仮面ライダーアナザーディケイド    作:@蛇足

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第8話 Wの世界/相棒復活

 

 

 

階段を駆け上がりながら絶えることなく迫り来るマスカレイドドーパントたち。

それらを全て流れるように捌き切るAディケイドだったが、そんな最中先ほどから地震かと思わされるほど激しい揺れが風都スカイタワーを襲っている。

 

 

Aディケイド「くそ!埒が開かねぇなこの数!」

 

小夜「中野らしい人物はどこを探してもいない。あとはもう観光客が入れない最上階のフロアしか」

 

ショウタロウ「だったらもうそこしかない!さっきからタワーがすごい揺れてるのも気になる。もしかしたら中野は計画の最終段階に入ったのかもしれない…」

 

Aディケイド「はあ?おいなんだよそれ。聞いてないぞ!」

 

ショウタロウ「向かいながら説明する!急ぐぞ」

 

 

ツカサ達が目指す場所。

最上階のフロアでは。

完成した"X bicker"を恍惚とした表情で見上げている中野の姿があった。

その手には起動スイッチなるボタンが握られている。

中野が昔から最終目的として掲げたガイアインパクトなる計画を作動させるためのスイッチ。

あとはもう押すだけとなった今。

全てが無に帰る前にと、その最後の暇として完成したX bickerをじっと噛み締めるように見つめていた。

 

 

中野「惚れ惚れするね。完成体の"X bicker"は」

 

レモーラ「…。」

 

中野「仮面ライダーの片割れよ。君には散々苦汁を舐めさせられたね。幾度と交戦して苦しめてきた相手がこうしてあっさりとしたお別れとなるなんて込み上げるものがあるよ。レモーラよ。君は今から生まれ変わって"X bicker"の制御プログラムとなるんだ。街のため…いや。地球のために。その身を捧げて頑張っておくれ」

 

 

別れを惜しむ言葉を並べ、中野は手に持っていたスイッチを押す。

その表情は出てきた言葉と裏腹に喜びと希望に満ち溢れていた。

中野の押したスイッチに反応してレモーラの身体は緑色に発光すると姿が消えて"X bicker"へ吸い込まれる。

まるで命が吹き込まれた人形のように。

血となり肉を得た“X bicker"は中野の思いに応えるように稼働した。

 

 

中野「おお!ようやく完成した"X bicker"…!仮面ライダーの片割れ!今こその身に宿した力を解放し、この地にガイアインパクトを…」

 

???「相変わらず精が出てますね。こんな陳腐な計画のために」

 

中野「お、お前は!パイント!」

 

 

中野の感動に水を刺すようにフラっと青年が現れる。

白を基調とした独特な民族衣装を身に纏う青年。

どこから現れたのか青年は地上600m以上の高さにあるこの閉鎖フロアに姿を現した。

 

 

パイント「ご無沙汰してます。中野慶夫。ほお…これが貴方がずっと待ち望んでいた"X bicker"ですか。なんだか思ったよりチープな装置ですね」

 

中野「小僧…。いったいどこから現れた」

 

パイント「そんなことより。仮面ライダーが来ているのに、貴方は行かなくてよろしいのですか?ここの雛鳥は可哀想なくらいなまでに親鳥に従順だ。先ほどまで忙しく働いていた研究員もこうして全て出払ってしまいましたし」

 

中野「親鳥と雛鳥?アイツらとはそんな生易しい関係じゃない。ここの研究員たちはこの手で"X bicker"を創設するために募り、手塩にかけて育てた働きアリたちだ。その役目を終え用無しとなった今、最後は時間稼ぎくらい役立ってもらわんと」

 

パイント「なんと。長年信じて着いて来た"生徒たち"をこうもあっさり切り捨てるとは…。これが"洗脳"の怖さですか」

 

中野「"X bicker"を起動させれば計画は達成される。小僧がせっかくくれた"プレゼント"も使う出番はなくなるだろうよ」

 

パイント「そうだといいですね……おや。お客さんみたいですね」

 

 

パイントが中野の発言にニヒルな笑顔を見せると奥の階段から誰かが駆け上がる足音が聞こえた。聞こえる数からして3人。

それはいうまでもなくツカサとショウタロウ、そして小夜のものだった。

 

 

ショウタロウ「中野!お前の悪事もそこまでだ!」

 

中野「まさか。あの数のマスカレイドを倒してやってくるとは。そうか。後ろにいる彼が…」

 

ツカサ「よお、じいさん。俺のこと覚えてたのか」

 

中野「あの時のお嬢ちゃんもこんなところまでやってきて。なるほど。邪魔をしに来たのか。…はあ。最近の若い者はどうも反発的なやつが多い。どうして先人たちの経験や知恵を無下にするんだ…。昔は元気に溢れ従順に生きようとする子たちで溢れていたのに」

