風都署内。受付前。
ツカサを迎えに来た小夜とショウタロウは彼の姿が現れるまで受付で今か今かと待っているところだった。
小夜「……。」
ショウタロウ「どうしたんですかアキコさん。ソワソワして」
小夜「あの時彼を連れて行った『超常犯罪捜査課』の倉野という刑事と顔見知りだったんですね。口ぶりからしてあなたがお世話になったという訳ではなさそうですが…どういう関係ですか?」
ショウタロウ「簡単にいうなら父親と顔見知りだ。高校時代の同級生って言ってたかな。今でも職業柄付き合いがあって、それこそガイアメモリ犯罪ではしょっちゅう顔を合わせてたらしい」
小夜「父親…?」
ショウタロウ「ああ。俺の父親もアンタと同じ探偵なんだ。名前は佐川ソウキチ。あの時風都スカイタワーでラジオをしていた、ガイアメモリ犯罪に特化した探偵だよ。俺はそのソウキチの息子なんだ」
ショウタロウの発言に小夜のジト目が開かれる。
小夜とツカサがコンタクトを取ろうとした佐川ソウキチに息子がいたとは。
そしてその息子が目の前にいる佐川ショウタロウだなんて。
奇妙な偶然に驚きつつも小夜はこの所業のカラクリに気付き納得した様な顔をした。
小夜「なるほど。それでこんな所業が」
ショウタロウ「こんな手荒な真似は初めてだがな」
小夜「となると、益々謎が浮かび上がりますね。どうしてガイアメモリ犯罪のスペシャリストである父親よりもこの私に助けを乞いたのか。そしてどうして彼の…ディケイドの力を借りたいと言ったのか」
そう小夜が『彼の』という言葉に合わせて指した目線の先。
奥から見えるのは、婦警に連れられとぼとぼとした足取りでやってくるツカサの姿が。
ショウタロウは小夜を見向きもせず、じっとこちらにやってくるツカサを見ていた。
ショウタロウ「ディケイド?」
小夜「あそこで見ていましたよね。彼が変身した姿を」
ショウタロウ「ああ。あれか」
ショウタロウはどこか物思いにふけると我に返り小夜を見つめた。
ショウタロウ「余計な詮索はしなくていい。アンタらにはただレモーラを助け出してくれる手助けさえしてくれれば充分だ」
小夜「……。」
ツカサがやってくると同時にショウタロウとの会話に一区切りつく。婦警に連れてこられ解放されたツカサは無表情のまま小夜とお互いを視線で交わした。
ツカサ「いきなりこんな所連れてかれて根も葉もないこと言われて…気が狂うかと思った」
小夜「だいぶやつれたようですね。あなたにはいいクスリになったんじゃないですか」
紆余曲折あったがツカサと小夜がやっと合流した。
そしてツカサがショウタロウの存在に気づくとショウタロウの方から軽く頭を下げる。
ツカサ「この男前は誰?」
小夜「それは移動しながらお教えします。たいぶ時間を食わされましたから」
ショウタロウ「だな。もうすぐ閉館時間になる。急がないと」
ツカサ「はっ?おい。ちょっ……」
まだ何か言いたげなツカサをよそに2人は駆け足で外へと向かう。
2人の背中を追いかけながら、ツカサはどこか呼吸の合う2人に複雑な心情を抱きながら小夜から渡されたヘルメットを被る。
そして小夜とツカサがマシンネオディケイダーに、ショウタロウは自前の黒と緑を基調としたバイクに跨ると薄暗くなった風都の街並みを颯爽と駆け出していった。
ーーーーーーーーーー
ツカサ「風都スカイタワー?またここか」
小夜「ええ。ここで彼に恩返しする。そういう約束なんですが…」
閉館時間はとっくに過ぎていたのか、照明は落ちていた。昼間の賑やかだった時間が嘘のように辺りは静寂に包まれていた。
ツカサ「どうすんだよ。ショ・ウ・タ・ロ・ウくん。もう遅いから明日来て…」
ショウタロウ「ん…?ちょっと待て」
ツカサの言葉を制してショウタロウが視線を向けるその先に。
正面の入り口ではなく、裏の従業員用の通用口から出入りする怪しげな男たちの姿があった。
ツカサ「おい。なんだあれ」
