくれただけで十分なんで。時間が経てば…きっと解決すると思うし」

 

 

イシバシ「そんな落ち込むことはないさ。私の亡くなった家内ね、その所謂見える人で結構な心霊現象に悩まされたことがあってな。それをレンジくんに相談したらいい先生を紹介してもらえて無事解決。そんなこともあるもんだから今はまだ解決出来なくてもこれからきっと見つけ出してくれるさ」

 

 

店長「イシバシさん。あまり買い被らないでください。たまたま好きで深めた知識が役に立っただけで、僕自身は何も」

 

 

イシバシ「何を言う。君に感謝してる人間なんてどれほどいると思ってるんだ。なあツカサくん」

 

 

店長「全く。イシバシさんは思い込むとすぐこれだからなあ。……ん?」

 

 

 

 

店長が本から目線を上げると目の前にある窓から外を訝しむように見つめた。

窓はカタカタと強い風に吹かれて揺れている。

ん?

さっきまで外はこんな風が強かっただろうか?

それになんだか空が雲に覆われてどんよりしているような気が。

 

 

 

 

イシバシ「ん?何か見つかったのかい?」

 

 

店長「いや。なんとなく天気が悪くなってきたなって。それに何だか外が騒がしくて」

 

 

イシバシ「外?」

 

 

 

 

イシバシさんが立ち上がり店長と共に窓から外を覗くと、そこにはどんよりとした雲空の最中、メインの大通りでたくさんの逃げ惑う人たちの姿があった。

 

 

 

 

店長「なにかあったんでしょうか?」

 

 

イシバシ「ちょっと見に行ってみよう」

 

 

 

 

俯いたままでいるツカサをそっとしたまま2人はカフェの外へと出る。

扉を開けて広がる外の世界は凄まじい状況と化していた。

覆われた雲からは雷雲がこだまし、強い突風が身体を襲ってくる。

予報した天気は曇りのち晴れ。

しかしこれは予報外れなんてものではなく。

まるで予想の範囲外から現れたみたいではないか。

 

 

 

 

イシバシ「な、なにがどうなってるんじゃ!」

 

 

店長「イシバシさん危険です!安全のために店の中へ!」

 

 

 

 

強い風で声が掻き消されないよう声を張ってだす。

しかしそんな大きな声を持ってしてもすぐそばにいるイシバシさんの耳には届かなかった。

視線を上にあげ、何かを見つめて茫然としている。

イシバシさんが見つめる視線の先を追って店長も見てみると…そこには。

信じられない現象が起きていた。

 

 

 

 

店長「なんだありゃ…」

 

 

 

 

ここからはるか先に見える高層ビルの更に上空。

建造物の真上に巨大で禍々しいオーロラカーテンとでも言うべき透明な覆いが高層ビルを飲み込まんと出現していたのだ。

オーロラカーテンはじわじわとビルへ下降している。

このままではビルと衝突する。

そんな容易な想像がすぐに現実となってやって来た。

目を離せぬまま見続けていると遂にオーロラカーテンは高層ビルへとぶつかった。

そして。

 

 

 

 

イシバシ「⁉︎」

 

 

店長「…!ビルが消えた…?」

 

 

 

 

ビルを飲み込んだオーロラカーテンがあった上空では空間に亀裂が入ったようなヒビがあった。

まるで人間の身体でいう怪我した部分から血が滲むように。

亀裂を中心に赤く染まったそこからわなわなと巨大な怪物が現れた。

 

 

 

 

イシバシ「…!」

 

 

店長「イシバシさん!急いで店に戻りましょう!早く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

キャスター『繰り返しお知らせ致します!17:26頃、突如上空に現れた裂け目から無数の怪物が出現しました!怪物の出現は今現在も確認されており、透明なカーテンは大きなビルを飲み込んで消えてしまったことがカメラが捉えています!消えてしまったビル。原因は現在専門家が調査中とのことですが、こちらに入ってくる情報でも町中に甚大な被害をもたらしていることが確認されています!うっ!スタジオの方でも凄まじい揺れを確認できます…!皆さん避難にはくれぐれも気をつけていただいて行動して…うわぁ!』

 

 

 

 

