ツカサ「マジかよ」
小夜「どうです?初めて別の世界に来た感想は?」
ツカサ「……。アンタの早着替えに驚いた」
レトロな街並みに一際目立つ巨大風車の建物。ここから離れた距離にあるであろうその建物は存在感を遺憾無く発揮していた。その姿は背景ロールの絵にあった電波塔と同じ。ヒカリスタジオの外観も本来の姿より古風な出立ちに変わっていた。そんな数々の驚きをも凌駕したのが中から出てきた小夜の服装。
ツカサ「それ
小夜「インバネスコートです」
ツカサ「その前後にツバのついてるキャップは?」
小夜「ディアストーカーハット」
ツカサ「じゃあ口に咥えているパイプは?」
小夜「フーッ……。これはシャボン玉です」
ツカサ「なんじゃそりゃ!!!!」
いったいいつ着替えたのか、小夜の服装は白が基調の特徴的な服装からガラッと変わり小説やアニメでよく見る典型的な探偵の服装になっていた。
小夜「それだけではありません。これを見て下さい」
そう言って小夜は懐から名刺を取り出す。その名刺にはこう書かれていた。
ツカサ「『敏腕私立探偵…
小夜「名前も違います。どうやらこれがこの世界での私の役割のようです」
ツカサ「役割?なんだよそれ」
窓に反射する自分の姿を小夜は体を揺らしながら見ている。その姿はまるで試着室で着た服と自分の相性を確認するように。
小夜「いままで訪れた世界でもこうして役割を与えられていました。『ここで誰と会い、何を成すのか』。この世界では…『探偵となって仮面ライダーを探せ』ってことですね」
ツカサ「へー…ん?ちょっと待てよ。ということはアンタ、行く先々で何をするのか知らなかったんじゃないだろうな…」
小夜はツカサと目を合わせる。そしてじっと見つめ合うと小夜は口角をニィっと上げた。悪魔のようなその笑顔。それは探偵というよりも探偵の宿敵がする悪役の顔のようだった。
ツカサ「はぁ…。旅の内容といいガイドといい、とんでもないツアーに引っかかったな…ん?」
小夜「……?」
店長「んー。んー。繋がらないなぁ」
頭を抱えていたツカサの元へラジオを手にした店長が出てきた。ラジオを宙でウロウロさせていて、何かを探している様子。
ツカサ「店長?どうしたんですか」
店長「いやぁね。店のテレビが映らなかったからさ、ラジオでニュース聞けるかと思って奥から取り出したんだけど。全然繋がらなくて」
ツカサ「随分古いラジオですね。しかもデザインも店長の趣味全開」
ラジオのつまみを何度もいじる店長。するとばちばちと鳴るノイズの中に女の人の声が聞こえてきた。少しずつノイズが取り除かれチューニングが合わせてゆく。すると意気揚々と話すラジオDJの声がクリアに聞こえてきた。
女DJ『
ソウキチ『よろしくお願いします』
店長「お!つながった!」
店長はラジオがつながったことがとても嬉しいようだ。
子供のように跳ねて喜んでいる。
そんな店長の様子に微笑みながら、ツカサは既にラジオに耳を傾けていた小夜に倣いこの世界がどんな世界なのか手がかり探るため傾聴を始めた。
ワカナ『本日のテーマは『忘れられない存在、時間、思い出』。番組ではまだまだお便り募集してますのでどしどしお待ちしてます。では参りましょう〜まずはこちら。ラジオネーム【北風小僧の将太朗】さん。ありがと〜。【私には今でも忘れられない存在がいます。それは仮面ライダーです】』
ツカサ「…!」
小夜「…。」
店長「あっ!今仮面ライダーって言ったよね⁉︎」
ワカナ『【長く続いた戦いも終わり、ガイアメモリの脅威に終止符が打たれ、ようやく待ち望んだ平和がやってきました。しかしそれは同時に仮面ライダーの存在が必要なくなってしまったとも言えます】』
店長「ほらやっぱり!仮面ライダーって言った!」
ツカサ&小夜「シーッ!黙って!」
ワカナ『【ドーパントから平和を守ってくれた仮面ライダーはこの街の希望です。幾度となく僕達を助けてくれたと言うのにお礼の一言も言えていません。もう仮面ライダーはこのまま現れないのでしょうか。出来ることならまた会いたい。ワカナさんはどう思われますか?】…とのことです。なるほどね〜。私も仮面ライダーに助けられたことあるから、もうその姿を見ることが無くなると思うとやっぱり哀しくなるな……………」
店長「あれ?あれれ?聞こえなくなっちゃったよ」
