仮面ライダーアナザーディケイド    作:@蛇足

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第3話 世界の消滅

 

 

 

怪しい女「着きましたよ」

 

 

Aディケイド「……。」

 

 

怪しい女「…滅びの現象はまだ続いています。心苦しいでしょうが今は戦ってもらわなくては」

 

 

Aディケイド「慰めのつもりか?優しいこった」

 

 

怪しい女「顔見知りの方達ですか?」

 

 

Aディケイド「…そんなところだ」

 

 

 

 

カーテンを潜り、続いてやってきた場所は闇夜の裏路地。

高層ビルとビルの間に挟まれる、これまた人目につかない場所。

少しの間項垂れていたAディケイドだったが、顔を上げるとここがどこなのか気がつく。

ここは店長のカフェから目と鼻の先にある場所だ。

そして発見はこれだけに留まらない。

それは時間。

日が沈みきって真夜中であろう事がわかってしまうくらい暗い。

先ほどまでの日が出ていた状況が嘘のように変わってしまっている。

 

 

 

 

Aディケイド「えっ…ここは…どこなんだ?」

 

 

怪しい女「まずいですね。天候だけじゃなく時間まで狂い出してる。もう一刻の猶予もない」

 

 

 

 

女についていきながら進んでいくと行き止まりに出くわした。

と、同時に悍ましい光景が目に入る。

女は一瞬だけ目を背けるが、すぐに戻してその光景を受け入れた。

 

 

 

 

怪しい女「なんとも…悲惨ですね」

 

 

Aディケイド「ああ。これは…死体の山か」

 

 

 

 

2人の目の前には怪人に襲われ命を落とした人たちがゴミのように捨てられていた。

怪人たちがわざわざ集めたのだろうか。

無惨な形で山のように積まれている。

 

 

 

 

Aディケイド「酷ぇ趣味してやがる。今度の敵はいったいなんだ?」

 

 

 

 

屍の山に意識が向けられている時だった。

女の背後に暗闇から魔の手が忍び寄った。

気配無く伸びてきたその攻撃に女は反応を見せるのの、あまりにも素早い攻撃に何もできず地に伏してしまう。

 

 

 

 

怪しい女「ウッ!」

 

 

Aディケイド「なんだ⁉︎」

 

 

 

 

雷が落ちる音が絶えず聞こえてくる。

気配を感じられない上にこの暗さ。ましてや雷鳴で音でも敵を感知できない。

最悪の条件。

Aディケイドは倒れた女のもとに駆け寄るとゆっくりと上体を起こしてあげた。

 

 

 

Aディケイド「大丈夫か?」

 

 

怪しい女「…お気遣いどうも」

 

 

Aディケイド「はっ。その威勢の良さなら問題ないな」

 

 

 

倒れ込んだ女だったが心配の必要はなさそうだ。

Aディケイドは立ち上がり、姿の見えない敵に意識を向ける。

暗闇に潜んでいた敵がビルの窓が照らす僅かな明かりから、存在を認識できた。

目視で敵を捉え、構えの姿勢をとるAディケイド。

そんな敵の姿を見てこれ以上の暗躍は出来ないと判断したのか、怪人がぞろぞろと光が照らすところへ正体を表した。

 

 

 

 

Aディケイド「あれがおまえを殴ったやつの正体か」

 

 

 

 

しなやかなフォルムにガタイのいい身体。

身体的特徴は様々だが、共通して相手の身体に見られるのは星座のような模様。

そしてその星座怪人の周りを俊敏に動き回る全身真っ黒怪人が複数。

その在り方はまるで主人に仕える家来のよう。

 

 

 

 

Aディケイド「あの星座と…忍者みたいなやつはなんだ」

 

 

怪しい女「あれはゾディアーツ。アストロスイッチでコズミックエナジーのチャネルを開き、そのエネルギーをマテリアライズしてニュークリーチャーへ変貌する…」

 

 

