TSした綾小路ちゃんを転生オリ主が愛でまくる話   作:妄想癖のメアリー

1 / 27
綾小路 清楓(あやのこうじ さやか)

1話目はリメイク前とほぼ同じ、変わるのは2話からです!


第0章 プロローグ
綾小路清楓の独白


 

 

 

 私が水無瀬(みなせ) (しゅう)という男の名を最初に認識したのは、5歳くらいの時だったと思う。

 

 

 

 その時に感じた衝撃は今でも記憶に新しい。

 数学のテストを受けている最中、1人の生徒が過呼吸を起こして倒れたのだ。

 

 実力のない生徒は生き残ることができないこの()()()()では、あまり珍しい事でもない。

「ああ、また一人脱落か」と思い、当時の私は気にせずに問題を解いていた。

 

 確か倒れてから5分ほど経った後、唐突に彼は何もなかったかのように座り直し、問題を解き始めた。

 その様子を見ていた私は「珍しい事もあるものだな」と思った。

 しかしそれまで。周りの監督官も特に反応する事なく、試験は進む。

 

 ──しかし、異常な事態はこれからだった。

 

 彼はテストを開始してから30分ほどで右手に持ったペンを置き、隣の女子生徒に朗らかな笑顔で話しかけたのだ。

 

「おや……そこが分からないのかい? そこの問題はこの公式を使って計算するんだよ?」

 

 

 

 ──正々堂々、それはそれは滅茶苦茶なカンニングであった。

 

 

 

 まるで教えることが当然という様子で。彼の声が無機質な白い部屋中に広まる。

 試験を監督していた研究員は皆、呆気に取られていた。

 

「水無瀬、何をしている。席に戻れ」

 

 そんな中、いち早く彼に注意をしたのが、綾小路先生と呼ばれている人だった。

 彼はこの施設の最高責任者であり、同時に()()()()()()()()()

 その肩書きに恥じる事のない厳格な父は、ここではとても恐れられている。

 とてもじゃないけど、子供で彼に言い返せるような人は居ない……と思ってたんだけど……

 

「綾小路先生、テスト中に私語をした5歳の子供に対して、その注意の仕方は不適切です。もう少し優しく語り掛けることはできないのでしょうか?」

 

──空気が凍ったのを今でも鮮明に覚えている。

 

 もう一度言うけど、父は白い部屋の支配者。

 そんな父に逆らうことは許されていない中、5歳の子供が言い返したのだ。

 それも「言い方がキツい」だなんて、明らかに舐め腐っている。

 

 私はその瞬間、今まで父から感じたことのない『怒り』感じた。

 それはそうだろう。多くの部下や教え子がいる中でコケにされたのだ。腹が立たないほうがおかしい。

 

「……二度は言わんぞ。席に着け。そしてテストを終わらせるんだ」

 

 今思えばここで怒りを抑えた父は英断だったと思う。

 それこそ怒りに任せたら彼の思うつぼだった。

 

「またそれですか? テストはもう解き終わりましたよ。五歳の子供が到底やるとは思えない微積分の応用をね。私も英才教育は大事だと思いますがこれはやりすぎです。こんなペースでこなしていったら脱落者が増えるのは当然でしょう? 第一、この施設の運営方針そのものに愛が……」

 

 ……ふふ、やっぱいつ思い返してもあの時の父の顔は傑作。

 

 そう、彼は2度も父の言葉に反論した。それも周りの様子など気にもかけずに長々と。

 聞いている側からしても筋の通った理論だったと思う。

 ただその内容は、この白い部屋の運営方針を真正面から否定する言葉だった。

 

 

 

 ──当時、物心着いて間もない頃の私にとって、その言葉は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

──そうして彼の長い、長い説教が終わった。

 周りの生徒や研究員がぎょっとした目で彼を見る中、父はやり切ったとドヤ顔をしている彼に向かって話す。

 

「……今日のカリキュラムは中止だ。各自部屋に戻りなさい。……そして水無瀬、君は私と一緒に来い」

 

