AIオーバーロード 作:匿名
今日はナザリックの観光に来ました。
案内をしてくれるのはこの方! デミウルゴスさんです!!
「デミウルゴスさん。今日はよろしくお願いします」
私はぺこりと頭を下げて挨拶をした。
そんな私を見たデミウルゴスさんは、微笑みを浮かべる。いやぁ、やっぱり美形は笑顔が素敵だよねぇ。
デミウルゴスさんの笑顔ってなんかこう……癒されるよ。
「えぇ、こちらこそ。今日は一日私がご案内させていただきますね」
そう言ってくれたデミウルゴスさんと一緒にナザリック地下大墳墓へ向かった。……あれ? もしかしてだけどさ、これってデートなんじゃね?
ナザリック大地下墳墓の入り口まで来たところで、デミウルゴスさんと別れた。デミウルゴスさんには仕事があるらしい。
うん。そうだよね。
いくらなんでもずっと一緒にいるわけないもんね。
でもちょっとだけ残念だなーなんて思ってしまう。…………まぁ、しょうがないよね。
それにこれからシャルティアちゃん達に会うんだし、そんな事を考えるのは失礼だしね。
気を取り直して、シャルティアちゃんの部屋に向かった。部屋の前でノックをして中に入ると、そこにはシャルティアちゃん以外にもアインズ様と同じギルドにいた女性達が勢揃いしていた。
「こんにちわ!」
私は元気良く挨拶をする。
すると皆から優しい笑みが返ってきた。
うぅん。なんだか照れちゃいますな。
「よくきたでありんすぇ、モモンガさま」
「ようこそおいでくださいました」
シャルティアちゃんの言葉に続いて、ブレインさんが優雅なお辞儀をしてくれた。
他の人もお辞儀をしたり、軽く手を振ってくれたりしている。
ふむ。
どうやらシャルティアちゃん以外の人はそこまで偉くはないみたいだね。
この態度を見る限り、メイドさんとかその辺かな?
「それで今日は何を教えてくれるんです?」
私はわくわくしながらシャルティアちゃんに尋ねた。
何せ今までお話を全然してくれなかったんだもん。そりゃあ期待するってもんだよ!
「そうですね。まずは墳墓の階層について説明いたしましょうか」
「はい!!」
シャルティアちゃんの守護階層の話ということで、テンションが急上昇した。
思わず声が大きくなってしまったけど、気にしない。だって楽しみなんだもん。
「ではこちらへ──」
シャルティアちゃんに連れられ、墳墓の中へと足を踏み入れる。
薄暗い通路を歩くこと数分。シャルティアちゃんはある場所で立ち止まった。そこは巨大な扉の前だった。
「ここより下が墳墓の第十階層となっております」
「第十階……」
シャルティアちゃんの説明を聞きながら、私はその扉を見つめた。
一体どんな場所なんだろう?
「それじゃあ開けるぞ」
後ろから突然聞こえてきた声に驚いて振り向くと、そこにいたのは一人の男性プレイヤー。
あれ?この人どこかで見たような気が……。
「はい。お願いします」
「任せておけ」
男性が扉に触れると、ゆっくりと重厚な扉が開かれていく。そして開かれた扉の奥にあったのは広大な空間だった。
天井の高さだけでも三十メートルぐらいありそうなんだけど、広さはその十倍はありそうだ。
壁や床には何らかの鉱石が使われているのか、青白く光り輝いている。
これはすごい。
こんな光景は現実では決して見れないよ!! 興奮気味に周囲を見渡していると、背後の扉が閉まる音が響いた。
振り返ると、そこには先ほどの男性の姿があった。
あれ?あの人さっきもいたっけ? 確かシャルティアちゃんの後ろに控えていたような……。
私が不思議そうにしていると、男性は口を開いた。
「モモンガ殿。私の名はペロロンチーノ。あなたの友人である鈴木悟の兄だ」
「え!?」
目の前の男性は確かに今自分のことを兄だと告げて来た。
でもそんなはずない。だって兄さんはもう死んでいるはずだもの。
だから目の前にいるのは絶対に別人のはずだ。
「驚くのも無理は無いと思う。だが私は間違いなくあなたの友人の兄なのだ」
信じられない。でも仮に嘘をつく理由が無いとしたら……本当なのかな?