Aディケイド「…もういい。倒せば良いってことだけはわかった」

 

 

 

 

正面にはゾディアーツとダスタード。背後には屍の山。

退路を経たれた上に1本道の狭いフィールド。

加えて時間帯は夜で更に天候は雨。

なんとも戦うにしては不利な状況だ。

 

 

 

 

怪しい女「ヘマしないでくださいよ。いつまでも落ち込んでいたらその間に…」

 

 

Aディケイド「余計なお世話だ。いいから黙ってアドバイスしろ」

 

 

怪しい女「……。ゾディアーツにはフォーゼの力が有効です」

 

 

Aディケイド「またわかんねぇ単語が出てきたよ」

 

 

 

 

小言を言いながらAディケイドはライドブッカーへ手を伸ばす。

取り出したカードには『FOURZE』と書かれた文字と怪人の絵が。

人差し指と中指で挟み『これか?』と確認するように女へ揺らせて見せる。

のっぺりとした表情で女が頷くと、ディケイドはカードを展開したバックルへしなやかに装填した。

 

 

 

 

ネオディケイドライバー『KAMEN RIDE!FOURZE!』

 

 

 

 

カードを装填したAディケイドの全身を、煌びやかなエネルギーと強力なエア噴射が包みこむ。

身を纏って出てきたその姿は全身真っ白の宇宙服を連想させる形相。

名を仮面ライダーAディケイドフォーゼ。

Aディケイドフォーゼは駆け出すと、背中に搭載されたジェットパックユニットとスラストマニューバーで浮上して相手の懐へ殴りこんだ。

相手から繰り出される素早い攻撃を躱し、反撃を図る。

付いていけない無理な身体裁きもフォーゼの機動力で上手くいなし、粗末な拳ながら少しずつダスタードへ負荷を掛けていく。

しかし。

暗いフィールドが災いしてか肝心の親玉であるゾディアーツへの決定打にあともう一手足りない。

 

 

 

 

Aディケイドフォーゼ「くそ。ちょこまかと…」

 

 

怪しい女「フォーゼは40近くの種類のサブウェポンが備わっています。それらをうまく活用して打開してください」

 

 

Aディケイドフォーゼ「うまく…!活用してって…!言われてもな…!」

 

 

 

 

素早く繰り出される攻撃を躱しながら悪態をつくAディケイドフォーゼ。

体の動きに合わせて発せられる言葉は身体の動きや呼吸と共にぶつ切りの発音になる。

間合いをとってうまく距離を取ることに成功するとAディケイドフォーゼはまた新しくカードを取り出し、バックルへ装填した。

 

 

 

 

ネオディケドライバー『ATTACK RIDE!FLASH!』

 

 

Aディケイドフォーゼ「フラッシュ?いいんじゃないか?」

 

 

 

 

Aディケイドフォーゼの右腕に電球を模したモジュールが備わった。

考えるより先に腕を上げて周辺一体を光で照らす。

すると、暗闇に身を潜めていたダスタードたちの姿が露呈した。

眩しそうに目の当たりを覆うような仕草を見せている。

その隙にAディケイドフォーゼは距離を詰めると、フラッシュモジュールで強烈な一撃をお見舞いした。

 

 

 

 

Aディケイドフォーゼ「いいぞ。もっと他には無いのか?」

 

 

怪しい女「あまり無茶をしないでくださいよ。不慣れな行動は自分の首を絞めることに…」

 

 

ネオディケイドライバー『ATTACK RIDE!HOPPING!』

 

 

怪しい女「……。」

 

 

 

 

興奮した様子で次のカードを装填したAディケイドフォーゼ。

バックルから読み込まれた音声が発せられると、今度は左足にピンク色したホッピングが現れた。

 

 

 

 

Aディケイドフォーゼ「ん?次はバネか…うわぁ!」

 

 

 

 

装備されたホッピングモジュールが勝手に縮んだかと思うと、Aディケイドフォーゼの身体を軽々と持ち上げた。

動き始めたホッピングは止まることを知らず、四方八方に跳ね回ってゆく。

 

