TSした綾小路ちゃんを転生オリ主が愛でまくる話 作:妄想癖のメアリー
天国と地獄
「うおおおお! 最高だああああああああ!!」
常夏の海、その上に浮かぶ豪華客船のデッキから両手を上げ、大きく叫ぶのは池寛治。
基本的にテンションが高い彼だが、今日は取り分けて楽しそうだ。普段なら耳障りだと言われそうではあるが、今日に限ってそれを言うのは野暮という物だろう。
「水無瀬! こっちこっち! すごい景色だよ!」
「こらこら、あんまりはしゃぎすぎると疲れちゃうよ? まだあと2週間もこんな感じなんだから」
「ん、水無瀬ももっとこっち来て、お留守番の坂柳の分まで楽しもう? せっかく学校が用意してくれたんだから」
そう。期末テストを乗り越え夏休みを迎えた水無瀬達に待っていたのは、なんと学校が用意していた二週間の豪華旅行である。豪華客船によるクルージングの旅だ。
「退学にならなくて良かったよな、健。こんな旅行普通だったら絶対無理だしさー。テストを乗り切ったかいがあったってもんだ!」
「ああ、高校生でこんな豪華旅行が出来るなんて夢にも思ってなかったぜ。それも2週間だぜ2週間。母ちゃんや父ちゃんが聞いたらびびってチビるだろうな」
須藤の言う通り、国が支援しているこの学校では学費や雑費を払う必要が一切ないのだ。この旅行も例外ではない。一般人からしたら破格の待遇だろう。
更に水無瀬達が乗り込んだ客船は外観はいうに及ばず、施設も非常に充実。一流の有名レストランから演劇が楽しめるシアター、高級スパまで完備されている。しかもありがたいことに、この船ではどの施設も無料で利用することができる。常日頃ポイント不足で悩んでいるDクラスの生徒にとっては、渡りに船だった。
「須藤達は水無瀬と堀北に感謝した方がいい。なんだかんだ言って結局テスト一週間前に泣きついたんだから」
「うお! 綾小路、分かってるよ。感謝してるって!」
ジト目ではしゃぐ3バカを睨んだ綾小路に答えたのは池。遠くからそんな声が聞こえてきた水無瀬は苦笑いをしている。
デッキの柵に寄りかかって海を見つめている彼だが、なんだかんだ言って楽しそうだ。
「あれ? 水無瀬君。堀北さんは一緒じゃないの?」
そんな彼に話しかけてきたのは櫛田。何故か一緒にいるのが当たり前のように思われている現実に、もどかしいものを感じながらも答える水無瀬。
「いや? 見てないね……彼女のことだから部屋にでも籠ってるんじゃないかな?」
「そうかも! お昼は、この島のプライベートビーチで自由に泳げるんだったよね? 楽しみだなー」
「確かこれから一週間はこの学校が所持している小さな島で過ごすんだったよね? こういう風な旅行はしたことがないから僕も楽しみだよ」
と、そんな風にこれからの予定を楽しそうに話す2人だったが、突然とアナウンスが流れる。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』
その内容は少し奇妙なものであったが、櫛田達は特に気にしていないようだ。続々と生徒が集まりだすと、数分後その島は姿を現した。
池が歓喜の声をあげる。水平線の彼方、視界に小さく島のようなものが視認できた。 生徒達がそれに気づき、一斉にデッキへと集まり始めた。
群集が押し寄せると、それまでベストポジションを取っていた水無瀬達を押しのける、横暴な男子生徒達が現れた。
「おい邪魔だ。どけよ不良品ども」
「あう……!」
そう威圧しながら男子の一人が見せしめのように綾小路の肩を突き飛ばした。それを見た水無瀬が慌てて抱きとめる。
「おっと、大丈夫かい? 清楓ちゃん」
「うん……ありがとう(あ。まずい……水無瀬怒ってる)」
その時の彼の表情を見た綾小路は先の男子生徒に向かって心で合掌した。水無瀬が口を開く前にその男子生徒に対して怒鳴った須藤。
「てめえ何しやがる!」
池や櫛田等の近くにいたDクラスの生徒達が、心配そうに寄ってきた。そんな様子でも気にせず罵倒する男子生徒。