 そう言うと、有無を言わさず彼の後ろ襟を掴みつかみ上げる。そしていつもより大股で部屋へと戻っていった。

 

「おい! 何をする! 子供に言い負かされ、挙句は力業で解決か?! そんな調子なら将来絶対娘さんにも嫌われるぞ!」

「……うるさい! ジタバタ暴れるな! いいから大人しくしろ!」

 

 

 

 ────そんな声が廊下にこだまする中、私は部屋に戻った。彼が語っていた()について考えながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……まったく君のお父さんは酷い人だ……あれは将来ろくな父親にならないぞ全く。娘さんを下さいって言ったらブン殴るタイプだ、間違いない」

 

 それから数時間ほど後、げっそりとした様子の水無瀬が休息中の私の部屋に入ってきた。

 心なしかその丸々とした頬もどこか痩せこけて見えた気がする。

 

「何の用……って言うか、どうして自由に出歩けるの?」

 

 ここでは生徒たちの行動は逐一監視されている。

 カリキュラムが終了した今では、個室から出ることは許されていないはずだ。

 そんな私の質問に、ポケットから鍵を出してひょうきんに笑う水無瀬。

 

「見張ってた警備員さんから、鍵をちょこっとね。君とは少し話がしたかったんだ」

 

 そのちょこっとの所が気になる私だったけど、正直父に逆らえる人間を初めて見た為、好奇心からその話を聞くことにした。

 

 

 

「──私の言う愛について気になってそうだったからね。君が良ければ話を聞いてほしいな」

 

 

 

 そういって部屋の椅子に腰かけた水無瀬。

 面白いものを見るかのように、にこにこと笑っている彼だが、私は内心穏やかではなかった。

 

「(なぜ見抜かれている……?)」

 

「君は自分の感情を読まれていて驚いているだろう。だが、私は愛の伝道師だからね。それくらいは手に取るようにわかるのさ」

 

 チャラけた様子で彼は語る。意外と冗談も言うらしい。

 

「今のところ私の話について興味を示してくれたのは、あの集団の中では君だけなんだよ。最も、ほかの生徒たちはそんなことに気を配る余裕すらないという感じだけどね」

 

 どこか遠い目をしながら語る水無瀬は、到底同じ年の子供とは思えなかった。

 

「……嘆かわしい話だよ。普通なら親、友人達の愛を欲する年頃だろうに。生まれた時からここで過ごす彼らは、そんなこと考えることもなくその一生を過ごしていく」

 

 当時の私は、彼の話を半分も理解できていなかっただろう。それだけ難しい話だった。

 

「……愛とかはよく解らない。私は生まれた時からここで暮らしてきた。父から優しくしてもらったことはないし、友達もいない……ねえ、あなたの言う愛ってどういうものなの?」

 

 予想以上に食いついてきた私に驚いたのか、頬杖を突きながら考えているようだ。

 

「難しいことを聞くね君は……だが、私から言えることはたった一つだ。愛とは人間の営みの中で最も尊いものであるということだね。親愛、友愛、恋愛、兄弟愛、家族愛等、具体的な例を挙げるときりがない。

 

 ──そのくらい人間にはありふれている感情ということだ。誰にだって人を愛する権利があるし愛される権利がある。例えどんな悪人でも善人でもね。しかし、人から愛を受ける為には必ず代償を払わなくてはならない」

 

「代償……?」

 

 私はその代償というのが理解できなかった。

 首をかしげる私に、ふふふと笑いながら続けて語る。

 

「それは人からの愛には必ず報いなければならないということだよ。他人を愛せない人間は、他人から愛されるべきではない。他人の愛を裏切ったものは必ず罰せられなければならない。

 

 君が人に愛されたいのであればまずは君が他の人を愛さなければならない。受け身ではいけないんだよ……積極的に誰かを愛さないとね」

 