 

 

 

怪しい女「言わんこっちゃない」

 

 

Aディケイドフォーゼ「くそ!止まれ!」

 

 

 

 

このままでは敵を攻撃できず逆に格好の餌食に…なるかと思いきや。

不規則な動きが返って的を絞ることを難しくさせ、ゾディアーツたちが思うように動かないでいる。

それどころかフラッシュによって炙り出されたダスタードたちへ勢いよく突っ込んで行ったことで、想定外の撃破を狙えた。

 

 

 

 

怪しい女「なんとそそっかしい戦い方なのでしょう」

 

 

Aディケイドフォーゼ「ははっ!…これが発想の逆転って奴だ」

 

 

 

何に対しての逆転なのかはわからないが、Aディケイドフォーゼの選択により功を奏したこの展開。

無茶苦茶な動きで身体の自由を奪われていたが、最後のダスタードを撃破すると、備わったモジュールが消えてアスファルトに叩きつけられた。

スタミナを奪われ女の目の前で大の字になって伸びるAディケイドフォーゼ。

その瞬間カードの効果が切れ、モザイクが溶けるように元の姿へ戻ってしまった。

射出されたカードはAディケイドの顔横へ落ちると、まるで炭酸抜けていくコーラのようにシュワシュワと音を立て、力を失っていった。

残りの敵はゾディアーツのみ。

動けないAディケイドへヤツらはゆっくりと滲み寄る。

自身の不安が的中し、苦虫を噛み潰した表情をする女。

軋むような痛みが続く腕を上げて、何かアクション起こそうとした動作を見せた、その時。

女が驚いた顔をして天を見上げた。

 

 

 

 

怪しい女「…終わった」

 

 

Aディケイド「はあ…はあ…あ?」

 

 

 

 

何かを感じ取った女が視線を上に向けたまま肩を落としたのをAディケイドは見逃さなかった。

女の感知はゾディアーツにも備わっているのか、今まで取れていた統率が嘘のように乱れている。

刹那。

すぐ後ろでビルが大爆発を起こした。

離れたところにいたAディケイドと女は爆風から顔を覆うだけで済んだが、ゾディアーツたちは降り注ぐ瓦礫に被弾し瞬く間にその姿が見えなくなっていった。

 

 

 

 

Aディケイド「おい…なにが起こった?」

 

 

 

 

尋常じゃない揺れの地震が地上を襲う。

先程の爆発を皮切りに周辺から数多の爆発が発生する。

極め付けは夥しい数の怪物が地上から、上空から。

現れ世界を貪り始めた。

 

 

 

Aディケイド「おい!何が起きてる!終わったって何がだ!」

 

 

怪しい女「滅びの現象が…佳境を迎えました…もうすぐこの世界は消滅してしまいます…私がいた世界と同じように…」

 

 

Aディケイド「…?お前がいた世界と同じだと?」

 

 

怪しい女「なす術もなかった…あまりにもあっという間で…激しく…大地を…文化を…人々を飲み込んで…」

 

 

Aディケイド「すべてを消滅させる滅びの現象なのに、なんでお前は生きてんだ」

 

 

怪しい女「…え?」

 

 

 

 

呆けていた女にAディケイドの疑問が突き刺さる。

そうだ。世界を消した滅びの現象。

目の前で消えていく様を目撃する最中で私は何をしたのか。

自身の使命を全うするべく奔走していた自分。

ありったけの言葉を並べても及ばないほどの衝撃を、この身に浴びたあの瞬間。

その時私は何していたんだ。

 

 

 

 

怪しい女「そうだ。まだこんなところで終われない。私の目的はディケイドを誕生させたその先にある…」

 

 

Aディケイド「……。」

 

 

怪しい女「ディケイド!あなたの周りにヒカリ!又はエイジロウの名を持つ人物はいませんか⁉︎ その人物がこの世界の完全消滅を救ってくれる唯一の可能性となるかもしれません!」

 

 

Aディケイド「ヒカリ…?エイジロウ…?」

 

 

 

 

混沌の最中、鬼気迫る女から問われたAディケイド。

自身の身の回りにそのような名前を持つ人物は居たか?