「お前らもこの学校の仕組みは理解してるだろ。ここは実力主義の学校だ。Dクラスに人権なんてない。不良品は不良品らしく大人しくしてろ。こっちはAクラス様なんだよ」
そう言われて悔しそうな顔をするDクラスの生徒達。その時ふと沈黙を保っていた水無瀬が口を開いた。
「あまり僕の友達をバカにしないでもらえるかい?」
「水無瀬くん……」
「あ!? てめえ口答えすんじゃねえよ! Dクラスは人権ねえってさっき言っただろ! ……って水無瀬? お前中間、期末テストと成績1位の水無瀬!?」
「……自分の非を認めず、謝罪もしない。こんな生徒がAクラスだとは有栖ちゃんも大変だね……目障りだ。失せろ」
「ひっ……! お、覚えてろよ!」
そんな小物間満載の捨て台詞を吐いて逃げる男子生徒。彼の友人もそれを追うようにデッキから離れる。
「……ふう、楽しい旅行なんだからみんな仲良くすればいいのに」
手を二回ほど鳴らしてため息を吐いた水無瀬。
「俺、これから水無瀬に口答えすんのやめよっかな……」
「そうした方がいいと思うぞ春樹。俗に言う普段優しいやつが怒ったら怖い現象だぞあれ……でもかっこよかったぜ! 流石Dクラスの保護者だな!」
「Dクラスじゃなくて、あんた達のでしょ! でも確かに! なんかギャップって感じ?」
上から山内と池が話し、篠原がそれに突っ込んだ。
普段Dクラスの生徒達が受けている屈辱を、水無瀬が華麗に返したのだ。盛り上がる彼らに対して水無瀬はやんわりと告げる。
「ほら、そんなことしてる間にもうすぐ島の全貌が見えて来る。今見ておけば後になって必ず役に立つから」
「は? どうゆう事よ水無瀬?」
「いいからいいから。答えは上陸したら分かるよ」
そう言ってデッキの先頭で遠くに見える島を楽しげに見つめる水無瀬。疑問を残しながらもDクラスの生徒達はそれに倣って島を見る。
「やあみんな、ここにいたんだね。……あれ、どうかしたの?」
集まって来た生徒の一人に、声をかけてきた男子が居た。平田洋介である。やけにテンションが高い皆の様子に疑問を持っているようだ。
「お! 平田! 聞いて驚くなよ? 水無瀬がな────」
そんな平田に、池が事の顛末を説明する。
「ああ、なるほどね。トラブルが解決したなら良かったよ」
「こんな時までクラスの心配なんてしなくてもいいんじゃねえか? せっかくの旅行なんだし、気にせず軽井沢とベタベタしとけよー?」
そう語る平田に対して池が茶化すように語った。しかしその裏には彼への気遣いが伺える。入学して間もないイケメン嫌いの彼では考えられなかっただろう。
「あはは、ありがとね、気を使ってくれて。でも大丈夫、僕らには僕らのペースがあるから。ごめん、三宅くんが困ってるみたいだから行くよ」
携帯が鳴ったのか、平田は操作しながら船内に戻っていく。
「……平田も大変だね」
「あれが人気者の宿命なのか……イケメンも大変だな」
そんな平田の様子にげんなりとする綾小路と池であった。
「でも軽井沢は軽井沢で、最近あんまりベタベタしないよな平田とさ。……もしかして二人が別れたとか? だとしたら最悪だぞ……櫛田ちゃんを巡るライバルが増える!」
そう語る山内に対して池は決心したように拳に力を込めた。
「決めたぜ春樹。俺……この旅行で櫛田ちゃんに告白する!」
「ま、まじかよ。フラれたらすげぇ気まずいじゃん。いいのかよ」
「これは俺の勝手な推理なんだけどさ。櫛田ちゃんはとにかく可愛いだろ? だから男の大半は付き合いたいって思う。でも、レベルが高すぎて逆に告白まで辿り着かないはずだ。だから逆に告白慣れしてないんじゃないかってさ。俺の愛の告白に櫛田ちゃんの心が揺さぶられる可能性はあるはずだ。つか、そこしか希望は無い!」
「そうか……おまえ、覚悟決めたんだな」
「おうよ!」
「おーい! 櫛田ちゃーん!」
「ん? 何かな。池くん」
「そのさ、なんつーか、俺達出会って4ヶ月くらい経つじゃん? だからそろそろ、下の名前で呼んでもいいんじゃないかなって。ほら、苗字だと他人行儀だしさ」
「そう言えば、山内くん達とはいつの間にか名前で呼び合ってるね」
