AIオーバーロード   作:匿名

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ナザリックの侵入者

 

◆ ナザリック第九層、円卓の間

 

巨大な楕円形の部屋には、上座に当たる席を除いて、等間隔に配置された無数の椅子が置かれていた。

部屋の中央、一番奥まった場所には一際大きな黄金の玉座が置かれている。

その周りは、金糸で刺繍された黒地の布が垂れ下がり、外からの目隠しとなっていた。

室内は、豪華な調度品の数々によって彩られている。

しかしそれらの価値は、部屋を飾るためのものではなく、侵入者を威圧するためのものである。

壁にかけられた武器、床に敷かれた絨毯に隠された罠。

それらは全て、この部屋に入ってきたものを殺すためのものなのだから。

 

その証拠に、壁に掛けられた剣の一本を取るだけで、無数の罠が発動し、使用者の命を奪うだろう。

また、絨毯の下のトラップが、足を滑らせ転ばせるだけのはずがない。

そんな生易しいものでは無いことを守護者は知っていた。

なぜならこのナザリック大地下墳墓の全ての階層に仕掛けられた罠は、至高の御方が残したものだからだ。

全てを把握している守護者たちは、罠を発動させるような愚かな真似はしない。

しかし万が一ということもある。

 

「では、これより緊急の全体会議を行う」

 

デミウルゴスが声を発すると、そこに居たすべての者が一斉に立ち上がる。

 

「今回の議題は二つ。一つはアインズ様が残してくださった宝物殿の件。そしてもう一つは……このナザリックに存在するプレイヤーの存在だ」

 

ざわりと空気が揺れる。

 

それはデミウルゴスの言葉に、様々な感情が含まれているからだ。

 

「プレイヤーの話が出たということは、すでにお聞きになっていると思うが、シャルティアが遭遇したとのことだ。詳しい話は聞いていないが、非常に厄介な相手だったようだね?」

 

問いかけるようなデミウルゴスの声に対し、幾人かの守護者から同意するような声が上がる。

 

「その者の名前は佐藤裕也。職業は学生。外見年齢は二十歳前後か。見た目通りの年齢かどうかは不明だ。……コキュートス」

 

「ハッ!ワガチカラニヨッテ、ソヤツヲ捕ラエタノデスガ、ソノ姿ハドウ考エラレマショウカ? コノ世界デハ見ナイヨウナ格好デシタ。ユックリト観察スル間モナカッタノデ確カニソウダト言イキレマスカネ」

 

「ふむ……。その辺は、私も詳しくはないのだがね。ただ服装は確かにこの世界には存在しない物だったかもしれない」

 

「ウム。アノ男カラ発シテイル強烈ナ魔力……アレハ我ガ知ル限リ最モ強イカモノデアロウ」

 

「……その男が持っていたのが、これなんだ」

 

デミウルゴスはそう言うと、懐から一つのアイテムを取り出す。

 

「コレハナンダ?」

 

コキュートスに問われ、デミウルゴスはそのアイテムを手の上で転がす。

そのアイテムは、水晶で作られたように半透明で、七色に輝く不思議な材質で出来ていた。

中心には黒い球体があり、そこから四方に細い棒のような物が伸びている。

まるで昆虫の触角のようにも見えた。

デミウルゴスはそれに指を伸ばし、軽く弾く。硬質の音が響き、その音は部屋の隅々まで響いた。

 

「……これはワールドアイテムの一つ『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』。アインズ様が残してくださった、最強にして最後の武器。我々、守護者の力すらも遥かに超えた、絶対の力。……それを所持している男は危険すぎる。なんとしても捕獲し、情報を聞き出す必要がある」

 

「フム」

コキュートスが顎に手を当て、考え込む。

 

「捕縛後、拷問……シカシ、アインズ様ガオ認メニナラナイトオ思ウガ?」

 

「無論、そうだとも。しかし、それはアインズ様にご判断を仰ぐべきだろうね。下手に勝手にやって、不快に思われてしまえば問題だからね」

 

「……ナルホド。デハ、アインズ様ニオ伺イシタイ。コレヲ伝エロバ良イノダナ?」

 

デミウルゴスは苦笑を浮かべる。

そんなことをすれば、即座にこの場にいる全員の首が飛ぶ。

しかし、その程度のことも分からないとは、やはりコキュートスは脳まで凍り付いているのかと、哀れみの視線を向ける。

それを感じ取ったか、コキュートスが表情の無い顔を僅かに歪める。

その二人の間に割って入る存在がいた。

守護者最強の力を持つシャルティアだ。

彼女は二人の会話に口を挟むつもりは無かったが、デミウルゴスの態度には我慢できなかったのだ。

それは自分が創造主から与えられたものに対する侮辱に感じられたからだ。

 

「ちょっと待っんせんか、デミウルゴス」

 

「……何かな?」

 

「その男を捕まえるのは、わたしの役目でありんしょう。いえ、このナザリック大地下墳墓に侵入した愚者を捕らえ、情報を吐かせるのは守護者統括である私の務めでありんすえ」

 

「いや、アインズ様よりお前に任せると言われたのは、私だ。ならば、私が捕まえるべきだと思うがね」

 

「いいえ、このナザリックにおいて最も強いのはこのわたし。ならば、この場で捕まえるのが筋というものではありんせんかえ?」

 

デミウルゴスはシャルティアを見つめる。そしてゆっくりと首を横に振った。

デミウルゴスの態度にシャルティアは歯ぎしりする。

このナザリックに侵入者が現れたことは確かに由々しき事態だ。しかし、そのためにシャルティアが存在する。

 

「アインズ様のお決めになったことに、意見するつもりかね?」

 

デミウルゴスが声を上げると同時に、シャルティアの体が硬直する。それは言葉を発することすら出来ないほど強力なものだ。

 

「……」

 

睨み付けるようなシャルティアの視線を受け流し、デミウルゴスは続ける。

デミウルゴスとしては、ここでシャルティアの意見を受け入れても良かった。

デミウルゴス個人としての考えは、至高の御方に対して忠義を尽くすという意味においては、間違ってはいないと思う。

しかしながら、他のシモベたちは違う。

侵入者が現れれば、殺せという命令を受けるだろう。それが当たり前なのだ。

それをシャルティアは分かっていない。

それに侵入者はナザリックの秘宝を狙っている可能性がある。ならば、このナザリックで最も価値ある宝──至高の存在が作った装備品を狙う可能性は高い。

その点においてもシャルティアは勘違いしている。

 

デミウルゴスはシャルティアの間違いを指摘しようと思ったが、それを止めた。

それはデミウルゴス自身が気付いたことだ。

宝物殿は至高の四一人が作り出した、まさに最高の宝物が眠っている場所。

そこの警備を任されているということは、至高の四一人のお側に近づけるということ。その至福を享受できるということ。

デミウルゴスはあの場所で感じた感動を思い出そうとしたのだが、上手く思い出せない。

それほどまでにデミウルゴスの心は沈んでいる。

 

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