いや、居ない。

親族にも同級生にも、今まで関わった人物にそんな名前の人物なんて…

 

 

 

 

aディケイド「いや待てよ…」

 

 

 

 

『エイジロウくん』。

そう。

たしかイシバシさんが店長のことをエイジロウと呼んでいたような…。

 

 

 

 

Aディケイド「いる…。バイト先の店長が確かエイジロウって名前だ!」

 

 

怪しい女「急ぎましょう!彼が居ればまだ繋ぎ止められる…!」

 

 

 

 

ずっと続く地響きと揺れに倒れ込んでいた足腰を上げるとAディケイドの発言から2人はすぐそばにある『ヒカリスタジオ』を目指し走り出した。

少しでも早く。エイジロウに出会うため。

そして、その場所に無事居ることだけを祈り無我夢中で身体を動かす。

しかしそんな焦燥を嘲笑うかのように、道中に怪物がゾロゾロと阻んでくる。

 

 

 

 

怪しい女「くそ!こんなときに!」

 

 

Aディケイド「お前らの相手をしている暇はねえ!さっさと道を開けやがれ!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

滅びの現象が滅びへと移り変わり、Aディケイドと女がヒカリスタジオを目指して走り出した頃。

その様子を崩れゆく高層ビルから座ってみる1人の男がいた。

 

 

 

 

???「すごい。あっという間だったなあ」

 

 

 

 

どこのものかわからない白い民族衣装のような、独特な服装を身に纏い、その両手には分厚い和傘と分厚い本。

どちらも片手で持つのは苦労しそうな大きさだが、おおよそ細身と取れる体格のその男はなんの苦しい顔もせず持ち上げている。

 

 

 

 

 

???「ちがうちがう。感心するのはそこじゃない。本題なのはそう。ディケイド。でも…あれディケイドだよね? 俺か知ってるディケイドとちょっと違うような気がするんだけど…」

 

 

 

 

男はさしていた和傘を肩に置くと空いた手で頭をポリポリと掻いた。

そして反対側の手に持っていた本を開き視線を落とす。

開いたページには見開きいっぱいに、見たことない文字で内容が綴られている。

そんな本を少し読んで閉じると、男はゆっくりと立ち上がった。

そして背後に出現したオーロラカーテンに向かってトボトボと歩き出す。

 

 

 

???「あの方にはなんて伝えようか。まあ、よくある異分子の発生だし他の時間に影響ないだろうけど…万が一のこともあるしなあ。まだ報告しないにせよ、少しは探っておいたほうがいいかな」

 

 

 

 

ぶつぶつと独り言を呟きながら足を進めていると、オーロラカーテンの前で立ち止まる。

そしてもう一度地上で奔走している彼らへ視線を落とした。

先程まで見ていたAディケイド。

しかし今見ているのは、Aディケイドではなくその後ろを着いていく自身と同じ白装束を身に纏っている女。

Aディケイドを見ていた時とは違い、疎ましさを孕む目をしていた。

 

 

 

 

???「人の管轄に手を出して何を企んでるあの女…。まあ、別にどうでもいいか」

 

 

 

 

冷ややかな視線を向けた後、すぐに男は前を見て歩き直す。

そしてオーロラカーテンの中へ消えてゆくと、ビルの崩壊と共に消滅した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

Aディケイド「あれだ!」

 

 

 