「だ……ダメかな? き、桔梗ちゃんって呼んだら」
そんな伺いを立てる池に対し、櫛田は屈託のない笑みを浮かべた。
「もちろんオッケーだよ。私は寛治くんって呼べばいいかな?」
「うおおおおおお!! 桔ちゃあああああん! やったぜ! これで水無瀬に一歩リードしたぜ!」
そう言って飛び跳ねながら喜ぶ池。
「……なあ、綾小路」
「ん? どうした須藤」
「池が振られた時、なんて声かけてやれば良いかな……俺」
「……水無瀬に聞いた方がいいと思う」
その質問に答えるためのコミュ力は、まだ彼女には足りていなかった。
しばらくして、周囲が突然騒がしくなった。件の島が見えてきたのだ。そのまま船は島につけられるのかと思ったが、何故か桟橋をスルーし、ぐるっと島の周りを回り始めた。
どうやら客船は一周回って島の全体を見せてくれるらしい。
「水無瀬……これって」
そんな船の様子と、先程のアナウンスから綾小路もひとつの結論にたどり着いたようだ。
「ああ。プールの授業で習ったことが、役に立つ時が来るかもね? ちゃんと見ておくんだよ?」
「……ん」
そんな意味深な会話をする2人。
『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒達は30分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は全て部屋に置いてくるようお願いします。また暫くお手洗いに行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいてください』
そんなアナウンスが鳴り、生徒たちは各々準備に取り掛かった。
準備を終え甲板に並んだ生徒たち。その前には教師が立っている。
「ではこれより、Aクラスの生徒から順番に降りてもらう。それから島への携帯の持ち込みは禁止だ。担任の先生に各自提出し、下船するように」
拡声器を持った教師の声で、生徒達が順番に客船の階段を降りていく。
「あちー。早くしてくれよー。薄着でも汗かいてしょうがないっつーの」
そんな不満が出る中、水瀬達の元へ合流してきたのは堀北だった。少し寒そうに腕をさすって島に上陸するのを待っている。
「ん? 鈴音ちゃん。体調でも悪い?」
そんな堀北に向かって水無瀬は問いかける。
「……よく見てるのね、あなた。別になんてことないわ。部屋が少し寒かっただけよ。それにしてもいやに警戒してるわね。テストの時だって携帯を没収なんてしてなかったのに」
「まあ、多分少しすればその理由もわかると思うよ」
そんなことを語る水無瀬。その顔には、クリスマスのプレゼントを楽しみに待っている子供のような笑顔が浮かべられていた。
「今からDクラスの点呼を行う。名前を呼ばれた者はしっかりと返事をするように」
それから程なくして、1人の教師が用意された壇上の上へと上がった。Aクラスの担任の真嶋という男だ。
「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかしその一方で1名ではあるが、病欠で参加できなかった者がいることは残念でならない」
「いるんだよなあ、病気で旅行に参加できない奴。かわいそ」
「……今頃退屈してるだろうな。有栖ちゃん」
「こればっかりは仕方ない」
そんなことを話す水無瀬達であったが、どうにも教師たちの様子がおかしいことに気づいたようだ。
作業着に身を包んだ大人たちが、少し遠くで特設テントの設置を始めているのが見えた。長机にパソコンなども見える。
その様子に生徒達も困惑の色を浮かべはじめる。そんな風に空気が変わることを待っていたかのように、真嶋から冷酷な一言が発せられた。
「ではこれより───―本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
「え? 特別試験って? どういうこと?」
「期間は今から1週間。8月7日の正午に終了となる。君たちはこれからの1週間、この無人島で集団生活を行い過ごすことが試験となる。なお、この特別試験は実在する企業研修を参考にして作られた実践的、かつ現実的なものであることを最初に言っておく」