チューニングして調子の良かった店長のラジオが再び聞こえなくなってしまった。酷くなったノイズに手こずりながらも店長があの手この手で回復を試みようとする後ろで小夜がぼそっと独り言のように呟いた。
小夜「なるほど。『ガイアメモリ』に『ドーパント』。どうやらここは『仮面ライダーW』の世界のようですね」
ツカサ「すごいな。今のでわかったのか」
小夜「ええ。これから巡る世界の知識ついてはある程度頭に入れてありますから」
ツカサ「……。」
小夜「なんです?ずっとこちらを見て」
ツカサ「いやなにも。ただ、あまりにも慣れた動きだったからな。いったいどれほどの世界を旅してきたんだろうと思って」
小夜「フッ。また私の詮索ですか?」
ツカサ「ああ。アンタの正体が見えない以上信用も信頼も出来たもんじゃない。そういう意味ではあの怪人たちと同様に警戒している」
小夜「ふふっ。なるほど。私は私の役割のため。あなたは自分の世界を救うため。利害関係が一致してるからこそついてきていると」
ツカサ「ああ。そういうことだ」
小夜「ほんと、子供のくせに生意気なんですから。これからの長旅。アナタとはいい関係が築けそうだ」
ツカサ「同感だ。これからはいつでも声をかけて来てもいいぞ」
にこやかな顔で交わされる会話。されど両者その目に輝きは全くない。
お互い腹の底を探ろうと意識を尖らせている。そんなばちばちと交わされる目線を小夜の方からふらっと外すと、彼女は何処かへ吸い寄せられるように足を動かし始めた。ツカサの真後ろ。吸い寄せられた先にはなんて事のない町のイベントや広告が集う掲示板があった。
小夜「……。」
ツカサ「あっ。これって」
小夜「先ほどラジオで言ってた『風都スカイタワー』の夏祭りのお知らせですね」
掲示板に貼られた広告の中には先ほどラジオで出てきた『風都スカイタワー』のチラシがあった。今週末に予定されている風都スカイタワーで開かれる夏祭りイベント。その広告の端っこにはこれまた先ほど名前が出てきた『佐川ソウキチ』という探偵の名前もあった。
ツカサ「『ガイアメモリ犯罪に特化した凄腕私立探偵。その実力はあの仮面ライダーの活躍に一役買ったと言わしめるほどのモノ!』だってよ。おいおいマジかよ。この強面のおっさんそんなすげーのか」
小夜「取り敢えずここに向かって見ましょうか。この世界で何をするのか。それがわかれば仮面ライダーに会えるかもしれませんしね」
小夜は掲示板から離れると、いったいどこから持って来たのかわからないマシンネオディケイダーに近づいていく。ヘルメットを取り出しエンジンをかけるとマシンネオディケイダーは豪快な排気音を轟かせた。
ツカサ「おい。どこ行くんだよ。夏祭りは今週末なんだろ。今行っても誰も居ねぇって」
小夜「ちゃんとラジオを聞いてなかったんですか。あの番組は生放送。そして収録先は風都スカイタワー。今から向かえばまだ間に合うかもしれません」
ツカサ「うるせーな。そんなん気づいてたに決まってるだろ」
ツカサは不貞腐れた様子を見せながら、小夜に新たなヘルメットを要求して受け取ったヘルメットを被り始めた。
ツカサ「現状仮面ライダーに最も近い男か。なんだかゾクゾクしてきたな」
小夜「無駄口叩かずしっかり捕まってて下さい。振り落とされても知りませんよ」
店長「あれ。2人共どこか行くの?」
ずっとラジオの調整と格闘していた店長がどこかへ向かおうとする2人に気付き声をかけてきた。発進しようとしたマシンネオディケイダーに近づく店長に後ろに乗ったツカサが行き先を告げた。
ツカサ「早速今から仮面ライダーを探してきます。俺は俺に与えられた使命を全うするため頑張ってきますんで。じゃあ」
後ろに人を乗せてもなお、マシンネオディケイダーは十分な排気音を轟かせていた。とてつもない馬力を誇るマシンネオディケイダーは小夜とツカサを乗せると軽々と発進していった。
ーーーーーーーーーー
ドーム状に広がる密閉空間。
そこには壁一面に取り付けられたモニターと精密機械が天井まで迫るほど設置されていた。
窓はなくドアもない光の届かない部屋。
唯一ある出入り口は中央にあるエレベーターだけ。そのエレベーターから1人、サングラスをかけた人物が降りてきた。
