TSした綾小路ちゃんを転生オリ主が愛でまくる話   作:妄想癖のメアリー

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第二章スタートです
割とサクサク進みます


第2章 愛と憎しみは紙一重
新たなる問題


 

 

 

「おはよう諸君。今日はいつにも増して落ち着かない様子だな」

 

「佐枝ちゃん先生! 俺たち今月もポイント0だったんですか!? 」

 

「それで落ち着かなかったわけか」

 

「俺たちこの1か月、死ぬほど頑張りましたよ。中間テストだって乗り切ったし……なのに0のままなんてあんまりじゃないですかね! 遅刻や欠席、私語だって全然だし!」

 

「勝手に結論を出すな。まずは話を聞け。池、確かにおまえの言うように今までとは見違えるほど頑張ったようだな。それは認めよう。お前たちが実感を持っているように学校側も当然それを理解している」

 

 諭すように言われ、池は口を噤んで椅子に腰を下ろした。

 手にした紙を黒板に広げてポイント結果がAクラスから順に公開されていく。Dを含む全てのクラスポイントが、先月と比べ100近く数値を上昇させていた。

 Dクラスの表記には───95ポイント。そう記されていた。

 

「え? なに、95って……俺たちプラスになったってこと!? やったぜ!」 

 

 ポイントを見つけた瞬間、池が飛び跳ねる。

 それを見た茶柱は説明を加える。その内容は以下の通り

 ・他クラスも同等にポイントを増やしている。

 ・このポイントは中間テストを乗り切った一年へのご褒美として配られたもの。

 ・よってその差はほとんど縮まっていない。

 

「そういうことね。急にポイントが支給されるなんておかしいと思ったわ」

 

「がっかりしたか堀北。まあ、クラスの差が縮まらなかったからな」

 

「そんなことはありません。今回の発表で得たこともありますから」

 

「なんだよ得たことってさ?」

 

 池が立ったまま堀北に聞く。周囲の視線を集めた堀北はその内容を語りだす。

 

「私たちが4月、5月で積み上げてきた負債、遅刻や私語は見えないマイナスポイントにはなっていなかった。ということよ」

 

「あ、そっか。100ポイント貰ってもマイナスが沢山残ってたら、0のはずだもんな」

 

 分かりやすい説明に納得した池が、やったぜ、と大げさに両手を上げる。

 

「あれ? でもじゃあ、どうしてポイントが振り込まれてないんだ?」 

 

 至極当然の疑問に原点回帰した池が、茶柱を見る。

 確かにその通りだ。クラスポイントが95となった今、9500プライベートポイントを支払われていない現状はおかしいこととなる。

 

「今回、少しトラブルがあってな。1年生のポイント支給が遅れている。おまえたちには悪いがもう少し待ってくれ」

 

「えーマジすかあ。学校側の不備なんだから、なんかオマケとかないんですかあ?」

 

「そう責めるな。学校側の判断だ、私にはどうすることもできん。トラブルが解消次第ポイントは支給されるはずだ。ポイントが残っていれば、だがな」

 

 何とも意味深な言葉を残した茶柱であった。

 

 

 

 

 

「水無瀬。帰ろ?」

 

 放課後。いつも通り綾小路は水無瀬に話しかける。が、今日は彼の都合が悪いらしい。

 

「ああ、清楓ちゃん。ごめん、先帰ってて」

 

「ん、わかった。堀北ー、かえろー」

 

「ええ、荷物をまとめるから少し待ってちょうだい」

 

 そう言った会話を尻目に水無瀬が注目するのは須藤。さっさと教室を出ようとする須藤を、茶柱が呼び止める。

 

「須藤。お前に少し話がある、職員室まで来てもらおうか」

 

「……あの件すか?」

 

「あの件が何を指しているか分からないが、恐らくお前の予想はあってるだろう。顧問にも話はつけてある」

 

「……わかりやした。行きます」

 

 ちらりと水無瀬の方を一瞬流し見る須藤。大人しく彼女に付いて教室を出ていく。

 

「須藤の奴もすっかり大人しくなったよなー」

 

 そんな声がどこからともなく聞こえてきた。

 

「少し気になるわね。今朝先生が言っていたこと」

 

「ポイントの振り込みが保留になったこと?」

 