「無人島で生活って……船じゃなくて、この島で寝泊まりするってことですか?」
そんな生徒たちの疑問を答えるかのように、真嶋は説明を続ける。内容を要約するとこうだ。
・試験中の乗船は正当な理由なくは認められないこと
・テントを2つ配布される以外、この島での生活は、食と住全てを生徒たちが賄わなければいけないこと
・歯ブラシ、マッチ、懐中電灯や生理用品は配布される。逆に言えば、それ以外は配布されないということ
「はああ!? もしかしてガチの無人島サバイバルとか、そんな感じ!? アニメや漫画じゃないんすから! そもそも飯とかどうするんですか! あり得ないっす!」
そんな生徒全体の意見を代表したかのように池が叫ぶが、教師たちによって『ただの学生の君たちに、実際に企業の研修で使われているこの方法を否定する根拠は無い』と窘められてしまった。
「しかし先生。今は夏休みのはずです。そして我々は旅行という名目で連れて来られました。企業研修ではこのような騙し討ちのような真似はしないと思いますが」
だがその言葉に不服を覚えたであろう誰かが、そんな風にたてついた。
「なるほど。その点に関しては間違った認識ではない。不平不満が出るのも納得だ……だが安心していい。特別試験と言ってもそれほど深く考える必要はない。今からの1週間、君たちは海で泳ぐのもバーベキューをするのもいいだろう。時にはキャンプファイヤーでもして友人同士語り合うのもな。この特別試験のテーマは『自由』だ」
「え? え? 自由がテーマってことは……? バーベキューも出来るって……んんんっ? それって試験って言えんの? 頭混乱してきた……」
試験なのに遊ぶのは自由と、相反するモノが混在し生徒は疑問点ばかりが増えていく。
そんな生徒達に説明がされる。その内容は彼らにとっては衝撃的だった。その内容は
・前提として、この試験では各クラスに試験専用のポイントが300配られる。
・配られるマニュアルを基に、ポイントを使用することで様々な物を購入でき、サバイバルを楽に行うことができる。
・この試験によっての2学期以降悪影響は一切ない。
────そしてこの特別試験終了時に、
特に最後の内容が一番衝撃的だっただろう。
今までの筆記試験のような学力だけを基に算出される今までの試験は、明らかに各クラスごとのハンディキャップがあった。だがこの試験ではそんなもの一切ない。
更には最大で300余りの大量のクラスポイントが得られるというのだ。クラス間の逆転も十分ありうる。
「1週間我慢したら……来月から俺たちの小遣いも大幅に増えるってことだよな!?」
「マニュアルは1冊ずつクラスに配布する。紛失などの際には再発行も可能だが、ポイントを消費するので大切に保管するように。また、今回の旅行を欠席した者はAクラスの生徒だ。特別試験のルールでは、体調不良などでリタイアした者がいるクラスにはマイナス30ポイントのペナルティを与える決まりになっている。そのためAクラスは270ポイントからのスタートとする」
そう言って真嶋の話は終えた。各クラスで動揺が広がる中、補足説明を受けるため、Dクラスは茶柱の元へと集まっていた。
「来月から3万、来月から3万、来月から3万……やるぞー!」
3万円という数字にテンションが上がったのか叫ぶ池。しかし他の生徒も皆同様に来月から何を買うかの相談をしている。
そんな空気の中茶柱は説明を始めた。
「今からお前たちにこの腕時計を配布する。これは1週間後の試験終了まで外すことなく身につけておくように。許可なく外した場合にはペナルティが課せられる。この腕時計は時刻の確認だけでなく、体温や脈拍、人の動きを探知するセンサー、GPSも備えている。また万が一に備え学校側に非常事態を伝えるための手段も搭載してある。緊急時には迷わずそれを押すんだ」
そんな説明がなされているなか、平田がふと疑問を口にした。
