倉野「すまん遅くなった。」
???「倉野さん。一体どこへ行ってたんですか」
倉野「ちょっと野暮用があってな。それでどうだ
真刃「いえ…それが」
風都署内のとある取調室の一室。
現在ツカサは風都署の刑事から取調べを受けていた。
ここにきてからどれくらい時間が経ったのだろうか。
事態は一進一退を繰り返し、難航している様子。
それもそのはず。
真刃「あの角田ツカサと名乗る人物ですが、自分の名前は名乗るこそすれど、他に言ってることがめちゃくちゃでして…」
倉野「めちゃくちゃ?」
真刃「はい。何でも『俺は別の世界からやってきた人間だ』とかなんとか宣ってて」
倉野「はあ…。そう言う類の相手ね…」
倉野の視線の先にはマジックミラー越しに映るツカサの姿があった。
ここに来て何度も同じ説明をされたのにも関わらず、まるで初めて物事を話すかのような元気の良さで身振り手振りを使い、自分の身の潔白を証明している。
時折、『俺はドーパントじゃねぇ!』という叫び声が聞こえてくる。
真刃「ガイアメモリを使った痕跡はありませんでした。今取調べにて得られた情報を元に、現在身元の確認を急がせてます。あと、ガイアメモリこそ有りませんでしたが、このような奇妙なものを持っていて…」
そう倉野の部下が取り出したのは証拠品を収めるときに使う収集キット。
その中にはネオディケイドライバーのバックルが入っていた。
倉野「こりゃなんだ。ピンクの…おもちゃか何かか?」
真刃「それもわかっていません。過去の犯罪データから該当するものがあるかどうか調べています」
倉野「こりゃ骨が折れそうだな。『ドーパントと思われる怪物がドーパントを退治してる』なんて通報があって行ってみたら、退治した当人はドーパントじゃないなんて。こんな事例は前代未聞だ」
真刃「私情のもつれから当事者同士のいざこざにガイアメモリが用いられた例は過去にありましたが、今回はその特徴とは一致しないんですよね。それどころかガイアメモリはおろか、相手との接点もない。今回彼が行った行為は言うなれば、ガイアメモリ犯罪から市民を守った正義の行動。まるで仮面ライダーと同じことをしたみたいで…」
倉野「…なに?」
真刃「倉野警部補⁉︎なにを⁉︎」
部下の何気なく漏らした発言に倉野はかなりの怒りを見せて胸ぐらを掴んだ。
倉野「お前は今までいったいなにをしてきたんだ?俺たちはあの仮面ライダーと一緒に協力してガイアメモリ犯罪撲滅に日々尽力してきたんだろうが。こんなやつがあの仮面ライダーと同等だと?笑わせるな!」
真刃「申し訳ありません!別にそれ程強い意味があった訳では…」
倉野「…くっ。すまない」
同業者としてか、仲間意識があるからか。
ツカサのことを仮面ライダーと同一視されることを非常に嫌う様子を見せた倉野。
倉野「俺は認めねえ。ヤツが仮面ライダーだなんてな」
このツカサの執拗な取り調べはまだまだ続くことになる。
そう思われていた。
しかし、ひょんなことから取り調べは唐突に終わりを迎える。
ツカサが解放されたのはそれから1時間後のことであった。
一方その頃小夜は。
風都スカイタワーで声を掛けてきた男と共に、『写真館 ヒカリスタジオ』へとやってきていた。
ただならぬ雰囲気を纏い1人帰ってきた小夜の隣に、見知らぬ男が居たのを見て、店長は漠然とした何かを察すると特に深入りをせず迎え入れた。
大人しく席に座った小夜に対して落ち着かない様子を見せる男。
終始店をキョロキョロしている。
そこに2人が注文したドリンクが到着した。
小夜はブラックコーヒー。
男にはホットミルクが届いた。
男「こんなところに喫茶店があるなんて知らなかったな」