 

小夜「どいつもコイツも私の理想をわかってくれない…」

 

ツカサ「…あ?」

 

小夜「とでも言いたげな顔をしていたので。中野が」

 

 

中野は三度X bickerを見上げる。

ツカサたちの3倍近くはあろう高さがある装置に近づく彼を3人はじっと見つめる。

ただ1人佇む中野。

先程まで中野と話していたパイントという青年はいつのまにか姿を消していたようだった。

 

 

中野「久しぶりだね仮面ライダー。この装置が見えるかい?」

 

ツカサ「…?」

 

ショウタロウ「あれは…"X bicker"」

 

小夜「それってショウタロウくんが言ってた、ガイアインパクトを起こすための稼働装置じゃ…」

 

 

ライトグリーン色で煌々と輝くX bickerに、ショウタロウが勢いよく装置へと近づく。

装置の中央には人ひとりいたであろう窪みがあった。

しかしそこには誰も居ない。

先程まで縛り付けられていたレモーラの姿はなかった。

驚愕しているショウタロウに中野は何もすることなくただじっと見ている。

 

 

ショウタロウ「おい!レモーラはどこだ!どこにやった!」

 

中野「立派な機動装置だろう。お前が我々の首領を倒してから、私はずっとこの"X bicker"の完成のために身を注いできた。亡き主人がずっと望んでいたガイアインパクトの遂行の為に毎日毎日…。散々邪魔され阻止されて…随分遠回りさせられたねぇ?仮面ライダー?」

 

ショウタロウ「この光…まさかそんな。聞こえるかレモーラ!返事しろ!」

 

ツカサ「ちょっと待て。さっきからなんなんだ?仮面ライダー仮面ライダーって」

 

小夜「……。」

 

 

中野のショウタロウに語る口ぶりはまるで長い時間死闘を繰り広げてきた因縁の相手同士の会話の仕方だった。

この世界にやってきたばかりのツカサや小夜じゃ到底話せるような内容と関係性じゃない。

となると。

小夜の頭にある可能性が浮かび上がった。

この風都スカイタワーでも展示していた仮面ライダーの情報にも特徴は合致する。

 

 

中野「おや。その様子はまさか何も知らずにのこのこついて来たのかい?なら教えてあげるよ観光客のお二方。そこにいる彼と彼女はね。この街で過剰なまでにもてはやされてる我々の天敵。仮面ライダーなんだよ」

 

ツカサ「なに⁉︎ 嘘だろ⁉︎」

 

小夜「なるほど…。彼と出会ってから出てきた不可思議な点と点が線で結ばれました。ここのスタッフとして出会ったあなたも。先ほど出会った研究員がこちらに向かって仮面ライダーと呼んだのも。全てここにいる佐川ショウタロウに向けて発した言葉だったんだ」

 

ショウタロウ「……。」

 

中野「『君』にはだいぶお世話になったね。いや、『君たち』にか…。見えるね?心臓の鼓動のように息をする"X bicker"が。君の大切な相棒は今、我が組織ミュージアムの最終目的達成の為に"X bicker"の一部となった!」

 

小夜「そんな…それじゃあもう」

 

中野「少々計画が狂ったが、無事実行できた今、変身できない仮面ライダーなど怖くない。ましてやそこにいる悪魔も尚のこと…」

 

ツカサ「…?なに?悪魔だと?」

 

中野「君のことは前々から聞いていたよディケイド。仮面ライダーWにも負けずとも劣らない悪魔のような厄介な存在がこの街にやってくるとね。君がこのタイミングで現れてほんとよかった。あともう少し早く来ていたら…それ以上は考えたくない」

 

 

中野はショウタロウから目を離すとそのするどい目でツカサを睨みつけた。

そして胸ポケットへ手を伸ばすとターコイズカラーのガイアメモリを取り出す。

 

 

ショウタロウ「それは」

 

中野「かつて君たちに破壊された私のガイアメモリ…あの小僧を通して再び手に入れる事になるとは思わなかったよ。まさかまた使うときが来るとな。…結局あの小僧の想定通りか…」

 

 

『UNICORN』

 

 

中野はガイアウィスパーを轟かせると、ガイアメモリを身体に刺した。

一角獣のような禍々しい異形の姿をした怪物。

ユニコーンドーパント。

それが今姿を変えた中野の状態の名前。

 

 

ユニコーンドーパント「あとはガイアインパクトを待つのみだ!人工衛星から降り注がれる地球の膨大なデータで、この腐った世界が生まれ変わるのを待ち侘びるがいい!その瞬間を迎えるまではこの私が手出しはさせん!」