「茶柱先生。僕たちは今からこの島で1週間生活するとのことですが、ポイントを使わない限り全て僕たちで何とかしなければならないということでしょうか」
「そうだ。学校は一切関与しない。食料も水も、お前たちで用意してもらう。足りないテントにしてもそうだ、解決方法を考えるのも試験。私の知ったことじゃない」
「大丈夫だって。魚でも適当に捕まえてさ、森で果物でも探せばいいじゃん。テントは葉っぱとか木とか使ってさ。最悪体調崩しても頑張るぜ」
そう軽々しく語る池。そこで先ほどからえらく静かな水無瀬がそれに待ったをかけた。
「……いや、そう簡単な話じゃないはずだ。いくらサバイバルといえどこれは学校の管理の元行われる試験。環境を汚染したり、体調を崩して無理に試験を続行して万一があったら大変だ。恐らくそれらの行為には何かしらのペナルティが生じるはず」
「水無瀬の言う通りだ。具体的な内容はマニュアルの最後のページに乗っている、まずはそこを読んでみろ」
そこに記載されていた内容は4つ
・著しく体調を崩したり、大怪我をし続行が難しいと判断された者はマイナス30ポイント。及びその者はリタイアとなる
・環境を汚染する行為を発見した場合。マイナス20ポイント
・毎日午前8時、午後8時に行う点呼に不在の場合。一人につきマイナス5ポイント
・他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合、生徒の所属するクラスは即失格とし、対象者のプライベートポイントの全没収
「お前が無茶をするのは勝手だが、もし10人の生徒が体調不良に陥ったなら、それで全て水の泡だ。一度リタイアと判断されれば試験中に復帰することも出来ない。強行するときはそのリスクをくれぐれも忘れるな」
その後ポイントを限界まで節約するべきである意見と、ある程度の使用は仕方がないという意見で小競り合いが起きるが水無瀬がそれをまとめることで収まった。
更に彼はDクラスの生徒を集めて茶柱から受けた説明をまとめる。
「いいかい? 少し長くなるけどこれから要点をまとめて説明するね。まずこの試験で
「まあ別に無理さえしなければそんなリタイアする奴いねえだろ。1週間だけだしな」
そう語るのは須藤。意外にもポイントを使う派の考えのようだ。
「そうだね、そして次に点呼について。点呼は各クラスの担任が共に行動する中で行い、場所はそれぞれでベースキャンプを決めてそこで行う。注意点としては、一度ベースキャンプを決めたら正当な理由なしでは変更できないということ、安易に決めるのは良くないね。そしてトイレだけど……」
そう言って言葉を詰まらせる水無瀬。そんな彼を見た篠原がここぞとばかりに叫んだ。
「こんなの絶対無理だよ水無瀬君! 段ボールのトイレだよ!? 愛しの清楓ちゃんにこんなの使わせていいの!?」
「トイレくらいそれで我慢しようぜ。揉めるようなことじゃないだろ篠原」
「ふざけないで。男子には関係ないでしょ。段ボールのトイレなんて絶対無理」
そう言ってまた話が激化しそうになる男女。それを見た水無瀬は手を叩いて皆の注意を引く。
「ほら、また話が逸れてるよ。トイレに関してはそれぞれ意見があるだろう。話もまとまらないし、一旦保留にしよう」
「……まあ、お前が言うならいいけど」
そう言って引き下がる池。やはり保護者には逆らえないようだ。
「話がまとまったようだな。ではこれより追加ルールを説明する」
「ま、まだあるんすか……」
「まもなくお前たちにはこの島を自由に移動する許可が与えられるが、島の各所にはスポットとされる箇所が幾つか設けられている。それらには占有権と呼ばれるものが存在し、
ただし占有権は効力上8時間しか意味を持たず、自動的に権利が取り消されることになる。その都度別のクラスに取得する権利が発生するということだ」
わざわざそのような制約を設けているということは、占領してしまえば試験を有利に進めることが出来ると言う事だろう。
「そして、
なので、試験終了時にのみ精算され、加算される仕組みになっている。学校側は常に監視をしているため、このルールにおける不正の余地はない。その点には注意するように」