ツカサ「何が…どうなってるんだ」

 

 

店長「大変だツカサくん!外が今凄いことに…!」

 

 

ツカサ「リョウタとカンナたちは…?急いで向かわないと…!」

 

 

 

 

店内のテレビで外の状況を知ったツカサの元へ外から店長たちが息を切らして戻ってくる。

ドアチャイムをけたたましく鳴らして入って来た2人がツカサの元へ駆け寄ろうしたとき。

彼らに不思議な現象が襲いかかった。

 

 

 

 

ツカサ「なんだ…?」

 

 

店長「なんだ!なんだこれは!」

 

 

イシバシ「透明な壁で両断されちょる…」

 

 

 

 

ツカサと店長、イシバシさんがいる間を分けるかのように、大きな透明な壁が立ち塞がっていた。

壁をドンドンと叩いて3人が抗う。

しかし軋む音が聞こえてくるだけで全く通れる様子はなかった。

 

 

 

 

店長「マズイですよ…僕たちも早く避難しないと!ツカサくん⁉︎そこからどうにかこっちに…」

 

 

ツカサ「2人とも後ろ!」

 

 

イシバシ「⁉︎」

 

 

 

 

壁を叩いてどうにかツカサが通れる道をつくろうとする店長とイシバシさん。

そんな2人の後方から、どこから現れたのか見たこともない姿をした生物が現れた。

その姿は一言で表すなら怪人。

恐怖と嫌悪感を同時に与える怪人が今、2人の目の前にいる。

 

 

 

 

店長「なんだこいつら!一体どうやって中に…!」

 

 

イシバシ「ぐわあ!」

 

 

店長「イシバシさん!」

 

 

ツカサ「イシバシさん!店長!」

 

 

 

 

怪人の鋭利な鉤爪がイシバシさんに襲いかかった。

俊敏な動きによる大きな一撃。

しかし間一髪のところで躱わすことができた。

イシバシさんの二の腕を、犠牲にして。

 

 

 

 

イシバシ「うぐわあああ!」

 

 

 

 

傷口からは大量の血。

致命傷は避けられたが、それでも重症なのは素人が見ても一目瞭然だった。

イシバシは自分の身体を抱き抱えるように二の腕の傷口を覆う。

駆け寄った店長の腕の中に倒れて見えたその顔はみるみる青くなっていき、生気を失っていた。

壁の向こうでただ見てることしか出来ないツカサ。

今度は、そんな焦燥に駆られる彼の身に怪現象が襲いかかった。

 

 

 

 

ツカサ「店長!イシバシさん!」

 

 

???『……。……ド。どこにいますか。デ……ィド…』

 

 

 

 

物理的な距離は離れていない。

そのはずなのに。

壁を挟んだ向こうにいる店長たちとの距離が離れていく。

まるで空間と空間の間に距離ができたかのように。

 

 

 

 

ツカサ「なんか聞こえる…なんだよこれ」

 

 

 

 

それだけじゃない。

ツカサの耳に誰かが遠くで呼んでいるような声が聞こえる。

しかも直接頭に響いてくるような。

頭が、痛い。

眉を細めて苦しむツカサの前ではツカサと店長たちを両断した壁がどんどんと小さくなっていた。

それと同時に店長たちの姿がぼやけていき、やがて遂に見えなくなってしまった。

 

 

 

 

ツカサ「店長…イシバシさん…聞こえたら返事を…!くそ…何がどうなってる…」

 

 

 

 

こめかみを押さえるツカサを飲み込んだオーロラカーテンはしばらく白い空間に彼を閉じ込めた後、森林公園に連れて来た。

明瞭になる視界に外の様子が露わになる。

空は淀んだ厚い雲に覆われている。

そしてここでもまたツカサと同じように突如として襲いかかった異常事態に阿鼻叫喚している人たちで溢れかえっていた。

 

 

 

 

「きゃー!」

 

 

「助けてくれ!」

 

 

ツカサ「そ、そんな…」

 

 

 

 

混乱の最中でここにもいたのは異形の怪人たち。

 

ボロボロの包帯を巻いた黒いミイラの怪人。

 

槍を持って襲いかかる石のような身体をした怪人。

 