???「どうだ。"X bicker"の開発状況は」
部屋中のモニターと精密機械を前に約20名程の研究員が黙々と作業を行っている中、その中のリーダーと思われる1人の男がエレベーターから降りてきた人物を出迎えた。
リーダーの男「おお先生。わざわざ御足労頂きありがとうございます。計画は順調に進んでいます。現在最終段階に入りましたので
先生「…おお。そうか」
先生と呼ばれた人物はサングラスを外して中央エレベーターの裏へと進んでゆく。
そこには花束のような形状をした装置が組み立てられていて、そこから伸びる大量の導線は部屋にある大量のモニターと精密機械へとつながっていた。そしてその装置にはキリストの
先生「存分に成果を発揮してくれよ。仮面ライダーの片割れよ…」
進めている計画が順調に事を運んでいることを確認した先生は、サングラスをかけると研究員たちが待つ正面へと戻ってきた。
リーダーの男「如何でしたか?」
下へ向かうエレベーターを呼び出しながら、先生は白衣の研究員の問いかけに対して背中を向けて答えた。
先生「ああ。あれなら皆から崇められる天の使いとして見えるだろう。大衆の注意を惹きつけ計画を実行する。実に楽しみだ」
リーダーの男「ありがとうございます。この後はどちらへ?」
先生「野暮用をな。こちらも最終段階に入る前に今一度悩みの種を精算しておこうと思ってね」
リーダーの男「それは以前仰っていた…仮面ライダーのもう片割れの完全抹消でしょうか」
先生「……。」
研究員は黙ったままの先生に対して更なる進言を行う。
リーダーの男「お言葉ですが先生。奴が生存している可能性は無いのではないでしょうか?我々は皆あの“聖戦”をここから見届けていましたが、あらゆる可能性を加味しても
先生「だが、私の元に奴の死亡が確認された報告は届いていない。それはすなわち奴が完全に死んだとは言えないだろう。『99%の確率で死んでいるから納得しろ』と?そんな数字で私が満足するとでも言うのか」
リーダーの男「そんな、滅相もございません。ただ仮に生きていたとしても、仮面ライダーの片割れはここにいる。我々の手の中にある以上変身は出来ないのだから、奴は何も……ヴッ⁉︎」
のうのうと語る研究員の喉元を先生の腕が掴んで持ち上げた。十分離れていた間合いを振り向いただけで詰めてきたその瞬時の行動に、他の研究員たちからの驚きの声が漏れる。
リーダーの男「先生…ナ…何ヲ…!」
先生「あまり失望させないでくれたまえ。私はね。人を見る目には自身があるんだ。君の卓越した頭脳と忠誠心の深さを私がここまで育てて上げたというのに…今の発言はいただけない。大きくなったその力を自分の力だと勘違いしているのかな?」
リーダーの男「ソ…ソンナトンデモナイ……!」
先生「ならば自身の立場を改めて見つめ直し励みなさい。忘れてはいないだろ?我れらの主人の敗北を。手の込んだ計画を悉く潰され、日に日に力をつけてゆく仮面ライダーに対して主人はどうしていた?慢心していたな。彼らすら手に余る地球の記憶を手に入れたことで。負けるはずないと鷹を括ってしまったんだ。その結果どうだ?主人は敗れた。負けたのだ!だから私は決して侮らない。例え1人でも、変身できなくても。奴がこの世から居なくなったとわかるまで。私は決して手を抜かない。わかってくれたかな?」
リーダーの男「ハイ…何モ…ゴザイマセン…。ゴホ!ゴホッ!」
先生「それはよかった。君が賢い人間でほんとよかったよ」
持ち上げた身体から手を離すと研究員は崩れ落ちながらえずいた。そんな様子を非常に冷めた目で見下ろしていると、呼んでいたエレベーターが到着した。
先生は中に入ってボタンを押す。
彼を見送る研究員たちが全員忠誠の証を示す。
扉が閉まり、彼の姿が見えなくなるまで研究員たちは誰1人崩すことなく忠誠の証を示していた。
次回。仮面ライダーアナザーディケイド。
「仮面ライダーW。この街の悪から平和を守った仮面ライダーです」
「またドーパントか。まだ残りがいやがったとは」
「お二人さんこの街の人じゃないね」
「善良な市民を代表して告ぐ。今すぐ無駄な抵抗をやめて武装を解きなさい」
「ちょっとちょっと。どうなってるんだよ!」
第4話 Wの世界/話題を攫うダブルを探せ
すべてを破壊し、すべてを繋げ。