「え、じゃあそれすっげえ大事じゃないすか! ポイントまで付いてくるなんて美味しすぎる! 俺たちで全部取ってやろうぜ!」
すぐにでも探しに行こうぜと、池は目を輝かせて山内たちを誘い始める。 マニュアルにもそのことが事細かに書かれており、スポットの近くには必ず占有権を示す装置が用意されているようだ。島に幾つのスポットがあるのかは不明だが、これらはこの試験において大きな要素と言えるだろう。
「焦る気持ちは分かるが、このルールには大きなリスクがある。そのリスクを考慮した上で利用するかを検討することだな。そのリスクも含め、全てマニュアルに書かれてある」
内容は以下の通り、箇条書きで記されている。
・スポットを占有するには専用のキーカードが必要である。
・1度の占有につき1ポイントを得る。占有したスポットは自由に使用できる。
・他が占有しているスポットを許可無く使用した場合50ポイントのペナルティを受ける。
・キーカードを使用することが出来るのはリーダーとなった人物に限定される。
・正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない。
・所有権は8時間ごとにリセットされる。なおそのスポットが他クラスに占領されていなければ、上限なしに占領できる。
ここまで見た限りだと、池の言った通り占領したもの勝ちとなってしまうが、それは非常にリスクを伴う行為である。その理由は最後に書かれたルールにある。
────7日目の最終日、点呼のタイミングで他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。その際、見事他クラスのリーダーを的中させることが出来たなら、
「もちろんこれでは言ったもの勝ちとなってしまう。その為リーダー当てを外した場合は50ポイントのマイナスとなる。当てずっぽうでやると痛い目を見るぞ……分かっているとは思うが、例外なくリーダーは必ず一人決めて貰う。だが参加するしないは自由だ。欲を出さなければリーダーだと知られることもなく済むだろう。
リーダーが決まったら私に報告しろ。その際にリーダーの名前を刻印したキーカードを支給する。制限時間は今日の点呼まで。それまでに決まらない場合はこちらで勝手に決めることになる。以上だ」
「さて、長い説明も終わった事だし、ちょっとみんな付いてきてくれないかな? テントは僕が持つよ。力の見せ所だね」
ざわついているDクラスをまとめ上げた水無瀬は、テントを2つ持っておもむろに森の中へと入っていく。
「……なあ、あいつの持ってるテントって、1つ15キロって言ってたよな?」
「ん、水無瀬は昔から力持ちだったから」
全く気にせず歩いていく水無瀬に恐ろしさを感じながらも、Dクラス一行は歩き出した。
「おい水無瀬! お前1人で2つ持ってくんじゃねえよ! ……1個持ってやるからほら、渡せ」
「ああ、ありがとう須藤。助かるよ」
「ちょ! 待てよお前ら!」
女子のペースを気にしながらも、グイグイ先に行く水無瀬と須藤に慌てたように追いかける男子たち。それを応援する女子たちなど。先程までギスギスとした空気は一切感じられなかった。
そんな彼らを見て何か冷たいものが背筋に走る茶柱だったが、それと同時に言い知れぬ高揚感も感じていた。
「はあ~。やっとBクラスの説明が終わったわ……ってええ!? もう佐枝ちゃんのクラス移動してるの!?」
「……何してる」
「何って、スキンシップ? Dクラスはどうしてるかなーって思ってね」
そう言って茶柱の二の腕を撫でる星之宮。しかしその表情は真剣なものだ。
「……それにしてもホントにあのDクラスなの? ……どのクラスより早く動き出したじゃない」
「全て水無瀬の手腕によるものだがな」
そんな茶柱の答えに納得が言ったように彼女は語る。
「水無瀬君か~この前少し話したけど、すっごくモテそうだったもんね! ……どうしてDクラスなんだろうね? あんなに完璧な子見た事無いのに……それに理事長判断って初めてじゃない?」