「でも、誰かを愛する事は……多分難しいと思う。私は今まで『最後に自分が勝っていればそれでいい』と教えられて生きてきた。そこに過程は関係ないし、どんな犠牲も仕方のないこと……この世は勝つことがすべてだと父も言っていた……だから他人を愛するという感覚がわからない」

 

 当たり前だろう。私はそれまでの人生で誰からも愛されることなく生きてきた。

 語学の授業で習う友達との掛け合いも、親から子へとかけられる慈しみも。

 

──何も、何も知らなかった。

 

「だったら友達を作ればいい。友達とはいいものだよ。苦しい時は支えあい、楽しい時はそれを共有する。この娯楽のない白い部屋の中で、それはちょっとだけ難しいかもしれない。だが、友との語らいは好いものだ。どうだい、綾小路さん? 私と友達になってくれないか?」

 

 混乱していた私に彼は優しく語りかける。それはある意味恐ろしく、とても甘美な提案だった。

 ただひとつ確実に言えることがある。

 

 ──その提案はその後の私の人生を豊かにしてくれたということ。

 

「……分かった。友達になってみる」

 

 心の中で何十回も葛藤したことは覚えている。だが、最終的に私は少しの間を置いて彼に答えた。

 最初は知識欲だったか? ……まあどちらにせよ、今では全くの別物になってしまった。

 

「ああ、じゃあ改めて自己紹介だ。私の名前は×× ×いや、今は水無瀬(みなせ) (しゅう)。趣味は読書と音楽鑑賞、人と喋ることだ。『愛こそはすべて』という言葉を座右の銘にして生きている。君は私の生まれて初めての友達さ。よろしくね」

 

 そういって彼は右手を差し出す。

 

「……ん?」

 

「握手だよ、握手。知識としては知っているけどするのは初めてかな?」

 

 そういって私の手を掴み、上下へと動かす彼。

 

「次は君の番だよ。綾小路さん。ホワイトルームでは自己紹介の練習はしないのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……私は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────初めての自己紹介はそれは見事に失敗してしまった。それでも、少し大きい彼の手がとても暖かかったことは、一番鮮明に覚えている────

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ。あの時の清楓(さやか)ちゃんは小さくて可愛かったんだよ? でも、その割に表情が硬くてさ! 君たちが初めて会ったときは確か7歳くらいだったよね? 有栖ちゃん」

 

「ええ。その頃には年相応に情緒がありましたよね。チェスで完敗して涙目になってたのを覚えてますよ?」

 

「……つーん。どうせ坂柳がやってもボコボコにされるのは目に見えてる。あなたより私の方が強いもん」

 

「……いいでしょう。圧倒的な力の差を見せつけて差し上げます」

 

「またかい? ……はあ、明日早いんだから程々にね」

 

 

 

 

 

 

 

 ―生徒報告書―

 

 ID:04-02

 名前:水無瀬 柊 (ミナセ シュウ)

 年齢:7 (四期生)

 誕生日:4月29日

 身長:128㎝

 体重:25kg

 

 

 ─評価─

 

 すべての評価において四期生の中でもトップの、非常に優秀な成績を収めている。

 現在のカリキュラム達成度を考えるに、三年程度ですべての履修が完了すると予想されている。

二年ほど前に頭角を現すまで、綾小路が四期生最高傑作と思われていたが、その評価を覆すこととなった。

 ─追記─

 評価が上がった同時期から著しい自我の発達が見受けられ、問題行動を起こすようになった。

 よって、最高傑作を綾小路へと変更する。

 

 

 

 

 

 




高評価や感想していただけると作者の励みになります!読者の方からの応援が僕のモチベーションです!
答えられると確約はできませんが、ここはどうして?という質問や本文の指摘などでも嬉しいです!よろしくお願いします!

たくさんの人に読んでいただくには、タイトルにある程度情報を入れた方がいいと聞いたので迎合させていただきました。元の方が良かったら戻します笑

リメイク前の方を読んだことありますか?

  • リメイク前読んだことあるよー
  • リメイク後初めて読んだよー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。