幾度となく起こる爆発に囲まれながら、湧いて出てくる怪物たちを払いのけていると、ようやく2人は目的地までやってきた。

ツカサが先程までいた写真館。

店長の継続的な掃除と補修から年季の入っていた店も綺麗な状態に保たれていたのだが、ほかの例に漏れず、この惨状に耐えきることはできなかった模様。

屋根は崩れ、壁は抉れている。

ところどころ見受けられる決壊している箇所。

骨組みがむき出しになっているほか、入口に立てかけられていた手書きで書かれたメニューも無惨に叩き割られていた。

 

 

 

 

怪しい女「……。」

 

 

Aディケイド「…これだけ世界がめちゃくちゃになった中で良くこれだけ保ってもんだ。店長、いると良いんだが…」

 

 

 

 

外れかけてる扉にAディケイドが手をかけ開けると、女と共に中へ入る。

中は外よりも酷い有様になっていた。

テーブルや椅子はスクラップとなってひっくり返っており、店長自慢のコレクションも粉々になっている。荒れた有様になった店内を外から舞い込んできたであろう埃が被り、ものの数時間で廃墟と化していた。

続いて入ってきた女はその様子を目の当たりにすると何も発さず、ただ眉間に皺を寄せる。

 

 

 

 

Aディケイド「店長!居ませんか!」

 

 

 

 

張り上げた声がこだまする。

しばらく返事を待つものの、反応は無し。

ならばとAディケイドはもう一度腹に力を込めて声を張り上げた。

 

 

 

 

Aディケイド「店長俺です!ツカサです!ここに居ませんか!」

 

 

店長「ツカサくん…?」

 

 

 

 

Aディケイドの呼びかけに、だいぶ遅れて反応が返ってきた。

カウンター席の裏から憔悴した様子の店長がカゆっくりと姿を現す。

この短い間で店長はひどくやつれてしまっていた。

ほおがこけて覇気がない。

そんな店長の目が声の主人を探して彷徨う。

その直後、Aディケイドの姿を見ると、目が見開かれ、大きな声が店内に木霊した。

 

 

 

店長「うわぁ!バ、バケモノ!」

 

 

Aディケイド「えっ…」

 

 

店長「来るな!来るなぁ!」

 

 

Aディケイド「店長落ち着いてください!俺です!ツカサです!」

 

 

 

パニックに陥った店長にAディケイドの説得など全く耳に届いていない。

極限状態から陥ったショックから通常からは考えられない店長の姿を見てAディケイドもまた混乱に陥る。

 

 

 

 

怪しい女「ディケイド。変身を」

 

 

Aディケイド「え…あ、そういうことか…」

 

 

 

 

マゼンタ色をした怪人が腰に巻かれたバックルを横に開くとその姿が人の姿に変わった。そこには店長がずっと待っていた、角田ツカサの姿が。最初こそ驚いた店長もその正体がツカサがだとわかると、目に大きな涙を浮かべ、ツカサを思いっきり抱き寄せた。

 

 

 

 

店長「よかったよ…ツカサくん。無事で…!どこも怪我はない?」

 

 

ツカサ「はい。俺はなんとも…」

 

店長「嘘つけ。ボロボロじゃないか!もう…なんでこんなになるまで。それになんでこんなにびちょびちょなのよ…」

 

ツカサ「へへ…。実はいろいろありまして…」

 

店長「ちょっとツカサくん⁉︎」

 

 

ツカサは店長の無事を確認できて安心したのか、突然身体中の力が抜けて倒れ込んだ。腕の中で気を失ったツカサをおぶると、店長はそばで立っていた女に向けて頭を下げた。

 

 

店長「ありがとうございます。君がツカサくんを助けてくれたんですね」

 

???「ええ。でも私も彼に助けてもらいました」

 

店長「そうか…。ツカサくんが」

 

???「……。」

 

店長「迷惑かけてなかったですか?彼こう見えて人付き合いに不器用なところあるから」

 

???「いや…特に」

 

 

女はこれまでのツカサの生意気な態度が脳裏に駆け巡ったが口には出さないことにした。

 

 

店長「彼に代わって礼を言わせてください。あの、よかったらうちの店に寄って行ってくれませんか。僕喫茶店営んでて。彼を助けてくれたお礼をさせてください」

 