「ええ。トラブルがあったらしいけれど、それが学校側の問題なのかそれとも私たち生徒側の問題なのか。もし後者なら……」

 

「考え過ぎ。最近は特に問題なんかもなかったし、それに茶柱先生が言ってた。Dクラスだけがポイントの支給を止められてるわけじゃないって。単純に学校側の問題だと思うよ?」

 

 そんな会話が後ろから聞こえてくる。

 

(さて……ちゃんと上手くやってくれるのかな? ……ちょっと心配だけど)

 

 そんなことを思う水無瀬であった。

 

 

 

 

 

 翌朝ホームルームを迎えた皆に突き付けられたのは、いつもは最小限の言葉だけで教室を出ていくはずの茶柱による耳の痛い連絡事項だった。

 

「今日はお前たちに報告がある。先日学校でちょっとしたトラブルが起きた。そこに座っている須藤とCクラスの生徒との間でトラブルがあったようだ。端的に言えば喧嘩だな」

 

 ざわ、と教室の中が騒がしくなる。須藤とCクラスが揉めたこと、責任の度合いによっては須藤の停学、そしてクラスポイントの削減が行われること。全て赤裸々に告げられる。

 話す内容にはけして差別的なものはなく、あくまで学校側の中立的立場による説明だ。

 

「その……結論が出ていないのはどうしてなんですか?」

 

 平田から至極当然の質問が飛ぶ。

 

「訴えはCクラスからだ。一方的に殴られたらしい。ところが真相を確認したところ、須藤はそれは事実ではないと言った。彼が言うには自分から仕掛けたのではなく、Cクラスの生徒たちから呼び出され、喧嘩を売られた、そして無視して帰ろうとしたら殴りかかってきたから突き飛ばしただけだ、と」

 

「……」

 

 押し黙る須藤。そんな彼の様子にクラスメイトからは同情の声が上がる。

 

「全く言ってることが違うじゃないですか!? そんなの認められるわけないじゃん!」

 

 そんな声に茶柱は冷たく言い返す。

 

「だが証拠がない。違うか?」

 

「……ああ」

 

「つまり今のところ真実が分からない。だから結論が保留になっている。どちらが悪かったのかでその処遇も対応も大きく変わるからな。須藤がいた気がするという目撃者が本当にいれば少しは話も変わってくるんだがな。どうだ、目撃した生徒がいるなら挙手をしてもらえないか」

 

 淡々と話を進める茶柱先生。その問いかけに答える生徒はいない。

 

「残念だが須藤、このクラスには目撃者はいないようだな。学校側としては目撃者を捜すために、今各担任の先生が詳細を話しているはずだ」

 

「くっ……!」

 

 悔しそうに声を出す須藤。

 

「とにかく話は以上だ。目撃者のいるいない、証拠があるない含め最終的な判断が来週の火曜日には下されるだろう。それではホームルームを終了する」

 

 そう言って教室を出て行った茶柱。須藤は机でじっとしている。

 通夜のような空気の中、ふと須藤が切り出した。

 

「……すまねえ。走って逃げればよかったのに冷静じゃなかった。だがCクラスの奴らが言ってることは全くの嘘だ。……だけどアイツが言ってた通り証拠はない」

 

「須藤くん……」

 

 誰かがそう言った。その声を後ろに彼は続ける。

 

「……だから誰か目撃者を探すのに協力してくれないか! 頼む!」

 

 そう言って頭を下げる須藤。数秒の沈黙の後、切り出したのは水無瀬だった。

 

「全く、君も不運だね? よし! いいだろう。目撃者捜し、手伝ってあげるよ」

 

「そうだぜ! 水臭いこと言うんじゃねえよ!」

 

 そこに池が続く。2人を皮切りにクラスは須藤を助けるという意見が多く上がってきた。

 

「てかマジで須藤が言ってんのホントだったらかわいそうじゃない?」

「ね。ホントに正当防衛なのに」

「てかおまえ良くそこで手出さなかったよな!」

「ああ! 何ならさっきのホームルームでキレ出すかと思ってひやひやしたぜ!」

 

「うるせえよ! ……ありがとな、お前ら」

 

 照れくささを隠すかのように言う須藤。このころにはもうクラスの雰囲気は須藤を助けること一色となっていた。

 