ショウタロウ「明日なんて待ってられるか…今すぐにでもレモーラを…!」
小夜「ちょっと、ショウタロウくん…!」
ツカサ「アイツ勝手に中に!俺達も行くぞ!」
ーーーーーーーーーー
風都スカイタワーの隠し部屋。
研究員たちが血眼になって業務に勤しんでいる中、1人の研究員が貧乏ゆすりを起こして座る中野の元へ報告を行った。
中野「どうした⁉︎ 完成はまだか⁉︎」
「ご安心を!もう間も無く"X bicker"は完成します。ですが先ほどネズミが何匹かここに潜り込んできたようで…」
研究員が差し出したタブレットには館内に至る所に仕掛けられてる監視カメラの映像が映し出されていた。
そしてその中のひとつに非常階段を使って登るツカサと小夜とショウタロウの姿が写っている。
中野「かまわん!お前がどうにかしろ!それよりも早く"X bicker"の完成を急げ!」
「…わかりました。中野先生」
タブレットを閉じ立ち上がった研究員。
研究員は懐から中野から与えられたガイアメモリを取り出すと忍び込んだ害虫駆除に向かい歩き出す。
何かに恐怖し、ずっと怯えている総統。
その彼に先程の研究員の姿はみじんも映っていなかった。
ツカサ達に向かった研究員も夜通し作業にあたる研究員も不安な目を中野に向ける。
いつもと様子が違うボスを見て研究員たちの間に疑心の念が蔓延り始めていた。
一方そのころ。
非常階段を使って最上階を目指すショウタロウとツカサたち。
ツカサと小夜は今、先を駆け上がるショウタロウの後を追いかけていた。
ショウタロウ「レモーラ…待ってろ…今すぐに」
ツカサ「おい待て!ショウタロウ!」
研究員「ここから先は通さないぞ。仮面ライダー」
ショウタロウ&ツカサ&小夜「…⁉︎」
高さ20m付近まで辿り着いて、第一展望フロアへ辿り着いたとき。
3人の前に夥しい数の研究員たちが立ちはだかった。
その1番前に立つは中野に指示を受けた研究員。
彼ら全員の手には皆禍々しい形をしたガイアメモリが握られていた。
『MASQUERRADE』
研究員たちがガイアメモリのガイアウィスパーを轟かして自身の身体に突き刺す。
するとその姿が異形な骸骨の姿に変わった。
上から下から。
非常階段という狭いところに複数のマスカレイドドーパントがわいて現れた。
小夜「…!」
ツカサ「…!あぶねぇ!」
小夜に向かって1体のマスカレイドドーパントが襲いかかった。
それに対して小夜は腕を突き出し反撃しようとする素振りを見せるが、何も起きない。
事態を見ていたツカサがすんでのところで小夜を自身の方へ引き寄せると僅かな差で相手の襲撃が空を切った。
ツカサ「何してんだ。やるならやるで派手にぶっ飛ばせよ」
小夜「…?」
困惑した顔をしていたのはむしろ小夜の方だった。
焦点の定まらない小夜を背中に匿い、戦場と化した非常階段でツカサは懐からネオディケイドライバーを取り出して自身の腹に打ちつけた。
『KAMEN RIDE』
出現したベルトから垂れ下がるライドブッカー。
そこからツカサは巧みにカードを抜き取るとバックルへと装填した。
ツカサ「変身!」
『DECADE ! 』
マスカレイドドーパント「⁉︎」
小夜へ追撃を試みようとしていたマスカレイドドーパントへAディケイドの拳が炸裂する。
初めて見る異形の相手に黒い骸骨たちがひるむ。
ショウタロウの方は一応大丈夫そうだ。
奇妙な昆虫の形をしたおもちゃを起動させて応戦している。
それどころかそのおもちゃに負けないほどの肉弾戦を繰り広げていた。
よし。まずはコイツ。
目の前にいる相手に集中することにしよう。
Aディケイド「ちょうどいい。こちとらいろいろなところへ連れまわされて鬱憤が溜まってたところなんだ。相手してもらうぞ」
Aディケイドが距離を詰めると瞬く間にマスカレイドドーパントが蹴散らされて行った。それはまるで詰将棋の如く。
非常階段にいっぱいにいた個体数もあっという間に数を減らしていった。
