AIオーバーロード   作:匿名

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ダジャレ

ナザリック地下大墳墓の支配者アインズ・ウール・ゴウンは、10年に一度のナザリック大ダジャレ大会を開催した。その大会での優勝賞品が『ギルド武器:スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』である。

そしてアインズは前回の大会で優勝できなかったのだ。

 

しかし今回こそはとアインズは決意を新たにする。

なぜなら今回の大会はチーム戦だ。アインズという個人ではなく、仲間達と共に戦った結果なのだから。そう、かの世界——ユグドラシルでウルベルト、ペロロンチーノといったギルドメンバーたちがいたからこその数々の勝利をもぎ取ってきたのだから。

ならば今回は仲間と共に勝ちたい。

そのためにもまずはチームメンバーを考えなければならないだろう。アインズは目の前にある巨大なテーブルに広げられた羊皮紙を見つめる。そこには様々な名前が書き込まれていた。

 

アインズの仲間たちの名前だ。

フールーダを筆頭にした魔術師たち。ナーベラルやシャルティアなどの戦闘メイドたち。セバスを初めとした執事たち。

アインズの自慢の仲間達だ。

しかしながら名前だけ書かれていても何の意味も無い。どのようなチームにするか、どんな作戦を取るのかを決めなければチームは機能しない。

 

「ふむ……」

 

アインズが考える素振りを見せると、フールーダが声を上げた。

 

「陛下!」

 

「ん? どうした?」

 

「この者など如何でしょうか?」

 

フールーダが指差す羊皮紙の一枚には、『漆黒の剣聖』ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスとある。

その名前を見てアインズは眉根を寄せた。

 

「……誰だったかな」

 

「帝国四騎士の一人ですぞ」

 

「ああ、あの……」

 

「はい。皇帝直属の近衛騎士にして、帝国の四騎士の一人。『黒剣』の二つ名を持つほどの男です」

 

「……確か、かなりの切れ者と聞いた覚えがあるが……」

 

「はい。私の目から見ても優秀な人間だと判断できます。それに彼の部下は全員が魔法戦士であり、連携に関しても問題ないかと思われます」

 

アインズは羊皮紙に視線を落とす。

確かに悪くない選択かもしれない。フールーダの言うとおり、実力的には申し分ないだろうし、連携という点においても心配はいらなそうだ。

 

ただ、問題は……。

アインズは顔を上げ、フールーダを見る。

すると老魔法使いは心得ているとばかりに力強く首肯してみせた。

 

「……少し不安が残る」

 

アインズの言葉を聞いた瞬間、フールーダの顔色がさっと変わる。まるで絶望の底に落ちてしまったような表情を浮かべると、頭を垂れて力なく首を左右に振った。

 

「やはり私では役者不足ということですか……」

 

「違う! そんなことでは無い、フールーダ。お前は優秀だ。私が言いたいのはそういうことじゃない。ただ……」

 

アインズは言葉を濁す。

フールーダの力を信じていないわけでも無ければ、ジルクニフの能力を疑っているわけではない。

ただ単純にアインズ個人としては気が進まないのだ。

その思いを上手く言葉にすることが出来ず、アインズは口を閉ざしてしまう。

そんなアインズの様子から何かを感じたのか、フールーダがおずおずといった感じで口を開いた。

アインズはフールーダの言葉を待つように黙り込む。

 

「陛下のお考えは理解しております。しかし……もし陛下が不快に思われるなら私はこの場で腹を切りましょう」

 

「えっ!? そこまでのことなのか?」

 

驚きの声を上げるアインズの前で、フールーダは懐から短刀を取り出す。そして鞘を払うと、己の腹部に当てた。

 

「お待ち下さい!」

 

悲鳴のような声が上がった。それは先ほどまで黙って控えていたユリだ。普段であれば絶対に出さないような鋭い声色に、アインズとフールーダの動きが止まる。

 

「……失礼しました」

 