???「いや別にそこまでしてもらわなくても」

 

店長「いいんです。いいんです。命の恩人ですから。それに…彼のあの姿についても聞きたいですし」

 

???「……。」

 

 

店長はニッコリとした笑顔を女に向けて頷くと『写真館 ヒカリスタジオ』へと歩き出した。女は店長の後ろ姿を見て上げていた口角を下げてた。びちょびちょでぐったりしているツカサを軽々しく連れていた。女は店長の姿を見て評価をガラリと変えたようだ。

 

 

???「最初は気が弱くて鈍臭い奴かと思っていたが…なかなか食えない男のようだな」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ヒカリスタジオへと戻ってきた3人。店長の意気揚々とした発言で無事戻ってきたわけだが。

 

 

???「……。」

 

店長「はははっ。そうだよね。この状況なんだし、うちに被害があっても不思議じゃないか…」

 

 

ヒカリスタジオは滅びの現象による怪物たちの侵攻によるためか店の至る所に被害のあとが見受けられた。

 

 

店長「でもまぁここじゃなんだし…。中入ってよ」

 

 

扉に手を掛け煙っぽくなった店内へ入る店長。女も少し間を空けるとゆっくりと中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ツカサ「…。」

 

 

永らく眠ってしまっていたのだろうか。気を失っていたツカサの意識が戻る。目を覚ますと見慣れた天井が広がっていることに気づいた。いつのまにひかりスタジオの休憩室にいなんて。窓から見える外の世界は夜も更けているため、もしかしたらだいぶ時間が経っているのかもしれない。部屋から出ると表には店長と、カウンター席に女が座っていた。女はツカサと目が合ったが、コーヒーを啜り声をかけてくる事はしなかった。

 

 

店長「あっ。ツカサくん」

 

ツカサ「すみません店長。俺…店長に話したいことが…」

 

店長「いいよいいよ全然。店の中は見ての通りボロボロになってるけど、これは用意できたからさ。話より先にまずはこれ」

 

 

店長はツカサの話を遮って白いカップを持ってきた。ツカサは受け取って見てみると、そこにはツカサのお気に入りのホットミルクが注がれていた。

 

 

店長「ほら。飲んで。話しはその後で」

 

ツカサ「…ありがとうございます」

 

 

ツカサはカウンター席まで回ると女の隣の席へと座った。

 

 

店長「ちょっとツカサくん?」

 

ツカサ「店長。すみません。俺、店長に話したいことと同じくらいコイツに聞きたいことががたくさんあるんです」

 

店長「でも…」

 

 

まだ休んでいた方が良いのでは。そう心配する店長だったがツカサは満身創痍ながらも食い下がる様子は見せなかった。そんなツカサを見て店長は小夜に出していた空いたコーヒーカップに新しく注ぐと休憩室の方へと去っていった。

 

 

ツカサ「それじゃあ…話してくれるか。アンタは誰で…『ディケイド』とは何なんだ。そして今何が起こっている?わかるように説明してくれ」

 

 

女は店長が注いだ煎れたてのコーヒーを口に運ぶとそっとソーサーの上へ置いた。

 

 

小夜「私の名前は門矢小夜。あなたの方の住むこの世界とは別の世界からやってきました」

 

ツカサ「別の世界?」

 

小夜「えぇ。ちなみにあなたが先程まで戦った怪人たちも当然ですが別の世界からやってきた存在です」

 

ツカサ「……。」

 

小夜「疑わないんですか?この話」

 

ツカサ「信じるに足る証拠はもうこの目で見てきた。アイツらはアンタの世界から連れてきたのか?」

 

小夜「いえ。彼らもまたそれぞれ別の世界の存在です。移動した先々でそれぞれ別の力を使うよう言ったのは、その怪人と同様の世界にいる仮面ライダーの力をぶつけることが相手にとって有効だからです」