「……本当にお兄さんですか?」
「あぁ」
ペロロンチーノと名乗った男性の表情は真剣そのもの。とても演技をしているようには見えない。
「……分かりました。信じます」
「ありがとう。君ならきっと分かってくれると思っていたよ」
ほっとした様子を見せるペロロンチーノさんを見て、私も安堵の息を吐いた。
良かった。もしこれで違ったらかなり恥ずかしかったよ。
「ところで、どうしてここにいるんですか?」
「それはだな──君がナザリックの観光に来ると聞いたから案内するために来たんだよ」
「え? わざわざ来てくれたんですか?」
「もちろんだ。弟の大事な友人に会うためだ。当たり前じゃないか」
嬉しい言葉に思わず涙が出そうになった。
まさか弟の友人のためにここまでしてくれるなんて。やっぱり兄さんはいい人だったんだ。
「感動に浸っているところ申し訳ありんせんが、そろそろいいかしら?」
シャルティアちゃんの声で我に帰った私は、慌てて姿勢を正した。
いけない。すっかり忘れてた。
「ごめんなさいシャルティアちゃん。それでここはどういう場所なの?」
「はい。ここは至高の御方々のおわす領域です。ここであればモモンガ様に不快を与える存在はいないでしょう」
「そうなんだ」
やっぱりすごいんだなぁ、アインズ・ウール・ゴウンって。
でもやっぱり会ってみたいなぁ。できれば兄さんにも会いたい。
そんなことを考えていると、再びシャルティアちゃんが話しかけてきた。
「それでわっちらはどこに行けばよろしいんでございんしょうか?」
「あぁ、そうだったね。とりあえずそこにある階段を下りて貰えるかい?」
ペロロンチーノさんの指差す方向を見ると、そこには縦に長い穴が開いていた。
まるで洞窟の中に出来たトンネルみたいだ。
「分かったわ」
「それでは行きましょうか、モモンガ様」
「うん!」
シャルティアちゃんの後を追って歩き出した私は、ペロロンチーノさんに質問をした。
「あの、ちなみにどうやって上に来たんですか?」
「ん? 普通に歩いてだよ」
「……はい?」
「いやだから普通に歩いたんだよ」
「……」
どうしよう。
何を言っているのか分からない。
いやだってさ。この高さから落ちれば即死間違いなしだと思うんだけど。
それを普通に歩く? ありえないでしょ?
「モモンガ様。ペロロンチーノさまのことは気にしない方がよろしいんでありんすえ」
「シャルティアちゃん……」
シャルティアちゃんの言葉を聞いた私は、心の中で感謝した。
どうやらシャルティアちゃんは私の気持ちを理解してくれているようだ。
そうだよね。いくらなんでもおかしいもん。ペロロンチーノさんが変なのは当然のことなんだ。
「──それとペロロンチーノさま。あまりモモンガ様のことをじろじろと見ないようにしてくだしんすかぇ? 失礼でありんすよ」
「あ、悪い」
ペロロンチーノさんが謝ってくるけど、別に嫌じゃないから大丈夫。
むしろもっと見てもらってもいいぐらいだし。
「それにしてもシャルティアちゃんは優しいね」
「いえ、これくらいは当然のことでありんす」
シャルティアちゃんは謙遜しているけど、実際優しくないとできないことだと思う。
こんなに細かい気遣いができるなんて素敵すぎるよ!