そして身体が機械でできたアンドロイド。

 

様々な怪人たちが逃げ惑う人々を容赦なく襲っている。

中にはその場で倒れ動かない人もちらほらと。

 

 

 

 

ツカサ「こんな、こんなあっけなくやって来るのか…。こんなもんなのか!世界の、終わりっていうのは…」

 

 

 

 

思わず目を背けたくなるほどの凄惨な事態。

目の前で脅威が襲ってくる。

そしてそれはツカサも例外ではない。

 

 

 

 

ツカサ「…!」

 

 

 

 

自分に向けられた殺気を察知し空を見上げたツカサ。

遥か先の上空に、それはいた。

耳を覆いたくなるほどの大きな奇声をあげて羽ばたいているのは大型の怪物。

その姿はかつて地球に存在していたとされる古代生物、『ケツァルコアトルス』の姿に酷似していた。

 

 

 

 

ツカサ「嘘だろ…」

 

 

 

 

ケツァルコアトルスの怪物ツカサに狙いを定めると猛スピードで突っ込んできた。

超急降下で迫って来たケツァルコアトルスは三つに分かれた巨大な嘴を開き、ツカサを飲み込もうと地面を抉って襲ってくる。

 

 

 

 

ツカサ「ぐっ!!!」

 

 

 

 

襲ってくる敵の姿を事前に捉えていたおかげで脚が縺れながらも避けることが出来た。

獲物を捉え損ねたケツァルコアトルスの怪物は再び上空へと旋回し今一度ツカサに狙いを定めるようだ。

その場で羽ばたき、ホバリングしている。

地面を転がり躱したツカサ。

両者の間に睨み合う気の長い数秒間が訪れる。

どのタイミングで動き出すのか。

いつ襲いかかってくるかわからない。

 

 

 

 

ツカサ「まずい…」

 

 

 

 

ケツァルコアトルスの怪物は先ほどよりも速いスピードで突っ込んできた。

体勢を整える間もなくやってくる怪物。

みるみるその姿が大きくなり、ツカサを飲み込まんと口を大きく開いた。

 

 

 

 

ツカサ「死ぬ…!」

 

 

 

 

逃げる余裕もなくただ腕で顔を覆うだけとなったツカサ。

このまま起こる自分の行く末を悟ったその時だった。

ツカサの目の前でオーロラカーテンが出現し、そこから1台のバイクが飛んで現れた。

 

ブオオオオンと豪快なエンジン音を轟かせ現れたマゼンタ色のバイク。

そのバイクが宙を描いてケツァルコアトルスの怪物に体当たりした。

その様子はまるでスローモーションのよう。

軌道を変えられ身体の自由を失った怪物は修正する間も無いままなす術なくツカサの隣へ突っ込んで倒れた。

 

 

 

 

ツカサ「…⁉︎」

 

???「ようやく見つけました…ディケイド」

 

 

 

 

華麗な運転捌きでバイクを停車させ、搭乗者はバイクから降りてくる。

ヘルメットを外しこちらにやってくるその人物はボロボロの洋装でツカサより小柄の、肩まで髪を伸ばした女だった。

 

 

 

 

ツカサ「……。」

 

 

怪しい女「あちこち探し回って大変でした。これほど滅びの現象が進行するまで時間がかかるとは思いませんでしたが…今からならまだなんとか間に合う。とにかくこれを」

 

 

 

 

突然現れた女は警戒しているツカサに向けて2つのアイテムを差し出した。

ひとつは何かを収納するための白い箱。そしてもうひとつはバイクと同じマゼンタ色したバックルのようなものだった。

 

 

 

 

ツカサ「なんだいきなり。何者だお前」

 

 

怪しい女「これはバックルとライドブッカー。見たことあるでしょう」

 

 

ツカサ「俺の質問に答えろ。この世界に何が起きている!あんた何か知ってるんだろ!」

 

 

 

 

突然現れた女がこの異常事態の真相を知っている。

直感でそう思ったツカサが女に執拗に迫る。

女がツカサの問いかけに答えようとした時、隣で倒れていたケツァルコアトルスの怪物が奇声をあげて起き上がった。

 

グロロロロロ…!