 

ツカサ「仮面ライダーだと?」

 

小夜「ええ。9つの世界に存在する救世主の名前です」

 

 

小夜が指をスナップするとツカサの意識がほんのり遠のいていった。そして再び意識がはっきりするとあたりの景色が一変していた。催眠術にでも掛かったのか、プラネタリウムのように360°宇宙空間が広がっている。宙に浮くように佇むツカサの目の前には同じく宙に浮くように立つ小夜の姿があった。

 

 

小夜『見えますか。あれが』

 

 

小夜が指す方。そこには9つもの地球がぶつかりそうな程近い距離で存在していた。

 

 

ツカサ『あれはなんだ、地球に見えるが…』

 

小夜『ええ。地球です』

 

ツカサ『そんな。なんで9つも地球が』

 

小夜『あれから…更に9つの世界が生まれ、新たなる9人の仮面ライダーが誕生しました』

 

ツカサ『ちょっと待て。いきなりなんだ?』

 

 

少し様子のおかしくなった小夜だがツカサの言葉を気に止めずに続ける。

 

 

小夜『それらは独立した別々の物語。しかし物語は融合し、そのために世界はひとつになろうとしています。やがて全ての世界は消滅してしまいます』

 

ツカサ『いい加減にしろ。言ってるだろ。わかるように説明してくれと』

 

小夜『ディケイド。あなたは9つの世界を旅しなければなりません。それが世界を救う…たった一つの方法です』

 

 

ツカサの頭にイメージが流れ込んでくる。それは夢で見たあの景色と全く同じもの。石切場でツカサが変身した物と同じディケイドの目の前に9つもの正体不明のシルエットがこちらを見ている。手元にあるライダーカードにもイメージ同様9人の姿が無くなったカードがある。もしかしたらこれが9つの世界に居る仮面ライダーという存在か。

 

 

ツカサ『世界を旅することがこの世界を守ることになる…。なるほど。この世界に何が起きててどう解決するかはわかった。でも…どうしてそれが俺なんだ』

 

小夜『それは…あなた"も"世界を破壊する存在だからです。創造は破壊からしか生まれませんからね。残念ながら』

 

 

小夜の言葉を最後にツカサは再び意識が遠のく感覚を覚える。そして再び意識がはっきりしてくるとヒカリスタジオのカウンター席に戻ってきていた。

 

 

小夜「理解してもらえましたか?」

 

ツカサ「まだ話は終わっていない。アンタのことと『ディケイド』のことがなんなのか、まだ何もわかっていない。俺は夢で見てたんだ。この『ディケイド』という存在を何度も何度も!」

 

 

興奮したツカサはふらついて倒れ込むとカウンター席の椅子が音を立てて転がった。大きな音を聞いて奥から飛び出してきた店長に身体を支えられツカサは立ち上がると小夜に対して思いっきり睨みつけた。

 

 

小夜「私が何者であるかはどうだっていい。『ディケイド』がなんなのかはこれから始まる旅の中でわかることでしょう」

 

ツカサ「何…だと…」

 

店長「ツカサくん。今日はもう休もう。まだ体力だって回復しきれてないし…雨に打たれた身体を早く温めないと風邪ひいちゃう」

 

小夜「それはいい考えです。私もこの店長の好意に甘えさせていただきました。とてもいい湯でしたよ。アナタもぜひそうした方がいい」

 

ツカサ「はぁ…はぁ…店長、俺…お風呂借ります…」

 

 

ツカサはふらつきながら壁を伝って歩き出すと奥の部屋へと消えていった。店の中には小夜と店長の2人きり。店長は倒れたカウンター席を立て直していると席に座ってコーヒーを飲んでいる小夜に向かって声をかけた。

 

 

店長「小夜さん。私もその旅に同行しますよ。今みたいにツカサくんが倒れてしまったら、介抱する人が必要ですから」

 