店長「うち、こう見えて喫茶店だけじゃなくて、写真館もやってるんですよ。もし良かったらそちらも見ていってください。なんか撮影の機会がありましたら、ぜひ!」
小夜「……。」
こんな状況でも店の宣伝を欠かさない店長を見てすかさず小夜は睨みつけた。
凍てつく視線を喰らい店長がわかりやすく肩をすくめると、カウンターの奥へと消えていく。
店内では再び復旧したであろう店長の私物ラジオから元気いい声をした番組が流れていた。
小夜「それで名前は?」
ショウタロウ「ああ。俺は佐川ショウタロウ。職業は学生。先ほどはいきなり声をかけてしまいすまなかった」
小夜「いえ別に。私はこういうものです」
小夜は誇らしげな顔で懐から名刺を取り出すとショウタロウの目の前に差し出した。
ショウタロウ「『私立探偵 森谷アキコ』…。探偵だったのか」
小夜「ええ。『敏腕の』私立探偵ですよ」
ショウタロウ「へぇ。随分若くて幼い探偵なんだな。なるほど…これなら話が早い…」
小夜はショウタロウの言葉に2点ほど引っかかって、込み上がる感情を落ち着かせて辛抱した。
そしてより引っかかった『話が早い』と言う発言について追及することにする。
小夜「話が早いとはどういう意味です?私たちに近づいたことが何か関係があるのですか」
ショウタロウ「ああそうだ。探偵なら尚都合がいいから」
小夜「……?」
ショウタロウ「あんたら仮面ライダーを探してるんだろ?俺は知っているぞ。仮面ライダーがどこにいるのか」
小夜「え?それは本当ですか?」
ショウタロウ「その情報を成功報酬として調査の依頼を頼みたい。探偵のアンタなら自分の畑で欲しい情報が手に入る。これほど美味しい話はないだろ?」
突如舞い降りた仮面ライダーの手がかりを掴むチャンス。
小夜からしたら願ってもない機会だが。
どうしてこの男がそんな事を言ってきたのか。
小夜は依頼の内容を聞いてから内容を飲むか決めることにした。
小夜「街の人間も知らない仮面ライダーの居場所をいち大学生が知ってるとは思えませんが…こちらも手詰まりですからね。あの強面の探偵に話を聞こうと思ってましたが…まぁとりあえず話だけでも伺いましょう」
ショウタロウ「ふっ。話が早くて助かる」
ショウタロウが少し誇るような表情を浮かべると今度は彼が懐へ手を伸ばした。
取り出したのはかなりゴツゴツとした形の青色のカメラ。
撮り溜められてたフォルダを開き小夜に写真を見せてくる。
そこにはショウタロウの他、白髪混じりの男と一緒に派手な髪色をした10代前半と思われる女の子の姿が映っていた。
ショウタロウ「依頼したいのはこの子の奪還だ。」
小夜「奪還?」
ショウタロウ「ああ。この女の子。名前はレモーラ。うるさくて生意気で自信家で鼻につく奴だけど。好奇心旺盛で可愛げのある天真爛漫な子なんだ。そんなレモーラがつい1週間くらい前に拐われた」
小夜「なんと。それはまた大事件ですね」
ショウタロウ「拐ったヤツもどこにいるかも目処がついてる。拐ったのは
澱みなく淡々と。
意外にも多くの情報が手に入ってる概要を無駄のない語りで続けるショウタロウ。
その中でどこか焦りのようなものを感じた小夜。
ただその違和感はあまりにも小さなものだったため、小夜は特に留めることなく流した。
小夜「概要は把握しました。ですが、どうしてそこまで情報を掴んでて助けを求める先が私なんです?私からこんなこというのも変ですが、どこの誰かもわからない探偵よりも、仮面ライダーとともにドーパント犯罪に尽力した警察の方々の方が公的権力もあるし、多いに信頼できるのでは?」
ショウタロウ「いや。警察には頼らない。というより頼れない。理由は言わない」
小夜「……。」