ユリは頭を下げると、再び沈黙した。

静寂の中、アインズはゆっくりと動き出す。コツリと足音を立てながら、フールーダへと近づいた。

 

「……フールーダよ」

 

「はっ!」

 

「死ぬことは許さん」

 

「陛下、感謝致します」

 

深々と頭を下げたフールーダを前に、アインズは再び思考を始める。

 

(……まぁ、いいか)

 

ジルクニフという人物は知っている。以前ナザリックを訪れたことがあるからだ。その時、フールーダとも会っていたはずだ。ならば別に構わないだろうとアインズは結論づける。

アインズは羊皮紙を手に取ると、名前を書き込んだ。

フールーダはその羊皮紙を受け取ると、自分の名前が書いてある部分に視線を落とした。しばらく眺めてから、深く息を吸い込む。

それから意を決したように羊皮紙を丸め、自らのローブの中に仕舞いこんだ。

 

「それでは早速ジルクニフ殿に連絡を入れようと思います」

 

「ああ、頼む」

 

アインズが鷹揚に答える中、フールーダは部屋を出ていく。

その後ろ姿を見送ったアインズは小さく肩を落として呟いた。

 

「……俺も昔はあっち側だったんだけどな」

 

 

 

 

フールーダからの連絡を受けたジルクニフは、アインズ・ウール・ゴウンとの会談場所として選んだ帝都内の喫茶店で深いため息を吐いていた。

 

「まったく、何で私がこんなことをしなければならんのか……」

 

「陛下、お言葉ですが。今回の件は陛下が自ら申し出たことかと記憶していますが」

 

隣に座る側近であるバジウッドの言葉に、ジルクニフはもう一度、大きくため息を吐き出す。

 

「分かってるさ。確かに私が言ったことだ。しかし、それでも愚痴ぐらい言わせてくれ」

 

「……畏まりました」

 

バジウッドが渋々といった様子で引き下がる。

ジルクニフは目の前に置かれた紅茶を口に含んだ。アールグレイの良い香りが鼻腔に広がる。茶葉も良いものを使っているのだろう。しかし、あまり味を楽しむ気にはなれなかった。

ジルクニフは横目でバジウッドの様子を伺う。自分は皇帝という地位にあるが、年齢的にはまだまだ若い。それに対して目の前の側近は四十代半ばになる。ジルクニフより年上なのは間違いないが、外見上は遥かに若く見える。

そのせいだろうか、どうしても見下されているように思ってしまうのだ。それがジルクニフにとっては面白くない。本来であればもう少し偉そうにしても許される立場なのだが、どうにもそういう気分になれなかった。

 

理由は分かっている。

バジウッドが言うダジャレが面白いからだ。自分よりも遥かに優れた才能の持ち主だからこそ、そのギャップが笑いを誘う。

 

「……」

 

しかし、そんなことを認めるのも嫌だ。だから必死になって我慢しているのだが、その努力が実を結んでいるかといえば疑問が残る。

今だってそうだ。

バジウッドが先程言った「陛下、お言葉ですが」という言葉に、思わず噴き出しそうになったではないか。

ジルクニフは自分の精神力を総動員し、何とか笑うことだけは避ける。

だが、そのせいで眉間にしわが寄ってしまった。そんな不機嫌そうな表情を隠すために、手に持っていたカップを傾ける。するとバジウッドの視線が一瞬だけ鋭くなった。

 

「陛下」

 

「なんだ?」

 

「……いえ、何でもありません」

 

言いたいことが有るなら言えば良いじゃないか。そんな風に思うが、ジルクニフは口にしない。ここで口論しても仕方が無いし、大体においてジルクニフはバジウッドに対して強く出ることが出来ないのだ。そんなジルクニフの性格を見越しての態度だとしたら、本当に性質が悪い。

ジルクニフは再び大きなため息をつく。

そのタイミングで扉が開かれ、一人のメイドが入室してきた。彼女は一礼してから口を開く。

 

「陛下。フールーダ様がいらっしゃいました」

 