 

小夜「なるほど。まんまショウタロウくんが言ってたとおりの計画ですね。そのガイアインパクトなるモノを実行させる訳にはいけません。ディケイド!」

 

ツカサ「ああ!」

 

 

ツカサはバックルを取り出すと勢いよく腹に打ちつけた。

 

 

ショウタロウ「諦めてたまるか。まだX bickerとレモーラは完全に一体化していない。どうにかして救いだすから…ツカサ!時間稼ぎ頼むぞ!」

 

ツカサ「あいよ」

 

ユニコーンドーパント「なんだと?そんなこと易々とさせてたまるか」

 

ツカサ「まてよ一角獣。お前の相手は俺だ」

 

 

拡張したベルトが伸びてその胴に巻き付くと、出現したライドブッカーからカードを取り出す。

そして。

 

 

ツカサ「変身!」

 

 

『KAMEN RIDE ! DECADE ! 』

 

 

カードをバックルに素早く装填するとツカサの姿は仮面ライダーアナザーディケイドへと変わった。

勢いよく駆け出したAディケイドは力を込めた右手の拳をユニコーンドーパントへ振りかざす。

左手、右手と交互に繰り出すも相手軽快なバックステップにより躱されてしまう。

 

 

ユニコーンドーパント「ほう。なかなか良い身のこなしだ…だが私の相手ではない!」

 

Aディケイド「ぐっ…!うわぁ!」

 

 

Aディケイドがユニコーンドーパントを引き付けている間にショウタロウは"X bicker"の前で懐から特徴的な形をしたドライバーを取り出した。ツカサの如くヘソしたあたりに打ち付けるとベルトが伸長し、腰に巻き付いた。

 

 

小夜「それが仮面ライダーのベルトですか。中々カッコいいデザインをしてますね」

 

ショウタロウ「…怒らないのか。俺が仮面ライダーだってこと隠してたの」

 

小夜「その件は後で彼と一緒に責任を取って頂きます。それよりも今はこの機械に吸い込まれてる貴方の相棒を救出しないと」

 

ショウタロウ「…。ああ!だな」

 

小夜「それで。どうやって救い出すんです?あの男レモーラさんの身体はデータ化して取り込まれたと言ってました。そう簡単にうまくいかないのでは…」

 

ショウタロウ「そこは俺にひとつ考えがある。だがこの方法で100%成功する確証はない。だが、必ず…アイツなら応えてくれるはずだ」

 

小夜「……?」

 

ショウタロウ「俺は約束したんだ。レモーラを最初に会ったときに。街を泣かす悪党を…ドーパントを全部駆逐するってな!」

 

 

疑問の表情を浮かべる小夜を尻目に、ショウタロウは懐からガイアメモリを取り出した。それは中野が持っていた物とは違う、澱みない純正のガイアメモリ。

 

 

『JOKER』

 

 

ショウタロウの腰に巻かれる2本のガイアメモリを装填するスロットが露出したダブルドライバー。

その左側。

金色の端子が輝くスロットへジョーカーメモリを装填した。

 

 

ショウタロウ「さあ来い…相棒!」

 

ユニコーンドーパント「貴様!何を…!」

 

Aディケイド「行け!ショウタロウ!」

 

 

荒ぶるユニコーンドーパントの身体を押さえつけるAディケイドの声がこだまする。

順調に稼働していたX bickerに変化が訪れた。

ライトグリーン色の光に包まれていたX bickerがバチバチと弾けるようにスパークし始めた。

そして。

ダブルドライバーのもう片方。

空いている銀色の端子があしらわれたスロットへサイクロンメモリが装填された。

 

 

ユニコーンドーパント「そんなバカな!完璧に作られた私のX bickerに欠陥などぉお!…そんなバカなことあってたまるかぁぁぁぁあ!」

 

ショウタロウ「変身…!」

 

『CYCLONE!JOKER!』

 

 

スロットが展開し、ショウタロウの身体が『地球の記憶(ほしのきおく)』に包まれる。

その姿はこの街の平和をドーパントから守り続けた戦士。

街の人々から愛される仮面ライダーWへと変身を遂げた。

 

 

 






次回。仮面ライダーアナザーディケイド。

「あれが、仮面ライダーW…」

「悠長に戦ってる時間がなくなったみたいだな」

「貴様を倒してもう一度 X bickerを起動させる!」

『FINAL FORM RIDE ! DA・DA・DA・W !』

「通りすがりの仮面ライダーだ!それだけ覚えておけ!」


第8話 Wの世界/悪魔との相乗り


すべてを破壊し、すべてを繋げ。
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