Aディケイド「はぁはぁ。よし。あとはお前だけだ」
マスカレイドドーパント「これだけの数を一掃するなんて…。オマエはいったい…!」
Aディケイド「おい!それ以上その先を言うな!同じ文言を警察署で何十回、何百回も…反吐が出そうだ…!」
『ATTACK RIDE ! BLAST !』
ライドブッカーを手に取るとガンモードに変え、アタックライドの力で強化された弾丸が放った。
弾丸はマスカレイドドーパントに全命中。
そして。
マスカレイドドーパント「うあああ!」
悲痛の叫びをあげてマスカレイドドーパントは倒れると小さく爆散した。
Aディケイド「はあ…。ああむしゃくしゃする!おい先を急ぐぞ!」
小夜「……。」
ショウタロウ「お、おう…」
ほぼ同時刻。風都スカイタワー正面入り口前。
闇に潜み、サイレンは鳴らさずも赤ランプを煌々と照らしながら数十台の警察車両がやってきた。
先導していた車両からは渋い顔をした坊主頭の男が部下を引き連れてやってくる。
その隣にはトレンチコートに身を包んだ険しい顔つきをした男もいた。
倉野「悪いなソウキチ。こんな時間に付き合わせて」
ソウキチ「出来ればお前から連絡なんてもらいたくなかったんだがな。だがこうして呼ばれたという事は…」
倉野「ああ。お前が掴んだネタがアタリだったということだ」
ソウキチ「そうか…」
ソウキチと倉野の表情に陰りが見られる。
2人は同じ記憶の干渉に浸っていた。
高校時代からの旧友が共に過ごした淡い時間。
勉学に励み、青春を謳歌し、恋をしてはと何をするにも楽しかった時間。
そこではかけがえのない仲間との出会いのほかに、人として尊敬出来る1人の教師との出会いもあった。
当時荒れていたソウキチと倉野に愛想をつかせることなく真摯に向き合ってくれた担任の先生。今でも思い返せば、ふわっと恩師の言葉が心に染み渡って行く。
「佐川!倉野!また警察の世話になりやがって!…全くお前らってやつは」
事の経緯は倉野がソウキチに話を持ちかけたことが始まりだった。
解体したミュージアムの残党を追いかけるも中々足取りが掴めず、困窮していた時。
藁にも縋る思いで旧友が営む探偵事務所の扉を叩いた。
そして調査報告として落ち合ったのがついこの前の風都スカイタワーでの出来事の後。
調査をするにあたって、ソウキチでも『違っていて欲しい』と思うような情報に困惑を隠せなかったが、手渡した情報を元に倉野が調べ上げたところ、確たる証拠が出たのだった。
ソウキチ&倉野「……。」
ソウキチ「中野先生…。定年退職して穏やかに過ごされてるのかと思ったら」
倉野「こんなところで再会しようとなるとはな」
ソウキチ「フッ。当時から簡単にくたばる様なタマじゃなさそうだったし。不思議じゃないが」
倉野「あんときは俺らが先生にお世話になったからな…今度は俺らが道を外した先生を正してあげないと」
ソウキチ「ああ。しっかり恩返ししなきゃな…⁉︎」
倉野「⁉︎」
突入を試みようとしていた時。
第一展望台で小さな爆発が起きた。
それはツカサが仕留めたマスカレイドドーパントが爆散したもの。
体制を整えていた警察官たちに緊迫した瞬間が訪れた。
倉野の指示のもと突入部隊が先導して中へと入っていく。
相手は元ミュージアムの幹部とその幹部を慕う構成員たち。
ガイアメモリを使った反撃がある事も想定して気を引き締めるよう、無線を通して現場の警察関係者全員に激を飛ばした。
次回。仮面ライダーアナザーディケイド。
「これが完成した"X bicker"…」
「もしかしたら中野は計画の最終段階に入ったのかもしれない…」
「君のことは前々から聞いていたよディケイド。この街を蝕む悪魔の存在だとね」
「諦めてたまるか!必ずレモーラを救いだす!」
「あとはガイアインパクトを待つのみだ!この腐った世界が生まれ変わるのを待ち侘びるがいい!」
『UNICORN』
第7話 Wの世界/相棒復活
すべてを破壊し、すべてを繋げ。