「分かった。通してくれ」

 

ジルクニフが立ち上がると、メイドは頭を下げて退出する。

やがて部屋に入ってきたフールーダは優雅に礼をした。

 

「お久しゅうございます、陛下」

 

「元気だったか、爺?」

 

「はっ! この通り健勝であります」

 

「それで? 話というのは一体なんなのか聞かせてもらおうか?」

 

「はっ!」

 

フールーダは懐から羊皮紙を取り出した。そして恭しく差し出す。

 

「こちらがゴウン殿からの手紙になります」

 

ジルクニフはそれを受け取ると中身を読み始めた。

そこには今回の会談の目的や、会談場所、日時などが書かれていた。非常に簡潔な内容だ。要約すると「『漆黒の剣聖』ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿。来週開催されるナザリック大ダジャレ大会において、貴殿をアインズ・ウール・ゴウンのパートナーと認める」というものだ。ジルクニフは無言で手紙を閉じると、フールーダの顔を見る。

 

「……これは何かの冗談か?」

 

「いいえ、陛下。本当です」

 

「お前は何を言っているんだ!?」

 

「陛下こそ何をお怒りになられているのです。素晴らしいことではございませんか。あのアインズ・ウール・ゴウン様とタッグを組むなど」

 

ジルクニフは顔をしかめる。

 

「確かにそれは素晴らしく名誉なことだろうな。しかし、私にメリットは無いぞ」

 

「そんなことはありません。陛下は英雄とまで呼ばれる御方。アインズ・ウール・ゴウン様と共に行動すれば、その名声はさらに高まるでしょう」

 

「……」ジルクニフは黙り込んだ。確かにフールーダの言うとおり、アインズと行動を共にするのはプラスとなるかもしれない。しかし、マイナスの部分も大きい気がした。まず第一に自分のプライドの問題がある。

アインズは強大な力を持っている人物だ。それに比べて自分は単なる人間に過ぎない。いや、魔法に対する適性が高いというだけで、戦士としての能力では劣るだろう。

その差をどうやって埋めるか。

 

――ダジャレだ。

面白さは知性ある万物共通の認識だ。そこに筋力も魔力も関係ない。必要なのはたった一つ、それはユーモアと発想である。ならば、その二つでアインズに匹敵することが出来るのではないか。

 

ジルクニフは自らの頭脳に自信を持っていた。帝国において右に出る者はいないと自負しているほどだ。その自分が考えたダジャレを披露するのだ。これに勝るアピールの仕方があるだろうか。

続いてはセンスの問題だ。

ジルクニフもダジャレの良し悪しぐらいは分かるつもりだ。しかし、それはあくまでも常識の範囲での理解だろう。ジルクニフは悪戯めいた気持ちで目の前の人物に問う。

 

「フールーダよ。ダジャレを言ってみろ」

 

フールーダは目を瞬かせた。質問の意味が分からなかったのだ。

 

「陛下。突然どうなされたのですか?」

 

「良いから答えてみせろ。ダジャレを」

 

「……はぁ」

 

フールーダは少しばかり躊躇した後、言葉を発した。

 

「陛下が私のダジャレを御所望ということですが、どのようなものを御所望なのです?」

 

「うむ」ジルクニフは大きくうなずいた。

 

「そうだな、例えばだが、『この前食べたスフレのように柔らかい食べ物を、食べているときに噛もうとすると、空気が入ってふわふわだ。』……とかどうだ?」

 

フールーダの表情が固まった。ジルクニフは期待を込めてフールーダの言葉を待つ。

 

「……陛下」

 

「なんだ?」

 

「それはあまりにもひどすぎると思いますが?」

 

「そうか? 結構面白いと思うのだが」

 

「いえ、面白さ以前の問題です。それに私はそのようなダジャレを言うような老人ではありません」

 

「……」

 

ジルクニフはフールーダにばれないようにこっそりとため息をついた。

 

 

 





AI単独ではダジャレが言えないようです。
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