 

未だ意識が朦朧とするのか、頭を揺らしながらただ両羽をブンブンと無造作に振り回し暴れている。

先に動いたのは座っていたツカサではなくバイクに乗って現れた女だった。

ツカサから離れ、振り返るとケツァルコアトルスの怪物に向き直り、腕を大きく下から上へ振りかぶって対象へと伸ばした。

 

 

 

 

怪しい女「ぐっ…!」

 

 

 

 

するとその動きに合わせてオーロラカーテンが対象へと伸びてゆく。

オーロラカーテンは怪物の元へ静かに襲いかかると、その姿を飲みこみ跡形もなく消してしまった。

 

 

 

 

ツカサ「これは…」

 

 

怪しい女「はあはあ…この力も、もう…」

 

 

 

 

片膝をついて女は体勢を崩した。

肩で大きく息をして呼吸を整えている。

先ほどの能力、よほど力を使うのかかなり疲弊しているようだった。

そんな女の側でツカサは今起きた出来事に驚きを隠せずにいた。

女が出現させたもの。

あれはツカサと店長も飲み込まれたものと同じオーロラカーテン。

そのオーロラカーテンをこの女は自由自在に操った…。

警戒心と懐疑心が膨れ上がるツカサに、女は再度詰め寄るとライドブッカーとバックルを押し付けた。

 

 

 

 

怪しい女「…さあディケイド。今がその時です。早くこのバックルを手に取り…変身してこの世界を…」

 

 

ツカサ「ディケイド…。なんで俺がそんな…」

 

 

怪しい女「どうやらまだ事態を把握しきれてないようですね。…仕方ありません。この現象、あなたの使命、この世界で起きていること等々。説明…………しようと思いましたが、どうやらそれはこれらを片付けた後のようですね」

 

 

ツカサ「くそ。まだコイツらうじゃうじゃと!」

 

 

 

 

2人の視線の先にはゆらゆらと集る怪人の群れがいた。

怪人の見た目は身体が全身機械でできているアンドロイド。

ビジュアルには細かな差はあるものの、共通しているのは胸元にあるプレートな数字がふられている点。

ざっと数えて10体くらいか。

こちらに向かってくる怪人たちを睨みつけているツカサを守るように女は両者の間にサッと立ち上がる。

ツカサは怪人たちへの殺意に苛まれると同時に、女に向けられた『ディケイド』という言葉が頭からこびりついて離れなかった。

ディケイド。

それはツカサを悩まされている悪夢に出てくる悪魔の名前。

何故この女がその名を知っているのか。

分からない。

滅びの現象といいディケイドのことといい、この女からますます聞き出さなくてはならないことが増えてきた。

 

 

 

 

ツカサ「ちゃんと…説明してくれるんだよな?」

 

 

怪しい女「……。」

 

 

ツカサ「約束だぞ」

 

 

 

 

ツカサは立ち上がると目の前に立つ女を怪人の群れから守るように彼女の前に出た。

 

 

 

ツカサ「俺は知ってる。これがどんなもので使うとどうなるか」

 

 

 

これは夢で見たあの悪魔が巻いていたベルト。

つまりヤツの力の一端とも言える。

圧倒的な力で自身と似たような怪人たちをねじ伏せていたあの悪魔だ。

これを使えば自分にも同じような力を使えるはず。

指を咥えて見ているだけの自分に。

こんな自分に。

一石を投じることができるなら。

だったら。

 

 

 

 

ツカサ「世界を救うため。平和な日常を取り戻すため。俺は悪魔に魂を売る」

 

 

 

 

ツカサは視線を上げて怪人の群れを睨みつけると右手に持つマゼンタのバックルを勢いよく腹に打ち付けた。

バックルからベルトが展開し、ツカサの腰に巻きつく。

左の骨盤あたりに現れたホルダーにライドブッカーを納めると、中身を開きカードを1枚取り出した。

取り出したカードには見覚えのあるあの悪魔の顔があしらえられていた。

ツカサはカードを前に突き出すと声をあげてバックルへと挿入した。

 

 

 

 

ツカサ「変身!」

 

 

 

 

『KAMEN RIDE!DECADE!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回。仮面ライダーアナザーディケイド。




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