小夜「別に。好きになさってください。仮にあなたにその気が無くとも、この『ヒカリスタジオ』のオーナーであるあなたは断ることなどできませんがね」

 

店長「…ではもう夜も遅いので失礼します。カップは飲み終わったらシンクの中に水を入れて置いておいて下さい。では」

 

 

一度も小夜を見る事なく会話を終えると店長は店の2階へと消えていった。小夜もまた店長の方を見ることはせず、只々ゆっくりと入れられたコーヒーを飲んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小夜「おはようございます。よく眠れましたか?」

 

ツカサ「…ああ」

 

 

明くる日。表の店内に出てきたツカサと小夜。2人とも昨日は大雨に長時間打たれていたが特に風邪の症状も出ることなく元気に回復したようだった。

 

 

小夜「では早速、別の世界へ参るとしましょう」

 

ツカサ「ちょっと待て。そういや別の世界の移動ってどうやるんだよ。もしかしてアンタの場所を移動する力で行くのか?」

 

小夜「…着いてきて下さい」

 

 

小夜はそう言うと何故か店の奥の方へと消えていった。慌ててツカサが付いていくと小夜はカフェ専用の部屋からでて行き、その隣の写真館の撮影ブースの部屋に入って行った。

 

 

ツカサ「おい。どうしてこの部屋に?」

 

小夜「では参りますよ。世界を救う旅の始まり。さて。第一に訪れる世界はいったいどんな所なんでしょうか」

 

ツカサ「なんだよ。ここで何かやろうってのか!」

 

 

小夜は腕を伸ばして目を瞑ると動かなくなった。微かに振動したような感覚を覚える。しかしひとりでに部屋の背景ロールに降りたことだけを除けば、特に特段変わったことは起こらなかった。

 

 

ツカサ「お…おい。早くしろ。部屋がドバーンって飛ぶなら早めに言えよ」

 

小夜「着きました」

 

ツカサ「は?嘘だろ?」

 

小夜「なんで嘘をつく理由がありますか。外に出て見てご覧なさい」

 

 

ツカサは半信半疑になりながら部屋の外へと出ていく。撮影部屋の中央にてひとりでに下がった背景ロール。そこには普段の撮影の時とは違う別の背景ロールが下げられていた。店長は今起きてきたのか寝癖で更に渦巻く紙を引っ提げて撮影室の前を通った。

 

 

店長「あれ…おはよう…朝早いね。おお…?」

 

 

眠い目を擦りながら入ってきた店長。メガネをかけてない裸眼でもぼんやりと見慣れない物があることに気付いたようだ。初めて見るその背景ロールは店の所有物ではなかった。普段の撮影で使うバックスクリーンとはまるで違う。その背景ロールにはでっかく空へと伸びる電波塔とその周りを飛び交うカラフルなUSBメモリが描かれていた。

 

 

店長「なんだ…これ…」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

???「フッ!オラァ!」

 

???「ぐっ…バカな…。この力は地球の本棚(ほしのほんだな)には存在しない記憶のはず…。それなのに…その力に適合した私がお前如きに負けることなどあっていいはずが無い…!」

 

???「『お前如き』だ? そのセリフ、俺がたった1人に見えてるようにしか聞こえないぜ」

 

???「なんだと?」

 

???『ショウタロウだけじゃない。私もいる!』

 

???「それだけじゃない。風が!街が!地球が!…この地球(ほし)に刻まれた全ての記憶が俺たちの中にある!お前のような強大な悪でも平和願う人々の力で打ち砕く!それが…』

 

???「それが…仮面ライダーだとでも言うのか! …ふざけるな。私は認めない…認めてたまるかぁ!」

 

???『いくよショウタロウ!これが最後だ。決めるならここしかない!』

 

???「ああ、いくぞ!最後の…」

 

???『ええ…最後の!』

 

 

 

 

 

『JOKER!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

 

 

『XTREME!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

 

 

 

???&???「ダブルジョーカーエクストリーム!!!」

 

 

 

 

 

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