「水を差すようで悪いのだけど、無実の証明なんてできるのかしら? ……私も最近の彼の素行に関しては文句はない。でも仮に訴えた側のCクラスが全て嘘をついているとは到底思えないわ」

 

 堀北は問いかけを続ける。

 

「……貴方は彼を100%信じれるの? 水無瀬君」

 

 静まり返った教室内、水無瀬は皆の視線を受ける。

 

「ああ。当たり前だろう? 彼は僕の友達なんだ。友達を信じれないなんて悲しいことはないよ。どうだい? 堀北さん。協力してくれないかい?」

 

「……そう。分かったわ。私も協力する」

 

「堀北……!」

 

 感動する須藤に堀北は冷たく言い返す。

 

「勘違いしないで頂戴。私はクラスのためにやっているだけなの」

 

「堀北。それ、ツンデレが言うセリフ」

 

 綾小路が指摘し、クラスに笑いが起きる。もう先ほどの空気は少しも残っていなかった。

 

「よし! 具体的なことは後ほど決めようか! もうすぐ授業が始まる。みんな気になるだろうけどちゃんと受けるんだよ? せっかく頑張って貯めたポイントが水の泡になってしまう」

 

「分かってるよ! 水無瀬パパー!」

 

 そう締めた水無瀬を池が茶化す。Dクラスは確かに、この2か月で成長の兆しを見せていた。

 

 

 

 

 

 放課後。クラスで『聞き込み調査を行う』という結論に至り、解散した後水無瀬は須藤と屋上に来ていた。

 

「……これでよかったのか? 水無瀬」

 

「ああ。演技は下手だったけど、いい感じだったよ」

 

 そう茶化すように答える水無瀬。

 

「ほっとけ……それにしてもお前が教えてくれて助かったぜ。まさかここまでやってくるとは思ってなかったけどよ」

 

 

 

『おい! 逃げんのかよ負け犬! お前はあの女たらし野郎の腰巾着だもんな!』

 

『はあ? 女たらしって水無瀬のことかよ……ッチ、んなこと言いに来たんだったら帰るぞ俺は』

 

『しょうがねえ。行くぞ!』

 

『は? 痛って! てめえ何しやがる!』

 

『っぐ……! いってえな須藤。……これ青あざ出来ちまったんじゃねえか? へへ、こんな事してタダで済むと思うなよ、須藤!』

 

『意味わかんねえよ、練習後で疲れてんだ、文句なら顧問に言ってくれ』

 

 

 

 そう。少し前から、Cクラスのバスケ部生徒から嫌がらせをされていると相談された水無瀬は、須藤に端末のボイスレコーダー機能について教えていた。

 そのタイミングでこのトラブルが発生したため、録音することに成功したのだ。

 

「改めて聞くとひでえなコレ、やってることヤクザと変わんねえじゃねえか」

 

「いいや、あまりにも詰めが甘すぎるさ。いくら監視カメラが特別棟とは言え学校の施設だ。目撃者が居たり、今回みたいに録音されている可能性を感じてすらいない。所詮は子供のいたずらさ。あるいは……いや、何でもない」

 

 1つの可能性を思い浮かべる水無瀬だったが、流石に考えすぎかとあたりを付けたようだ。

 

「でもよ、録音できてるんだったら早く突き出しちまえばいいんじゃねえか? 別にお前を疑ってるわけじゃねえけど、意味わかんねえって」

 

 柵に寄りかかり問いかける須藤。確かに、会話の一部始終を録音できたのであれば、それを提出すればいいので問題はないはずだ。

 

「これだけだったら証拠としては少し弱い。せめて目撃者だったり相手の心証が悪くなる要因がないと完全勝利は難しい。正式に裁判になった時に、虚偽の訴えをしたとのことでカウンターした方が確実だ。

 

 それに子供のいたずらとは言ったけど、手段を選ばないこの姿勢は中々()()()。これを裏で操っているであろう誰かさんの選択が少し見たい」

 

 本当は別の目的もあるのだが、水無瀬はそれを語ることをしなかった。

 

「……お前、やっぱ変わってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の夜。クラスメイト達がせわしなくグループで情報を共有する中水無瀬は、()()()()()()()()()()()()()()にあたりをつけていたが、どう接触するか悩んでいた。