ショウタロウ「頼む。俺に協力してくれ。アンタの他アンタと一緒にいたあの男の力も借りたい。というより本命はそっちだ。敵の懐に潜りこむにはそれ相応の対策が必要だからな。丸腰で行っては一筋縄じゃ行かない」
ショウタロウは立ち上がると小夜へ深々と頭を下げる。
『ツカサの力を借りたい』。
ショウタロウが風都スカイタワーでツカサとドーパント対峙していた姿を見ているため、間違いなく借りたい力はディケイドとしてのもののはず。
ということはこちらに仇をなす存在にドーパントが絡んでくる可能性があるということ。
中野という男がまさかそんな人物だと思わなかったが、これだけの証拠を見せられるとな。
唯一警察ではなく小夜に頼む点どうも腑に落ちないが。
さて。
小夜はこれまでの話を聞いてどんな決断を行うのか。
小夜「良いでしょう。乗り掛かった船という言葉があります。貴方の想い人を助け出したあかつきには、必ず仮面ライダーの居場所を教えてもらいますからね」
ショウタロウ「本当か!助かる。感謝する…!」
小夜「ですが肝心の彼がいない。貴方も見ていたからわかるかと思いますが、彼は今警察に居ます。そこから連れ出すのは中々容易じゃないですよ」
ショウタロウ「その点は心配いらない。こう見えて俺警察には顔が効くんだ。『超常犯罪捜査課』とあればなおさらな」
小夜「ほう。あなた…ただの大学生じゃなさそうですね」
意気揚々と話すショウタロウへ発破をかける小夜。
そんな小夜の言動を肯定も否定もせずに、ショウタロウは向き直って
微笑んだ。
ショウタロウ「俺もあなたに一言。俺とレモーラはそんな関係じゃない。俺にとってレモーラは…大切な相棒だ」
小夜「相棒…ですか」
2人は席を立つと勘定を終えて店をでた。
そしてショウタロウが黒と緑を基調としたデザインのバイクに跨ると、小夜もまた彼の後を追うにマシンネオディケイダーに跨りバイクを走らせた。
ーーーーーーーーーー
リーダーの男「先生どうされたんです!どうして急に計画の実行を早めるなんて…」
先生「やむを得ない事態に陥った!まさかここまでやって来て…あの悪魔が姿を現すとは…!」
風都スカイタワーのある隠れ部屋の中。
大人数の構成員を束ね、大掛かりな計画の舵を取るほどの腕っぷしを持つ総統ともあろう人物がまるで子供のように慌てふためいている。
今までで石橋を叩いて渡って来た男がこのような姿を見るのは始めてのことだった。
リーダーの男「悪魔とはなんです⁉︎ それに計画の実行はまだできる段階ではないのは先生が1番ご存じのはず…!」
先生「やらねば…やらねばならぬのだ…!今すぐこの
リーダーの男「先生!一度落ち着かれては⁉︎先生!先生!…中野先生!」
音も灯りを通さない密閉された部屋の中で、中野の部下の声がこだまする。
緻密に練り上げた装置と計画をこの段階で無理やり稼働させようとするほどの焦りを見せるとは、中野が恐れている悪魔とはいったいどういう存在なのか。
中野の指示で多数の研究員が動き回る中、"X bicker"に括りつけられた少女『レモーラ』が微かに意識を吹き返す。
レモーラ「ショウタロウ…助けて…ショウタロウ…」
朦朧とする意識の中、誰にも届かない悲痛の叫びが真っ白になった口から溢れる。
騒然とした現場からは殺伐とした雰囲気の中、時間が流れていった。
次回。仮面ライダーアナザーディケイド。
「風都スカイタワー?」
「ええ。ここで彼に恩返しする。そういう約束なんですが…」
「アンタらにはただレモーラを助け出してくれる手助けさえしてくれれば充分だ」
「中野先生…」
「こんなところで再会しようとなるとはな」
「レモーラ…待ってろ…今すぐに」
「おい待て!ショウタロウ!」
第6話 Wの世界/その男、焦燥につき
すべてを破壊し、すべてを繋げ。