「さあな、理由は私にも伝わってきてない。だが一つ言うとするなら、あいつのおかげでDクラスの生徒は目まぐるしい成長を見せている。特に堀北や須藤、池などが顕著だ。あいつは他者の素質を見出してそれを伸ばす能力に長けている」
「……先生として負けられないわね、私達」
「……」
かなり独自の展開で動いていくつもりなので、ここで試験についておさらいをしておきましょう!(間違えてたら指摘してください!)
まず大前提として、この試験は各クラスで協力して、無人島で1週間生活を共にすると言う試験です!
・試験中の乗船は正当な理由なくは認められないこと
・テントを2つ配布される以外、この島での生活は、食と住全てを生徒たちが賄わなければいけないこと
・歯ブラシ、マッチ、懐中電灯や生理用品は配布される。逆に言えば、それ以外は配布されないということ
が基本となってきます!
勿論それだけでは原始的な生活をせざる負えないため、この試験には特殊なポイントが割り当てられます。
それが300ポイント。同時に配られるマニュアルから、どんな物資を何個買うかをクラスで話し合って決めます。
そして試験で一番のポイントなのですが、『この試験で残ったポイントがそのままクラスポイントになります』
しかしそれでは我慢大会やリタイア合戦になってしまうため、以下のようなペナルティが当てられます。下の箇条書きは本文引用です!
・著しく体調を崩したり、大怪我をし続行が難しいと判断された者はマイナス30ポイント。及びその者はリタイアとなる
・環境を汚染する行為を発見した場合。マイナス20ポイント
・毎日午前8時、午後8時に行う点呼に不在の場合。一人につきマイナス5ポイント
・他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合、生徒の所属するクラスは即失格とし、対象者のプライベートポイントの全没収
生徒が危険な行為をしないようにするための妥当なルールですね。
ここまではこの試験の『守り』の要素です! 次からは『攻め』の要素になってきます!
この試験では各クラスで必ずリーダーを決めなければいけません。そして、そのリーダー情報が記入されたキーカードを受け取り、スポットを占領することができま す!
その条件や報酬は以下の箇条書きの通りです!
・スポットを占有するには専用のキーカードが必要である。
・1度の占有につき1ポイントを得る。占有したスポットは自由に使用できる。
・他が占有しているスポットを許可無く使用した場合50ポイントのペナルティを受ける。
・キーカードを使用することが出来るのはリーダーとなった人物に限定される。
・正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない。
・所有権は8時間ごとにリセットされる。なおそのスポットが他クラスに占領されていなければ、上限なしに占領できる。
ここまで見た感じだと、リーダーが1人で動き回って占領すればいいと思うのですが、そうはいかないのがこの試験の難しい所です。以下本文引用
7日目の最終日、点呼のタイミングで他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。
その際、見事他クラスのリーダーを的中させることが出来たなら、的中させたクラス1つに付き50ポイントを得る。逆に当てられたクラスは代償として50ポイントを失う
という事で、今回はこのリーダー情報がかなり肝になってくるので、理解していただけるとより面白く読めると思います!
リメイク前の方を読んだことありますか?
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リメイク前読んだことあるよー
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リメイク後初めて読んだよー