 

(目撃者を募ったときの反応からして彼女だと思うんだけど。さて、どうしたものか……まあ櫛田さんでいっか)

 

 彼は櫛田のことを都合のいい女か何かかと思っているのだろうか? 端末で彼女にチャットを送る水無瀬。

 

『櫛田さん、頼みがあるんだけどいいかな?』

 

『んー? どうしたの?』

 

 既読は即付いた、やはり都合の良い女なのかもしれない。

 

『須藤の目撃者の件、あたりがついた』

 

『え!? ホント!?』

 

『ああ、それもうちのクラスでね。恐らく目撃者は佐倉さんだ。それで、お願いというのは彼女に聞き込みを行ってほしい』

 

『佐倉さんか……うん! 分かったよ! 明日の放課後でいいかな?』

 

『ああ、よろしく頼む』

 

『ああ、じゃあ。おやすみ』

 

『おやすみー!』

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。放課後、櫛田はホームルームが終わると同時に席を立った。そして静かに帰る準備をしている佐倉の元へ。彼女にしては珍しく緊張気味な様子だった。

 池や山内、そして須藤も話は気になっているのか、意識が櫛田たちに向けられる。

 

「佐倉さんっ」

 

「……な、なに……?」

 

 メガネをかけた猫背の彼女、佐倉は気怠そうに顔を上げた。 声をかけられるなんて思ってもいなかったのか、どこか慌てた様子である。

 

「ちょっと佐倉さんに聞きたいことがあるんだけどいいかな? 須藤くんの件で……」

 

「ご、ごめんなさい、私……この後予定あるから……」

 

 明らかにバツの悪そうな顔をして佐倉は視線を逸らした。誰かと話すのが得意じゃない。あるいは好きじゃないといった空気を放出しまくっている。

 

「そんなに時間取らせないよ? 大切なことだから話をさせてほしいの。須藤くんが事件に巻き込まれた時、もしかしたら佐倉さん近くにいたんじゃないかって……」

 

「し、知らないです。私ホントに何も知らなくて……」

 

 弱々しい言葉ではあったが、きっぱりと否定する佐倉。

 櫛田も嫌がる素振りを見せる佐倉に対し、強引に話を聞く真似はしたくないだろう。

 

「もう……いいですか、帰っても……」

 

 そう言って帰ろうとする佐倉。櫛田もその様子を見て確信したのかさらに問いかける。

 

「今から少し時間取れないかな?」

 

「ど、どうしてですか? 私、何も知らないのに……私、人付き合いが苦手なので……ごめんなさい」

 

 おどおどした様子で続ける佐倉。もうこっちの話を聞く気は全くないようだ。

 

「さ、さよなら」

 

 そう言って机の上のデジカメを握りしめた後、走り去る佐倉。

 その時、携帯で友達と喋りながら前を見ず歩いていた本堂と肩がぶつかってしまう。

 

「あっ!」 

 

 佐倉の手から零れ落ちたデジカメが床に叩きつけられ高い音を出す。本堂は携帯の方に意識を集中させたいのか、悪い悪いと軽く謝り教室を出て行った。 

 佐倉は慌ててデジカメを拾い上げる。

 

「嘘……映らない……」

 

 佐倉は口元に手を当て露骨にショックを受けていた。どうやら衝撃でデジカメが壊れてしまったらしい。何度も電源ボタンを押したり、バッテリーを入れ直したりするが主電源が入る様子はない。

 

「ご、ごめんね。私が急に話しかけたから……」

 

「違います……不注意だったのは、私ですから……さようなら」

 

 そう言って走り出す佐倉。

 

「あ! 待って……行っちゃった……」

 

「……失敗ね。別の方法を試しましょう」

 

 落ち込む櫛田を励ます堀北。しかしその表情は暗いものであった。

 そこに入り込んだのは、遠くから傍観していた水無瀬。彼は意外なことを言う。

 

「いいや、作戦は成功さ。清楓ちゃん。悪いけど先に帰っててくれないかい? 少し寄るところがあるんだ」

 

「ん……わかった」

 

 不思議そうにする皆を背に、水無瀬はとある場所へと向かった。

 

 

 

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