「……あれ?」
「どうかなされたのでござりまするか?」
「いや、なんか変なことを考えていたような気がするんだけど……うーん……駄目だ思い出せない」
何か重要なことだったような気がするのに、全然思い出せない。
なんだろう。すごく大切なことのような気がするんだけど……。
頭を捻らせていると、いつの間にか目の前に大きな扉が見えていた。
「あちらが玉座の間になります」
「そうなんだ。それじゃあさっそく入ろうかな」
扉の前に立った私は、ゆっくりと扉を押し開いた。すると扉の向こうにあった光景は──
「……すごい」
広い空間の中心に一人の女性プレイヤーが立っていた。
彼女は黒いドレスに身を包み、背中には純白の翼を持っている。
その美しさに見惚れてしまいそうになるが、それ以上に強い感情によって私は彼女に釘付けになっていた。
彼女の名前はユリ・アルファ。
私のギルドメンバーである女性キャラクターの名前だった。
「……」
「──」
ユリちゃんは無言のまま私を見つめてくる。
それに対して私は何も言うことが出来ない。ただ黙ったまま見つめ返すだけしかできない。
それは私が彼女に対して強い罪悪感を抱いているからだ。
ユグドラシルというゲームにおいて、私は彼女を裏切った最低の男なのだ。
そして今まさに裏切り続けようとしている。
そんな自分が今更どの面を下げて声をかければいい? しかしそんな葛藤も長くは続かなかった。なぜなら目の前にいる女性が唐突に動き始めたのだ。
「お待ちしておりました」
「え!?」
突然のことに驚いていると、ユリちゃんは静かにこちらへと歩み寄ってきた。
「お久しぶりですね、モモンガ様。ずっとお会いしたいと思っておりました」
「えっと……」
「ふむ。少しお話が長くなりそうですな。まずは中へ入りましょう。話はそれからということで」
戸惑っていると、ペロロンチーノさんが助け舟を出してくれた。
正直助かったと思った。
だっていきなり知らない場所に飛ばされて、よく知っているはずのキャラクターがいて、さらに向こうから近づいてきたんだもの。
そりゃあびっくりしますって。
「それでは皆様、どうぞこちらへ」
シャルティアちゃんに連れられて部屋に入ると、そこは応接室のように豪華な造りのジャングルだった。
いや違う。これは樹か。
部屋の中央には巨大な樹木があり、その幹の中に通路が続いているようだった。
ペロロンチーノさんを先頭にして私たちはその奥に進むことにした。
やがて大きな広場に出ると、そこには無数の異形たちが整列していた。
彼らは全員が昆虫の姿をしていて、頭部に触角が生えており、体つきが人間に似ている。
そんな昆虫たちの姿を見たとき、私はなぜか胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
そんな私の様子を見ていたのか、ペロロンチーノさんが話しかけてきた。
彼はどこか懐かしそうに呟く。
やはりここに来たことがあるみたい。
「ここはナザリック大地下墳墓にある第八階層にある闘技場だよ」
「すごいですね! ここはどういう場所なんですか?」
「……? この虫みたいな人たちは?」
「彼らは私たちのシモベだよ」
「……?」
意味がよく分からず首を傾げていると、シャルティアちゃんが説明してくれた。
「この方たちは至高の御方々の作り出した存在でありんす。この世界における最上位の存在でありんす」
「え? でもさっきはNPCだって……」
「NPCとはNPCという種族でございんしょう。彼らもまた至高の方々と同格でございますれば、NPCという言葉では一括りに出来ないんでござんすえ」
シャルティアちゃんの説明を聞いた私は納得した。
確かにNPCという言葉で括ってしまうのは間違っているかもしれない。
ならば目の前に並んでいる蟲たちもプレイヤーと同じ仲間ということか。
うん、それは良いことだ。同じギルドの仲間なんだから仲良くしないと。
「じゃあとりあえず案内して欲しいな」
私がお願いすると、シャルティアちゃんは嬉しそうな顔を浮かべた。
やっぱり可愛い。
こんな子が妹になってくれたらいいんだけどなぁ。
モモンガは知らない。
シャルティアの態度の変化の原因が、自分がNPCたちを皆殺しにしたことが原因だとは露ほどにも思わなかったのだ。